96回募集中!2025年315日(土)しめきり

これまでの受賞者

これまでの受賞者一覧

第95回発表

  • 賞の順
  • 部門順

大賞

正賞/賞状・記念盾、副賞/200万円・液晶タブレットまたはスキャナーまたはミラーレス一眼デジタルカメラ・CLIP STUDIO PAINT EX 2デバイス 3年版・受賞作収録本

青年部門

この作品を読む

「ランドリー」市井市蔵(27歳・長野県)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
雰囲気に既視感があるなと思ったら、『しえん』を描かれた方ですね。前作もそうでしたが、人の内面がパッと変わる瞬間が描けるのはこの作家さんの強みだと思います。画力も高いです。なので次はぜひ"エンタメ"としての漫画にその強みを落とし込んでみて欲しいです。自分の漫画を他人に読んでもらうためには、まず相手の興味を引かねばなりません。騙されたと思って一回手垢のついたような俗っぽいことをやってみてください。きっと楽しんで描けると思います。

■太田垣康男先生
とても惜しい作品。別れた彼氏との思い出を回想する場面で、彼の人間性に好感を持てる印象的な場面がひとつあれば、読後感は大きく変わっていたと思う。2年間も付き合っていれば何かある筈。彼を好きになって良かったと思う場面が。回想シーンの積み上げの先にその「1番の思い出」があれば!

■浅野いにお先生
モノローグを使った独白が多く説明過多のように思います。独り言も多い主人公なので、よりそれを強く感じました。ストーリーに関しては簡潔にまとまっていて、且つリアリティのあるものなので僕は好きです。ただ主人公の感情の流れは誰もが想像できる一般的な恋愛のもつれなので、いかにそれを詩的に個性を持たせて語れるかがポイントになってきます。それならば言葉のチョイスにもっとこだわって詩情のある作品にもっと振り切り、オリジナリティを出してほしかったです。

■石塚真一先生
良い作品だなあ…泣けました。面白いを越えて、読み手の背中を押してくれるような物語を描けるのはこの作者の強みです。一話読んだだけでほんの少し世界が違って見えるような作品。もっともっと読みたいなあ~…。

■業田良家先生
素晴らしい!短編の読み切り漫画として傑作だと思います。洗濯機が持つ具体的な機能と抽象的な意味合いを巧く比喩として使い、その上タイムマシンにまでしてしまう。見事としか言いようがない。切ない女心、人の愛情に胸が締め付けられました。最後、貸してた分のお金がポケットから返ってくるところも最高に巧い。

入選

正賞/賞状・記念盾、副賞/50万円・液晶タブレットまたはスキャナーまたはミラーレス一眼デジタルカメラ・CLIP STUDIO PAINT EX 1デバイス 1年版・受賞作収録本

児童部門

この作品を読む

「描き変えガンマ!」虎島一歩(19歳・新潟県、23歳・岩手県)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
かなり挑戦的な漫画です。主人公達が、漫画という世界の中で、コマから飛び出しフキダシや描き文字も自由にできる。しかし、この世界に入りづらいのが惜しい。

■松本しげのぶ先生
絵にするのが難しい題材でしたが、見事に見やすくまとめられており感心しました。話の構成も盛り上げがうまく、意外な対処法で乗り越え、飽きない展開でした。

■曽山一寿先生
今回、審査するのに一番悩んだ作品です。かなり特殊なことをやっているので、評価がわかれる漫画だと思います。作品としてのインパクトは、今回ナンバー1です。

■村瀬範行先生
色々と引っかかるところはあるが、それ以上のアイデアとチャレンジを感じる、大変好感の持てる作品。特に取り入れたアイデアの数は驚くほど多く、質も高いです。

この作品を読む

「アツアツ温泉記」星ゆずる(18歳・東京都)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
まずは、18歳でコマの隅々まで丁寧に描かれた画力に驚きです! そして舞台が温泉とは! カピパラ団も、かわいくて面白い。全体的に、大変面白く読めました。

■松本しげのぶ先生
温泉の効能で戦うバトルものとは新鮮! ですが、温泉の道具で戦うより、色んな面白い効能が見たかった。絵は明るく楽しくよく描けているので、期待しています!

■曽山一寿先生
大変よくできています。今回一番の高評価をつけさせていただきました。原稿全体から伝わってくる世界観が素晴らしい。画力もお話を伝える力も、申し分ないです。

■村瀬範行先生
よくまとまっており、話の展開も簡潔かつスピーディーで読みやすく、力のある作家さんだと思います。ですが、驚くような展開もないので、物足りなさは感じました。

少年部門

この作品を読む

「私がダンジョンに潜る理由」椙山明(30歳・埼玉県)特別育成金 100万円

審査員評を見る

■あだち充先生
個人的には苦手な世界観ですが、安定した画力で読ませます。亡くなった幼なじみの描き方には読者への配慮が必要かと…

■高橋留美子先生
早めの衝撃展開で読ませる力はあると思います。後半でエドと見た景色とか宝石(?)とか感動的な場面がある一方で「友人の死」と「ダンジョンの楽しさ」が釣り合っていないというか、読後に爽快感が得られなかったのは残念です。悲劇の中にもそれに勝る希望とかが欲しい。それが少年漫画ではないでしょうか。

■青山剛昌先生
スゲー面白かった!! 絵も上手いしコマ割りや演出も上手い!オレ的には「レッドブーツ」の設定がリアルでイケてました。ただ亡者をなぜ、ダンジョンから出しちゃイケないのかの説明が欲しかった。ゾンビのように人を襲うわけでもないのに…(笑)

■畑健二郎先生
今回、総合的には1番良く描けていたと思いました。絵もとても見やすく丁寧で過不足なく読者に状況を伝えていたと思います。ストーリーに関しても38ページで物語のきっかけからエピローグまで綺麗にまとまっており非常に読みやすかったです。キャラクターに関しても行動原理が明確で、理解が難しい点はなく、他の冒険者なども、安っぽい嫌な感じで作らなかった点も評価したいポイントでした。ただこれだけ描く実力があるのであれば、終盤にもう少しだけ盛り上がりは欲しかったな、というのが正直な感想です。今後はその実力を使って血湧き肉躍る冒険が見たいかなと思いました。期待しています。

