最新の受賞者
第94回発表
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大賞
正賞/賞状・記念盾、副賞/200万円・液晶タブレットまたはスキャナーまたはミラーレス一眼デジタルカメラ・CLIP STUDIO PAINT EX 2デバイスプラン 3年版・受賞作収録本
青年部門
「君がいないと毎日は生きれない」壽久(28歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
ドラマチックに演出したり、カタルシスを得るために仕掛けをしたり、やろうと思えばいくらでも出来るとは思うけど、それを一切しないことがこの物語の正解だと思えるのがすごい。この二人の間に流れる空気が面白く、心地よく、私は好きでした。広くエンタメ性を持たせるなら、ここに第三の人物を入れるかどうかでしょうか。でもこれはこのままでも。難しい…
■太田垣康男先生
抜群に絵がうまい。ここまで心象風景が描ける新人も珍しい。キャラクターのヒリヒリした心の状態が手に取る様にわかる。底から這い上がって掴んだ自由な心も。退職届を一緒に書く、という寄り添い方にも感動した。
■浅野いにお先生
ダイナミックな作風でインパクトがあります。全体のスキルが非常に高いです。コマ割りで読みづらい箇所が多少あるものの、黒多めの絵柄でありながらかなり読みやすく、キャラの心情と表情がきちんとリンクしているので感情がよく伝わります。物語的にはかなりよくまとまっていて、体感的には良い意味で倍ぐらいのページ数に感じました。テルが激変したことに対して主人公がすんなり受け入れてしまうことに若干物足りなさを感じましたが、気持ちのいい読後感で非常に満足感がありました。
■石塚真一先生
最高だね!! 良い!! 登場する二人が同じくらいしっかり描かれています。
心情の切り取り方も、ベタの強い絵の表情もグッときます。
みんなに読んでほしいなあ~…
■業田良家先生
作中に出てくる「リョナラー」という言葉を知りたかったので調べてみて驚いた。自称リョナラーのテルちゃんは肌が真っ黒なお婆さんのような姿で登場する。主人公のユキちゃんの仕事も過酷そうで、現代の若者の苦しみが伝わってくる。私の世代の苦悩とは全然違うと感じる。より絶望的だ。それでも友情や恋愛で立ち直っていく。そこに救いがある。絵的にはベタの使い方が 大胆で美しい。感情表現もうまい。才能を感じた。
入選
正賞/賞状・記念盾、副賞/50万円・液晶タブレットまたはスキャナーまたはミラーレス一眼デジタルカメラ・CLIP STUDIO PAINT EX 1デバイス1年版・受賞作収録本
児童部門
「読書奇譚」紳月士郎(21歳・和歌山県)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
一つ目の怪しい人物は、本の世界への案内人。本がキライな主人公に、本の面白さと魅力を伝える描き方は見事です! 主人公ともっといろいろな本を体験してみたい。
■松本しげのぶ先生
とても面白かった。読んでいて飽きない。次の話を読みたくなった。特に悪人も出さず、終始心地よく読ませるよい漫画。実力を感じました。オチも申し分ないです。
■曽山一寿先生
面白かったです。正確に言うと、後半になるにつれてバツグンに面白くなりました。「本」という珍しいジャンルに挑戦しているのも好印象。フキダシが多いのが残念。
■村瀬範行先生
読んでいてワクワクする作品でした。ただ、後でネタバラシをして驚かせたいという作り方が、若干不親切になっています。また次回作を読みたい作家さんです。
少年部門
「ERICA」南川(21歳・東京都)特別育成金 33万円
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■あだち充先生
少し慣れるだけでメチャクチャ絵が上手くなりそうな人です。自分の伸び代の幅を信じて大きく育って行ってほしい。
■高橋留美子先生
ものすごく面白かった。ヒロインの設定が痛快です。余計な線を省いて画面を見易くしてほしいですが、途中から没頭して読めました。逆に一コマ目の雑さで読んでもらえなくなる可能性もあるので気を付けて。
■青山剛昌先生
面白かった! アクションシーンの絵も上手くて迫力があったんだけど、少々分かりづらかったのが残念。刀をどう振ってどの部位を斬ったかを描いてくれるとスッキリする。あと、冒頭のホウキを買った理由が謎です(笑)
■畑健二郎先生
アクションの描写はかなり頑張っていたと思います。女の子の絵柄もとても可愛く、魅力的でした。漫画の中で描きたいものが明確になっている点も好印象です。可愛い女の子のルックス以外にも、もっと前半に物語を牽引できるエンジンがあればより良かったなと思います。
「コール・フォー・ユーエフオー」出路かし魚(23歳・神奈川県)特別育成金 33万円
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■あだち充先生
いい話をいい話として読ませるためには、もっともっと構図をふくめた絵の勉強を。
■高橋留美子先生
ヒロインがかなりあっさりと男の子の要求をのむんですが…途中で疑問を持った方が読者も男の子の行動に興味が持てると思います。男女の友情物語として、さわやかにまとまってると思います。
■青山剛昌先生
いやぁ面白かった!2人が徐々に仲良くなっていく様子が丁寧に描かれていてホッコリした! ただ、ラストで補導員が来るシーンは38ページ目ですぐ見せた方がわかりやすくて良かったと思う。あとUFOの書、もう少し友達と仲良くする指示があった方がもっとよかったかも。
■畑健二郎先生
かなりしっかりとキャラクターの絵が描けていて全体的に達者な印象を受けました。ストーリー展開も独自性が強く、クライマックスのダンスシーンやラブコメに振らず最後まで友情にフォーカスした物語もとても良かったと思います。ただ絵に関しては所々荒い点が目立ち状況がイマイチ絵で説明できてない点などが気になりました。
「雪のうんこ」坂本暖(21歳・埼玉県)特別育成金 33万円
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■あだち充先生
タイトルのインパクトに比べると登場人物(途中まで主人公を女の子だと思ってました)にも話の展開にも意外性が無く、そつなくまとめた印象でした。
■高橋留美子先生
さりげない話ですが細かいキャラ、描写がうまいです。情景も効果的に使っていて良いと思います。今後は連載を引っ張れる主人公を生み出してください。
■青山剛昌先生
面白かった! オレ的には松田と安室の子供の頃を見ているようでホノボノしました。(笑)ただ、2人で財布を探して見つけるシーンで見つかった財布の絵があった方が良かったと思います!(何かモヤモヤするので(笑))
■畑健二郎先生
ファンタジーの要素に頼ることなく人間ドラマを描こうとする姿勢はとても好印象でした。インパクトのあるタイトルも好き嫌いは分かれると思いますがいい挑戦だと思います。絵に関しても難しい背景など逃げずにチャレンジしている点も好感が持てました。良かったと思います。反面、最も力を入れるべきストーリー部分は正直物足りなさを感じてしまいました。
少女・女性部門
「ペイパードールの裏は花色」七喜まゆ(東京都)特別育成金 100万円
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■円城寺マキ先生
丁寧な絵で、演出が巧みです。二人のキャラクターデザインの対称性が素晴らしく、話は思春期の悩みあるあるですが、今っぽい題材でよい。宝塚イケメンに見える花田さんの勇気も、推しの素性を受け入れられる仲入さんの感性も好感度が高いです。
■椎名チカ先生
完成された画面と見せ方に圧倒。二人の悩みが重なる部分や、前を向く姿など、感情の描き方に心動かされました。ただ、少しモノローグが多い印象なので、重複箇所は取ってしまった方がいいでしょう。次作も楽しみにしています。
■真村ミオ先生
圧倒的に絵が上手く、構図も凝っていて見やすいです。Vチューバーというポップなネタでキャラ達の悲壮感が強く表現出来ていて見事。ラストの爽やかさが引き立っていました。
■みづほ梨乃先生
画力が高い分、描く対象には注意を。自死という重いテーマを扱うならエピソードに組み込むべき。ラストを生かすならヘビーか思いきり明るいか、どちらかに振っては。肩の力を抜いて描いてほしいです。実力は間違いないので!
