これまでの受賞者
第93回発表
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大賞
賞状、記念盾、賞金200万円、液晶タブレットまたはスキャナーまたはミラーレス一眼デジタルカメラ、CLIP STUDIO PAINT EX 2デバイスプラン 3年版、受賞作収録本
少年部門
「雨ときどき宇宙人」米井ミライ(22歳・東京都)
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■あだち充先生
見やすい画面、絵の上手さ、会話のテンポ、コマ運び、話の展開、そして心地よい読後感。宇宙人キャラもいい味出てるし何の文句もありません。
■高橋留美子先生
宇宙人とのやりとりは面白いです。絵もおとなしいけれどうまいです。描きこんだ背景にモノローグが重なっている2ページめ、読みづらくてもったいない。構成はわかり易い。しかし展開は創造を超えてこない。基本はしっかりできているので、もっと読者を驚かす工夫を望みます。
■青山剛昌先生
いやぁー、超オモロかった!! 絵もストーリーもバツグン! ジーンとくるトコもとても読みやすく、構図もわかりやすい! 一番ウケたのが宇宙人が「早くウチに帰ってゴロゴロしたかったのにー」っていう想像図が「車のゲームかよ!?」って笑ってしまった。この作家の他の作品も読んでみたい!!
■畑健二郎先生
絵が上手く、漫画が上手く、キャラが可愛いので、作者の技量レベルで言うなら文句なしです。主人公の設定が思った以上に重かったのとストーリーにもうひと盛り上がり欲しかった点が惜しかったです。
青年部門
「コースロープ」かわじろう(30歳・神奈川県)
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■こざき亜衣先生
クサカベ大好き!
描き手の伝えたいイメージが明確にあるのがわかり、水の中の静けさ、水の重さを確かに感じ、演出が意図通り機能している気持ちよさがありました。絵もシンプルなのに表情があってとてもよいです。構図も大胆で素敵。コースロープを外すシーン、雨によってプールと外の世界が繋がるような、つぐちゃんの回復の予感を感じて胸が高鳴りました。とても好きです。
■太田垣康男先生
新人離れした完璧な作品。画風と物語が相まって水の底を漂う様な静かで優しい作風を生み出している。クライマックスで見せた自由なカメラワークも秀逸。これほど魅力的で開放感溢れる決めコマは滅多にお目にかかれない。心に残るタイトルも良い。
■浅野いにお先生
朴訥な絵柄でテンポも良く、ストレスなく読めるいい作品だと思いました。「利害関係が一致してるんだから、周りの人間に利用されてることの何が悪い」と僕は思ったので、田舎の親友のおせっかいに違和感を感じなくもなかったのですが、もう少し主人公がプレッシャーに押しつぶされていく描写を加えれば、ラストシーンの流れに納得ができたのかもしれません。朴訥な作風なだけに、多少意図的な「くどさ」や、絵柄の裏に隠されたトゲのようなものがあれば、より奥行きのある作品になるのではないかと感じました。
■石塚真一先生
気持ち良い物語ですねぇ~…グッとくる。
説明のできない、得もいわれぬ感動をくれる作品です。絵も素晴らしい。水につかってる方の足の表現とか…好きだなあ~。次の作品を楽しみにしてます。
■業田良家先生
水の表現が巧い。水中も水上からも、雨が降っている水面もシンプルな線とトーンだけで水の質感が伝わってくる。特に8ページ1コマ目の水中から急に顔を上げたシーンは見事に一瞬を切り取っていて画面の中に水の存在を感じた。
また、青春時代の悩みとそれからの再出発を「コースロープ」というプールの器具を使って上手に表現している。友情もいい。
入選
賞状、記念盾、賞金50万円、液晶タブレットまたはスキャナーまたはミラーレス一眼デジタルカメラ、CLIP STUDIO PAINT PRO、受賞作収録本
児童部門
「忍者の身代りくん」原作:金暮銀(48歳・北海道)/作画:踊り子ねずみ(25歳・東京都)特別育成金 30万円
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■むぎわらしんたろう先生
身代り忍者同士の戦い、面白く読めました! キャラクターの画もかわいく、よく描けています。…しかし、本物の小林くんはいったいどこへ行ったのでしょうか!?
■松本しげのぶ先生
面白かった。少々大人っぽいが、総合的にレベルが高い。見やすさ、迫力のある画面、盛り上がる演出、構成、忍者のキャラもリアリティを感じた。文句がないです。
■曽山一寿先生
かなり面白かったです。純粋なストーリー勝負だったら今回1位です。全体に話の組み立て方がうまいです。しっかりプロとしてのレベルで仕上がっており見事です。
■村瀬範行先生
丁寧に読むといろいろ引っかかるところはあるものの、面白い作品だと思います。絵面も楽しいのでどんどん読み進められます。絵柄や、絵の構図も大変好きです。
「ラッシャッセ!めんたにくん」なべのしめじ(35歳・東京都)特別育成金 30万円
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■むぎわらしんたろう先生
大変面白く読めました。先生を店長と呼んだり転校生の机を拭いてあげたりと、ラーメン屋ネタをうまく学校に置き換えてあり笑えます! 作画は描きなれていますね。
■松本しげのぶ先生
笑いました。終始ラーメン屋あるあるを学校生活に結びつけ、それに徹してブレていないのに感心しました。ギャグも何気ないものを押し通す、昇華させる勢いがある。
■曽山一寿先生
めんたにくんのキャラクターが、素晴らしいの一言につきます。笑いました。長い期間、活躍できる方だと思います。児童漫画界の星になってください! 頼んだぜ!
■村瀬範行先生
絵とネタ、どちらもサボらずに笑わせてやろうという姿勢に好感を持てました。ネタだけでも十分面白いものとなっていますが、しっかり顔や画面も面白く描けてます。
少女・女性部門
「穏やかなオム・ファタル」市庭いぬ子(28歳・愛知県)特別育成金 100万円
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■円城寺マキ先生
すぐにプロで通用すると思います。ただ、少年の感情の種類が一見わからなかったのが残念でした。恋心でないなら思春期と言えど少し特殊な感情表現かも。恋心なら同性ゆえの葛藤が見えると感情移入できるかな、と。
■椎名チカ先生
どんどんおじさんの魅力にハマり主人公にずっと共感していました。全部わかってやってるんだ。ずるい。キャラクターも個人の背景が見え色々と想像させられます。見せ方、空気をまとったコマ割と進め方が秀逸でした。
■真村ミオ先生
まさに魔性の男の叔父に翻弄される甥っ子の葛藤がよくできてました。絵も描き慣れていて構図コマ割りも見せ方も表情も抜群。ソウタ君がこれから叔父さんへの恋情や慕情をどう抱えて生きていくのか気になりました。
■みづほ梨乃先生
絵が非常にこなれています。細かいところに質感が出せればもっとよくなるかと。話は切ない感じがいいのですが少し入りづらい。少年の特別な気持ちをどう捉えていいかわからず、BLがあまりいきていないのが残念。
青年部門
「アヤビバレンス」原作:牧みどり(44歳・東京都)/作画:ナイハラ(21歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
主人公が最後まで好きになれず、逆にすごいと思いました。サブカル女の嫌な部分が容赦なく描かれていて、こちらの古傷が多少痛むのかもしれません。
地の文が三人称なのが珍しい読み味の漫画だなぁと思っていたら、熱が入ると急に一人称になったので少し混乱しました。気持ちは痛いほどわかるのですが、どちらかに統一した方が良いと思います。作田とかガラケーとか、おそらく意図していないものが伏線のような顔をしてしまっているので、感覚だけに頼らずもう少し客観性を持って構成・演出を練ってみてください。
■太田垣康男先生
壊れていく心模様を丁寧に積み重ねる事で共感とも違う「観察」に読者を誘う技ありの作品。感情の乱れを表現する絵も多彩で、闇落ちする様が実にリアル。主人公が教師というのも皮肉が効いてる。この先の地獄も「観察」したくなった。
■浅野いにお先生
キャラクターの表情が良く、感情とシンクロして荒くなる作画も面白く読みやすいです。ただページ数の割りにストーリーは単純で、全体にテンポが遅く感じました。特に男に裏切られたことを確信するまでの過程が長く、そこにページを割くならば、束の間の男との幸せな日々の描写を増やした方が、裏切られた重さを読者にも体感させることができたのではないでしょうか。ラストは主人公の反省も成長もなく尻すぼみだったので、人間的な成長が感じられる描写を落とし所として作品をまとめて欲しかったです。
■石塚真一先生
人間関係から生じる心情をしっかりとらえています。「どうなっちゃうの?」という気持ちでページをめくりました。現代を生きる人々を描ける作者だと思います。一話というパッケージを創る力もあります。
■業田良家先生
ミュージシャンを目指すヒモ男を好きになって、尽くしたのに利用されて騙された女の話。一瞬ありがちな話だと感じるが、ネームも良くて絵の表現力も高いので主人公の揺れ動く微妙な感情が私にもビンビン伝わってきた。主人公は結局ヒモ男との思い出の品を全部は捨てていなくて、それらをネットで売って公開して復讐するつもりなのだろうか。含みを持たせた終わり方とも言えるが、少しわかりにくかったのでもっとハッキリ描いた方がよかったのでは。とにかく感情表現が巧みで特に怒りの表現が素晴らしかった。
佳作
賞状、記念盾、賞金30万円、受賞作収録本
児童部門
「フジミの盾」はくらびゆう(20歳・千葉県)特別育成金 10万円
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■むぎわらしんたろう先生
冒頭からわかりづらく、なかなか物語に入っていけないです。絵は、主人公のアップの陰影や敵の不気味さなど、目を見張る部分が多いです。背景に力を入れましょう。
■松本しげのぶ先生
主人の絶対命令、そして自分の存在意義を乗り越えて人を救うシーンは熱くなりました。20歳でこのテーマに手をつけ、描ききったのは素晴らしいと思います。
■曽山一寿先生
個人的に好きな話です! モズとフジミの絆は、心が熱くなります。でもそれが読者に届くかといわれると、かなり怪しいです。読者に伝える技術がまだまだ必要です。
■村瀬範行先生
モズくんの考え方や、それにまつわるエピソードなどはよくできていますが、全体に暗くてあまり楽しくありません。絵はきれいですが背景がなく、情報が少ないです。
「落ちこぼれフルスイング」鶴田あきら(22歳・東京都)特別育成金 10万円
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■むぎわらしんたろう先生
素振り少年とアカマルとの奇妙な友情物語。とても面白く読めました!先が読める展開ですが、クライマックスのフルスイングが全てを吹き飛ばすかっこよさです!