青年部門

この作品を読む

「夜一つ越えただけ」守ロリョウ(24歳・静岡県)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
読後感がとてもよかったです。ただ、始めと終わりで二人にほぼ変化が見られないのがちょっと残念でした。
せっかく一見共通点のない二人の友情を描くのだから、"違い"と"共通点"を明確にして、反目と共感の化学変化が見たかったです。最初から仲良くなくてもいいとも思うし。
見開きのところは、これが絶対やりたかったんだろうなぁというのが伝わってくる素敵なシーンでした。

■太田垣康男先生
生き辛い日々を耐えて夜を越えていく女性たち。夜の繁華街の片隅で膝を抱えて寄り添う2人のぎこちない姿が印象的。読者としてはこの友情が2人の人生を変えるキッカケであると信じたい。が、現状のエンディングではそれも儚い希望に感じる。それもまたリアルだとは思うが切ない。

■浅野いにお先生
こなれた絵柄と大胆でありながら適切なコマ運びで、スラスラと読める良い漫画だと思いました。見開き等に見られる間の取り方も良いリズムを生んでいました。そして現代的な価値観のキャラは生き生きとしていて納得感があります。強いて言えば、「底辺」からの脱却は物語の中で描かれないので根本的な問題は何も解決していないように感じるのが消化不良な点ですが、「底辺」を受け入れていること自体が現代そのものではあるので、それはそれで新しい感性で生まれる何か新しい次の一歩を作品の中で提示してもらえたら、より作品強度が上がったように思えます。

■石塚真一先生
市井の人々の感情をしっかり捉えた力作だと思いました。漫画のキャラにとどまらない「人間」を描ける作者だと思います。この作品に救われる読者の心が必ず存在すると思います。
次の作品を楽しみにしています。

■業田良家先生
セリフの言葉の選び方が的確でセンスの良さを感じる。タイトルも好きだ。
絶望感を見せるだけではなく、最後に少しだけ希望を感じさせる終わり方も良い。

この作品を読む

「ナインティーンナインティナイン」ユナン(24歳・東京都)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
画力が高く、1999年の不安感に絵がマッチして決めゴマの緊張感や迫力が圧倒的でした。
雰囲気と画面の説得力でグイグイ読ませてしまうのですが、よくよく読むと細部の作り込みの甘さや説明不足を感じます。三人(特にメガネ氏)はなぜこんな危ないことを…?冒頭はなぜ平成表記だったのでしょう?
何より難しいなと思ったのは、セリフのボリューム調節です。日本語で作品を発表する以上「日本語で読んだ時ちょうどいいセリフの分量」を肌感で身につける必要があります。現状、分けるか減らすかしないと読みづらい部分が散見されました。
ユナンさんの問題というより、母語以外で作品を発表する上で誰もが必ず突き当たる問題なのだと思います。

■太田垣康男先生
今回の応募作の中では一番の画力。人物の造形や表情にも説得力があり暗い情念と不安定な心がしっかりと伝わって来る。それ故にシナリオの未熟さと演出の分かり難さが勿体無い。具体的には「主人公が誰かが不明確」「オープニングカットの説明不足」「結束バンドを使った理由は?」。この作者が脚本の力を磨いたら…将来が楽しみだ。

■浅野いにお先生
閉塞的な世界観でキャラクターたちは諦念しつつも、どこか熱がこもった非常に生々しい描写に才能を感じました。物語の肝になる電車のシーンは、人物の表情には迫力があるものの、引きの構図があまりに単調だったのが残念に感じます。ほかにもコマ割りやセリフの位置関係で読みづらさを感じる箇所が多々あったので、視線誘導など基本的な漫画レイアウトの勉強はした方がいいと思います。とはいえラストの後日談的な数ページが情緒のある出色の出来で、特にモノローグが味わいのある素晴らしい締めになっていると思いました。

■石塚真一先生
絵、特に表情の迫力が凄い。若者達の心境の中に現い代まの世相や空気感がぎゅっと集約されています。
強いメッセージを作品に込められる作者だと思います。

■業田良家先生
描線が力強く美しい。動きも表現力もある。ストーリーにも緊迫感があり先が気になりながら読んだ。主人公の絶望感と狂気も伝わってきた。しかしなぜ「1999年」の設定にしたのかが分からなかった。
それを推察する楽しみもあるが、いかんせんヒントが少なすぎる。その辺の匙加減を再考してほしい。

佳作

正賞/賞状・記念盾、副賞/30万円・受賞作収録本

児童部門

この作品を読む

「夜の国から明日をお届け」暁本トモリ(25歳・東京都)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
児童漫画というより、メルヘン世界の絵本のような感じ。優しい空気に包まれた世界観で、セリフが詩のようでもある。作者には、この世界観を大切にしてほしいです。

■松本しげのぶ先生
珍しい題材で、読む前から興味を惹かれました。出てくる隊員達が、みな個性的でがんばり屋。セリフもよく、感情があふれており心つかまれた。温かい物語でした。

■曽山一寿先生
独特で優しい世界観が伝わってきます。まるで絵本を読んでいるかのよう。これは暁本さんの唯一無二の武器だと思います。ただ、キャラの描きわけが少し弱いです。

■村瀬範行先生
最後まで興味深く読めました。ややわかりにくい話ではありますが、話の進め方がよく、構成力は大変高いと思います。絵本チックな絵柄は、話の内容とあっています。

この作品を読む

「わたしメリーさん」中澤孝良(24歳・兵庫県)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
「わたしメリーさん」のセリフだけで、大阪から沖縄まで行けて、こんなに楽しいギャグ漫画になるんだと勉強になりました! 主人公の返すセリフも、面白いです。

■松本しげのぶ先生
一瞬、ホラーと見せかけてのギャグに、くすっと笑いました。飛行機につかまるメリーさんには噴きました。読後感もよかったです。絵は描けば、伸びると思います。