青年部門
「しえん」市井市蔵(27歳・長野県)
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■こざき亜衣先生
冒頭の絵だけで電子タバコの“絵にならなさ”が描けているのがまず何よりすごいと思いました。
特別何かが起こったわけでもなく、テーマに対し直接的なセリフもなく、現実は何ひとつ変わっていないのに、主人公の変化が伝わりカタルシスがありました。1本のタバコだけでこんな表現が出来るとは。ただただ素晴らしいです。
■太田垣康男先生
「青春の蹉跌」は新人賞で良く見るテーマだ。漫画家を目指す若者には身近な問題と言える。自分の背中を押す漫画を自分で描くのも良いだろう。ならば、次に描く作品こそ大切だ。暗闇の中で灯した小さな火が大きく燃え上がることを祈る。
■浅野いにお先生
誰かの人生を垣間見たような実存感のあるキャラとストーリーで、非常に身に染みました。基本は会話のみですが、自然なセリフとタバコのアクションを挟むことで冗長にならず、上手な構成だなと感じました。絵は今どきな絵柄で見やすいのですが、キャラの顔の造形に幅がないので、このままだと多人数のキャラが出る群像劇などは厳しいかもしれません。ノリやテンションのリアリティーラインは変えないでほしいのですが、今後を見据えてややわざとらしい漫画的なキャラ造形を意識してもいいのでは。
■石塚真一先生
小説を読んでいるような気持ちになる。好きな作品です。
繊細な表情もしっかりとらえて描かれています。特に間と演出が素晴らしい。
市井の全ての人々にドラマがあるんだと思わせてくれる作者だと思います。
■業田良家先生
過去のエピソードを回想しながらのストーリー作りはすごく難しいのだが、わかりやすく上手に展開されている。役者になるという夢を葬り切れず、なかなか消せない思いを電子タバコと紙タバコの比喩を使って表現している点もアイデアがあって良い。スナックのママが魅力的な女性に描かれている。
佳作
正賞/賞状・記念盾、副賞/30万円・受賞作収録本
児童部門
「終天のカナン」よだかのからあげ(24歳・愛知県)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
学習漫画のような物語です。SFとして面白く読めました。下描きのような作画は、宇宙服など丁寧で味があるのですが、ちょっと未完成な感じもしてしまいます。
■松本しげのぶ先生
ロマンある作品でした。絵は丁寧でトーンを貼らず、ベタとカケアミで作ってありこだわりを感じる。ネーム作りも丁寧で、子供にもわかる言葉で説明されている。
■曽山一寿先生
かなり独特な雰囲気のある漫画ですね。ただ、絵はもっとメリハリをきかせたほうがいいです。お話のテンポは好きです。独特のイイ「間」を持っていると思います。
■村瀬範行先生
作者が書きたいから書いた知識やセリフを、むだと取るか取らないかで感じ方が変わると思いました。絵は丁寧なカメラワークと陰影があり、温かみがあって好きです。
「タナカカナタ」夜太丸(31歳・長野県)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
田中ばかりの学校という設定は面白い。でもそこから学園ものなのか、バトルをやりたいのか、ギャグなのかがハッキリせず、トモハルの正体を隠す理由も謎でした。
■松本しげのぶ先生
苗字が全員同じという、いきなりアイデンティティを破壊しに来る導入にググッと引き込まれました。漫画自体よく描けているし、独特の視点は素晴らしい武器です。
■曽山一寿先生
面白かったです! 田中しかいない学校で、最強の田中を決める田中ランキング、こういうバカバカしい設定は大好きです! 絵がのっぺりしてしまっているのが残念。
■村瀬範行先生
考えていることは面白いのですが、画面に面白みがないのが気になりました。始まりの3ページは大変興味をわかされ、ツカミとして大成功していると思います。
「もっちり!もちおくん」島田シマーフ(30歳・東京都)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
モチの転校生!! 意外性はあったものの、ギャグがちょっとおとなしいかも。かなり平和を感じるギャグ漫画です。扉絵のようなのびのびっぷりをもっと見たかったです。
■松本しげのぶ先生
構成は、安定のコロコロギャグかなといった印象ですが、絵がかわいく丁寧で好感が持てました。もちおくんも、愛らしく憎めないやつで世界観も優しく癒やされました。
■曽山一寿先生
もちおくんがカワイイ! この一言につきます。セリフが「もっ」だけなのも面白い。絵の表現にもっと幅を持たせると、もっとギャグが面白くなると思います。
■村瀬範行先生
もちおくんの行動は面白いのですが、それが絵で伝えられていません。よくも悪くもネタの作りはゆるいので大爆笑は取れませんが、なんかちょうどいい読み物でした。
「Hell or Heaven?」慈雨(15歳・愛知県)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
個性的な画で一頁、一コマがイラスト的。天使と悪魔のキャラが、なんとなくデザインも性格も似ているので、もっと白黒ハッキリさせたほうがいいと思います。
■松本しげのぶ先生
主人公の心清らかで揺るがない強さが魅力的でよかった。絵的には、キャラの描きわけが弱く、一瞬、悪魔だったか天使だったか見わけがつかない場面がありました。
■曽山一寿先生
いわゆる天才が描いた漫画ですね。読者に不親切な部分はあるものの、15歳でこれだけの世界を描けるのはすごいです。印象に残る決めゴマや表現方法が素晴らしい!