■松本しげのぶ先生
鬼と少年との妖怪退治。話もわかりやすく絵も見やすい。王道ストーリーで読後感もよい。でも、ここからさらに面白くなるよう挑戦と努力を。実力はあると思います。
■曽山一寿先生
上手です。漫画としてキチンと押さえるべきところを押さえています。キャラの数を抑えているのも素晴らしい。ただ、全体に平均点でおさまっているのが惜しいです。
■村瀬範行先生
寄り絵が少し多いものの、絵柄は好きです。見やすいです。アカマルのデザインもいいと思います。ですが、読者と主人公2人との距離が遠いという印象を受けました。
「天才二人」三田聖(20歳・神奈川県)特別育成金 10万円
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■むぎわらしんたろう先生
独特なタッチのキャラ。2人の関係と舞台を一枚絵で表現したタイトルの見開きは見事。画の個性を生かし、たくさん描いてください。「努力の天才」いいセリフです!
■松本しげのぶ先生
絵がシンプルで見やすい。キャラクターの描きわけも面白いデザインで変化をつけている。友情ストーリーも王道で、読後もすがすがしいです。とても読みやすかった。
■曽山一寿先生
かなり個性の強い漫画だと思います。そういう姿勢は嫌いではありません。ですが、不親切な部分があるので、読者に対し親切に! ココを忘れずがんばってください。
■村瀬範行先生
大変面白かったです。キャラのセリフが自然で、心地よく読み終えることができました。まだ直す余地はあると思いますが、メッセージもポジティブでよい作品です。
「シャベルの冒険」中園まさと(28歳・福岡県)特別育成金 10万円
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■むぎわらしんたろう先生
作画が上手く、かなり描きなれた感じです。主人公やサソリ、スコップなど、相当勉強しないと描けないくらいのデザイン力です。肝心の冒険があまりないのが残念。
■松本しげのぶ先生
絵がすっきりと見やすくてよい。主人公の明るさもいいです。ただ、タイトルにするほどのものであるシャベルが持つアイテムの活躍に、もっと工夫がほしかったです。
■曽山一寿先生
今回、一番の高得点をつけました。全体的にとてもよくできています。動きのあるシーンが描けているし盛り上がりもあり、なにより主人公が楽しそうなのがいいです。
■村瀬範行先生
シャベルのギミックが楽しく、連載できそうなアイデアだと思いました。主人公も元気なよい子で好感が持てます。話の展開は、もうひとひねりできるといいですね。
少年部門
「徒花譚」Nichica(17歳・東京都)
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■あだち充先生
未完成な部分が残るクセの強い絵柄。テーマも生のままストレートですが、たくさんの伸びしろを持っている人だと思います。
■高橋留美子先生
絵はインパクトがあります。キャラクターに関しては主人公、悪役共に掘り下げが足りません。背景の絵ももう少し頑張りましょう。作者は17才という事でのびしろに期待できます。絵は描いていればもっとうまくなるので物語構築の勉強をしてください。
■青山剛昌先生
とにかくアクションがわかりにくかった。戦う相手との立ち位置を読み手が理解できないとのれないし、コマによって刀の大きさが変わってたりすると迫力も伝わって来ない。オチは良かったけど、アクションで魅せる作品なのでもう少し腕を磨いて欲しい。扉絵とかは独特のセンスがあって上手いからもったいない。
■畑健二郎先生
17歳でこれだけ描けるなら立派だと思いました。緻密な線を重ねることで独自の世界観を表現しようとしている点、決めゴマで凝った構図に挑戦している点も良かったです。シナリオに関しては直接的な表現が多と感じたので、あえてそんな表現を使わない美学のようなものもたくさんの作品を読むことで学んでいけたらいいかなと思います。とにかく今後に期待です。頑張っていきましょう!
「怪獣・オタク・ハートビート」心煮イッキ(26歳・愛知県)
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■あだち充先生
背景も含め、作品にていねいに向かい合う姿勢に好感が持てます。ただドラマを盛り上げる大切な要素である、居住区の住民達の描き方がちょっと残念。
■高橋留美子先生
画面作りはうまいと思います。しかし10ページめの大切なモノローグが絵にかぶって、つぶれている。伝わりません。描きこんだ背景と世界観に対して人物造物がなのがもったいない。展開も良くも悪くも素直ですがレベルは高いのでもっと目立つキャラクターを考えてみてください。
■青山剛昌先生
絵はとんでもなくうまかったけど、ストーリーにイマイチのれなかった。なぜ中央の怪獣と危険医の間にずーっと移住区が残されたままなのかも分からなかった。バイクじゃ無理でも車やヘリなら楽に移動できそう。何か納得できる説明が欲しかった。しかし何度も言うけど絵がとんでもなく上手いので期待大です!