■曽山一寿先生
非常に面白かったです。メリーさんの恐ろしさと、交通手段がうまく使えないギャップを見事に表現してます、大好き! 画力はまだこれから伸びる段階だと思います。

■村瀬範行先生
大変面白かったです。ネタがどれも面白く、私の感覚ではハズレが一つもないです。ネタのフリとオチの流れも、正しく作られていると思います。小ネタも小気味よい。

この作品を読む

「バンチョーシステム!」木藤古マサキ(24歳・岩手県)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
バンチョーシステムの説明が曖昧なのは残念ですが、主人公がこのSNSのシステムによって、本来の力を発揮できない…、今の時代だから生まれた発想の作品ですね。

■松本しげのぶ先生
バンチョーというワードで、古臭いイメージを抱いたが、読むと工夫を感じました。対決もバリエーション豊か。生徒会長のくずっぷりも、対比が利いていて楽しい。

■曽山一寿先生
主人公、みんなから愛されそうな気持ちのいいキャラに仕上がっていますね。読んでいて気持ちがいいです。高評価! ですが、若干色々な要素を詰め込みすぎです。

■村瀬範行先生
所々入るギャグのネタは、面白く高評価。絵柄も見やすく、絵で提供できている情報の質は、大変高いと思います。ただ、所々何をしているのかつかみにくいのが惜しいです。

少年部門

この作品を読む

「図書室の友達」片井りんと(22歳・埼玉県)

審査員評を見る

■あだち充先生
これこそキャラで読ませる漫画ですよね。なので男子キャラにはもっともっとインパクトと魅力が欲しい。

■高橋留美子先生
今回の中では一番キャラ作りが出来ていた人だと思います。それぞれの異常性が面白く、会話のテンポも良かったです。ワンシーンもので30ページ退屈せずに読みきれました。こういう話を18ページくらいに納める技術を磨いてほしいです。

■青山剛昌先生
たまーに面白いトコはあるんだけど、全体的に不条理すぎて話にのれなかった。本を枕にしてる女の子のトコは笑った(笑)。あと、主人公の女の子が本好きとは言ってるけど、例えば「人間失格」のどこが良かったのかとかを表現してないので伝わってこない。

■畑健二郎先生
とても読みやすくて最後まで楽しく読めました。どのキャラクターも可愛く、好感度も高い印象でした。特にヒロインに関しては、決め顔が非常に可愛く描けており、表情のつけ方なども華があって将来性を感じました。台詞選びにもセンスを感じ、とてもすんなり読むことが出来ました。絵に関しても、非常に見やすく、背景などもしっかり入れてあり、物語を見失うことがなかったです。ただ個人的にはここまで描けているなのらもう少しだけ後半に爆発力のある展開が欲しかったなとは思いました。

この作品を読む

「ツバサPODIUM」有江絵琉(22歳・福岡県)

審査員評を見る

■あだち充先生
細かいフリも丁寧に回収してよくまとまっていると思います。三兄弟に関しては見た目も含め、もう少しハッキリしたキャラ分けでもよかったのでは…

■高橋留美子先生
構成が丁寧でわかり易いのはいいのですが、意外性がなくおとなしい話でまとまっている印象です。兄弟も一応描き分けてはいるのですが、キャラクターとしてはちょっと弱いです。三男のブチ切れに期待したのですが、先に次男が切れた。感情のクライマックスが未消化な感じ。もう少しハッタリかまして欲しいです。

■青山剛昌先生
オレ的には男だけの4人兄弟の二男だったので読んで「あるある」と思った所や「こんな事ないよー」と思った所もあり、ちと恥ずかしかったけど、まずまず面白かったです。兄弟というより仲の良い幼馴染3人の話って感じでした。欲を言えば女の子が全く出て来なかったのでチョロっとぐらい出して欲しかったかも(笑)

■畑健二郎先生
爽やかな兄弟愛や青春の葛藤、挫折といったテーマがしっかりと描かれていて、三兄弟の感情がひしひしと伝わってくるところが素晴らしかったです。描きたいものが絞りきれている点も好印象でした。絵に関しても、自分の『好き』が詰まっている印象でとても好感が持てました。ただ、個人的には物語を牽引する力が少し弱いと感じてしまいました。これは物語の進行がキャラクターの魅力に依存しすぎているのが理由かと思います。今後の課題としては『読者は必ずしも最初からキャラクターに愛着を持つわけではない』という部分をしっかりと念頭に置きそれでも物語を引っ張る力や、キャラクターを理解してもらえるエピソードなどをふんだんに混ぜ込んで描いてみるといいんじゃないかなと思います。

この作品を読む

「NAbduction」原作:天梃てん/作画:こおる(25歳、23歳・東京都)

審査員評を見る

■あだち充先生
細かい事を気にしなければ、たくさんの登場人物でテンポよく話は進みます。オチもよろしいかと。だからこそ、それぞれのキャラにもう少し魅力が欲しかった。

■高橋留美子先生
読ませる力のある話とは思いますが突出したキャラのいない群像劇なので、判断しづらいです。今後もこういう作風でいきたいのでしょうか。だとすれば、もう少し少ないページ数でキレのある話も見てみたいです。細かい所ですが一億一千万要求されるジェシカママの生活、庶民的すぎませんか? リサーチ不足というツッコミもないので気になりました。読者に余計な事考えさせないように。

■青山剛昌先生
うーん…ジェシカママのトコまではノリノリで読んでたんだけど、3人目以降も同じ考えの親がいるのは、あまりにもありえないので、ちと話に乗れなかった。あと、誘拐犯がラストで大金をもらってハッピーエンドなのは…ちと解せない…(笑)

■畑健二郎先生
展開が非常に個性的でオリジナリティがあると感じました。独特の価値観に基づいた物語なので、今後どういう作品を作っていくのかとても興味があります。絵に関しても全体的に丸みがあって優しい印象で、特に小さい子供などは可愛らしくかけていたと思います。そしてギャグなのかシリアスなのか分からないまま進む物語も、他に類を見ない作りで興味深かったです。ただ、今回はその個性が振り切りすぎてるように感じました。とりあえず最初の課題として原作の方は『読者が好感を持つキャラクターとは何か』を今一度考え直すことから始めてみるのがいいかと思います。作画の方に関してはまず基本的なマンガの描き方を勉強してみると良いのかなと思います。