■村瀬範行先生
見せゴマに迫力や雰囲気があり、魅力的な作品を作れる作家さんだと思います。ただそれぞれのキャラが、いい事も悪い事もするのでキャラを理解するのが難しいです。
少年部門
「轟」白田ジョゼ(17歳・兵庫県)
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■あだち充先生
時々読み辛さはありますが、丁寧でクセの強い画風は魅力的で、年齢を考えると期待しかありません。
■高橋留美子先生
絵は上手いです。キャラは描けてるようでセリフの説明に頼りすぎ。話も説明しているようでよく分かりません。最初から闘っているため、エピソード不足です。話の作り方を学んでください。17才でこの画力は期待できます。
■青山剛昌先生
まぁまぁ面白かった! 絵はべらぼーに上手くてセンスもあり。背景の描き込みも凄まじいんだけど、アクションシーンがとにかく分かりづらい(笑)それとどっちが喋ってるせりふなのかも分かりづらかった。トーンやベタを入れる場所を工夫すべし。
■畑健二郎先生
個人的には今回送られてきた中では一番好きな作品でした。印象として、とても楽しい漫画だなと思いました。特に絵は、絵柄の好感度も高くキャラクターをしっかり描けていてとても気持ちよかったです。台詞のセンスも軽快で非常に読みやすかったです。この調子でたくさん描いていってください。期待しています。
「サリムの魔法の服」きつき(26歳・千葉県)
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■あだち充先生
自分の世界観をしっかり持っていてそれを表現する絵の力も充分あります。あとは一歩前に出るための自分だけの武器を見つけて下さい。
■高橋留美子先生
サリム…「俺」と言ってますが、女に見えます。どっちですか? モヤっとします。大小は置いといて、これが恋の話なのか友情物語なのか読み方に迷います。
■青山剛昌先生
まぁまぁですねぇ…魔法の服で亜人は力を封じられ、人は力を与えられるって設定は面白かったんだけど、人に力が与えられた感がほとんど無かった。ラストの毒が強くなったっていうシーンも骨喰い竜の1匹に毒がかかって瞬殺でもしないと毒の威力が分かりづらいと思います。
■畑健二郎先生
独特の絵柄が不思議な魅力に溢れていてとても可愛らしく目を惹きました。設定の懲り方もファンタジーを成立させるために重要な要素なのでその辺りをしっかりと考えている点はとても良かったと思います。とはいえ一読した時にちょっと説明不足な印象は受けました。特にシファーの大きさや、亜人と人間の普通の関係性、出てくる敵など一切説明が入らない点が次々出てくるので何度も翻って読んでしまいました。
「鳥の眼」葉山一樹(23歳・大阪府)
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■あだち充先生
所々に粗さは残りますが、絵もキャラも魅力的で話の展開もわかりやすく、このまま伸びていってほしい才能です。
■高橋留美子先生
キャラの絵の見せ方は意識しているのが伝わってきて良いと思います。が、兄とモブはもっと描き分けるべき。混乱します。話の組み立てがいまいち兄の危機と敵役との戦いが乖離している感じで、盛り上がりに欠けてしまいました。
■青山剛昌先生
悪くはなかったです。p44 ~ 45の見開きは迫力満点でその絵だけで何がどうなってるかが分かるので、とてもよかった。ただ、p40の敵に襲われるシーンは、主人公が多少なりともやられて血ぐらい出た方がよかったかも。(笑)絵は上手です!
■畑健二郎先生
全体的に少年漫画らしい明るい雰囲気があり作者の明るい人間性も出ていて好感が持てました。特にキャラクターの表情はイキイキと描けていおり物語も暗くなりすぎないレベルでコントロールされていて最後まで少年漫画らしく描けている点も良かったと思います。課題としてはやはりまず絵を改善する必要はあるかなと思います。特にパースを学んだり、かけ編みを丁寧にしたり小物の細部をしっかり資料を見て描いたりすればそれだけでかなり良くなると思うので気にしてみてください。
少女・女性部門
「キミの魔法つかいになりたい」鈴咲ひかり(大阪府)
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■円城寺マキ先生
華やかさ、読みやすさ、男キャラの色気は今後武器になります。片方が無自覚な両思いの話で、途中のじれったさがよく題材もわかりやすく主人公も頑張り屋でよし。主人公の選択も「私が男子ならこれは惚れる…」と引き込まれます。
■椎名チカ先生
華やかで可愛い登場人物に、小物も丁寧。男の子が魅力的で「王子様」に説得力があります。王道の中で「化粧」をキーにするアイデアは素敵でしたが、展開は読めてしまいました。独自性が加わるともっと成長できると思います。
■真村ミオ先生
素直で頑張り屋の主人公が可愛く、応援したくなります。最初に主人公が揺れ動くメイクシーンなど、見せ場の演出をさらに意識すると絵の綺麗さや可愛さが活きてくると思います。
■みづほ梨乃先生
今時の綺麗な絵柄で丁寧。もう少し個性を出したいので、趣味や描きたいもので差別化できるといいです。男の子がやや怖く見えるので、優しい感じが出せると。ラストは尻切れ感があるので、キスシーンなど大胆に入れてみても。
「アイスクリーム、溶けた。」さなだ麦(24歳・東京都)
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■円城寺マキ先生
物語が王道で可愛い絵。ゆえに、目つきが悪い設定は少しわかりづらいです。ほんわか終わると思いきや、最後に色っぽくなる感じはいいですね!演出も違和感なく読みやすいです。今後も内容に艶っぽさを加えると意外性が出るのではと思います。
■椎名チカ先生
登場人物や小物が可愛く綺麗に描けていてとても楽しく読みました。柊ちゃんが頑張って行動していて好印象ですが、三浦くんが素敵すぎて都合がよすぎる男子にやや見えてしまいました。ただ、終わり方はとても良かったです。
■真村ミオ先生
綺麗なペンタッチ、可愛らしい絵柄がとても魅力的!ラストページの見つめあうドキドキ感が伝わって、雰囲気作りも上手。全体的に癖がない分、ストーリーは先が読める展開なのが惜しいです。
■みづほ梨乃先生
タッチが細かく小物も可愛く、トーンワークも華やかでした。ただ、ネームが読みづらいので工夫してみて。吹き出しで絵が隠れるのはもったいないです。いじめっ子との話なのか、ラブなのかわかるように物語づくりをすればグッとよくなりそう!楽しみです!