■畑健二郎先生
絵に関しては見せたいシーンがハッキリしていて、迫力有ある画面が作れていたと思います。絵も物語もとても読みやすかったです。ただ内容に関して、怪獣物の難しさであるリアリティの構築が上手くいっていなかった印象です。またキャラの内面の掘り下げも不十分なように思いました。今後の課題として、心理描写を学ぶために、登場人物の感情線にフォーカスして色々な作品を読むといいんじゃないかなと思います。
「グッバイニサン」犬田白安(17歳・大阪府)
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■あだち充先生
どこからこういう作品が出て来たのか作者本人に興味が湧きました。セリフ回し、話の展開にも才能を感じます。
■高橋留美子先生
これは少年漫画かどうかは置いておいてキャラクターがちゃんと作られている感じはしました。構成もできていて話、キャラの気持ち共に的確に伝わったと思います。あとは、作者の描きたい物と読者のニーズが合うかどうか、だと思います。
■青山剛昌先生
「なんて美味しそうに食べるんだ」ってトコは良かったんだけど…全体的にストーリーにのれなかった。指輪を料理に入れた男は本当にワザと入れたのかとか。もしもそうなら、そんな男を未だに雇っているであろうレストランに主人公は戻りたいのか?とか、色々モヤモヤしてしまいました…(笑)
■畑健二郎先生
まず17歳という年齢でこれだけ描けていれば技量としては相当なレベルだと思うので結果がどうあれ胸を張って良いと思います。主人公の表情やセリフやキャラクターデザインにおいて直接的すぎる表現が多いので、それを抑制できる演出が出来るようになれば描ける表現がグッと広がり、より説得力のある素晴らしい漫画を描けると思います。
「幻肢幽霊」慶(22歳・広島県)
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■あだち充先生
テーマのせいかナレーションとセリフを読まされた気がしてしまうのは仕方ないのでしょうか? 見せる漫画としての一工夫があってもよかったかと…
■高橋留美子先生
絵は非常にうまいのですが、ヒロインの女子高生のキャラデザ地味すぎでは? こういうネタを淡白に進めていく作りは悪くないんですが、ならば絵にしてももう少し華が欲しい。基本はできているので、もっとインパクトが必要と思います。
■青山剛昌先生
うーん…悪くはなかったけど色々謎が多い作品だったなぁ… 一番は兄の死の原因が事故なのか、妹のせいなのか? まさかの自殺なのか、よくわからなかった…(多分事故だと思うけど)あと最初に霊を見たとき驚きの表現をする為に、主人公の髪が白くなっていたけど、霊も白いので紛らわしい(笑)
■畑健二郎先生
この漫画独自の設定を使い、物語が進んでいく感じがとても自然で面白かったです。絵に関してもとても丁寧で漫画自体も読みやすくて良かったです。全体的にキャラデザが地味だったので、そこを頑張れば読者の没入感も一段と高まると思います。これだけ描けるならきっとできると思うので頑張ってください。
「夜空には揺れる月」森みなも(22歳・京都府)
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■あだち充先生
絵柄も見やすく、話も分かりやすくきちんと読者を意識して描かれている気がします。踊る主人公だけでなくそれを描いている作者の楽しさまで伝わってとてもよろしいかと…
■高橋留美子先生
女の子の絵がかわいいです。話はフワッとしていますが、なんとなく雰囲気で伝わるような作品です。男の子キャラも見てみたいです。この作品のみで判断すると少年誌でなくてもいいのでは?と思いますが、絵のかわいらしさは武器になると思います。
■青山剛昌先生
絵もきれいで読みやすかったけど、話にイマイチ抑揚がない気がする。実際月が無くなったらもっと大変な事になりそうだけど、世の中が割と平和(笑)。ダンスのショーが中止になった理由がちゃんと書かれていないのでモヤモヤする。あとせっかく月なんだからゆららに空を飛ぶ能力以外もつけて欲しかったかも…(笑)
■畑健二郎先生
背景が細かく描き込まれていたりキャラも生き生き描けていたり絵に関してはハイレベルだったと思います。ただ物語に関してはぶっとんだ設定と深刻な世界観が足を引っ張っている印象でした。今後の課題として、読者の共感はどうやったら得られるのかを一度真剣に考えてみてください。漫画を描く能力はとても高いと思うので期待しています。頑張ってください。
「あこと龍之介」森川佐太郎(23歳・福岡県)
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■あだち充先生
ドジなロボットは可愛いのですが、色々な問題を置き去りにしたまま終わらせていませんか? この先の事を考えると少々モヤモヤします。
■高橋留美子先生
あこのキャラはとてもいいので、もう少し絵が整っていれば…惜しいです。主人公の気持ちもストレートに描いてあるので、物語も素直に読めました。かけあいも面白いので、とにかく絵の練習をしてください。
■青山剛昌先生
割と面白かったけど、ラブコメとしてもう一声欲しかった。リアルな女の子も登場させて比較させても良かったと思う。あと、バラバラにぶっ壊れたのに簡単に治りすぎ(笑) あこを外に連れ出すシーンも見たかったかも… 絵的にはとても見やすくてセンスあり!
■畑健二郎先生
ロボットのあこはとても可愛く描けていたと思います。最後の照れ顔の主人公なども、とてもラブコメしていていい感じでした。今後の課題として、人物をもう少し掘り下げて描くように気をつけた方がいいかなと思います。たとえモブであっても、血の通った人間として、一人一人感情を考え抜いて描くようにしてみてください。そうすればきっと、もっと可愛く愛情溢れた作品が作れると思います。
少女・女性部門
「思春期エラー」名寄匠(大阪府)
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■円城寺マキ先生
絵柄が可愛く安定しており、内容も素直でタイトルもピッタリ。難点は、コマのメリハリの弱さと、二人の過去エピソードがなかった点。男子がどう変わってしまったのか、具体的に分かると主人公の戸惑いが表現できたと思います。
■椎名チカ先生
綺麗で見やすい絵柄。誰がどこで何をしているのかわかりやすく、二人の爽やかさもあり気持ちよく読めた。ただお話は途中で先が読めてしまい勿体ないので、二人の個性を見せて「こうきたか!」と思わせてほしかったです。
■真村ミオ先生
思春期の照れくささがよく描かれ、可愛い作品でした。ペンタッチもとても綺麗で表情も柔らかく見やすかったです。二人の等身大の悩みが思わず応援したくなるような温かさで読後感もよかったです。今後の作品も楽しみ。
■みづほ梨乃先生
絵が丁寧で綺麗です。演出は全体的に見せ方にメリハリがなく、単調な印象。お話は可愛いが目新しさがないのが惜しい。思春期の細かな変化がキャラに見られないのでこの年代を描く必要性を感じないというのもあるかも。
「ハロー、アゲイン」望月らむ(愛知県)
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■円城寺マキ先生
ストーリー、ネーム展開、見せ場、全て王道で読みやすいです。画面も華やか。主人公の後悔や悲しみがぶちまけられてから繋がるラストも盛り上がってます。ただ主人公の素性がピンとこず、年齢感も今ひとつでした。
■椎名チカ先生
丁寧に描かれた小物や愛くるしいキャラクターのおかげで楽しく読めました。話は序盤から先が読めてしまうのですが、テンポよく進み最後は涙あり、成長あり、切なくも前を向いた終わり方で起承転結がとても上手です。
■真村ミオ先生
絵がとても華やかで可愛い! 最後まで力入れて描いてるのが伝わります。多くの読者さんに好まれる絵柄だと思います。話もハロウィンを題材に上手く纏められていて、切ないテーマでありつつ温かみのある作品でした。
■みづほ梨乃先生
世界観が独特でいいですね。ただキャラが今どこにいて何をしているのかわかりにくいので、背景や場面転換はわかりやすく。キャラのビジュアルも、もっとサービス精神を出せば一気に世界に引き込めると思います。
「親愛なるあなたへ」柊スミレ(17歳・香川県)
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■円城寺マキ先生
大半の場面転換がわかりづらい。キャラの背景をちゃんと見せてほしい。死神は何かあって殺せない死神になったのではないか。ヒロインも死にたい程苦しんでいる心情が伝わらない。絵は今後どんどん上達すると思います。
■椎名チカ先生
絵柄は可愛いのですが安定していないので、同じキャラに見えるよう意識し、洋服や景色も資料などを見て描くと、説得力が増すと思います。話は少しありがちですが「ここが描きたい!」というのが伝わりよかったです。
■真村ミオ先生
死神との交流が優しさと切なさで描かれとてもいい雰囲気でした。主人公の表情も可愛く魅力的。今後描き慣れてくるともっと魅力溢れる絵になるだろうなと思います。扉絵が雑に見えるのが残念…!
