第66回

新人コミック大賞 発表

青年部門


入選

『マネキンママ』高良百(沖縄県・22歳)

この作品を読む

■いわしげ孝先生
さわやかな味わいのメルヘン。主人公の少年以外はマネキンママの存在を疑ってないその落差を、温度差をもってもっと踏み込んで描けば、より面白くなる気がする。
■黒丸先生
いい話だなーもう。とにかく楽しく面白く、そしてほろっとする作品でした。絵に関しては、人物の造形やデッサンなど技術的なことも含めて、総体的にうまいと思います。線が淡泊なので派手さには欠けますが、それが味でもあるかと。主人公を含め、ママ、パパ、友達のすべてのキャラクターがかわいらしく個性的で、読んでいて本当に楽しかったです。主人公「こうた」のヒネたガキんちょぶりと、ママが恋しい普通の男の子、その二つの描写のバランスが絶妙でした。しめっぽく甘ったるくなりがちな話をあえてドライに描いたり、ママが復活した理由をさらっと流して描く潔さなど、読者の反応を先読みする作者のカンの良さが際立っていたと思います。構成も巧みでとても読みやすい。一度も止まることなく、一気に読めました。オチもステキでした。文句のない作品だと思います。2Pめのうんこ時計、個人的にほしいです。
■乃木坂太郎先生
子どもの動きと表情が生き生きとして楽しかったです。特に友達のじゅん太がバカっぽくてかわいい! 画力はまだまだですが、絵に嫌みがないので練習すればもっと伸びると思います。構図があまりに単調なのと、左向きの顔ばかりなのは積極的に直した方が良いです。物語の本筋はよくある話なので、脇のエピソードをもう少し面白く広げてほしかった。マネキン顔に驚く――みたいなシーンばかりで繰り返し感が強いです。オチも弱いです。これは中盤あたりにくる定番のエピソードでしょう。とはいえ作品の雰囲気はすごく良くて、作者の目線の優しさは好印象でした。
■山本おさむ先生
最後までつじつま合わせに苦労したようだが、読める作品になっている。ストーリーも絵も、やや乱暴なので力を入れるところ、抜くところなどメリハリをつけ完成度を高める努力を次回作に期待したい。
■高橋しん先生
絵がうまいですね。なんといっても子供の表情がとてもいいです。子供の気持ちになって共感したり、大人の視点になってかわいらしく思ったり、感情を受け止めることができました。この子がラスト、成長したり、乗り越えたり、幸せになってもらいたいなと思いました。おかあさんの表情もいいおかあさんだなって伝わるいい表情です。数少ない登場シーンですが、愛情を主人公に十分にかけた、母親としての強さのある人と感じました。お父さんは、比べるとちょっと扱い雑だと感じました。お父さんの出ているバタバタしたコマだけなぜか、絵に愛情の薄い手癖で描いた漫画に見えてしまいもったいないです。でも他の絵の魅力で十分補っています。マネキンママの造形は今よりもう一歩頑張って、気持ち悪いけど愛嬌のある形を模索してみても良かったかもと思います。リンゴのエピソードの流れ、とてもいいお話なのに、読者さんに必然性を与えずにタイムセールの買い物に興ずるマネキンママは読者としてさみしく思い、もったいなかったです。例えば主婦の本能や弱さとして現世の魅力(タイムセール)に抗えない的な設定を提示するとか、そうでなければマネキンに戻れと言われたショックを引きずり、それ故にとか、せっかくのクライマックスにつながる読者さんの感情の流れをスポイルしない工夫はしても良かったと思います。今後、絵のうまさを生かしていくために、今の延長線でラフめの線を洗練させて味として生かしていくのか、ペンや仕上げを練習し丁寧にして表情の魅力を上げていくのかは、作者さんの選択肢だと思いますが、いずれを選択するにせよ、自分なりにこれから作家さんとして読者さんに伝えたいものを感じて頂くためにどうしたらベストと思うかを第一に、そのための努力としてこれからも、もっともっと作品を考えてもらえるとうれしいです。次の作品を楽しみにしています。