青年部門
「しろいとり」添田おうげん(21歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
青春よりも一歩前の白くてやわい一瞬を美しく切り取っていますね。いくらでもひねて露悪に走れるところを踏みとどまった仕上りに痺れ、この痛みを味わいたくなって、この先何度も読み返したくなってしまいそうです。絵の細部へのこだわりにじっくり向き合ってみてほしいです。テクニックを手にしても消えない個性はすでにお持ちだと思います。
■太田垣康男先生
何気ない日常を印象的に見せる演出技法はおそらく天性のモノ。構図の取り方がうまい。画力が向上すれば読者に伝わる情報も更に増えて漫画の魅力も増すことだろう。志望校に入学出来なかったことをオープニングに持って来る演出も粋。今後の成長に期待。
■浅野いにお先生
牧歌的な雰囲気でほのぼのとした気持ちで読みました。絵もかなりうまいです。キャラクターの演技が繊細で、動きの表現に結構なコマ数を割いているにも関わらず、くどく感じないのは計算されたコマ割りと構図の成せる技だと思います。白鳥と紙飛行機の比喩表現も詩的で、作品性を高めていると思います。登場人物全員がいい人なので、個人的には少しだけ毒があったほうがパンチがあって好みなのですが、他者の言うことは気にせずに、この作風の持ち味を伸ばしていってほしいです。
■石塚真一先生
雰囲気のある絵、構図もうまく、とても読みやすい作品です。感情の動きとテーマをもっと強く全面に出すと作品全体が強くなると思います。
■業田良家先生
最初に通学のバスに乗るシーンから始まる。そしてすぐ1年前のエピソードに移っている。この話の構造からしてラストは現在の時制に戻って、現在の主人公とその彼女はどうなったのか描かないといけない。たぶん第1志望のA高校に受かったんだろうけど、彼女はどうなったのかを絶対に言及すべきです。青春時代の葛藤はいい感じで描かれている。絵柄も好きだったが、2羽の白鳥(主人公と彼女)はいったいどうなったのか知りたい。
「初めての殺人」井上宗(26歳・大阪府)
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■こざき亜衣先生
全編通して皮肉が効いていて面白かったです。ガスマスクみたいなやつだけは何度読んでもわからなかったけど、まぁわからなくてもいいやつか!と理解はしつつ、世界観を深めて説得力を持たせてより面白くする要素として使えそうなので、サラッと本筋に絡まないように触れるのも手かと思いました。凝った構図を多用しても読む手が止まらず、素晴らしいです。絵も丁寧で魅力的なので、たくさん描いて画力を上げてほしいです。
■太田垣康男先生
作品の隅々まで独特の緊張感が漂う暴力的だが美しい作品。キャラクターの目に力があるので様々な感情を表現できる絵のうまさも魅力。どこか寓話的な物語が殺伐とした展開すらコミカルに見せる。ヒロインの太腿が眩しい程に美しく、主人公が一目惚れしたのも頷けた。
■浅野いにお先生
描きたいものがはっきりしていて迷いがない点が良いと思います。キャラの顔が不安定でところどころ誰が誰なのか混乱する箇所があったので、絵柄を自分のものに出来るようにしてください。世界観の設定が物語に活かされているとはいえ、銃要素は取ってつけた感がまだあるので、リアリティーを感じるような工夫は必要かと思いますが、この殺伐した雰囲気は今の読者のニーズに合っているような気がするので、この雰囲気で作品を量産し、作風として確立していってほしいです。
■石塚真一先生
世界観に瞬間的にひき込まれてしまった。スピード感ある展開と緊張感も素晴らしい。
ピンポイントにテーマを絞ったことも読みやすさにつながっている。
アングルもとても工夫してますね。面白い!!
■業田良家先生
治安が悪くて誰もが銃を携帯している町が舞台。町中で人が銃で撃たれて殺されても平然と通勤通学に向かう群衆。多くの人がガスマスクをしていても違和感がない。こんな世界観を私は読者としてスンナリと当然のことのように受け入れた。つまり現代の日本は本質的にはこうなっているのだ。ひと皮剥げばこれが現実なのだ。そして人を殺すより人を好きだと告白することのほうが困難なのだ。この作者の感受性は鋭く、光るものがある。
「おカネしか勝たん」カゲワサビ(28歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
メイン二人が愛らしく、最後まで面白く読みました。ラストもかわいらしくてよかった。ただもったいないなと思ったのは、由那に比べてリコの描写に体温を感じられなかったこと。置かれた環境を断片的に推察は出来るものの、求め合う二人の絆を描くなら二人に同様の熱量がほしいかなと個人的には思います。最も反発し合いそうな二人のお金と買春への価値観の差異に関して、やや軽めに流していたのも少し気に掛かりました。面白かったので、もっと!と欲が出てしまいます。
■太田垣康男先生
主人公にとって都合の良いことが次々と起こるなら物語の最後はバッドエンドに。ハッピーエンドにしたければ主人公には困難を与えるのが作劇の基本。キャラクターも表層を見せるだけで終始してはいけない。
■浅野いにお先生
シビアな環境で生きている主人公を、柔らかい絵柄とカラッとしたノリで描いていることにとても現代性を感じました。キャラの表情が良いので、多くを語らずとも感情を読み取ることが出来、二人が友情以上の何かを育んでいく過程を感じることが出来ました。ほのぼのとした落とし所には納得しつつも、もうワンアクションあってもいいかなと感じましたが、作品としての読後感はとても良かったです。漫画を描くセンスは十分備えている方だと思うので、違った題材の新たな作品を読んでみたいです。
■石塚真一先生