■みづほ梨乃先生
とても感動しました。オチに向かう構成が上手いです。途中で視点が変わったのが残念。死神が女の子に魅かれた流れがわかりにくかったです。基本的な絵柄はいいのですが、もう少し丁寧に描いたほうがより伝わると思います。
青年部門
「さよならバードランド」赤城ナツイチ(25歳・埼玉県)
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■こざき亜衣先生
雪の表現が真似したいくらいとてもいいなぁと思いました。絵、描写、演出で充分物語を伝える力があるので、モノローグはだいぶ減らしても問題ないと思います。
幼い恋愛をうまく描いていると思います。自分勝手で幼いのはお互い様ですね。個人的には、爛(ただ)れた後に人として相手と向き合う姿を見てみたいなぁと思いました。女の子も男の子もかわいく描けるのが強い武器ですね。
■太田垣康男先生
青春の蹉跌はいつの時代でも若者を苦しめる。変わっていく先輩の容姿と表情が痛々しく、無力で流される主人公も切ない。理想が剥がれ落ち、現実で繋がった2人のラストシーンに終わりを感じさせる構成は見事。
■浅野いにお先生
純情ぶりながらやることはやる主人公に若干の苛立ちを感じながら読み進めましたが、ストーリーが完全に起承転結の転で終わっており、尻切れトンボ感は否めません。都会に染まってゆく先輩に嫌悪感を感じる描写もステレオタイプに感じましたし、独りよがりな思い込みで行動していた主人公に、反省なり自己嫌悪なりの結論を与えてくれないと、物語として成立していないように感じました。男女ともにキャラの顔のデザインが端正で、全体的に線も細いので、もっと人間的なエグ味や重さがあってもいいと思います。
■石塚真一先生
青春期の心情をしっかり正面からとらえています。テンポも絵のバランスも良い。作品を描く上で作者の視点がしっかりあるからこそ描けたドラマだと思いました。多岐に渡る人々の心情の間の良い位置に視点を構えています。多くの作品を世に送り出せる力のある作者だと思いました。
■業田良家先生
話の中で明かされるまで「先輩」が顧問の先生と付き合っていたとは思わなかった。それで「先輩」が駅で泣いていた理由がわかった。巧い話の運び方だと思う。好きな女性に対する憧れや理想や妄想が壊れる時の痛みがよく伝わってきた。それが成長への第一歩とも言える。ただ最後はもうひとひねりかワンエピソードを入れてほしい。人物も背景もちゃんと描けているのでよいエピソードを追加できればどこかの雑誌に載っていてもおかしくない。
「アンドロイドは夢を見る」和島直樹(24歳・栃木県)
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■こざき亜衣先生
アクションシーンがお上手ですね。羨ましい。描き手がこの世界観を愛しているのだなぁというのが伝わりました。ただ、読者は簡単にその世界に入ってきてはくれません。もう少し客観的に読者の気持ちを考えてキャラを考えた方がいいかなと思いました。
メインの三人が全員アンドロイドのためか、私にはいまひとつ感情移入がしづらかったです。そしてアンドロイドが非常に人間らしい感情を持っているのも違和感があり、それが「ドラマが作りやすいから」以外の理由が見当たらなかったことが最後まで気になってしまいました。一人くらい人間を置いて差異を描いてくれるともう少し入り込めたかな…と思います。リッパーはかわいくていいキャラクターだと思いました。
■太田垣康男先生
荒削りな原石の魅力。磨けば光る可能性を感じた。分かり易く緩急を付けたアクションシーンが最大の武器。絵の描き込みも程良くて分かり易い。この「分かり易さ」は読者を意識してる証拠であり連載作家に必須のスキル。しっかり磨いて才能を伸ばして欲しい。
■浅野いにお先生
リアリティーが全く感じられませんでした。アンドロイドが人間的な葛藤をするという話はよくあるモチーフなのですが、その場合は必ず比較対象となる生身の人間の葛藤も出さないと、あまりにフィクションが過ぎて置いてけぼりになる読者も多いはずです。こと青年誌に作品を発表したいなら、設定やキャラデザイン、アクションシーンの表現部分も含め、フィクション作品のお約束ばかりを用いた作品作りは説得力が欠けますので、リアリティーを省略せずに地に足のついた作品づくりを目指して欲しいです。
■石塚真一先生
良い意味で考えさせられることの多い作品です。生きる意味、存在する意味、利他と利己等々、一つの話の中に問題が複数提示されています。自由な世界観の中に見る感情をこれからも表現していってください。
■業田良家先生
セリフとモノローグが交錯していて誰が誰に言ったセリフなのか、さらに誰の独白なのかが判断しにくい。その分話の展開にスピード感が出ているとも言えるが、読者が混乱してしまうデメリットが大きい。そこは工夫してほしい。最初のSF小説とも言える『フランケンシュタイン』の怪物のように「なんで私を作ったんだ」「私の存在価値は何なんだ」という自問は現実の私たちにも共通するもので、アンドロイドの深い悲しみを自分のものとして感じた。最後は希望の持てる終わり方でよかった。
「ペットボトルの向かう先」あいだ朮(33歳・千葉県)
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■こざき亜衣先生
ペットボトルの行方を追わせながら、嫌な感情の連鎖を見せ、最後は少しの喜びで終わるというバランス感が青年誌らしくて好みでした。テンポが少し悪いかなと感じる部分があったので、動きを整理したりセリフを精査したり、ペットボトルの目線を構図に取り入れるなど、ここから更に読み味を洗練させる作業に取り組んでみて欲しいです。
■太田垣康男先生
主観を次々に変えて物語を繋げる難しい技法を上手く纏めている。より弱者へと伝播して行く負の感情に少年が飲み込まれず、作品に昇華させる展開も良かった。物言わぬ猫の存在感が利いている。
■浅野いにお先生
作画技術的にまだ足りない部分があるとは思いますが、物語のコンセプトが非常に面白く、それぞれのエピソードは些細なことですが、そこはかとなくスリリングな展開に目が離せませんでした。ラストは安堵感があり、読後感としては申し分ないです。ただ、例えば冒頭の女性を何かしらの形で再び登場させるなどで物語を円環構造にすれば、ペットボトルを中心とした世界の小さな切り抜きといった印象が強まり、読者をハッとさせる帰結になったかもしれません。投稿作では珍しい、構成で魅せる作品だったのでとても感心しました。
■石塚真一先生
一編の詩のようなお話ですね。オムニバスの物語の中を浮遊しているような感覚になりました。キャラ達の表情も豊かです。作者ならではの自由な発想を大切に進んでいって欲しいと思いました。
■業田良家先生
私も電車の中でコロコロと転がるペットボトルを見て気になった事が何度かある。そのペットボトルの行く先々で様々な人間模様が描かれていく。そのアイデアが上質で面白い。人々のイライラや怒りが最後は小学生の作った工作、つまりは芸術(?)に昇華されてホッとした。
「裸の内側」ナシウヒカ(東京都)
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■こざき亜衣先生
乾いた描線と女体の表現が良いですね。瞳の表現が多彩でいいなぁと思いました。
内容としては描きたいテーマはハッキリと伝わるものの、まだ物語に落とし込めてはいないと思いました。主人公がキャラクターとして弱く、どんな問題を抱えた人間なのか抽象的な言葉でしか描かれていないため、ストリップを見て開眼するカタルシスに乗れません。キャラと呼べるものが主人公だけで、ストリッパーたちにも人格が描かれていないせいか、ストリップ観劇ルポっぽく感じてしまったのが残念です。
■太田垣康男先生
髪留めが小鬼の角に見えるオープニングカットで掴まれた。裸婦への探究心からストリップショーに行く展開も微笑ましく、ショーの描写も実に上手かった。主人公が裸に魅了されどんどん好きになるにつれて自分も裸になっていく演出も微笑ましい。実に健康的な作品だ。
■浅野いにお先生
衝動的な絵柄と表現で勢いがあります。しかし、描きたいものと興味のないものがはっきりした、極めて主観性の強い描写が目立ち、トータルでアンバランスな印象を受けました。人物の顔も不安定なので、キャラが増えてゆくと識別できなくなる可能性があると思います。表現に強弱があるのは良いことなのですが、ラストがブツ切れで結論も急なので、せめて主人公のその後のエピローグ的なものが欲しいです。読者の立場に立って可能な限り丁寧でロジカルな作品作りを意識して欲しいと感じました。
■石塚真一先生
物語を通して主人公が変化していくさまに感動しました。
ただ面白いだけじゃなく、読んだ側も何かやってみたいと思わせてくれる作品です。作者の持つエネルギーを信じて自由に描き続けて欲しいと思いました。
■業田良家先生
主人公の顔が感情表現や角度によって激しく変わるのでどれが主人公の顔かわからなくなり読んでいて混乱してしまう。漫画を描く上で一番難しいことのひとつだが工夫してほしい。逆にストリップ劇場のおじいさんたちの顔はひとりひとり魅力的に描き分けられていた。このタイプの絵の方が得手なのかもしれない。主人公がひとりのストリッパーをすごく好きになったのは私にも伝わってきたが、そのストリッパーのセリフも会話も具体的なエピソードもないので読者にはストリッパー自体の魅力が伝わりにくい。作者のメッセージは理解できた。
奨励金
奨励金
少女・女性部門
「水を得たいモブ」蜂河(16歳・長崎県)
「ちゅうちゅう♡注意報」福来はなの(24歳・東京都)
児童部門
入選
「忍者の身代りくん」原作:金暮銀(48歳・北海道)/作画:踊り子ねずみ(25歳・東京都)特別育成金 30万円
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■むぎわらしんたろう先生
身代り忍者同士の戦い、面白く読めました! キャラクターの画もかわいく、よく描けています。…しかし、本物の小林くんはいったいどこへ行ったのでしょうか!?
