第80回

新人コミック大賞 発表

青年部門


入選

『君を知ること』山中拓郎 22歳・静岡県

■花沢健吾先生
ありがちなストーリーだと思ったら、宇宙人が彼女を寝取ったり、そう来たかと唸るところがあって最後まで楽しめた。最後のオチは悪くないけど、もうひと捻りあると良かった。
■太田垣康男先生
軽妙なストーリーに対して絵柄が硬く、表情と演技に幅がないのが難点。
■浅野いにお先生
設定はありきたりでしたが、物語は破綻なくしっかりしていました。それが故に絵やコマ運びにメリハリがなく単調な印象を与えてしまっています。見せゴマはもっと大きく、場面転換はページのめくりに配置する等、テンポを意識した工夫が欲しかったです。それと設定自体ありえない漫画的なワンダーであって、現状描かれているのはあらすじを追うだけのト書きのような状態なので、背景や小物でしっかりと人間の生活感・リアリティーを出す演出が加われば、もっと作品の説得力が増すと思います。
■石塚真一先生
話の展開の良さで読ませる作者だと思いました。テンポに変化をつけるために、大きな絵(シーン)をもう少し取り入れても良いかと思います。
■業田良家先生
ストーリーにちゃんとアイディアがあり、青春の悩みや心情も描かれているので面白い。ただ登場人物の表情に魅力がない。色気がないというか、もっと活き活きとした人物表現を目指してほしい。

入選

『叔父の恋びと』つじ 31歳・東京都

■花沢健吾先生
女性向けの作品に多いのですが、誰のセリフか分からないフキダシが多く混乱する。結婚サギの青年の感情がよく分からなかった。雰囲気重視であとは察してくださいという感じがした。
■太田垣康男先生
人物の豊かな表情と優しい語り口は完成された安定感がある。新人離れした技術とセンスには舌を巻いた。謎を残す終わり方も予定調和を予想していた私を軽く裏切ってくれてシテやられた気分。
■浅野いにお先生
面白かったです。ただ絵柄で読者層はある程度限定されそうです。主人公が色々と物分かりが良すぎる気はしましたが、ストーリーは地に足がついたもので丁寧に考えられており完成されてます。おそらくこの作品の肝であろう情緒や悲哀はきちんと伝わりました。今後はこのテイストから頭一つ抜けた個性を獲得し、更に作風に合った媒体が見つかれば作家として活躍できるのではないでしょうか。
■石塚真一先生
デザイン性の高い絵、アングルやコマの配置も作者独特のモノを感じます。キャラクター達の言動にリアリティーがあるので、さらにシビアな人間関係も描ける作者だと思います。
■業田良家先生
ストーリーも分かりにくいし、登場人物の感情も私には伝わらなかった。もっと読者のことを考えてほしい。

入選

『8畳とプラズマ』大石日々 23歳・東京都

■花沢健吾先生
好感度の高い絵柄と魅力的なストーリーでしたが、物語をもう少し整理して読者に伝えたいことの優先度を明確にするべきです。例えばラストは見開きでオーロラを見てる二人とかにするなど起伏が欲しい。タイトルも微妙で、8畳とは主人公の部屋と推測するが明確にわかる絵が無いのでそこでも無駄に引っかかってしまう。
■太田垣康男先生
起承転結の「承」に殆どのページを費やし、それ以外のパートが疎かになっている。説明で終始しては物語ではないので、構成の段階で気付いて対処出来るようにしよう。
■浅野いにお先生
物語がほとんど部屋の中での会話だけで進行するにも関わらず、最後まで飽きさせない軽妙なセリフ運びはお見事でした。キャラの人格や脇役たちの描写はテンプレ感が強いので新鮮味はありません。人工知能をモチーフとした作品は今となっては珍しくなく、何歩も先を行っている作品が多数あるので、大人に読ませるのならAIが自意識を持った際にどのような社会的影響があるのか等、もっと掘り下げた独自の視点を加えて欲しかったです。
■石塚真一先生
設定に広がりを感じる作品でした。設定が広いだけに感情の置きどころに苦心の跡がうかがえました。登場人物の誰が、何を強く感じるかがキーかもしれません。
■業田良家先生
普通に面白い。23歳でこのレベルの絵とストーリーを描けるのはすごいことだとは思うのだが…。もうひとつ何か突き抜ける個性がほしい。