入選

『STALKERS』さだやすあゆみ(埼玉県・27歳)

この作品を読む

■いわしげ孝先生
男2人の視点に固定したのは良策だが、一コマでいいから女性からの視点や思いも欲しい。でも最近では珍しいO・ヘンリーやヒッチコック的な味わいはこの作者の個性です。
■黒丸先生
楽しく読めました。フランスを舞台に、内気な若者と偏屈なおじいさんが同じ女性をそれぞれ“のぞき見”しているお話。まず舞台を異国にしたこと、そしてその雰囲気がよく描けていることがいいと思いました。「ストーカー」という危険な愛の形(?)も、情緒溢れる異国の地を舞台にしたことで、いやらしさやアブナさが無くなり、コミカルでかわいらしい雰囲気に仕上がっています。ヒロインの人間性を99%間接的に描き、主人公と爺さんの関係にスポットを当てたのもいい選択だと思いました。絵は、線はまだ雑ですが、背景もキャラクターも味があります。この方向性を維持しても、まだまだ磨いていけると思います。惜しい点を言うならば、テーマが最後のコマに至ってようやく理解できたという点。主人公に「友達がいない」ということをもっと早めに強く出して、一番のテーマを押し出しても良かったんじゃないかと思いました。
■乃木坂太郎先生
パトリス・ルコントの映画みたいですね。軽妙な語り口が心地良いです。コマ運びや間にセンスがあると思います。「彼女」の名前は最後まで明らかにしないんですね。「彼女」を神聖な存在として演出するだけでなく、主人公2人との距離を生み彼ら2人の友情に自然に目がいく効果になってて上手いです。「彼女」のビジュアルが、もう少しキレイに描けてたらもっと良かった!
■山本おさむ先生
「彼女」の造形が浅い。のぞきでなければ見えない彼女の一面があるのではないだろうか。それが作品のメインのアイディアになるはずだが、そこが弱いために後半に登場する色男が活きず、とってつけたような印象となった。
■高橋しん先生
好きな作品を描いているという楽しさが伝わってくる作品です。舞台が海外であるという描き手、読み手両方に出がちなハードルも、好きの力できれいに飛び越えていて、自分には殆どそういう才能が無いので羨ましく思います。主人公の2人の関係性も楽しくつきあえました。読者さん的には、せっかく主人公2人を好きになったところで、さらなる感情移入のため、ヒロインを好きになりたいという欲求が出ますが、演出的には大雑把に二つの選択肢があります。ビジュアルやストーリーで直接的に好きになってもらう演出。もう一つは象徴としてのビジュアルに適度にとどめて、読者さんの脳内の感覚を邪魔せずに「好き」を想起させる演出です。今回のヒロインへの演出は、少し中途半端に思えました。誤解なら申し訳ないのですが、読ませて頂いた感じでは、2人の主人公が彼女を好きと思うほどには作者さんの方はそこまではヒロインを好きと思ってはいないのではないか、と思いました。作家としての考え方にもよると思いますが、読者さんに対して主人公2人が好きな物を作者ももっと愛してあげることが、その魅力が根ざす部分をもっと掘り下げることが、この作品にとっては意味があることと個人的に思いました。単純にボリュームを増やすということではなく、たとえ今と同じ尺でも、読者さんにより伝わる努力をするということです。読者として主人公2人を好きになれたぶん、2人がそこまで好きだという彼女も、今以上に好きになりたいと思いました。一読者の意見として、参考にして頂けるとうれしいです。

入選

『たべるダケ』高田サンコ(東京都・28歳)