面白い。若者達の心情を実にたんたんと、でも確実にとらえています。
既存の価値観にとらわれない生き方に現代(いま)を生きる強さを感じました。
■業田良家先生
1時間1000円で売春している14歳の女の子。その子とゲームで遊ぶために1時間1000円を払う元同級生の女の子。いくらなんでも現実にはありえないだろうけど、心情的にはすでに起こっている現実のように感じた。強いリアリティーを持って、ラストは「夫婦関係」もおカネを払うことで成立していると言っているようだ。「友情」も「恋愛」もそんな面があるかもしれない。しかし物語の結論として示すのはもったいない。違うラストを考えれば、もっと深くて大きな作品になると思う。
奨励金
選外の作品の中から有望作に10万円を授与
児童部門
「冥土のメイド」加ト☆しゅん(30歳・東京都)
少女・女性部門
「このシャッターが切れたら」ラクちゃん(25歳・京都府)
「こいつは一体何者なんだ?!」ジュエル(19歳・北海道)
青年部門
「シークエル」平野凌汰(26歳・福岡県)
「花々の調理師」鈴木絢子(21歳・愛知県)
「夢の架け橋」藤田ローガン(55歳・兵庫県)
児童部門
入選
「読書奇譚」紳月士郎(21歳・和歌山県)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
一つ目の怪しい人物は、本の世界への案内人。本がキライな主人公に、本の面白さと魅力を伝える描き方は見事です! 主人公ともっといろいろな本を体験してみたい。
■松本しげのぶ先生
とても面白かった。読んでいて飽きない。次の話を読みたくなった。特に悪人も出さず、終始心地よく読ませるよい漫画。実力を感じました。オチも申し分ないです。
■曽山一寿先生
面白かったです。正確に言うと、後半になるにつれてバツグンに面白くなりました。「本」という珍しいジャンルに挑戦しているのも好印象。フキダシが多いのが残念。
■村瀬範行先生
読んでいてワクワクする作品でした。ただ、後でネタバラシをして驚かせたいという作り方が、若干不親切になっています。また次回作を読みたい作家さんです。
佳作
「終天のカナン」よだかのからあげ(24歳・愛知県)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
学習漫画のような物語です。SFとして面白く読めました。下描きのような作画は、宇宙服など丁寧で味があるのですが、ちょっと未完成な感じもしてしまいます。
■松本しげのぶ先生
ロマンある作品でした。絵は丁寧でトーンを貼らず、ベタとカケアミで作ってありこだわりを感じる。ネーム作りも丁寧で、子供にもわかる言葉で説明されている。
■曽山一寿先生
かなり独特な雰囲気のある漫画ですね。ただ、絵はもっとメリハリをきかせたほうがいいです。お話のテンポは好きです。独特のイイ「間」を持っていると思います。
■村瀬範行先生
作者が書きたいから書いた知識やセリフを、むだと取るか取らないかで感じ方が変わると思いました。絵は丁寧なカメラワークと陰影があり、温かみがあって好きです。
「タナカカナタ」夜太丸(31歳・長野県)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
田中ばかりの学校という設定は面白い。でもそこから学園ものなのか、バトルをやりたいのか、ギャグなのかがハッキリせず、トモハルの正体を隠す理由も謎でした。
■松本しげのぶ先生
苗字が全員同じという、いきなりアイデンティティを破壊しに来る導入にググッと引き込まれました。漫画自体よく描けているし、独特の視点は素晴らしい武器です。
■曽山一寿先生
面白かったです! 田中しかいない学校で、最強の田中を決める田中ランキング、こういうバカバカしい設定は大好きです! 絵がのっぺりしてしまっているのが残念。
■村瀬範行先生
考えていることは面白いのですが、画面に面白みがないのが気になりました。始まりの3ページは大変興味をわかされ、ツカミとして大成功していると思います。
「もっちり!もちおくん」島田シマーフ(30歳・東京都)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
モチの転校生!! 意外性はあったものの、ギャグがちょっとおとなしいかも。かなり平和を感じるギャグ漫画です。扉絵のようなのびのびっぷりをもっと見たかったです。
■松本しげのぶ先生
構成は、安定のコロコロギャグかなといった印象ですが、絵がかわいく丁寧で好感が持てました。もちおくんも、愛らしく憎めないやつで世界観も優しく癒やされました。
■曽山一寿先生
もちおくんがカワイイ! この一言につきます。セリフが「もっ」だけなのも面白い。絵の表現にもっと幅を持たせると、もっとギャグが面白くなると思います。
■村瀬範行先生
もちおくんの行動は面白いのですが、それが絵で伝えられていません。よくも悪くもネタの作りはゆるいので大爆笑は取れませんが、なんかちょうどいい読み物でした。
「Hell or Heaven?」慈雨(15歳・愛知県)特別育成金 20万円
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■むぎわらしんたろう先生
個性的な画で一頁、一コマがイラスト的。天使と悪魔のキャラが、なんとなくデザインも性格も似ているので、もっと白黒ハッキリさせたほうがいいと思います。
■松本しげのぶ先生
主人公の心清らかで揺るがない強さが魅力的でよかった。絵的には、キャラの描きわけが弱く、一瞬、悪魔だったか天使だったか見わけがつかない場面がありました。
■曽山一寿先生
いわゆる天才が描いた漫画ですね。読者に不親切な部分はあるものの、15歳でこれだけの世界を描けるのはすごいです。印象に残る決めゴマや表現方法が素晴らしい!