入選

『TENCHO』川口倖平 22歳・東京都

■花沢健吾先生
かなりの画力でバカをやるのは好感が持てるが、もう少しコンビニならではのネタが入ってくると良かった。出オチで終わっている。もっと突き抜けて欲しい。
■太田垣康男先生
コメディー漫画ほどリズム感が大切。コマ割りもキャラの表情も緩急をもっと意識しないとテンポが悪くなり単調な印象を与えます。店長のキャラ付けもまだまだアイディア不足。
■浅野いにお先生
非常に評価の難しい作品です。作者ご本人は意識されてないのかもしれませんが「坂本ですが?」にそっくりでした。僕が「坂本ですが?」を知らなかったら余裕の満点でした。漫画作りにおいてこのような偶然の一致は度々起こることなのですが、こればかりは早いもん勝ちです。全体的なスキルは超達者なので別の作品を読んでみたいです。個人的には1P目表紙のドラァグ漫画感に一番笑いました。
■石塚真一先生
思い切った主人公がいい。私生活まで見たくなりました。小気味良いテンポ、絵も読みやすい。続きが読みたい。
■業田良家先生
愉快で面白い作品だった。絵が巧く、的確な表現で細かな表情も描き分ける画力があるから、あり得ない場面でもリアリティーが宿る。ギャグでもシリアスでも描ける人だろう。才能を感じた。

入選

『僕はトイレが怖いんです。』浦部はいむ 22歳・大阪府

■花沢健吾先生
絵は非常に魅力的だが少々雑さが目立ち、伝わりづらくなってます。オチもよくあるパターンで引っかかりが弱かった。
■太田垣康男先生
とても怖かったです。妙に温かみのある絵柄とのギャップで、ホラーの怖さが倍増してます。とても背筋が寒くなりました!
■浅野いにお先生
絵柄は好みなのですが、話が理解できませんでした。作者の意図を汲み取って理解することも出来なくはないんですが、いかんせん非現実な話なので、如何様にでも想像できてしまう。つまり説明不足。絵柄もぶっきらぼうなので作者のこのテイストに寄り添おうとするこちらの気持ちが失せてしまいました、この漫画で伝えたいことは何なのか、野暮かもしれませんが、ひと言セリフで説明して欲しかったです。
■石塚真一先生
思い切りの良い線とスタイル。にも関わらず読みやすい。怖い話にマッチングした絵のせいか、キャラクターの感情も分かりやすかった。
■業田良家先生
描線に勢いと自由さがあり、期待したい。作者の内面にも暗く隠されたものを感じるので期待したい。

佳作

『ドリーマー』森 22歳・大阪府

■花沢健吾先生
読後感が爽やかで良い。思い通りになる夢を見る薬の設定も良いが、もうひと捻り欲しい。
■太田垣康男先生
SF 的な要素を押すなら、薬で得た幸福と、その代償を描いて欲しかったし、恋愛ドラマの要素を押すなら、彼女のために主人公が何かしらの行動をする所を見たかった。現状では何もしない主人公のひとり相撲でしかない。
■浅野いにお先生
まず人物の顔の描き分けができていません。絵柄は特徴があるので活かしつつ、しっかり差別化しましょう。ストーリーは素直な作りでキャラの性格も真っ直ぐなので好印象です。しかし「現実で行動しよう」という主題ははっきりしているのですが、それはヒロインが勝手に導き出した答えであって、主人公はそれに何も関わっていないただの傍観者では物語としてカタルシスがありません。雰囲気はある方なので、ストーリー作りの基本を学んで読者が満足する読後感を得られるよう努力してください。
■石塚真一先生
明るい話に元気をもらいました。まっすぐなキャラクター達、悩み方も若々しくストレート。もう少しひねくれたキャラクターも見てみたい。
■業田良家先生
作中の「明晰夢」というアイディアはどんなことでも描けそうな気がするのだが、いざ漫画にしようとすると、夢を表現することの難しさに気がつき挫折することが多い。それでも本作は片思いの切なさを上手に描けているのではないだろうか。ページ数をもっと減らして描く努力を!