この作品を読む

「いかりはかば」何処かの誰か(16歳・大園府)

審査員評を見る

■あだち充先生
まだまだ未熟で乱暴な画力ですが、作家性と将来性に期待です。

■高橋留美子先生
絵柄は個性的で個人的には好きなんですが、あまりにも荒過ぎてクライマックスの人魚の表情も見づらくて、もったいない感じです。話の、ある種残酷な結末も本当にこれで良かったのかな? もうひとひねり欲しい。読者が置き去りな感じ。作者がなにを伝えたかったのか、いまひとつわかりません。しかしこの年齢、のびしろはあると思います。

■青山剛昌先生
かなり読みづらかったけど話はスゲー面白かった!ただ、どこで誰がなにをしているか絵から読みとりにくくて読むのに苦労した(笑)。絵や見せ方(演出)が上手かったら間違いなく大賞だったと思う。でも絵から感じる雰囲気はとても良かったので次回作にも期待です。

■畑健二郎先生
16歳で原稿を完成させたことは本当に素晴らしいです。絵に関しても、迫力のある画面を作ろうと、すごい描き込みで迫力を出しており、表情の表現なども凝っていたと思います。ストーリーに関してもシンプルで分かりやすく、16歳でこれだけまとまった物語を描くことが出来て、将来性を感じました。ただ、この原稿の絵そのものはかなり粗く、背景はおろか主人公の顔すらはっきりしない点は今後の課題かなと思いました。絵で状況を伝えるということが困難なので、要所要所で何が起こっているのか分かりづらく、なにが描かれているのか不明な場面が目立ちました。今後の課題としては、まだ若いということもあり、漫画の基本的な描き方を一度キチンと学ぶ方が近道かなと思います。次のステップを目指し、頑張っていきましょう。

少女・女性部門

この作品を読む

「人が虎になった話」富山フジカレー(18歳・静岡県)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
物語の不思議な部分の説得力が足りないのがもったいないです。なぜ主人公は虎が好きなのか、なぜタイガくんに惹かれたかなどが曖昧だったので、読者が置いてけぼりに。画面に勢いとセンスはあるので、あとは説得力がほしいです。

■椎名チカ先生
話や内容に勢いがあり「これが描きたい!」とハッキリしていてとてもよかったです。ですがタイガくんの人物像がわからないので、序盤に人となりを少しだけ描写してからのほうがわかりやすかったかもしれません。

■真村ミオ先生
一風変わったストーリーで若干強引な展開ではあるものの上手く纏められていると思います。表情もしっかり描けていて勢いもあり今後が楽しみ。絵が荒く見難さがあるので勢いは忘れず1コマ1コマ丁寧にを心がけてほしいです。

■みづほ梨乃先生
個性的でおしゃれな絵柄がよいです。虎をリアルにするなど、もう少し丁寧に描けるともっとよいです。お話自体はよかったですが、男の子がなぜ虎になったのか…など疑問点を雰囲気で無理やり流して見えて入りづらかったです。

この作品を読む

「拝啓、愛しの先輩どこですか!?」飯田くるむ特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
絵や背景など安定していて画面が華やかなので、すぐプロとして通用しそうです。両片想いな物語も可愛い。難を言えばラスト!ラストの余韻がほぼないのがもったいなかったです。これからも可愛い男女を描き続けてください!

■椎名チカ先生
絵も見せ方も構図もプロ並みで、主人公も先輩も可愛くてとても楽しく読めました。しっかりしていた先輩が、主人公の危機には素が出てしまうところは「いつもの先輩きた!」という感じで主人公と同じ気持ちになりました。

■真村ミオ先生
絵が描き慣れていて見やすく先輩に色気があって魅力的。キャラもしっかり立って主人公の気遣い方がよかった。全体的に細々した印象なので先輩の照れ顔等をもっと大胆に大きく描いて魅せゴマを意識するとさらによくなりそう!

■みづほ梨乃先生
タッチが繊細でそれを生かして独特な男の子の雰囲気を出せています!手の描き方が好きです。お話は男の子が変わったというのがわかりづらい。髪型は一緒にして髪色を変えるくらいのほうが、わかりやすかったと思います。

この作品を読む

「ともだちって」渡辺のぎ(岐阜県)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
冒頭の視点が不安定でどの子が主人公なのか一瞬わからなかったのですが、あとはスムーズに読めました。とても面白かったです。作画は、線は丁寧なのですが細く全体的に淡白なので、トーンやベタでメリハリをつけてみてください。

■椎名チカ先生
読後の余韻がまるで短編映画を観たようでした。モヤモヤした気持ちの表現や言葉選びがとても秀逸で、苦しくも素敵なお話でした。時折背景とキャラのバランスが気になるので、直すとより話に入り込める作品になると思います。

■真村ミオ先生
ところどころ状況がわかりづらいシーンがあるのがもったいない。誰が喋って何が起きたのかもう少し丁寧に描写すると◎ 絵は可愛く魅力的。線が細いのでベタ髪を入れるなどメリハリつけるともっと見やすく魅力が増すと思います。

■みづほ梨乃先生
絵柄が可愛く、線も繊細でとてもよいです。見せ場は思い切り大きくするなど、もう少しメリハリがつくとよいです。お話はとてもよかったです。主人公の悩みが友達か家族か、最初にはっきりさせたほうがよりわかりやすいかもです。

この作品を読む

「高坂くん、校則違反です!」愛夏うらら(28歳・福岡県)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
絵は丁寧なのですが、1コマの中で何が起きているかの描写がちょっと足りませんでした。コマとコマの繋ぎ、場面の繋ぎがわかりづらい箇所が多かったです。あとは、表情にバリエーションが増えるといいと思いました。

■椎名チカ先生
絵柄と見せ場のコマ割りがいいです。でも高坂くんが桜子を好きになるのが早く「裏の顔や過去に何かある」と思ったら何もなく残念。桜子が彼に惹かれる描写は共感できたので同じ様に描写できればステップアップできると思います。