■村瀬範行先生
見せゴマに迫力や雰囲気があり、魅力的な作品を作れる作家さんだと思います。ただそれぞれのキャラが、いい事も悪い事もするのでキャラを理解するのが難しいです。
奨励金
「冥土のメイド」加ト☆しゅん(30歳・東京都)
少年部門
入選
「ERICA」南川(21歳・東京都)特別育成金 33万円
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■あだち充先生
少し慣れるだけでメチャクチャ絵が上手くなりそうな人です。自分の伸び代の幅を信じて大きく育って行ってほしい。
■高橋留美子先生
ものすごく面白かった。ヒロインの設定が痛快です。余計な線を省いて画面を見易くしてほしいですが、途中から没頭して読めました。逆に一コマ目の雑さで読んでもらえなくなる可能性もあるので気を付けて。
■青山剛昌先生
面白かった! アクションシーンの絵も上手くて迫力があったんだけど、少々分かりづらかったのが残念。刀をどう振ってどの部位を斬ったかを描いてくれるとスッキリする。あと、冒頭のホウキを買った理由が謎です(笑)
■畑健二郎先生
アクションの描写はかなり頑張っていたと思います。女の子の絵柄もとても可愛く、魅力的でした。漫画の中で描きたいものが明確になっている点も好印象です。可愛い女の子のルックス以外にも、もっと前半に物語を牽引できるエンジンがあればより良かったなと思います。
「コール・フォー・ユーエフオー」出路かし魚(23歳・神奈川県)特別育成金 33万円
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■あだち充先生
いい話をいい話として読ませるためには、もっともっと構図をふくめた絵の勉強を。
■高橋留美子先生
ヒロインがかなりあっさりと男の子の要求をのむんですが…途中で疑問を持った方が読者も男の子の行動に興味が持てると思います。男女の友情物語として、さわやかにまとまってると思います。
■青山剛昌先生
いやぁ面白かった!2人が徐々に仲良くなっていく様子が丁寧に描かれていてホッコリした! ただ、ラストで補導員が来るシーンは38ページ目ですぐ見せた方がわかりやすくて良かったと思う。あとUFOの書、もう少し友達と仲良くする指示があった方がもっとよかったかも。
■畑健二郎先生
かなりしっかりとキャラクターの絵が描けていて全体的に達者な印象を受けました。ストーリー展開も独自性が強く、クライマックスのダンスシーンやラブコメに振らず最後まで友情にフォーカスした物語もとても良かったと思います。ただ絵に関しては所々荒い点が目立ち状況がイマイチ絵で説明できてない点などが気になりました。
「雪のうんこ」坂本暖(21歳・埼玉県)特別育成金 33万円
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■あだち充先生
タイトルのインパクトに比べると登場人物(途中まで主人公を女の子だと思ってました)にも話の展開にも意外性が無く、そつなくまとめた印象でした。
■高橋留美子先生
さりげない話ですが細かいキャラ、描写がうまいです。情景も効果的に使っていて良いと思います。今後は連載を引っ張れる主人公を生み出してください。
■青山剛昌先生
面白かった! オレ的には松田と安室の子供の頃を見ているようでホノボノしました。(笑)ただ、2人で財布を探して見つけるシーンで見つかった財布の絵があった方が良かったと思います!(何かモヤモヤするので(笑))
■畑健二郎先生
ファンタジーの要素に頼ることなく人間ドラマを描こうとする姿勢はとても好印象でした。インパクトのあるタイトルも好き嫌いは分かれると思いますがいい挑戦だと思います。絵に関しても難しい背景など逃げずにチャレンジしている点も好感が持てました。良かったと思います。反面、最も力を入れるべきストーリー部分は正直物足りなさを感じてしまいました。
佳作
「轟」白田ジョゼ(17歳・兵庫県)
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■あだち充先生
時々読み辛さはありますが、丁寧でクセの強い画風は魅力的で、年齢を考えると期待しかありません。
■高橋留美子先生
絵は上手いです。キャラは描けてるようでセリフの説明に頼りすぎ。話も説明しているようでよく分かりません。最初から闘っているため、エピソード不足です。話の作り方を学んでください。17才でこの画力は期待できます。
■青山剛昌先生
まぁまぁ面白かった! 絵はべらぼーに上手くてセンスもあり。背景の描き込みも凄まじいんだけど、アクションシーンがとにかく分かりづらい(笑)それとどっちが喋ってるせりふなのかも分かりづらかった。トーンやベタを入れる場所を工夫すべし。
■畑健二郎先生
個人的には今回送られてきた中では一番好きな作品でした。印象として、とても楽しい漫画だなと思いました。特に絵は、絵柄の好感度も高くキャラクターをしっかり描けていてとても気持ちよかったです。台詞のセンスも軽快で非常に読みやすかったです。この調子でたくさん描いていってください。期待しています。
「サリムの魔法の服」きつき(26歳・千葉県)
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■あだち充先生
自分の世界観をしっかり持っていてそれを表現する絵の力も充分あります。あとは一歩前に出るための自分だけの武器を見つけて下さい。
■高橋留美子先生
サリム…「俺」と言ってますが、女に見えます。どっちですか? モヤっとします。大小は置いといて、これが恋の話なのか友情物語なのか読み方に迷います。
■青山剛昌先生
まぁまぁですねぇ…魔法の服で亜人は力を封じられ、人は力を与えられるって設定は面白かったんだけど、人に力が与えられた感がほとんど無かった。ラストの毒が強くなったっていうシーンも骨喰い竜の1匹に毒がかかって瞬殺でもしないと毒の威力が分かりづらいと思います。
■畑健二郎先生
独特の絵柄が不思議な魅力に溢れていてとても可愛らしく目を惹きました。設定の懲り方もファンタジーを成立させるために重要な要素なのでその辺りをしっかりと考えている点はとても良かったと思います。とはいえ一読した時にちょっと説明不足な印象は受けました。特にシファーの大きさや、亜人と人間の普通の関係性、出てくる敵など一切説明が入らない点が次々出てくるので何度も翻って読んでしまいました。
「鳥の眼」葉山一樹(23歳・大阪府)
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■あだち充先生
所々に粗さは残りますが、絵もキャラも魅力的で話の展開もわかりやすく、このまま伸びていってほしい才能です。
■高橋留美子先生
キャラの絵の見せ方は意識しているのが伝わってきて良いと思います。が、兄とモブはもっと描き分けるべき。混乱します。話の組み立てがいまいち兄の危機と敵役との戦いが乖離している感じで、盛り上がりに欠けてしまいました。
■青山剛昌先生
悪くはなかったです。p44 ~ 45の見開きは迫力満点でその絵だけで何がどうなってるかが分かるので、とてもよかった。ただ、p40の敵に襲われるシーンは、主人公が多少なりともやられて血ぐらい出た方がよかったかも。(笑)絵は上手です!
■畑健二郎先生
全体的に少年漫画らしい明るい雰囲気があり作者の明るい人間性も出ていて好感が持てました。特にキャラクターの表情はイキイキと描けていおり物語も暗くなりすぎないレベルでコントロールされていて最後まで少年漫画らしく描けている点も良かったと思います。課題としてはやはりまず絵を改善する必要はあるかなと思います。特にパースを学んだり、かけ編みを丁寧にしたり小物の細部をしっかり資料を見て描いたりすればそれだけでかなり良くなると思うので気にしてみてください。
少女・女性部門
入選
「ペイパードールの裏は花色」七喜まゆ(東京都)特別育成金 100万円
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■円城寺マキ先生
丁寧な絵で、演出が巧みです。二人のキャラクターデザインの対称性が素晴らしく、話は思春期の悩みあるあるですが、今っぽい題材でよい。宝塚イケメンに見える花田さんの勇気も、推しの素性を受け入れられる仲入さんの感性も好感度が高いです。
■椎名チカ先生
完成された画面と見せ方に圧倒。二人の悩みが重なる部分や、前を向く姿など、感情の描き方に心動かされました。ただ、少しモノローグが多い印象なので、重複箇所は取ってしまった方がいいでしょう。次作も楽しみにしています。
■真村ミオ先生
圧倒的に絵が上手く、構図も凝っていて見やすいです。Vチューバーというポップなネタでキャラ達の悲壮感が強く表現出来ていて見事。ラストの爽やかさが引き立っていました。
■みづほ梨乃先生
画力が高い分、描く対象には注意を。自死という重いテーマを扱うならエピソードに組み込むべき。ラストを生かすならヘビーか思いきり明るいか、どちらかに振っては。肩の力を抜いて描いてほしいです。実力は間違いないので!