この作品を読む

■いわしげ孝先生
食と謎の少女に狙いを絞った点は秀逸。ただし少女の存在が謎すぎて、男もOLもなぜ疑問を持たないのかが気になり、読み進めることに集中できなかった。
■黒丸先生
オムニバス作品なため、一本目ではよくわからなかったものの、二本目で話が見えてきました。なんと言ってもキャラクターの表情がすばらしい。うっとり見とれてしまうようなコマがたくさんありました。絵がうまいのに加えて「女の子がかわいい」というのはとても強い武器だと思います。ダイナミックな決めゴマと、その他の普通のコマのパワーバランスもうまくとれていて、まさしく食べるだけの話なのに盛り上がりがあるのはすごいと思います。この女の子で、もう2〜3本「食べるだけ」の話を見たいですね。ストーリーを作る力の真価が問われるのは、それからかもしれません。
■乃木坂太郎先生
絵は抜群に上手いです! 女の子は可愛いし、食事をフェティッシュに描くという狙いも十分成功していると思います。余計なウンチクは入れずに全て絵で語っているところに、作者への画面への強いこだわりがありますね。ただニンジンは少し判別しづらかったかな。第1話の最重要モチーフなのだから、質感の描き分けはもちろんですが、カレーの中のニンジンに自然に目がいくような工夫が欲しかったです。アラ探しっぽくてすいません。内容は本当に食べるだけですね(笑) 食べる姿勢は生きる姿勢に通ずる、みたいな部分もありますが、それを16ページのオムニバスで繰り返されても飽きてしまうかな、と。描写に徹した作品で目をひきたいという賞向けの戦略ならアリかもですが。
■山本おさむ先生
「たべる」ことで何を表現しようとしているのか。また、このキャラ設定で何を伝えたいのか分かりにくい。露骨に説明するのはイヤなのかもしれないが、「設定」は読者と作者が共有する前提条件なのだから、適度な説明は必要です。「食べる」シーンは上手に描けてます。ネームを磨けば成長すると思います。
■高橋しん先生
絵がとても上手い人です。線に魅力があります。キャラクターにも愛情を持って描いているのが伝わってきて、読者さんの貴重な時間を使ってもらってでも、どうか読んで欲しいという作者としての最初の礼儀をちゃんとクリアしています。タイトルおよびテーマも気が利いています。今後、食べるだけの人がどんなところへ行って「たべるダケ」してくれるのか楽しみになります。また、短編を作品として成立させられる才能は貴重なものなので、是非自信を持って伸ばしていってください。ひとつ、せっかくいい作品なので。今後雑誌に載る為の作品は見開き単位で、もう少しリズムを取ってみてください。見開きの頭とお尻、ページの頭とお尻が、引きにも導入にも読者さんをハッとさせるコマにもなっていない部分がわりと多くてもったいなかったです。以下、細かいですが個人的な好みで。1話目:2ページ目の初登場の女の子、カレーセットだけだとせっかく美味しいカレーを作るのにさみしいので、主人公が買いそびれたお肉をわかりやすく、野菜も丸ごとの美味しさとインパクトを出して持っていってほしかった。オチのコマ、テーブルが、主人公部分のテーブルまで全部きれいになっていたのは、ミスなのか演出上の何かなのかはわかりませんでしたが、「たべるダケ」の設定通りに女の子がいた周り「だけ」きれいになっていた感が薄くなっていたのは残念でした。2話目:主人公の「私らしく生きるのー」フットワーク、ほれました。女の子の決めセリフ、「きれいね。」の上から目線ではなく、「きれい。」くらいに押さえても良かった。好みの問題ですいません。ラストの主人公の「モノローグ〜言葉」も読者さんを信じてもう少し押さえても十分読者さんに伝わると思います。あと、評価には考慮してませんが、立派なキンメ二尾、半額でも結構高いのによく思い切りましたね。主人公さん、いい人だ。

佳作

『哀獣スカポンタス』柴咲靖日郎(東京都・30歳)