■真村ミオ先生
委員長が一貫していて真面目過ぎるけど嫌味になってないのが凄い。ただ彼が委員長を好きになるきっかけが弱く、より丁寧に心を開いてく様があれば応援したくなったかも。最後に委員長の笑顔があれば読後感も上がると思います。

■みづほ梨乃先生
キャラがとてもいいです。男の子に妙な艶があって独特の雰囲気を出せています。ラブシーンは、もっとしっとりと見せることができたらロマンチックになると思います。主人公が流されてるだけに見えてしまったので、そこが残念。

この作品を読む

「北山先輩はかくしたい」樹野恵実(大阪府)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
丁寧な絵で好感が持てます。ただ北山先輩が慌てている時と、会社での表情との差をつけて描いていただきたかったです。主人公が素直でいい子なので、先輩のキャラ性はアクが強いほうがメリハリがついたと思いました。

■椎名チカ先生
王道の話を、見せ方や絵の綺麗さで、とても素敵にまとめられていて楽しく読めました。絵は雑誌に載っていても不思議でないくらいですが、キャラの個性と話の展開が少し弱かったので、もっと個性的な話が見たかったです。

■真村ミオ先生
綺麗な絵で最後まで手を抜かず丁寧で読みやすい。キャラも素直で優しく好感度高いですが、その分先が読める展開になってしまっていたのが残念。もう少し意外性のあるエピソードが欲しかったです。

■みづほ梨乃先生
大人っぽい絵柄が素敵です。丁寧な画面作りで、かつ高い画力で描き慣れていて読みやすいです。男性がとてもかっこいいですが、可愛さも出るともっとよくなると思います。冷静すぎるので、もっとあざとくしてもいいくらいです。

この作品を読む

「キミのあおいろっ!」梅花まこ(26歳・茨城県)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
主人公がヒーローを意識した理由がわからなくて、そこが気になりました。ベタなのでもいいので、どこが「魅力的」だったのかの描写がほしいです。そこで初めて無愛想な彼を笑顔にしたい強い希望が活きてきそうな気がします。

■椎名チカ先生
とても可愛く華やかな絵柄で、葵ちゃんも剣くんもその絵柄どおりのキャラクターで楽しく読めました。ですが剣くんがなぜ口下手で笑わないのか。という理由は大事なところなのでもう少し考えたほうがよかったかもしれません。

■真村ミオ先生
可愛さ満点で多くの読者さんに好かれそう! 主人公が彼のどこに惹かれつき合うことになったのかがあれば、もっと応援したくなったかも。丁寧で見やすく、可愛い絵柄は武器なので強みを生かして頑張ってください。

■みづほ梨乃先生
デッサンが怪しいところはありますが、絵柄はとても可愛いです。もう少し新しい絵柄を研究してみてもいいかも。サービス精神が素晴らしいですが、ギャグが多すぎて幼い印象になってしまっているのがもったいないです。

青年部門

この作品を読む

「クライクレイクレイジ一」依和尾 阿弥(26歳・埼玉県)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
創作に対して素直で真摯な姿勢がよいですね。負の感情もユーモラスに描いているのが印象的でした。テーマが明確でテンポもいいので読みやすいのですが、内容の割に長く、全体的にややメリハリに欠けるのが残念でした。
次は私事からもう一歩踏み出して、読者を楽しませる漫画を考えてみてほしいです。
「冷蔵庫にぶどうもあるよ」のコマの流れが、なんか好きでした。

■太田垣康男先生
暗いトンネルの中で足掻く青春には大いにシンパシーを感じる。希望を胸に主人公は更にトンネルの奥へと進む決意をするが、そのキッカケとなる出来事がライバルとの会話だけでは弱い。
感情の高ぶりに見合った行動こそ読者の共感を生む。
次回作では行動のアイデアを重視して欲しい。

■浅野いにお先生
太めの主線とベタを効果的に使った絵柄が印象的です。モブをシルエットにするなど意図的な記号化が徹底されているので、主人公二人に読者側の視線がしっかりフォーカスする読みやすい作品でした。物語は主人公達が悪意のない「いい人」なのも相まって、ストレートな引っ掛かりのないストーリーに感じます。読みやすさは担保された作風なので、予想を裏切るような大胆な展開やキャラクターを設定してもいいんじゃないでしょうか。特にキャラクターが感情を爆発させるシーンは絵の記号化は控えて、もう少し生々しい描写に切り替えるなどで表現にコントラストがあれば緩急のある読後感になると思います。

■石塚真一先生
テーマが作者の中でしっかりとしているので、とても読みやすかった。
キャラクター達の描き分けも上手で、表情と性格がピタっと一致しています。
人と人との関係性のドラマに期待大です。

■業田良家先生
学生時代に感じた進路に対する期待感や不安を思い出した。
他人の才能への嫉妬や自分の才能のなさへの怒りも思い出した。笑。
ユーモアもあってよかった。

この作品を読む

「キンモクセイ」子硯(29歳・東京都)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
聴覚、嗅覚など、視覚以外の感覚に訴えかけるものを漫画で扱うのはとても難しいのですが、恐らくほとんどの日本人がノスタルジーとセットで記憶に刻み込まれている金木犀の香りを持ってきたのはいいアイデアだなと思いました。キャラの表情に愛嬌があり、多彩でよかったです。
言葉はよく練られているとは思うのですが、会話やモノローグに頼りすぎに見えました。展開や絵で話を引っ張ってください。そのためにも、キャラにもう一歩踏み込んだ魅力が欲しいです。

■太田垣康男先生
叙情的な雰囲気とキャラクター造形でやりたい方向性は分かるが、人物の内面や抱えている問題、ストーリー展開等がステレオタイプでは単に味の薄い漫画でしかない。漫画から垣間見えるリアリティーをどこに入れるか、をもう少し熟考しよう。

