第75回

新人コミック大賞 発表

青年部門


大賞

『猫夏』菅原亮きん(東京都・34歳)

この作品を読む

■花沢健吾先生
絵の雰囲気は好き。女子の魅力がもっと欲しい。この手の雰囲気マンガに重要なのは女子の魅力。
■太田垣康男先生
個性的な絵と演出に愛嬌があり、今回の応募作の中で一番好きになった作品。猫も人物も表情豊かで非常に良い。物語から作者の優しい心情も伝わり、最後はホロリとさせられた。
■浅野いにお先生
好みの作品でした。ふたつの時間軸が同時進行する構成ですが、読み辛さもなく、丁寧な作りだと思います。絵柄、演出ともに雰囲気があって良いと思います。ただ、雰囲気というのは好きな人は好きになってくれますが、合わない人には余計なものでしかないので、商業でやる以上、その独特な雰囲気がネックになることもあります。作風を貫き通すつもりならその覚悟を。マスに受け入れられたいならストーリーで工夫を。あと猫があまり可愛くありませんでした。二次元が三次元に負けちゃいけません。
■石塚真一先生
天才だと思います。ファンレターの中に肌に触れるようなリアリティがある。僕はまたあなたの漫画が読みたい。
■業田良家先生
一瞥すると稚拙で癖のある絵にしか見えないが、猫が登場してからは詩的で魅力的な絵に感じ出した。難しい設定に読者を笑わせながら引き込む。いつの間にか評者も猫目線に憑依させられた。猫に対する愛情、猫同志の友情、そして主人公と女の子の関係、それぞれが心に沁みて静かな感動があった。読み終わるととても好きな絵になっていた。

入選

『とわの浦』黒江ゆき(東京都・30歳)

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■花沢健吾先生
画力、構成力、全てプロレベル。あえて言うなら主人公達の魅力がもっと欲しい。プロになった時、重要なのは絵のうまさよりキャラの魅力で勝負することになります。
■太田垣康男先生
幻想的な絵を高い技術で描きあげた画力は素晴らしい。人物の造形も美しく申し分ない。好みの問題だが個人的にはもう少し作品の随所に「狂気」が伝わる演出が欲しかった。
■浅野いにお先生
途中の展開に無理を感じましたが、基本的には読みやすく、まとまっていました。優等生的な作品なので何をどう言っていいのかわからないのですが、強いて言うならばもっと絵に凄みが欲しかったです。トーンワークは達者なのですが、あまりに淡白すぎます。そのせいか、あらすじに対してページ数が多すぎる印象を持ってしまったので、絵、ストーリーともに密度を上げてほしいです。
■石塚真一先生
オープニングからラストまで唸るような丁寧な絵の連続。凄いなあ…。モチーフも話の運びも玄人を感じます。
■業田良家先生
美しい絵だ。背景や光の表現に何度も感心した。「美」や「永遠」「完璧」など抽象的なテーマに挑戦し、それに相応しいイメージをちゃんと絵にしている。そこがすごい。結末では読者に解釈を完全に任せているが、もう少し作者が答えを狭めた後で読者に手渡すべきだと思う。

入選

『Old West』前田千明(大阪府・27歳)

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■花沢健吾先生
画力、構成力高い。登場人物に魅力が足りない。静かなストーリーにこそキャラの魅力が重要になる。
■太田垣康男先生
珍しく西部劇で応募してきた点と、素晴らしい心象風景の数々には高い将来性を感じた。画面の細部までこだわった描写が最後まで西部劇の世界観を支え、物語を伝える力になっている。
■浅野いにお先生
実力を感じる良い作品でした。今回の作品とは別のジャンルや違う舞台設定でも同様に時代考証を経て作品を作れる方なのであれば、幅広い作品を期待出来ます。ただ時代物は人間関係や状況が伝わりづらいので注意を。あとコマ割りが細かいので煩雑な印象を受けました。絵が描ける方なので、数コマ分を圧縮して一つの大ゴマにまとめた方がよいのでは。自由への憧れは普遍的なテーマだとは思うのですが、キャラの内面や葛藤を描くより、折角の力強い絵柄なのでもっとシンプルに「動き」「格好良さ」を追求したほうが漫画映えすると思います。
■石塚真一先生
大きな絵、ひとつのシーンに向かっていくストーリーはやはりいいモノですね。時代、風景、服装等しっかり描き込んでいる。ナイスジョブ ! !
■業田良家先生
絵が達者で描線も魅力的。最後の馬が駆け抜けるシーンの描写も見事。ただ 40 ページもあるのだから、もっと大きな事件を起こしてほしかった。ストーリーが素直に流れていくだけの感じがして少し残念。

佳作

『俺のダチはふうけもん』伊藤和良(神奈川県・27歳)