この作品を読む

■いわしげ孝先生
しっかり者の女が、さえない少年に興味を持つ動機が弱い。だから女が少年に近づいていく箇所に無理を感ずる。少年の造形は笑える。
■黒丸先生
コメディ作品。そのせいと思いたくないですが、読後に何も残らなかった。むしろ主人公の女性キャラクターが面白く好感が持てるだけに、ちょっと後味が悪かったです。オチも途中で読めてしまいました。絵はこなれていて見やすいです。
■乃木坂太郎先生
良い意味でくだらなくて面白かったです。何気に絵がうまい! 鬼塚未亡人のジミでちょっとずれた魅力がよく描けていますね!! ちょっとおバカな登場人物たち(犬やカラスもいい!!)を、多少の哀感をこめて描けるバランス感覚は見事だと思います。地図の小ネタも面白い! 個人的にヒロインがツボなので、このキャラ、この町の世界観でもう一本見てみたいと思いました。
■山本おさむ先生
各エピソードが並列的に配置されているだけなので、ページを使ったわりに内容が進展しない。主人公も彼女も「こういう人だった」と読者に知らせた後にこそ、作者が描くべきドラマがあるのでは… 「巨大で錆び付いたボルト」について、もう少し語ってほしいところです。
■高橋しん先生
人物背景ともに最後まできれいに丁寧に描かれていたので読みやすかったです。個人的なことですが、奥さんが好みです。絵が丁寧に描かれている分、作品の密度が薄めに感じました。30ページ使うのであれば、このオチでラストまで行かれると、ちょっとさみしいです。オチありきのストーリーを読者さんに何十ページも付き合って頂くのであれば、今より密度を濃くする、オチを強くする、ページを削って相対的な密度を上げるなど、もう少し読者さんに読んで頂くということに対して努力ができると思います。ネームの時にページ・コマごとに読んでいる読者さんの顔を思い浮かべつつ、読ませたい、飽きさせたくない、次のページは飛ばさずに読んでもらいたい、そのコマはもっと時間をかけて読んで、等々、頭の中のバーチャル読者さんに訴えつつ頑張ってみると、作品の密度や空気が今より前に進めるかもしれません。個人的には奥さんが好みの感じだったので、ラストの学生さんの美人評価には納得がいきませんでしたが、もちろん作品には考慮していません。同時に「何故いつもスカートじゃないんだ」にはとっても同意ですが、やはり考慮していません。

佳作

『ハナサキ』トミイハル(千葉県・16歳)