■松本しげのぶ先生
面白かった。少々大人っぽいが、総合的にレベルが高い。見やすさ、迫力のある画面、盛り上がる演出、構成、忍者のキャラもリアリティを感じた。文句がないです。
■曽山一寿先生
かなり面白かったです。純粋なストーリー勝負だったら今回1位です。全体に話の組み立て方がうまいです。しっかりプロとしてのレベルで仕上がっており見事です。
■村瀬範行先生
丁寧に読むといろいろ引っかかるところはあるものの、面白い作品だと思います。絵面も楽しいのでどんどん読み進められます。絵柄や、絵の構図も大変好きです。
「ラッシャッセ!めんたにくん」なべのしめじ(35歳・東京都)特別育成金 30万円
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■むぎわらしんたろう先生
大変面白く読めました。先生を店長と呼んだり転校生の机を拭いてあげたりと、ラーメン屋ネタをうまく学校に置き換えてあり笑えます! 作画は描きなれていますね。
■松本しげのぶ先生
笑いました。終始ラーメン屋あるあるを学校生活に結びつけ、それに徹してブレていないのに感心しました。ギャグも何気ないものを押し通す、昇華させる勢いがある。
■曽山一寿先生
めんたにくんのキャラクターが、素晴らしいの一言につきます。笑いました。長い期間、活躍できる方だと思います。児童漫画界の星になってください! 頼んだぜ!
■村瀬範行先生
絵とネタ、どちらもサボらずに笑わせてやろうという姿勢に好感を持てました。ネタだけでも十分面白いものとなっていますが、しっかり顔や画面も面白く描けてます。
佳作
「フジミの盾」はくらびゆう(20歳・千葉県)特別育成金 10万円
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■むぎわらしんたろう先生
冒頭からわかりづらく、なかなか物語に入っていけないです。絵は、主人公のアップの陰影や敵の不気味さなど、目を見張る部分が多いです。背景に力を入れましょう。
■松本しげのぶ先生
主人の絶対命令、そして自分の存在意義を乗り越えて人を救うシーンは熱くなりました。20歳でこのテーマに手をつけ、描ききったのは素晴らしいと思います。
■曽山一寿先生
個人的に好きな話です! モズとフジミの絆は、心が熱くなります。でもそれが読者に届くかといわれると、かなり怪しいです。読者に伝える技術がまだまだ必要です。
■村瀬範行先生
モズくんの考え方や、それにまつわるエピソードなどはよくできていますが、全体に暗くてあまり楽しくありません。絵はきれいですが背景がなく、情報が少ないです。
「落ちこぼれフルスイング」鶴田あきら(22歳・東京都)特別育成金 10万円
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■むぎわらしんたろう先生
素振り少年とアカマルとの奇妙な友情物語。とても面白く読めました!先が読める展開ですが、クライマックスのフルスイングが全てを吹き飛ばすかっこよさです!
■松本しげのぶ先生
鬼と少年との妖怪退治。話もわかりやすく絵も見やすい。王道ストーリーで読後感もよい。でも、ここからさらに面白くなるよう挑戦と努力を。実力はあると思います。
■曽山一寿先生
上手です。漫画としてキチンと押さえるべきところを押さえています。キャラの数を抑えているのも素晴らしい。ただ、全体に平均点でおさまっているのが惜しいです。
■村瀬範行先生
寄り絵が少し多いものの、絵柄は好きです。見やすいです。アカマルのデザインもいいと思います。ですが、読者と主人公2人との距離が遠いという印象を受けました。
「天才二人」三田聖(20歳・神奈川県)特別育成金 10万円
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■むぎわらしんたろう先生
独特なタッチのキャラ。2人の関係と舞台を一枚絵で表現したタイトルの見開きは見事。画の個性を生かし、たくさん描いてください。「努力の天才」いいセリフです!
■松本しげのぶ先生
絵がシンプルで見やすい。キャラクターの描きわけも面白いデザインで変化をつけている。友情ストーリーも王道で、読後もすがすがしいです。とても読みやすかった。
■曽山一寿先生
かなり個性の強い漫画だと思います。そういう姿勢は嫌いではありません。ですが、不親切な部分があるので、読者に対し親切に! ココを忘れずがんばってください。
■村瀬範行先生
大変面白かったです。キャラのセリフが自然で、心地よく読み終えることができました。まだ直す余地はあると思いますが、メッセージもポジティブでよい作品です。
「シャベルの冒険」中園まさと(28歳・福岡県)特別育成金 10万円
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■むぎわらしんたろう先生
作画が上手く、かなり描きなれた感じです。主人公やサソリ、スコップなど、相当勉強しないと描けないくらいのデザイン力です。肝心の冒険があまりないのが残念。
■松本しげのぶ先生
絵がすっきりと見やすくてよい。主人公の明るさもいいです。ただ、タイトルにするほどのものであるシャベルが持つアイテムの活躍に、もっと工夫がほしかったです。
■曽山一寿先生
今回、一番の高得点をつけました。全体的にとてもよくできています。動きのあるシーンが描けているし盛り上がりもあり、なにより主人公が楽しそうなのがいいです。
■村瀬範行先生
シャベルのギミックが楽しく、連載できそうなアイデアだと思いました。主人公も元気なよい子で好感が持てます。話の展開は、もうひとひねりできるといいですね。
少年部門
大賞
「雨ときどき宇宙人」米井ミライ(22歳・東京都)
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■あだち充先生
見やすい画面、絵の上手さ、会話のテンポ、コマ運び、話の展開、そして心地よい読後感。宇宙人キャラもいい味出てるし何の文句もありません。
■高橋留美子先生
宇宙人とのやりとりは面白いです。絵もおとなしいけれどうまいです。描きこんだ背景にモノローグが重なっている2ページめ、読みづらくてもったいない。構成はわかり易い。しかし展開は創造を超えてこない。基本はしっかりできているので、もっと読者を驚かす工夫を望みます。
■青山剛昌先生
いやぁー、超オモロかった!! 絵もストーリーもバツグン! ジーンとくるトコもとても読みやすく、構図もわかりやすい! 一番ウケたのが宇宙人が「早くウチに帰ってゴロゴロしたかったのにー」っていう想像図が「車のゲームかよ!?」って笑ってしまった。この作家の他の作品も読んでみたい!!
■畑健二郎先生
絵が上手く、漫画が上手く、キャラが可愛いので、作者の技量レベルで言うなら文句なしです。主人公の設定が思った以上に重かったのとストーリーにもうひと盛り上がり欲しかった点が惜しかったです。
佳作
「徒花譚」Nichica(17歳・東京都)
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■あだち充先生
未完成な部分が残るクセの強い絵柄。テーマも生のままストレートですが、たくさんの伸びしろを持っている人だと思います。
■高橋留美子先生
絵はインパクトがあります。キャラクターに関しては主人公、悪役共に掘り下げが足りません。背景の絵ももう少し頑張りましょう。作者は17才という事でのびしろに期待できます。絵は描いていればもっとうまくなるので物語構築の勉強をしてください。
■青山剛昌先生
とにかくアクションがわかりにくかった。戦う相手との立ち位置を読み手が理解できないとのれないし、コマによって刀の大きさが変わってたりすると迫力も伝わって来ない。オチは良かったけど、アクションで魅せる作品なのでもう少し腕を磨いて欲しい。扉絵とかは独特のセンスがあって上手いからもったいない。
■畑健二郎先生
17歳でこれだけ描けるなら立派だと思いました。緻密な線を重ねることで独自の世界観を表現しようとしている点、決めゴマで凝った構図に挑戦している点も良かったです。シナリオに関しては直接的な表現が多と感じたので、あえてそんな表現を使わない美学のようなものもたくさんの作品を読むことで学んでいけたらいいかなと思います。とにかく今後に期待です。頑張っていきましょう!