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■花沢健吾先生
内容は非常によくある話。この手の話にはリアルなディティールが必要で、更にキャラクターが魅力的でないと難しい。この作品にはどちらも無かった。
■太田垣康男先生
人物の表情は豊かで画面も見やすいが、主人公がただの傍観者でネタも古かったのは残念。良いシナリオに恵まれれば将来性は充分。
■浅野いにお先生
ほとんどが二人のやりとりで進行してゆくのにもかかわらず、会話のテンポが良いのでだれずに最後まで読めました。物語の構成は単純なので、せっかく車の長距離移動展開があるのならば、もう少し風景描写等を挟んだりして会話以外の部分も丁寧に描いてほしかったです。二人の関係性を強調するエピソードがあったらいいなと思いました。物語と閉め方に関してですが、うだつの上がらない学生ものは、あらゆる新人作家が描き倒してきたモチーフなので、もっと工夫しましょう。
■石塚真一先生
雰囲気の良い肌感のあるお話でした。キャラクターの心境や個々のキャラの持ち味のさらなる追求に期待します。
■業田良家先生
面白かった。主人公二人の会話がテンポ良くユーモラスで楽しい。絵が特別巧いとは言えないが登場人物のキャラクターや感情がちゃんと表現できているので OK。自然な流れの中でいくつもの伏線を張り、最後には意外な形で結末をつけている。ストーリーもネームも巧い。

佳作

『夢に生きる』大槻一閑人(東京都・30歳)

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■花沢健吾先生
絵はうまい。話もまとまっている。ラストも良いと思う。しかし、新人の段階で漫画家ネタをやるのはどうかと思った。漫画家マンガ無数にあるわけで、必然的にそれらと比べることになるが、新しい要素はなかった。
■太田垣康男先生
悩む主人公を突き離して描く姿勢は好感が持てる。 2 回 3 回とひねったオチも良く練られていて秀逸。ただ、華のある熱血漢風の人物が描けているだけに、今回のネタでは物語と配役が合っていない印象が。
■浅野いにお先生
物語、画力、構成が非常に高いレベルでまとまっています。最後のモノローグも気が利いていてよかったです。僕は主人公の「夢を追う熱いキャラ」を好きにはなれませんが、人物の内面よりもストーリーテリングで見せたいのならば、この類型的なキャラで正解なのでしょう。キャラ造形や演出はかなり型にはまっているので、もう少し特徴を持たせるか、もしくは今回の作品のような腑に落ちる話をコンスタントに描けるようアイディアを溜めてください。いや、やっぱり殻を破りましょう、せっかく基本的な技術は備わっているのだから。
■石塚真一先生
人物、そして表情が豊かです。キャラクター創りに工夫を加えれば、ストーリー展開うんぬんでない、キャラクター漫画が描ける人だと思いました。
■業田良家先生
題名からしても中国の古典「胡蝶の夢」の現代版なのでしょう。どちらが現実なのか夢なのか分からなくなった状態が破綻することなく上手に描かれている。それだけに最後のオチはもうひと捻りほしい。主人公の顔が他の人気漫画家の描く顔に似ている点も残念。「夢破れて、妻子あり」は名言だ。

佳作

『喫茶店にて』船木涼介(神奈川県・24歳)

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■花沢健吾先生
喫茶店の造形をもう少しストーリーに合わせた雰囲気(古めかしい洋館風)にするとか、逆にファミレスにして明るい空間に幽霊がいることのギャップで読ませるべき。主人公達のいる背景にも気を使う必要がある。
■太田垣康男先生
コメディなのか泣かせ話なのか、物語の方向性が曖昧。主人公がただ見ているだけでなくもっと物語に関わっていれば方向性も定まり、様々な展開を描けたかも。
■浅野いにお先生
最初はああ幽霊ものかー、と思っていたのですが中盤の見開きで印象ががらっと変わりました。すばらしい見開きでした。タイミングも意表をつかれました。でも惜しい、非常に惜しいです。幽霊設定はどうしてもご都合展開になってしまうのですが、この作品も例に漏れず。主人公も取って付けたような感じになってしまっているのが残念です。ですが乾いたテンションや JK らしいセリフには確固たる雰囲気を感じたので、今後もそれを失わないようにしてほしいです。ストーリーの整合性、必然性、読者を納得させるリアリティを意識してください。
■石塚真一先生
構図、ストーリーともにこだわっていると思います。大きな絵も良かった。全身の絵がもう少しあると心情表現も厚みが出る気がします。
■業田良家先生
幽霊の女子高生が喧嘩した友達に誤りに来るという設定は面白くなりそうでいいのだが、登場人物になかなか感情移入ができない。そこにもっと工夫が必要だ。

佳作

『SFおもちゃ箱』アトリエきよし(福岡県・40歳)

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■花沢健吾先生
ギャグセンスが自分の好みだったので楽しめた。後半パワーダウンした感じがあり、たたみかける面白さが良かった。ギャグマンガ家は少なくなっている(?)のでがんばって欲しい。
■太田垣康男先生
ラジオの投稿ネタを思わせるキレのいい連作ギャグで面白く読めた。絵も適度に下手な所が魅力的。
■浅野いにお先生
画力など技術面でのつたなさがあまりに目に付きすぎます。この絵柄が作品のおとぼけギャグに一役買っている一要素だとしても、つたなさのために読みづらい箇所や損をしている部分もありました。肝心のギャグに関して言えば、正直古く感じます。所々面白い所はあるのですが、数多ある会話形式のコント風ギャグ漫画の範疇を出ていません。お笑い要素は日進月歩でめまぐるしい早さで消化、変化していくので、これからギャグ作家を目指すのであれば最先端か異端を目指してください。
■石塚真一先生
手の込んだ絵にサラッと生活感あるギャグが描かれていて好感でした。おもしろい。細部へのこだわりに作者の想いを感じました。
■業田良家先生
笑いました。それぞれのギャグがアイディアも良く、ネームも巧い。作者の絵の持ち味と笑いがよく合っている。ギャグマンガは笑えればそれで合格です。