■浅野いにお先生
作品のページの大半が女子二人の会話に終始しているので、物語の方向性が明確に示されないまま読み続けるのはかなり厳しいと感じました。会話の内容もふわふわとしたもので、好みの範疇かもしれませんが、キャラクターにはもう一癖二癖あってもいいと思いますし、会話劇で乗り切るならば会話の着地点は明示するべきだと思います。匂いによって過去を振り返る落とし所に関しては、絵から匂いはしませんので、漫画では伝わりにくいモチーフだったと思います。匂いの表現に工夫があれば作品に説得力が生まれたのでは。

■石塚真一先生
素晴らしい作品です。人の心や、人と人の関係性についてしっとり丁寧に描かれています。
絵もさわやかな線で描かれていて実にスムーズに読めます。さらりと読める中に気になる言葉をちりばめるのが作者の持ち味かと思います。

■業田良家先生
過ぎ去って二度と戻ってこない、かけがえのない瞬間を何かの匂いと共に思い出す。切なさが伝わってきました。
絵柄もかわいくて描線も美しい。
多くの人に愛される絵ですね。

この作品を読む

「片隅に生きる君へ」むつ さとし(28歳・東京都)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
最初とんでもない胸糞ミステリーが始まるのかとワクワクしましたが、とても優しい視点で描かれた綺麗な話だったので己を恥じました。
私の子ども時代にも「忘れ去られた人」がいたのかな、自分もそうなのかな、などと思いを馳せました。
せっかく"過去と現在の行き来"というドラマチックな舞台装置が使えるので、演出や構成を上手くやれば病気や死を使わずとももっと読ませる、泣かせる話にできそうです。
このテーマにおいて彼が死ぬ必要性はあったのかなぁと考えてしまいました。

■太田垣康男先生
優れたシナリオの秀作。台詞から伝わるキャラクターの人柄やリズム感、深みのある物語はとても良かった。惜しむらくは絵が単調で人物も表情が乏しい。漫画家も今は色々なスタイルがあるので、ネーム原作者になればきっと大化けすると思う。試してみてはどうか。

■浅野いにお先生
物語の運び方はとても明瞭で、軸もはっきりしています。ただ淡白すぎる絵柄とキャラの表情の弱さが相まって、感情を読み取ることが難しかったです。素直と言えば素直なのですが主人公側の三人組がデリカシーのない人物に見えてしまいました。キャラの顔の描き分けも幅が狭いので一瞬誰が誰なのか混乱します。作画を強化すれば、表情ひとつでキャラの心情や人間の複雑さを表現することができるはずなので、絵で物語るという漫画の特性を意識した作品作りをすればよりよい漫画になるのではないでしょうか。

■石塚真一先生
作者の人間愛を感じる作品です。
手の届く人間関係の大切さを教えてもらった気がします。絵は実にスッキリしていて、その分キャラの感情が浮き彫りになっています。次作を楽しみにしています。

■業田良家先生
ネットに投稿された小説の登場人物に自分と友達の名前が使われている。その謎を追って話が進むのでワクワクして面白かった。しかしその動機付けが1回のキャッチボールだけでは弱すぎる。もっと説得力のあるエピソードであれば感動作になったと思う。
最後に小説のタイトルが変わっているというアイデアは話の締め方として非常に良い。

奨励金

10万円

児童部門

「歯鐘のケン」パエリア(22歳・愛知県)

青年部門

「少女Qにチョコレートを」古川潤(27歳・北海道)

「賜り物」中村太芽(22歳・熊本県)

児童部門

入選

この作品を読む

「描き変えガンマ!」虎島一歩(19歳・新潟県、23歳・岩手県)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
かなり挑戦的な漫画です。主人公達が、漫画という世界の中で、コマから飛び出しフキダシや描き文字も自由にできる。しかし、この世界に入りづらいのが惜しい。

■松本しげのぶ先生
絵にするのが難しい題材でしたが、見事に見やすくまとめられており感心しました。話の構成も盛り上げがうまく、意外な対処法で乗り越え、飽きない展開でした。

■曽山一寿先生
今回、審査するのに一番悩んだ作品です。かなり特殊なことをやっているので、評価がわかれる漫画だと思います。作品としてのインパクトは、今回ナンバー1です。

■村瀬範行先生
色々と引っかかるところはあるが、それ以上のアイデアとチャレンジを感じる、大変好感の持てる作品。特に取り入れたアイデアの数は驚くほど多く、質も高いです。

この作品を読む

「アツアツ温泉記」星ゆずる(18歳・東京都)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
まずは、18歳でコマの隅々まで丁寧に描かれた画力に驚きです! そして舞台が温泉とは! カピパラ団も、かわいくて面白い。全体的に、大変面白く読めました。

■松本しげのぶ先生
温泉の効能で戦うバトルものとは新鮮! ですが、温泉の道具で戦うより、色んな面白い効能が見たかった。絵は明るく楽しくよく描けているので、期待しています!

■曽山一寿先生
大変よくできています。今回一番の高評価をつけさせていただきました。原稿全体から伝わってくる世界観が素晴らしい。画力もお話を伝える力も、申し分ないです。

■村瀬範行先生
よくまとまっており、話の展開も簡潔かつスピーディーで読みやすく、力のある作家さんだと思います。ですが、驚くような展開もないので、物足りなさは感じました。

佳作

この作品を読む

「夜の国から明日をお届け」暁本トモリ(25歳・東京都)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
児童漫画というより、メルヘン世界の絵本のような感じ。優しい空気に包まれた世界観で、セリフが詩のようでもある。作者には、この世界観を大切にしてほしいです。

■松本しげのぶ先生
珍しい題材で、読む前から興味を惹かれました。出てくる隊員達が、みな個性的でがんばり屋。セリフもよく、感情があふれており心つかまれた。温かい物語でした。

■曽山一寿先生
独特で優しい世界観が伝わってきます。まるで絵本を読んでいるかのよう。これは暁本さんの唯一無二の武器だと思います。ただ、キャラの描きわけが少し弱いです。

■村瀬範行先生
最後まで興味深く読めました。ややわかりにくい話ではありますが、話の進め方がよく、構成力は大変高いと思います。絵本チックな絵柄は、話の内容とあっています。