佳作
「キミの魔法つかいになりたい」鈴咲ひかり(大阪府)
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■円城寺マキ先生
華やかさ、読みやすさ、男キャラの色気は今後武器になります。片方が無自覚な両思いの話で、途中のじれったさがよく題材もわかりやすく主人公も頑張り屋でよし。主人公の選択も「私が男子ならこれは惚れる…」と引き込まれます。
■椎名チカ先生
華やかで可愛い登場人物に、小物も丁寧。男の子が魅力的で「王子様」に説得力があります。王道の中で「化粧」をキーにするアイデアは素敵でしたが、展開は読めてしまいました。独自性が加わるともっと成長できると思います。
■真村ミオ先生
素直で頑張り屋の主人公が可愛く、応援したくなります。最初に主人公が揺れ動くメイクシーンなど、見せ場の演出をさらに意識すると絵の綺麗さや可愛さが活きてくると思います。
■みづほ梨乃先生
今時の綺麗な絵柄で丁寧。もう少し個性を出したいので、趣味や描きたいもので差別化できるといいです。男の子がやや怖く見えるので、優しい感じが出せると。ラストは尻切れ感があるので、キスシーンなど大胆に入れてみても。
「アイスクリーム、溶けた。」さなだ麦(24歳・東京都)
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■円城寺マキ先生
物語が王道で可愛い絵。ゆえに、目つきが悪い設定は少しわかりづらいです。ほんわか終わると思いきや、最後に色っぽくなる感じはいいですね!演出も違和感なく読みやすいです。今後も内容に艶っぽさを加えると意外性が出るのではと思います。
■椎名チカ先生
登場人物や小物が可愛く綺麗に描けていてとても楽しく読みました。柊ちゃんが頑張って行動していて好印象ですが、三浦くんが素敵すぎて都合がよすぎる男子にやや見えてしまいました。ただ、終わり方はとても良かったです。
■真村ミオ先生
綺麗なペンタッチ、可愛らしい絵柄がとても魅力的!ラストページの見つめあうドキドキ感が伝わって、雰囲気作りも上手。全体的に癖がない分、ストーリーは先が読める展開なのが惜しいです。
■みづほ梨乃先生
タッチが細かく小物も可愛く、トーンワークも華やかでした。ただ、ネームが読みづらいので工夫してみて。吹き出しで絵が隠れるのはもったいないです。いじめっ子との話なのか、ラブなのかわかるように物語づくりをすればグッとよくなりそう!楽しみです!
奨励金
「このシャッターが切れたら」ラクちゃん(25歳・京都府)
「こいつは一体何者なんだ?!」ジュエル(19歳・北海道)
青年部門
大賞
「君がいないと毎日は生きれない」壽久(28歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
ドラマチックに演出したり、カタルシスを得るために仕掛けをしたり、やろうと思えばいくらでも出来るとは思うけど、それを一切しないことがこの物語の正解だと思えるのがすごい。この二人の間に流れる空気が面白く、心地よく、私は好きでした。広くエンタメ性を持たせるなら、ここに第三の人物を入れるかどうかでしょうか。でもこれはこのままでも。難しい…
■太田垣康男先生
抜群に絵がうまい。ここまで心象風景が描ける新人も珍しい。キャラクターのヒリヒリした心の状態が手に取る様にわかる。底から這い上がって掴んだ自由な心も。退職届を一緒に書く、という寄り添い方にも感動した。
■浅野いにお先生
ダイナミックな作風でインパクトがあります。全体のスキルが非常に高いです。コマ割りで読みづらい箇所が多少あるものの、黒多めの絵柄でありながらかなり読みやすく、キャラの心情と表情がきちんとリンクしているので感情がよく伝わります。物語的にはかなりよくまとまっていて、体感的には良い意味で倍ぐらいのページ数に感じました。テルが激変したことに対して主人公がすんなり受け入れてしまうことに若干物足りなさを感じましたが、気持ちのいい読後感で非常に満足感がありました。
■石塚真一先生
最高だね!! 良い!! 登場する二人が同じくらいしっかり描かれています。
心情の切り取り方も、ベタの強い絵の表情もグッときます。
みんなに読んでほしいなあ~…
■業田良家先生
作中に出てくる「リョナラー」という言葉を知りたかったので調べてみて驚いた。自称リョナラーのテルちゃんは肌が真っ黒なお婆さんのような姿で登場する。主人公のユキちゃんの仕事も過酷そうで、現代の若者の苦しみが伝わってくる。私の世代の苦悩とは全然違うと感じる。より絶望的だ。それでも友情や恋愛で立ち直っていく。そこに救いがある。絵的にはベタの使い方が 大胆で美しい。感情表現もうまい。才能を感じた。
入選
「しえん」市井市蔵(27歳・長野県)
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■こざき亜衣先生
冒頭の絵だけで電子タバコの“絵にならなさ”が描けているのがまず何よりすごいと思いました。
特別何かが起こったわけでもなく、テーマに対し直接的なセリフもなく、現実は何ひとつ変わっていないのに、主人公の変化が伝わりカタルシスがありました。1本のタバコだけでこんな表現が出来るとは。ただただ素晴らしいです。
■太田垣康男先生
「青春の蹉跌」は新人賞で良く見るテーマだ。漫画家を目指す若者には身近な問題と言える。自分の背中を押す漫画を自分で描くのも良いだろう。ならば、次に描く作品こそ大切だ。暗闇の中で灯した小さな火が大きく燃え上がることを祈る。
■浅野いにお先生
誰かの人生を垣間見たような実存感のあるキャラとストーリーで、非常に身に染みました。基本は会話のみですが、自然なセリフとタバコのアクションを挟むことで冗長にならず、上手な構成だなと感じました。絵は今どきな絵柄で見やすいのですが、キャラの顔の造形に幅がないので、このままだと多人数のキャラが出る群像劇などは厳しいかもしれません。ノリやテンションのリアリティーラインは変えないでほしいのですが、今後を見据えてややわざとらしい漫画的なキャラ造形を意識してもいいのでは。
■石塚真一先生
小説を読んでいるような気持ちになる。好きな作品です。
繊細な表情もしっかりとらえて描かれています。特に間と演出が素晴らしい。
市井の全ての人々にドラマがあるんだと思わせてくれる作者だと思います。
■業田良家先生
過去のエピソードを回想しながらのストーリー作りはすごく難しいのだが、わかりやすく上手に展開されている。役者になるという夢を葬り切れず、なかなか消せない思いを電子タバコと紙タバコの比喩を使って表現している点もアイデアがあって良い。スナックのママが魅力的な女性に描かれている。