「怪獣・オタク・ハートビート」心煮イッキ(26歳・愛知県)
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■あだち充先生
背景も含め、作品にていねいに向かい合う姿勢に好感が持てます。ただドラマを盛り上げる大切な要素である、居住区の住民達の描き方がちょっと残念。
■高橋留美子先生
画面作りはうまいと思います。しかし10ページめの大切なモノローグが絵にかぶって、つぶれている。伝わりません。描きこんだ背景と世界観に対して人物造物がなのがもったいない。展開も良くも悪くも素直ですがレベルは高いのでもっと目立つキャラクターを考えてみてください。
■青山剛昌先生
絵はとんでもなくうまかったけど、ストーリーにイマイチのれなかった。なぜ中央の怪獣と危険医の間にずーっと移住区が残されたままなのかも分からなかった。バイクじゃ無理でも車やヘリなら楽に移動できそう。何か納得できる説明が欲しかった。しかし何度も言うけど絵がとんでもなく上手いので期待大です!
■畑健二郎先生
絵に関しては見せたいシーンがハッキリしていて、迫力有ある画面が作れていたと思います。絵も物語もとても読みやすかったです。ただ内容に関して、怪獣物の難しさであるリアリティの構築が上手くいっていなかった印象です。またキャラの内面の掘り下げも不十分なように思いました。今後の課題として、心理描写を学ぶために、登場人物の感情線にフォーカスして色々な作品を読むといいんじゃないかなと思います。
「グッバイニサン」犬田白安(17歳・大阪府)
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■あだち充先生
どこからこういう作品が出て来たのか作者本人に興味が湧きました。セリフ回し、話の展開にも才能を感じます。
■高橋留美子先生
これは少年漫画かどうかは置いておいてキャラクターがちゃんと作られている感じはしました。構成もできていて話、キャラの気持ち共に的確に伝わったと思います。あとは、作者の描きたい物と読者のニーズが合うかどうか、だと思います。
■青山剛昌先生
「なんて美味しそうに食べるんだ」ってトコは良かったんだけど…全体的にストーリーにのれなかった。指輪を料理に入れた男は本当にワザと入れたのかとか。もしもそうなら、そんな男を未だに雇っているであろうレストランに主人公は戻りたいのか?とか、色々モヤモヤしてしまいました…(笑)
■畑健二郎先生
まず17歳という年齢でこれだけ描けていれば技量としては相当なレベルだと思うので結果がどうあれ胸を張って良いと思います。主人公の表情やセリフやキャラクターデザインにおいて直接的すぎる表現が多いので、それを抑制できる演出が出来るようになれば描ける表現がグッと広がり、より説得力のある素晴らしい漫画を描けると思います。
「幻肢幽霊」慶(22歳・広島県)
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■あだち充先生
テーマのせいかナレーションとセリフを読まされた気がしてしまうのは仕方ないのでしょうか? 見せる漫画としての一工夫があってもよかったかと…
■高橋留美子先生
絵は非常にうまいのですが、ヒロインの女子高生のキャラデザ地味すぎでは? こういうネタを淡白に進めていく作りは悪くないんですが、ならば絵にしてももう少し華が欲しい。基本はできているので、もっとインパクトが必要と思います。
■青山剛昌先生
うーん…悪くはなかったけど色々謎が多い作品だったなぁ… 一番は兄の死の原因が事故なのか、妹のせいなのか? まさかの自殺なのか、よくわからなかった…(多分事故だと思うけど)あと最初に霊を見たとき驚きの表現をする為に、主人公の髪が白くなっていたけど、霊も白いので紛らわしい(笑)
■畑健二郎先生
この漫画独自の設定を使い、物語が進んでいく感じがとても自然で面白かったです。絵に関してもとても丁寧で漫画自体も読みやすくて良かったです。全体的にキャラデザが地味だったので、そこを頑張れば読者の没入感も一段と高まると思います。これだけ描けるならきっとできると思うので頑張ってください。
「夜空には揺れる月」森みなも(22歳・京都府)
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■あだち充先生
絵柄も見やすく、話も分かりやすくきちんと読者を意識して描かれている気がします。踊る主人公だけでなくそれを描いている作者の楽しさまで伝わってとてもよろしいかと…
■高橋留美子先生
女の子の絵がかわいいです。話はフワッとしていますが、なんとなく雰囲気で伝わるような作品です。男の子キャラも見てみたいです。この作品のみで判断すると少年誌でなくてもいいのでは?と思いますが、絵のかわいらしさは武器になると思います。
■青山剛昌先生
絵もきれいで読みやすかったけど、話にイマイチ抑揚がない気がする。実際月が無くなったらもっと大変な事になりそうだけど、世の中が割と平和(笑)。ダンスのショーが中止になった理由がちゃんと書かれていないのでモヤモヤする。あとせっかく月なんだからゆららに空を飛ぶ能力以外もつけて欲しかったかも…(笑)
■畑健二郎先生
背景が細かく描き込まれていたりキャラも生き生き描けていたり絵に関してはハイレベルだったと思います。ただ物語に関してはぶっとんだ設定と深刻な世界観が足を引っ張っている印象でした。今後の課題として、読者の共感はどうやったら得られるのかを一度真剣に考えてみてください。漫画を描く能力はとても高いと思うので期待しています。頑張ってください。
「あこと龍之介」森川佐太郎(23歳・福岡県)
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■あだち充先生
ドジなロボットは可愛いのですが、色々な問題を置き去りにしたまま終わらせていませんか? この先の事を考えると少々モヤモヤします。
■高橋留美子先生
あこのキャラはとてもいいので、もう少し絵が整っていれば…惜しいです。主人公の気持ちもストレートに描いてあるので、物語も素直に読めました。かけあいも面白いので、とにかく絵の練習をしてください。
■青山剛昌先生
割と面白かったけど、ラブコメとしてもう一声欲しかった。リアルな女の子も登場させて比較させても良かったと思う。あと、バラバラにぶっ壊れたのに簡単に治りすぎ(笑) あこを外に連れ出すシーンも見たかったかも… 絵的にはとても見やすくてセンスあり!
