第77回

新人コミック大賞 発表

青年部門


佳作

『さようなら魔法少女』結先うみ(愛知県・30歳)

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■花沢健吾先生
設定は面白いと思った。30 歳の魔法少女とか切り口は良いので、更に独自の世界観を見てみたかった。感情の起伏も淡々としていて青年誌的といえるが低めのテンションのまま終わって余韻も残らなかった。
■太田垣康男先生
青春と訣別する主人公が作者自身の投影ならば、この作品は単なる「卒業の思い出」です。漫画の新人賞に投稿する以上は、まだ諦めない、まだ足掻き続ける、というメッセージがあって然るべきでしょう。
■浅野いにお先生
読み始めは背景が若干雑に感じましたが、人物の描写がよかったため中盤以降は気にならず、明快なコンセプトで作られた話なので解りやすく、且つ、面白かったです。ただ、確立されたあるジャンル(この作品でいうと魔法少女もの)の「あるある」を逆手に取ったストーリー展開というのは、自分も同じようなコンセプトの連載をしていて言うのもアレなんですが、正直もういいんじゃないかな、と思いました。実力はあると思うので、次の作品に期待します。
■石塚真一先生
作者の中にある生活感がしっかりした柱となって物語を支えていると感じました。共感を得られるだけの経験を積んできた作者なのでしょう。今後も共感を武器にGO!! GO!!
■業田良家先生
敵である妖魔を全て倒した後の魔法少女たちは何を目標にして生きていけばいいのか。愉快でなおかつ深いテーマを持ったこの設定を通して、日常に生きる我々の悩みや揺れる感情が上手に表現されている。読者が自分の問題として物語に入っていけるのだ。ただ、せっかくの魔法少女なのだからコスチュームや武器も丁寧に描いてほしかった。ラストの川が光っているというシーンもちゃんと輝いているように描かれていない。話は面白かった。

佳作

『たとえ世界が明日終わるとしても』

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■花沢健吾先生
松本大洋先生の影響を強く受けているのだろうか。すぐれた作家の影響を受けるのは新人時代決して悪いことではないが、しかし読者は「松本大洋」的な作品を読みたいだろうか? 読者が読みたいのは「松本大洋」本人の作品だ。センスは良いと思うので、早く「〜」的を脱し、自分のスタイルを確立するべきだ。
■太田垣康男先生
新人がメジャー作家の絵を模倣するのは作家への階段の第一歩。22 歳の若さでここまで模倣できるのは潜在能力の高さを現していると思う。隅々まで描き込んだ絵には静かな情熱が宿り、抑えた演出と抑えた演技が震災の切なさを行間から溢れされる。彼が独自の絵を作り出せる日が来る事を切に願う。
■浅野いにお先生
絵、物語、雰囲気、すべての要素で及第点を楽々と超えているハイクオリティ作品です。ただ、あまりにも松本大洋さんの影響が色濃く出すぎていますので、正直判断に困りました。何かに影響を受けて物を作るのは当然ですが、僕は作品を読むとき、作者の人間性を想像したうえで、それを加味した形で作品を判断します。この作品からは「大洋さんに影響を受けている」という印象が強すぎて、それ以外のことが感じられませんでした。オリジナリティ云々と野暮なことは言いたくないんですが、もう少しあなたのことを教えてください。震災をテーマにした物語が良かっただけにとても勿体ない。
■石塚真一先生
有機的で暖かい絵の連続でした。人物の表情も実に豊かで存在感があります。画面の引き、寄り、アングルも自由自在。かつ読みやすい。気持ちいい漫画は気持ちいいですね。
■業田良家先生
一読して強く心が動かされた。震災によって両親を、故郷を、そして日常を奪われた主人公の悲しみがひしひしと伝わってきた。涙のシーンがひとつもないのに深い悲しさを表す力量に唸る。ラストの主人公が新しい一歩を踏み出す姿にも心を打たれた。ただ、たったひとつ欠点がある。某天才漫画家の絵にそっくりだというところだ。他の誰にも似ていない自分だけの絵を掴んでほしい。この作者ならできると思う。でも改めて言う。素晴らしい作品だった。

佳作

『電気羊とニュー・ロマンス』

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■花沢健吾先生
ポップな背景とキャラのバランスが悪いと思った。キャラのノリも軽すぎてシリアスなシーンも感情移入できなかった。コマ割りなど整理して読みやすさをもっと意識して欲しい。自分自身が楽しく描くのは当然ですが、読者にもその楽しさが伝わるように努力しよう。
■太田垣康男先生
笑いのツボは様々だから、と独自の路線をいくのは簡単でしょう。シュールで笑えないモノも「それが味」と開き直るのは簡単です。しかし、それが作者の自己満足か否か、は良く考える必要があると思います。
■浅野いにお先生
大変面白かった。以前も最終選考に残っていた方?かと思うんですが、前作よりかなり読みやすくなり、ハチャメチャすぎる作風をある程度読者の目線まで下げて描かれているように思えました。独特なキャラのウザさもギリギリのラインで「かわいげ」に昇華していると思いますし、アッパーな調子も読み進めるうちにクセになってくる魅力があります。今後も期待しています。
■石塚真一先生
柔軟な作品です。キャラクターを愛おしいと読者に思って欲しいという強い意志を感じました。柔軟な作者だけに、今後の「現実と非現実」「コメディとシリアス」の支点の置き方がキーになるかと…。
■業田良家先生
作者にはユーモアセンスもあるし、最後まで話を読ませる力量は持っていると思う。しかしロボットの恋というテーマはありふれているので、誰も考えたことのない新しいアイディアや設定がないと面白くするのは難しい。

佳作

『メダカ』まえだたかひろ(東京都・22歳)

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■花沢健吾先生
どこに向かっていくのかわからないストーリー。しかし、決して面白い方向に向かっていないのが残念。コメディとギャグの違いが僕もわからないが、正直、笑えなかった。しかし、漫画で笑いを取るのはかなり難易度が高いことなので、めげずにがんばって欲しい。
■太田垣康男先生
コメディ漫画としての言葉の選び方は上手いが、コマ割りの緩急がなく画面が一本調子なのが残念。大ゴマとロングショットの使い方の基本を学び、テクニック面が向上すれば漫画家デビューは近いだろう。頑張って!
■浅野いにお先生
ミュージシャンと年金というモチーフはあまり噛み合ってるとは思えず、構成もたどたどしいので、話がどこに向かっているのかわからないまま特に山場もなく、唐突に話が終わった印象です。読み切り作品として成立していない気がします。雑誌連載に向けてのギャグ漫画コンペ応募作だとすればまた評価もかわるかもしれませんが、だとすれば共感できるキャラ作りを心掛け、ギャグの精度を磨いてください。
■石塚真一先生
しっかりしたキャラの描き分けと、序盤で登場人物の全身の絵が何度も入っているのが効いてます。読みやすかった。背景も力一杯入ってます。話もオチも「え? そこ?」と思わせてくれました。ナイス!!
■業田良家先生
笑いのセンスはあるし何か所かでクスリと笑った。だけどやはりどこかで見たことのある笑わせ方ではある。だれも見たことのない新しい笑いを目指してほしい。言うのは簡単ではあるけど…。