この作品を読む

■いわしげ孝先生
先輩と少女のつかず離れずの距離感は良いのだが、もう少しお互いの感情や抱えてる運命に踏み込めばラストの涙も、より活きるのに。リリカルな繊細さは買えます。
■黒丸先生
悩む思春期の少女が我が身を憐れみ、世の中や他人をシニカルに眺める様子がリアルに描かれていました。少女と先輩、2人の心情を描くバランスが巧みだったと思います。16歳でこの構成力は素晴らしい。絵はいい感じですが、もっともっと伸びると思います。「このコマはきっと素敵な表情が入るんだろうな(作者には見えているんだろうな)」、と感じるコマが随所に見られました。気合いを入れるべき決めゴマと、ある程度力を抜いてもいいコマを選択し、「ここ!」というコマには120%の思いをぶつけて描いた時、きっとさらに心に訴えるものは出てくると思います。年齢を含めての点数にしました。今後が楽しみです。
■乃木坂太郎先生
キャラに自然な表情と仕草をさせる画力は16歳とは思えません! モチーフの「髪」が上手に描けていて、ちゃんと芝居をしています。すばらしい! 物語は少々予定調和すぎるかな? 最初の2、3ページを読んだだけでラストまで見透せてしまいました。ありがちなプロットを手堅くまとめる力があるという言い方もできなくはないですが、ちょっと残念です。優等生すぎですね。しかし思春期の焦燥感、将来の不安は伝わってくるので、十分作者自身の作品にはなっていると思います。将来に期待大!ですね。
■山本おさむ先生
先輩の「髪」の設定(非現実的・抽象的)と「美容師」を目指す主人公(現実的)の設定が最後までなじまない。逆に言うと、作品の中で先輩を死なせなければ主人公は「美容師」を目指せないのだろうかと疑問に思ってしまう。主人公の悩みをもっと掘り下げて抽象化しなければ、先輩の死とつり合わないと思われる。
■高橋しん先生
いい表情、いい表現の絵がたくさんあります。どんどん描いて、魅力的な部分を伸ばしていって下さい。今の時期は「いい絵」をより伸ばしていくのが一番大事な時期と思いますが、できれば漫画の基本的な部分にも気をつかってみてください。漫画の基本は読者さんの視線を常に気にすることです。例えば、リアルで初対面の人に「自分がこれだけは伝えたい」ということを話すとしたら。その時にどんな風に話したら、まず最初に聞いてもらえるか、続きに興味を持ってもらえるか、飽きられないか、最後まで聞いてもらえるか、伝えたいことを誤解無く伝えられるか、そして本当に伝えたいことのほんの少しでもいいから共感してもらえるか、ドキドキしながら、恐れながら、思いっきり、時に声を潜め、すこし大声を出し、相手の目をそらさないで、表情を読んで、飽きられそうになったら盛り上げ、感じてないようだったら話の仕方や流れを変え、補足し、伝えたいことのためになら、誇張や、いい意味の嘘も恐れずに、頑張って話をするでしょう。そのことをネームの時に、作画の時に、賢明に頭で想像し思い描いてください。漫画は残念ながらリアルタイムで読者さんの反応をパフォーマンスに反映できないメディアです。想像の読者さんとできるだけリアルに向き合って頑張るしかありません。そういう意味で、この作品で一番気になったところ。「先輩」の髪の毛が短くなることが寿命を表していることは、主人公以外、全ての読者さんはみな気づいていることです。主人公がお葬式の時まで気づいていなかったことの方が、読者さんにはショックかもしれません。読者さんにとっては、4ページ目の「不思議な髪」の設定が出てきたところで先輩の体調が悪いことに結びつけて、オチを想定してしまうでしょう。読者さんにオチを想定させるのは悪いことではありません。むしろ読み続けるモチベーションにつなげることもできるし、それをひっくり返すことだって、テーマによっては可能です。要は読者さんの気持ちを考え想像し、読者さんが分かっているだろうこと、わかっていないだろうことを前提に、だからこそぐっと来るシーンや、絵や、ストーリーや言葉たちに今よりもっともっと気をつかうことで、そこで初めて漫画の一番基本的な部分をクリアすることになります。

佳作

『白い鴉』松井俊一(東京都・29歳)