■畑健二郎先生
ロボットのあこはとても可愛く描けていたと思います。最後の照れ顔の主人公なども、とてもラブコメしていていい感じでした。今後の課題として、人物をもう少し掘り下げて描くように気をつけた方がいいかなと思います。たとえモブであっても、血の通った人間として、一人一人感情を考え抜いて描くようにしてみてください。そうすればきっと、もっと可愛く愛情溢れた作品が作れると思います。
少女・女性部門
入選
「穏やかなオム・ファタル」市庭いぬ子(28歳・愛知県)特別育成金 100万円
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■円城寺マキ先生
すぐにプロで通用すると思います。ただ、少年の感情の種類が一見わからなかったのが残念でした。恋心でないなら思春期と言えど少し特殊な感情表現かも。恋心なら同性ゆえの葛藤が見えると感情移入できるかな、と。
■椎名チカ先生
どんどんおじさんの魅力にハマり主人公にずっと共感していました。全部わかってやってるんだ。ずるい。キャラクターも個人の背景が見え色々と想像させられます。見せ方、空気をまとったコマ割と進め方が秀逸でした。
■真村ミオ先生
まさに魔性の男の叔父に翻弄される甥っ子の葛藤がよくできてました。絵も描き慣れていて構図コマ割りも見せ方も表情も抜群。ソウタ君がこれから叔父さんへの恋情や慕情をどう抱えて生きていくのか気になりました。
■みづほ梨乃先生
絵が非常にこなれています。細かいところに質感が出せればもっとよくなるかと。話は切ない感じがいいのですが少し入りづらい。少年の特別な気持ちをどう捉えていいかわからず、BLがあまりいきていないのが残念。
佳作
「思春期エラー」名寄匠(大阪府)
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■円城寺マキ先生
絵柄が可愛く安定しており、内容も素直でタイトルもピッタリ。難点は、コマのメリハリの弱さと、二人の過去エピソードがなかった点。男子がどう変わってしまったのか、具体的に分かると主人公の戸惑いが表現できたと思います。
■椎名チカ先生
綺麗で見やすい絵柄。誰がどこで何をしているのかわかりやすく、二人の爽やかさもあり気持ちよく読めた。ただお話は途中で先が読めてしまい勿体ないので、二人の個性を見せて「こうきたか!」と思わせてほしかったです。
■真村ミオ先生
思春期の照れくささがよく描かれ、可愛い作品でした。ペンタッチもとても綺麗で表情も柔らかく見やすかったです。二人の等身大の悩みが思わず応援したくなるような温かさで読後感もよかったです。今後の作品も楽しみ。
■みづほ梨乃先生
絵が丁寧で綺麗です。演出は全体的に見せ方にメリハリがなく、単調な印象。お話は可愛いが目新しさがないのが惜しい。思春期の細かな変化がキャラに見られないのでこの年代を描く必要性を感じないというのもあるかも。
「ハロー、アゲイン」望月らむ(愛知県)
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■円城寺マキ先生
ストーリー、ネーム展開、見せ場、全て王道で読みやすいです。画面も華やか。主人公の後悔や悲しみがぶちまけられてから繋がるラストも盛り上がってます。ただ主人公の素性がピンとこず、年齢感も今ひとつでした。
■椎名チカ先生
丁寧に描かれた小物や愛くるしいキャラクターのおかげで楽しく読めました。話は序盤から先が読めてしまうのですが、テンポよく進み最後は涙あり、成長あり、切なくも前を向いた終わり方で起承転結がとても上手です。
■真村ミオ先生
絵がとても華やかで可愛い! 最後まで力入れて描いてるのが伝わります。多くの読者さんに好まれる絵柄だと思います。話もハロウィンを題材に上手く纏められていて、切ないテーマでありつつ温かみのある作品でした。
■みづほ梨乃先生
世界観が独特でいいですね。ただキャラが今どこにいて何をしているのかわかりにくいので、背景や場面転換はわかりやすく。キャラのビジュアルも、もっとサービス精神を出せば一気に世界に引き込めると思います。
「親愛なるあなたへ」柊スミレ(17歳・香川県)
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■円城寺マキ先生
大半の場面転換がわかりづらい。キャラの背景をちゃんと見せてほしい。死神は何かあって殺せない死神になったのではないか。ヒロインも死にたい程苦しんでいる心情が伝わらない。絵は今後どんどん上達すると思います。
■椎名チカ先生
絵柄は可愛いのですが安定していないので、同じキャラに見えるよう意識し、洋服や景色も資料などを見て描くと、説得力が増すと思います。話は少しありがちですが「ここが描きたい!」というのが伝わりよかったです。
■真村ミオ先生
死神との交流が優しさと切なさで描かれとてもいい雰囲気でした。主人公の表情も可愛く魅力的。今後描き慣れてくるともっと魅力溢れる絵になるだろうなと思います。扉絵が雑に見えるのが残念…!
■みづほ梨乃先生
とても感動しました。オチに向かう構成が上手いです。途中で視点が変わったのが残念。死神が女の子に魅かれた流れがわかりにくかったです。基本的な絵柄はいいのですが、もう少し丁寧に描いたほうがより伝わると思います。
奨励金
「水を得たいモブ」蜂河(16歳・長崎県)
「ちゅうちゅう♡注意報」福来はなの(24歳・東京都)
青年部門
大賞
「コースロープ」かわじろう(30歳・神奈川県)
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■こざき亜衣先生
クサカベ大好き!
描き手の伝えたいイメージが明確にあるのがわかり、水の中の静けさ、水の重さを確かに感じ、演出が意図通り機能している気持ちよさがありました。絵もシンプルなのに表情があってとてもよいです。構図も大胆で素敵。コースロープを外すシーン、雨によってプールと外の世界が繋がるような、つぐちゃんの回復の予感を感じて胸が高鳴りました。とても好きです。
■太田垣康男先生
新人離れした完璧な作品。画風と物語が相まって水の底を漂う様な静かで優しい作風を生み出している。クライマックスで見せた自由なカメラワークも秀逸。これほど魅力的で開放感溢れる決めコマは滅多にお目にかかれない。心に残るタイトルも良い。
■浅野いにお先生
朴訥な絵柄でテンポも良く、ストレスなく読めるいい作品だと思いました。「利害関係が一致してるんだから、周りの人間に利用されてることの何が悪い」と僕は思ったので、田舎の親友のおせっかいに違和感を感じなくもなかったのですが、もう少し主人公がプレッシャーに押しつぶされていく描写を加えれば、ラストシーンの流れに納得ができたのかもしれません。朴訥な作風なだけに、多少意図的な「くどさ」や、絵柄の裏に隠されたトゲのようなものがあれば、より奥行きのある作品になるのではないかと感じました。
■石塚真一先生
気持ち良い物語ですねぇ~…グッとくる。
説明のできない、得もいわれぬ感動をくれる作品です。絵も素晴らしい。水につかってる方の足の表現とか…好きだなあ~。次の作品を楽しみにしてます。
■業田良家先生
水の表現が巧い。水中も水上からも、雨が降っている水面もシンプルな線とトーンだけで水の質感が伝わってくる。特に8ページ1コマ目の水中から急に顔を上げたシーンは見事に一瞬を切り取っていて画面の中に水の存在を感じた。
また、青春時代の悩みとそれからの再出発を「コースロープ」というプールの器具を使って上手に表現している。友情もいい。
入選
「アヤビバレンス」原作:牧みどり(44歳・東京都)/作画:ナイハラ(21歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
主人公が最後まで好きになれず、逆にすごいと思いました。サブカル女の嫌な部分が容赦なく描かれていて、こちらの古傷が多少痛むのかもしれません。
地の文が三人称なのが珍しい読み味の漫画だなぁと思っていたら、熱が入ると急に一人称になったので少し混乱しました。気持ちは痛いほどわかるのですが、どちらかに統一した方が良いと思います。作田とかガラケーとか、おそらく意図していないものが伏線のような顔をしてしまっているので、感覚だけに頼らずもう少し客観性を持って構成・演出を練ってみてください。
■太田垣康男先生
壊れていく心模様を丁寧に積み重ねる事で共感とも違う「観察」に読者を誘う技ありの作品。感情の乱れを表現する絵も多彩で、闇落ちする様が実にリアル。主人公が教師というのも皮肉が効いてる。この先の地獄も「観察」したくなった。
■浅野いにお先生
キャラクターの表情が良く、感情とシンクロして荒くなる作画も面白く読みやすいです。ただページ数の割りにストーリーは単純で、全体にテンポが遅く感じました。特に男に裏切られたことを確信するまでの過程が長く、そこにページを割くならば、束の間の男との幸せな日々の描写を増やした方が、裏切られた重さを読者にも体感させることができたのではないでしょうか。ラストは主人公の反省も成長もなく尻すぼみだったので、人間的な成長が感じられる描写を落とし所として作品をまとめて欲しかったです。
■石塚真一先生
人間関係から生じる心情をしっかりとらえています。「どうなっちゃうの?」という気持ちでページをめくりました。現代を生きる人々を描ける作者だと思います。一話というパッケージを創る力もあります。
■業田良家先生