この作品を読む

「わたしメリーさん」中澤孝良(24歳・兵庫県)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
「わたしメリーさん」のセリフだけで、大阪から沖縄まで行けて、こんなに楽しいギャグ漫画になるんだと勉強になりました! 主人公の返すセリフも、面白いです。

■松本しげのぶ先生
一瞬、ホラーと見せかけてのギャグに、くすっと笑いました。飛行機につかまるメリーさんには噴きました。読後感もよかったです。絵は描けば、伸びると思います。

■曽山一寿先生
非常に面白かったです。メリーさんの恐ろしさと、交通手段がうまく使えないギャップを見事に表現してます、大好き! 画力はまだこれから伸びる段階だと思います。

■村瀬範行先生
大変面白かったです。ネタがどれも面白く、私の感覚ではハズレが一つもないです。ネタのフリとオチの流れも、正しく作られていると思います。小ネタも小気味よい。

この作品を読む

「バンチョーシステム!」木藤古マサキ(24歳・岩手県)特別育成金 20万円

審査員評を見る

■むぎわらしんたろう先生
バンチョーシステムの説明が曖昧なのは残念ですが、主人公がこのSNSのシステムによって、本来の力を発揮できない…、今の時代だから生まれた発想の作品ですね。

■松本しげのぶ先生
バンチョーというワードで、古臭いイメージを抱いたが、読むと工夫を感じました。対決もバリエーション豊か。生徒会長のくずっぷりも、対比が利いていて楽しい。

■曽山一寿先生
主人公、みんなから愛されそうな気持ちのいいキャラに仕上がっていますね。読んでいて気持ちがいいです。高評価! ですが、若干色々な要素を詰め込みすぎです。

■村瀬範行先生
所々入るギャグのネタは、面白く高評価。絵柄も見やすく、絵で提供できている情報の質は、大変高いと思います。ただ、所々何をしているのかつかみにくいのが惜しいです。

奨励金

「歯鐘のケン」パエリア(22歳・愛知県)

少年部門

入選

この作品を読む

「私がダンジョンに潜る理由」椙山明(30歳・埼玉県)特別育成金 100万円

審査員評を見る

■あだち充先生
個人的には苦手な世界観ですが、安定した画力で読ませます。亡くなった幼なじみの描き方には読者への配慮が必要かと…

■高橋留美子先生
早めの衝撃展開で読ませる力はあると思います。後半でエドと見た景色とか宝石(?)とか感動的な場面がある一方で「友人の死」と「ダンジョンの楽しさ」が釣り合っていないというか、読後に爽快感が得られなかったのは残念です。悲劇の中にもそれに勝る希望とかが欲しい。それが少年漫画ではないでしょうか。

■青山剛昌先生
スゲー面白かった!! 絵も上手いしコマ割りや演出も上手い!オレ的には「レッドブーツ」の設定がリアルでイケてました。ただ亡者をなぜ、ダンジョンから出しちゃイケないのかの説明が欲しかった。ゾンビのように人を襲うわけでもないのに…(笑)

■畑健二郎先生
今回、総合的には1番良く描けていたと思いました。絵もとても見やすく丁寧で過不足なく読者に状況を伝えていたと思います。ストーリーに関しても38ページで物語のきっかけからエピローグまで綺麗にまとまっており非常に読みやすかったです。キャラクターに関しても行動原理が明確で、理解が難しい点はなく、他の冒険者なども、安っぽい嫌な感じで作らなかった点も評価したいポイントでした。ただこれだけ描く実力があるのであれば、終盤にもう少しだけ盛り上がりは欲しかったな、というのが正直な感想です。今後はその実力を使って血湧き肉躍る冒険が見たいかなと思いました。期待しています。

佳作

この作品を読む

「図書室の友達」片井りんと(22歳・埼玉県)

審査員評を見る

■あだち充先生
これこそキャラで読ませる漫画ですよね。なので男子キャラにはもっともっとインパクトと魅力が欲しい。

■高橋留美子先生
今回の中では一番キャラ作りが出来ていた人だと思います。それぞれの異常性が面白く、会話のテンポも良かったです。ワンシーンもので30ページ退屈せずに読みきれました。こういう話を18ページくらいに納める技術を磨いてほしいです。

■青山剛昌先生
たまーに面白いトコはあるんだけど、全体的に不条理すぎて話にのれなかった。本を枕にしてる女の子のトコは笑った(笑)。あと、主人公の女の子が本好きとは言ってるけど、例えば「人間失格」のどこが良かったのかとかを表現してないので伝わってこない。

■畑健二郎先生
とても読みやすくて最後まで楽しく読めました。どのキャラクターも可愛く、好感度も高い印象でした。特にヒロインに関しては、決め顔が非常に可愛く描けており、表情のつけ方なども華があって将来性を感じました。台詞選びにもセンスを感じ、とてもすんなり読むことが出来ました。絵に関しても、非常に見やすく、背景などもしっかり入れてあり、物語を見失うことがなかったです。ただ個人的にはここまで描けているなのらもう少しだけ後半に爆発力のある展開が欲しかったなとは思いました。

この作品を読む

「ツバサPODIUM」有江絵琉(22歳・福岡県)

審査員評を見る

■あだち充先生
細かいフリも丁寧に回収してよくまとまっていると思います。三兄弟に関しては見た目も含め、もう少しハッキリしたキャラ分けでもよかったのでは…

■高橋留美子先生
構成が丁寧でわかり易いのはいいのですが、意外性がなくおとなしい話でまとまっている印象です。兄弟も一応描き分けてはいるのですが、キャラクターとしてはちょっと弱いです。三男のブチ切れに期待したのですが、先に次男が切れた。感情のクライマックスが未消化な感じ。もう少しハッタリかまして欲しいです。

■青山剛昌先生
オレ的には男だけの4人兄弟の二男だったので読んで「あるある」と思った所や「こんな事ないよー」と思った所もあり、ちと恥ずかしかったけど、まずまず面白かったです。兄弟というより仲の良い幼馴染3人の話って感じでした。欲を言えば女の子が全く出て来なかったのでチョロっとぐらい出して欲しかったかも(笑)