佳作
「しろいとり」添田おうげん(21歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
青春よりも一歩前の白くてやわい一瞬を美しく切り取っていますね。いくらでもひねて露悪に走れるところを踏みとどまった仕上りに痺れ、この痛みを味わいたくなって、この先何度も読み返したくなってしまいそうです。絵の細部へのこだわりにじっくり向き合ってみてほしいです。テクニックを手にしても消えない個性はすでにお持ちだと思います。
■太田垣康男先生
何気ない日常を印象的に見せる演出技法はおそらく天性のモノ。構図の取り方がうまい。画力が向上すれば読者に伝わる情報も更に増えて漫画の魅力も増すことだろう。志望校に入学出来なかったことをオープニングに持って来る演出も粋。今後の成長に期待。
■浅野いにお先生
牧歌的な雰囲気でほのぼのとした気持ちで読みました。絵もかなりうまいです。キャラクターの演技が繊細で、動きの表現に結構なコマ数を割いているにも関わらず、くどく感じないのは計算されたコマ割りと構図の成せる技だと思います。白鳥と紙飛行機の比喩表現も詩的で、作品性を高めていると思います。登場人物全員がいい人なので、個人的には少しだけ毒があったほうがパンチがあって好みなのですが、他者の言うことは気にせずに、この作風の持ち味を伸ばしていってほしいです。
■石塚真一先生
雰囲気のある絵、構図もうまく、とても読みやすい作品です。感情の動きとテーマをもっと強く全面に出すと作品全体が強くなると思います。
■業田良家先生
最初に通学のバスに乗るシーンから始まる。そしてすぐ1年前のエピソードに移っている。この話の構造からしてラストは現在の時制に戻って、現在の主人公とその彼女はどうなったのか描かないといけない。たぶん第1志望のA高校に受かったんだろうけど、彼女はどうなったのかを絶対に言及すべきです。青春時代の葛藤はいい感じで描かれている。絵柄も好きだったが、2羽の白鳥(主人公と彼女)はいったいどうなったのか知りたい。
「初めての殺人」井上宗(26歳・大阪府)
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■こざき亜衣先生
全編通して皮肉が効いていて面白かったです。ガスマスクみたいなやつだけは何度読んでもわからなかったけど、まぁわからなくてもいいやつか!と理解はしつつ、世界観を深めて説得力を持たせてより面白くする要素として使えそうなので、サラッと本筋に絡まないように触れるのも手かと思いました。凝った構図を多用しても読む手が止まらず、素晴らしいです。絵も丁寧で魅力的なので、たくさん描いて画力を上げてほしいです。
■太田垣康男先生
作品の隅々まで独特の緊張感が漂う暴力的だが美しい作品。キャラクターの目に力があるので様々な感情を表現できる絵のうまさも魅力。どこか寓話的な物語が殺伐とした展開すらコミカルに見せる。ヒロインの太腿が眩しい程に美しく、主人公が一目惚れしたのも頷けた。
■浅野いにお先生
描きたいものがはっきりしていて迷いがない点が良いと思います。キャラの顔が不安定でところどころ誰が誰なのか混乱する箇所があったので、絵柄を自分のものに出来るようにしてください。世界観の設定が物語に活かされているとはいえ、銃要素は取ってつけた感がまだあるので、リアリティーを感じるような工夫は必要かと思いますが、この殺伐した雰囲気は今の読者のニーズに合っているような気がするので、この雰囲気で作品を量産し、作風として確立していってほしいです。
■石塚真一先生
世界観に瞬間的にひき込まれてしまった。スピード感ある展開と緊張感も素晴らしい。
ピンポイントにテーマを絞ったことも読みやすさにつながっている。
アングルもとても工夫してますね。面白い!!
■業田良家先生
治安が悪くて誰もが銃を携帯している町が舞台。町中で人が銃で撃たれて殺されても平然と通勤通学に向かう群衆。多くの人がガスマスクをしていても違和感がない。こんな世界観を私は読者としてスンナリと当然のことのように受け入れた。つまり現代の日本は本質的にはこうなっているのだ。ひと皮剥げばこれが現実なのだ。そして人を殺すより人を好きだと告白することのほうが困難なのだ。この作者の感受性は鋭く、光るものがある。
「おカネしか勝たん」カゲワサビ(28歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
メイン二人が愛らしく、最後まで面白く読みました。ラストもかわいらしくてよかった。ただもったいないなと思ったのは、由那に比べてリコの描写に体温を感じられなかったこと。置かれた環境を断片的に推察は出来るものの、求め合う二人の絆を描くなら二人に同様の熱量がほしいかなと個人的には思います。最も反発し合いそうな二人のお金と買春への価値観の差異に関して、やや軽めに流していたのも少し気に掛かりました。面白かったので、もっと!と欲が出てしまいます。
■太田垣康男先生
主人公にとって都合の良いことが次々と起こるなら物語の最後はバッドエンドに。ハッピーエンドにしたければ主人公には困難を与えるのが作劇の基本。キャラクターも表層を見せるだけで終始してはいけない。
■浅野いにお先生
シビアな環境で生きている主人公を、柔らかい絵柄とカラッとしたノリで描いていることにとても現代性を感じました。キャラの表情が良いので、多くを語らずとも感情を読み取ることが出来、二人が友情以上の何かを育んでいく過程を感じることが出来ました。ほのぼのとした落とし所には納得しつつも、もうワンアクションあってもいいかなと感じましたが、作品としての読後感はとても良かったです。漫画を描くセンスは十分備えている方だと思うので、違った題材の新たな作品を読んでみたいです。
■石塚真一先生
面白い。若者達の心情を実にたんたんと、でも確実にとらえています。
既存の価値観にとらわれない生き方に現代(いま)を生きる強さを感じました。
■業田良家先生
1時間1000円で売春している14歳の女の子。その子とゲームで遊ぶために1時間1000円を払う元同級生の女の子。いくらなんでも現実にはありえないだろうけど、心情的にはすでに起こっている現実のように感じた。強いリアリティーを持って、ラストは「夫婦関係」もおカネを払うことで成立していると言っているようだ。「友情」も「恋愛」もそんな面があるかもしれない。しかし物語の結論として示すのはもったいない。違うラストを考えれば、もっと深くて大きな作品になると思う。