この作品を読む

■いわしげ孝先生
少女が背負っているバックボーンにもう少し踏み込んでほしかった。自ら喋るキャラではないので、例えば村人の噂話とかで表現することは可能なはず。少女の熾烈なバックボーンがあって、初めてラストの残虐さも活きるのでは。
■黒丸先生
うーん、これは…かなり惜しい気がした作品でした。絵柄は今風で安土桃山の雰囲気には合わないが、丁寧だし上手だと思います。構図も工夫されていて、漫画らしいダイナミックさがありました。物語の構成は基本に忠実で読みやすい。キャラクターも立っていて、ストーリー自体も途中までは良かった。ただラストのオチが…個人的には良くなかったと思います。こういうハードで不条理な結末の物語は実際に存在するし、中には面白いものもたくさんあります。ただ、そういう作品に共通するのは、主人公に一種の「愚かさ」があり、最後にひどい目に遭うことを読者も少し期待している…という点だと思います。それを踏まえて考えると、この作品の主人公とヒロインはキャラクターが立っており、十分読者に愛される素質を持っている。そのため、ただ後味の悪さが残る話になってしまったと思います。個性的で愛されるキャラクターを作れるというのは、何ものにも代え難い大きな武器です。せっかく魅力的なキャラクターが作れるのだから、安易な不幸オチに流れるのはもったいない。ストーリーに無理矢理キャラを乗せるのではなく、キャラがストーリーを動かすくらいのものが見てみたいです。
■乃木坂太郎先生
嫌みのない絵柄で画面が見やすいですね。コマ運びもスムーズで、ひっかかりなく読めました。絵的に随分手慣れてると思いました。ただ絵柄に少女なのか線の細い少年なのか、第一印象ではわからなかったです。ストーリーは現代人そのものの甘い思考をする主人公に、最初から最後まで違和感を感じました。少女や村人の考え方の方がはるかに現実的で、「群れ」というものに馴染めない主人公の孤独がどこから来るものなのか、説得力を持ちえていません。タイトルにある白い鴉とは、むしろ主人公ではないでしょうか。彼は自分が白いつもりでいるだけで、少女と群れたがっているだけの鴉そのものだと感じましたが、それが作者の狙いではないでしょう。もっと鴉の意味を掘り下げて欲しかったです。
■山本おさむ先生
ネーム(セリフ、ナレーション、モノローグ)が全部ストーリーの説明になってしまっている。考えたストーリーの中から「見せ場」を探して下さい。娘と出会った後、飯を食う、刀を売りに行くという展開では「見せ場」なし。また、娘を犯すところや百姓との活劇は「見せ場」なのに説明的になっている。そのあたりをチェックできればグッと点数は上がる。
■高橋しん先生
絵はもうプロで十分行けるレベルです。ページの構成も入りと引きがきれいに出来ていて、読みやすく最後まで読むことができました。小さな気になる部分は、まず「山奥」が山奥らしくないところでしょうか。四国の山奥に迷い込んだことがありますが、生き物として戦慄する迫力があったことを今でも憶えています。少女のことを最初少年だと思ってました、ごめんなさい。少女とはいえ、怯えたどり着いた落ち武者が、今脅したばかりの者(刀を持つことも容易に想像できる)に背を向けて飯を食う描写は、緊張感をスポイルさせ個人的に残念でした。絵もストーリーも一定のレベルに達していますので、せっかくなのでこの辺で作品をより生きた物にするということを掘り下げてみてはどうでしょうか。例えば絵が達者な人によくあるのですが、手癖で何でも描けてしまう。モブの人物1人でも、せめてセリフのある者はその辺に転がってる写真を見るなどして、イメージに合う「じじい」を探してみる。手癖で簡単にじじいは描けるのですが、プロになっていくと今後何人ものじじいを描いていくことになります。じじいに限らず、森、山、小道具、道ばたの植物のディテールさえ、そのストーリーや場所の空気を読者さんに伝える大事な素材となり得ます。ひと手間を惜しまないことで作品にさらに広がりが出るので試してみてはどうでしょう。また、誰に読ませたいのかということを、もう一度考えてみるのもいいかもしれません。この作品で、いいものとして表されていない「鴉」は主人公以外の一般大衆のことを表しており、それは、私もそうです。が、ほとんどの読者さんの立場のことでもあります。貴重な時間とお金を使って作品を読んでくださる読者さんに対して「鴉」だと投げかけるのであれば、例えば決していい存在ではないけれども、愚かだけれども、それでも時に残酷にも狡猾にも必死で生きている、というテーマの部分をもう少し強調するとか、一般論としてのイメージの大衆より、もっと性(サガ)の部分に深く掘り下げてみるなり、少女の鴉である部分を、他の鴉と一線を画すほど鮮烈に描いてみるなり、読者さんがそれでもこの作品を読む価値があったと感じさせる努力を「あと一歩」してみることより作品が生きた物になる気がします。

佳作

『パーフェクトの形。』ワカサ・ショウ(埼玉県・25歳)