佳作

『面影と手土産は実家に置いて』小川小春 25歳・兵庫県

■花沢健吾先生
絵も物語も誠実で好感が持てた。過去の色々な年齢の娘たちが出てくるコマは感動的だが、キメゴマでもあるので何度も出さない方が良いと思う。平面的な絵が多いので次は立体的な絵作りを意識して描いて欲しい。
■太田垣康男先生
私は息子しかいませんが、もし娘を持ってたらこの作品を読んでお父さんに感情移入し号泣してたと思います(苦笑)。幼い頃から少しずつ成長していく娘の描き方に作者の愛情の深さを感じ、そこにもホロリとしました。
■浅野いにお先生
物語に派手さはありませんが作者の優しい視線が印象的な作品でした。作者の方はまだお若いのに随分渋い漫画を描きますね。父親以外のキャラは善意の部分しか描かれていないので、もう少し悪どい部分を追加して人間味を出しても良かったかもです。絵に関しては素朴な味わいはありますがまだまだ稚拙です。人物の顔も現状は記号のモンタージュのようになっているので、まずデッサンを勉強し、自然な表情やしぐさを表現できればもっと真に迫った感情を読者に伝えることができるようになるはずです。話作りのセンスはおいそれと上達はできませんが、絵は向上心さえあればすぐに上達するので頑張って欲しいです。
■石塚真一先生
人生に起こる出来事をていねいに描く。いいですね。作者の気持ちがきちんと込められた作品だと思います。複雑な人の心の現実をさらに追求していって欲しい。
■業田良家先生
娘の結婚と父親の心情は、泣ける話の定番なのだろう。この作品でもぐっと心に来るものがあり泣きそうになった。作者の力量を測るテーマとしても向いているかもしれない。

佳作

『しののめののしめ』明太子 24歳・栃木県

■花沢健吾先生
ひとつひとつのコマを丁寧に描いていて好感はもてるが、ひとり語りが多く、決めゴマが明確でないので、物語のどこに重点を置いているのか分からず、最後までボンヤリ読んでしまった。何を読者に伝えたかったのかも曖昧だった。
■太田垣康男先生
一生懸命に描き込んだ絵に反して、後ろ向きな物語がとても残念。停滞している主人公の言い訳と、都合の良い夢に共感する読者が果たして何人いるだろうか?
■浅野いにお先生
独白が多すぎ、描き込み多すぎ、構図が不自然で読みづらい。第一に主人公がクズのくせに常に格好つけ顔なのが気に入らない。不満を挙げたらきりがないのに最後の1ページでウルっとしてしまいました。夢オチはご法度のはずなのに前半のダラダラ展開も相まって不意打ちでした。これを狙って構成したのならば、かなりのセンスです。次作を期待します。
■石塚真一先生
キャラクターの全身が入る場面を何度も何度もていねいに描いています。とても好感が持てました。キャラクター達の「心の関係性」をもう少し自由に考えても良いかもしれません。
■業田良家先生
人物そして風景に対する細かい描き込みに個性を感じる。最後は夢オチではなく、ちゃんとしたアイディアをひねり出してほしい。アイディアが出せなくて逃げてる感じがする。

佳作

『7次元の宿題』若里実 34歳・東京都

■花沢健吾先生
どういう気持ちで描いて、何を読者に伝えたいのかさっぱり分からない作品でした。ギャグなのだろうか。理解できないものを描くのならもっと突き抜けて欲しい。中途半端な気がする。
■太田垣康男先生
好みの別れる作品だと思いますが、私は全体的に「薄い」と感じました。絵もストーリーも味になる程の軽さが出ていないので、もう少し工夫が必要でしょう。
■浅野いにお先生
WEB やSNS に投稿するならまだしも、このクオリティーで商業一般誌掲載はありえません。腐女子向けに描かれてるのかもしれませんが、腐女子文化に関心がない読者にとっても面白いと思える要素が欲しかったです。
■石塚真一先生
飛んだ設定の作品。飛んだままラストを迎える力技におどろきました。もう少しタメのある笑いも見てみたい。
■業田良家先生
ギャグセンスはある。この内容を半分以下のページ数で描いてほしい。このレベルを量産できるかどうかが大切。