ミュージシャンを目指すヒモ男を好きになって、尽くしたのに利用されて騙された女の話。一瞬ありがちな話だと感じるが、ネームも良くて絵の表現力も高いので主人公の揺れ動く微妙な感情が私にもビンビン伝わってきた。主人公は結局ヒモ男との思い出の品を全部は捨てていなくて、それらをネットで売って公開して復讐するつもりなのだろうか。含みを持たせた終わり方とも言えるが、少しわかりにくかったのでもっとハッキリ描いた方がよかったのでは。とにかく感情表現が巧みで特に怒りの表現が素晴らしかった。
佳作
「さよならバードランド」赤城ナツイチ(25歳・埼玉県)
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■こざき亜衣先生
雪の表現が真似したいくらいとてもいいなぁと思いました。絵、描写、演出で充分物語を伝える力があるので、モノローグはだいぶ減らしても問題ないと思います。
幼い恋愛をうまく描いていると思います。自分勝手で幼いのはお互い様ですね。個人的には、爛(ただ)れた後に人として相手と向き合う姿を見てみたいなぁと思いました。女の子も男の子もかわいく描けるのが強い武器ですね。
■太田垣康男先生
青春の蹉跌はいつの時代でも若者を苦しめる。変わっていく先輩の容姿と表情が痛々しく、無力で流される主人公も切ない。理想が剥がれ落ち、現実で繋がった2人のラストシーンに終わりを感じさせる構成は見事。
■浅野いにお先生
純情ぶりながらやることはやる主人公に若干の苛立ちを感じながら読み進めましたが、ストーリーが完全に起承転結の転で終わっており、尻切れトンボ感は否めません。都会に染まってゆく先輩に嫌悪感を感じる描写もステレオタイプに感じましたし、独りよがりな思い込みで行動していた主人公に、反省なり自己嫌悪なりの結論を与えてくれないと、物語として成立していないように感じました。男女ともにキャラの顔のデザインが端正で、全体的に線も細いので、もっと人間的なエグ味や重さがあってもいいと思います。
■石塚真一先生
青春期の心情をしっかり正面からとらえています。テンポも絵のバランスも良い。作品を描く上で作者の視点がしっかりあるからこそ描けたドラマだと思いました。多岐に渡る人々の心情の間の良い位置に視点を構えています。多くの作品を世に送り出せる力のある作者だと思いました。
■業田良家先生
話の中で明かされるまで「先輩」が顧問の先生と付き合っていたとは思わなかった。それで「先輩」が駅で泣いていた理由がわかった。巧い話の運び方だと思う。好きな女性に対する憧れや理想や妄想が壊れる時の痛みがよく伝わってきた。それが成長への第一歩とも言える。ただ最後はもうひとひねりかワンエピソードを入れてほしい。人物も背景もちゃんと描けているのでよいエピソードを追加できればどこかの雑誌に載っていてもおかしくない。
「アンドロイドは夢を見る」和島直樹(24歳・栃木県)
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■こざき亜衣先生
アクションシーンがお上手ですね。羨ましい。描き手がこの世界観を愛しているのだなぁというのが伝わりました。ただ、読者は簡単にその世界に入ってきてはくれません。もう少し客観的に読者の気持ちを考えてキャラを考えた方がいいかなと思いました。
メインの三人が全員アンドロイドのためか、私にはいまひとつ感情移入がしづらかったです。そしてアンドロイドが非常に人間らしい感情を持っているのも違和感があり、それが「ドラマが作りやすいから」以外の理由が見当たらなかったことが最後まで気になってしまいました。一人くらい人間を置いて差異を描いてくれるともう少し入り込めたかな…と思います。リッパーはかわいくていいキャラクターだと思いました。
■太田垣康男先生
荒削りな原石の魅力。磨けば光る可能性を感じた。分かり易く緩急を付けたアクションシーンが最大の武器。絵の描き込みも程良くて分かり易い。この「分かり易さ」は読者を意識してる証拠であり連載作家に必須のスキル。しっかり磨いて才能を伸ばして欲しい。
■浅野いにお先生
リアリティーが全く感じられませんでした。アンドロイドが人間的な葛藤をするという話はよくあるモチーフなのですが、その場合は必ず比較対象となる生身の人間の葛藤も出さないと、あまりにフィクションが過ぎて置いてけぼりになる読者も多いはずです。こと青年誌に作品を発表したいなら、設定やキャラデザイン、アクションシーンの表現部分も含め、フィクション作品のお約束ばかりを用いた作品作りは説得力が欠けますので、リアリティーを省略せずに地に足のついた作品づくりを目指して欲しいです。
■石塚真一先生
良い意味で考えさせられることの多い作品です。生きる意味、存在する意味、利他と利己等々、一つの話の中に問題が複数提示されています。自由な世界観の中に見る感情をこれからも表現していってください。
■業田良家先生
セリフとモノローグが交錯していて誰が誰に言ったセリフなのか、さらに誰の独白なのかが判断しにくい。その分話の展開にスピード感が出ているとも言えるが、読者が混乱してしまうデメリットが大きい。そこは工夫してほしい。最初のSF小説とも言える『フランケンシュタイン』の怪物のように「なんで私を作ったんだ」「私の存在価値は何なんだ」という自問は現実の私たちにも共通するもので、アンドロイドの深い悲しみを自分のものとして感じた。最後は希望の持てる終わり方でよかった。
「ペットボトルの向かう先」あいだ朮(33歳・千葉県)
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■こざき亜衣先生
ペットボトルの行方を追わせながら、嫌な感情の連鎖を見せ、最後は少しの喜びで終わるというバランス感が青年誌らしくて好みでした。テンポが少し悪いかなと感じる部分があったので、動きを整理したりセリフを精査したり、ペットボトルの目線を構図に取り入れるなど、ここから更に読み味を洗練させる作業に取り組んでみて欲しいです。
■太田垣康男先生
主観を次々に変えて物語を繋げる難しい技法を上手く纏めている。より弱者へと伝播して行く負の感情に少年が飲み込まれず、作品に昇華させる展開も良かった。物言わぬ猫の存在感が利いている。
■浅野いにお先生
作画技術的にまだ足りない部分があるとは思いますが、物語のコンセプトが非常に面白く、それぞれのエピソードは些細なことですが、そこはかとなくスリリングな展開に目が離せませんでした。ラストは安堵感があり、読後感としては申し分ないです。ただ、例えば冒頭の女性を何かしらの形で再び登場させるなどで物語を円環構造にすれば、ペットボトルを中心とした世界の小さな切り抜きといった印象が強まり、読者をハッとさせる帰結になったかもしれません。投稿作では珍しい、構成で魅せる作品だったのでとても感心しました。
■石塚真一先生
一編の詩のようなお話ですね。オムニバスの物語の中を浮遊しているような感覚になりました。キャラ達の表情も豊かです。作者ならではの自由な発想を大切に進んでいって欲しいと思いました。
■業田良家先生
私も電車の中でコロコロと転がるペットボトルを見て気になった事が何度かある。そのペットボトルの行く先々で様々な人間模様が描かれていく。そのアイデアが上質で面白い。人々のイライラや怒りが最後は小学生の作った工作、つまりは芸術(?)に昇華されてホッとした。
「裸の内側」ナシウヒカ(東京都)
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■こざき亜衣先生
乾いた描線と女体の表現が良いですね。瞳の表現が多彩でいいなぁと思いました。
内容としては描きたいテーマはハッキリと伝わるものの、まだ物語に落とし込めてはいないと思いました。主人公がキャラクターとして弱く、どんな問題を抱えた人間なのか抽象的な言葉でしか描かれていないため、ストリップを見て開眼するカタルシスに乗れません。キャラと呼べるものが主人公だけで、ストリッパーたちにも人格が描かれていないせいか、ストリップ観劇ルポっぽく感じてしまったのが残念です。
■太田垣康男先生
髪留めが小鬼の角に見えるオープニングカットで掴まれた。裸婦への探究心からストリップショーに行く展開も微笑ましく、ショーの描写も実に上手かった。主人公が裸に魅了されどんどん好きになるにつれて自分も裸になっていく演出も微笑ましい。実に健康的な作品だ。
■浅野いにお先生
衝動的な絵柄と表現で勢いがあります。しかし、描きたいものと興味のないものがはっきりした、極めて主観性の強い描写が目立ち、トータルでアンバランスな印象を受けました。人物の顔も不安定なので、キャラが増えてゆくと識別できなくなる可能性があると思います。表現に強弱があるのは良いことなのですが、ラストがブツ切れで結論も急なので、せめて主人公のその後のエピローグ的なものが欲しいです。読者の立場に立って可能な限り丁寧でロジカルな作品作りを意識して欲しいと感じました。
■石塚真一先生
物語を通して主人公が変化していくさまに感動しました。
ただ面白いだけじゃなく、読んだ側も何かやってみたいと思わせてくれる作品です。作者の持つエネルギーを信じて自由に描き続けて欲しいと思いました。
■業田良家先生
主人公の顔が感情表現や角度によって激しく変わるのでどれが主人公の顔かわからなくなり読んでいて混乱してしまう。漫画を描く上で一番難しいことのひとつだが工夫してほしい。逆にストリップ劇場のおじいさんたちの顔はひとりひとり魅力的に描き分けられていた。このタイプの絵の方が得手なのかもしれない。主人公がひとりのストリッパーをすごく好きになったのは私にも伝わってきたが、そのストリッパーのセリフも会話も具体的なエピソードもないので読者にはストリッパー自体の魅力が伝わりにくい。作者のメッセージは理解できた。