この作品を読む

■いわしげ孝先生
全作品の中で絵は一番こなれている。少女のいじめによるストレスが自分の栄養素ってくだりは面白いけど、ストーリーが予定調和で平板な印象。
■黒丸先生
これはいろいろと評価が難しい作品でした。まずいい点は、絵が安定して上手いこと。ただ安定しているがゆえに盛り上がりに欠ける印象もありました。コマの構成をもっと大胆にし、大事な決めゴマとそれ以外のコマの区別をつけると、さらによくなるのでは。ストーリーに関しては何の漫画なのか最後の最後まで分からなかったことが残念です。スポ根なのか、サラリーマンものなのか、恋愛ものなのかギャグなのか… 主人公が過去のトラウマに触れられてキレるシーンをギャグタッチで描くのは、これがシリアスな漫画なら「逃げ」だと思います。ボウリングというスポーツを取り上げたのは意欲的だと思いますが、「仕事に行き詰まる主人公に、変化を与えるもの」としての使い方は、やや方程式くさかったかな? 「作者の伝えたいこと」が物語のラスト=「結論」になってしまった結果、(言い方は悪いですが)働く男の自己啓発ハウツー漫画のような印象を持ちました。あくまで重要なのはキャラクターと物語。読者に考える余地を残し、物語重視で話を作ってみてほしいです。テーマは大事ですが、それはあくまでも根底に流れるもの。表面的には匂い立つ程度に…というふうに描くほうが、読者の心には残るものだと思います。
■乃木坂太郎先生
ペンタッチや仕上げがキレイですね。画面に安定感があって良いと思います! しかしコマの中で何が起きているのかわかりづらいです。誰が何をしているのか、登場人物の位置関係(これが特にわからない)、そのコマで何を見せたいのかを、もっとしっかり捉えて欲しいです。手癖で画面を作りすぎです。キャラとストーリーには説得力が足りないです。主人公と少女、どちらかにも感情移入できずテーマに到るまでを主人公のモノローグに頼るのは強引すぎと思いました。エキセントリックなキャラ2人だけでは、ボケ2人の漫才のように登場人物の魅力を引き出せません。あとラストは尻切れすぎ、テーマをセリフだけでまくし立てて無理矢理32ページに合わせた印象です。
■山本おさむ先生
シリアスなのかギャグなのか、判断に苦しむが、「ボウリング人生訓」をやるのなら、思い切ってギャグにしたほうが良かったのでは… 半年ぐらいは絵を描かなくていいから、ネームをたくさん作って、自分の方向性を探してみてはどうでしょう。
■高橋しん先生
絵の質はもうプロの域ですので十分いけています。ページ全部にわたって、手を抜かず、読者さんの為にもとても丁寧に描かれていることが伝わってきて、うれしく思います。ストーリーは今回は連載漫画の第一話という感じの構成ですので、些末な部分は評価には考慮しません。全体に絵が丁寧なこともあって、大事なコマと普通のコマとのメリハリが無難になってしまっているのはもったいないと思います。作者さんの「自分はこのコマを見せたいんだ」「読者さんはこのコマを見たいはずだ」を、もっともっと見たいと思いました。例えばヒロインの「最初の一投目」なんかは、そのシーンのためにこの漫画を付き合ってくれてる人がいると思うのですが、「どっちが勝っているかをちょっと引っ張る」演出の為に省略されてしまいました。最初のヒロインが登場した時までの展開で、主人公がボーリングでヒロインにコテンパンにされて、それまでの価値観を変化させていくという筋は読者さんの想定に入っていると思いますので、小さな驚きに固執せず大きく読者さんを嬉しい驚きに導くことを、もう一歩でも考えていって下さい。リアルで友人と会話を楽しんでいる時に、小さなオチしかない話をもったいぶって引っ張ったりすると、かえってがっかりされる、あれです。主人公がボーリングをやっていたことを中盤まで隠しておく、主人公とヒロインの対決どっちが「一方的か」2ページくらい引っ張る、等の小さな驚きより、大きい驚きを優先した方が、絵の魅力を頑張って押し出した方が、一読者として楽しく思います。せっかくの丁寧で美しい絵、是非自信を持ってその先へと生かしてあげて下さい。あと、些細なことでごめんなさい。なんでトビラの絵がお墓なんでしょう?