■畑健二郎先生
爽やかな兄弟愛や青春の葛藤、挫折といったテーマがしっかりと描かれていて、三兄弟の感情がひしひしと伝わってくるところが素晴らしかったです。描きたいものが絞りきれている点も好印象でした。絵に関しても、自分の『好き』が詰まっている印象でとても好感が持てました。ただ、個人的には物語を牽引する力が少し弱いと感じてしまいました。これは物語の進行がキャラクターの魅力に依存しすぎているのが理由かと思います。今後の課題としては『読者は必ずしも最初からキャラクターに愛着を持つわけではない』という部分をしっかりと念頭に置きそれでも物語を引っ張る力や、キャラクターを理解してもらえるエピソードなどをふんだんに混ぜ込んで描いてみるといいんじゃないかなと思います。

この作品を読む

「NAbduction」原作:天梃てん/作画:こおる(25歳、23歳・東京都)

審査員評を見る

■あだち充先生
細かい事を気にしなければ、たくさんの登場人物でテンポよく話は進みます。オチもよろしいかと。だからこそ、それぞれのキャラにもう少し魅力が欲しかった。

■高橋留美子先生
読ませる力のある話とは思いますが突出したキャラのいない群像劇なので、判断しづらいです。今後もこういう作風でいきたいのでしょうか。だとすれば、もう少し少ないページ数でキレのある話も見てみたいです。細かい所ですが一億一千万要求されるジェシカママの生活、庶民的すぎませんか? リサーチ不足というツッコミもないので気になりました。読者に余計な事考えさせないように。

■青山剛昌先生
うーん…ジェシカママのトコまではノリノリで読んでたんだけど、3人目以降も同じ考えの親がいるのは、あまりにもありえないので、ちと話に乗れなかった。あと、誘拐犯がラストで大金をもらってハッピーエンドなのは…ちと解せない…(笑)

■畑健二郎先生
展開が非常に個性的でオリジナリティがあると感じました。独特の価値観に基づいた物語なので、今後どういう作品を作っていくのかとても興味があります。絵に関しても全体的に丸みがあって優しい印象で、特に小さい子供などは可愛らしくかけていたと思います。そしてギャグなのかシリアスなのか分からないまま進む物語も、他に類を見ない作りで興味深かったです。ただ、今回はその個性が振り切りすぎてるように感じました。とりあえず最初の課題として原作の方は『読者が好感を持つキャラクターとは何か』を今一度考え直すことから始めてみるのがいいかと思います。作画の方に関してはまず基本的なマンガの描き方を勉強してみると良いのかなと思います。

この作品を読む

「いかりはかば」何処かの誰か(16歳・大園府)

審査員評を見る

■あだち充先生
まだまだ未熟で乱暴な画力ですが、作家性と将来性に期待です。

■高橋留美子先生
絵柄は個性的で個人的には好きなんですが、あまりにも荒過ぎてクライマックスの人魚の表情も見づらくて、もったいない感じです。話の、ある種残酷な結末も本当にこれで良かったのかな? もうひとひねり欲しい。読者が置き去りな感じ。作者がなにを伝えたかったのか、いまひとつわかりません。しかしこの年齢、のびしろはあると思います。

■青山剛昌先生
かなり読みづらかったけど話はスゲー面白かった!ただ、どこで誰がなにをしているか絵から読みとりにくくて読むのに苦労した(笑)。絵や見せ方(演出)が上手かったら間違いなく大賞だったと思う。でも絵から感じる雰囲気はとても良かったので次回作にも期待です。

■畑健二郎先生
16歳で原稿を完成させたことは本当に素晴らしいです。絵に関しても、迫力のある画面を作ろうと、すごい描き込みで迫力を出しており、表情の表現なども凝っていたと思います。ストーリーに関してもシンプルで分かりやすく、16歳でこれだけまとまった物語を描くことが出来て、将来性を感じました。ただ、この原稿の絵そのものはかなり粗く、背景はおろか主人公の顔すらはっきりしない点は今後の課題かなと思いました。絵で状況を伝えるということが困難なので、要所要所で何が起こっているのか分かりづらく、なにが描かれているのか不明な場面が目立ちました。今後の課題としては、まだ若いということもあり、漫画の基本的な描き方を一度キチンと学ぶ方が近道かなと思います。次のステップを目指し、頑張っていきましょう。

少女・女性部門

佳作

この作品を読む

「人が虎になった話」富山フジカレー(18歳・静岡県)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
物語の不思議な部分の説得力が足りないのがもったいないです。なぜ主人公は虎が好きなのか、なぜタイガくんに惹かれたかなどが曖昧だったので、読者が置いてけぼりに。画面に勢いとセンスはあるので、あとは説得力がほしいです。

■椎名チカ先生
話や内容に勢いがあり「これが描きたい!」とハッキリしていてとてもよかったです。ですがタイガくんの人物像がわからないので、序盤に人となりを少しだけ描写してからのほうがわかりやすかったかもしれません。

■真村ミオ先生
一風変わったストーリーで若干強引な展開ではあるものの上手く纏められていると思います。表情もしっかり描けていて勢いもあり今後が楽しみ。絵が荒く見難さがあるので勢いは忘れず1コマ1コマ丁寧にを心がけてほしいです。

■みづほ梨乃先生
個性的でおしゃれな絵柄がよいです。虎をリアルにするなど、もう少し丁寧に描けるともっとよいです。お話自体はよかったですが、男の子がなぜ虎になったのか…など疑問点を雰囲気で無理やり流して見えて入りづらかったです。

この作品を読む

「拝啓、愛しの先輩どこですか!?」飯田くるむ特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
絵や背景など安定していて画面が華やかなので、すぐプロとして通用しそうです。両片想いな物語も可愛い。難を言えばラスト!ラストの余韻がほぼないのがもったいなかったです。これからも可愛い男女を描き続けてください!

■椎名チカ先生
絵も見せ方も構図もプロ並みで、主人公も先輩も可愛くてとても楽しく読めました。しっかりしていた先輩が、主人公の危機には素が出てしまうところは「いつもの先輩きた!」という感じで主人公と同じ気持ちになりました。

■真村ミオ先生
絵が描き慣れていて見やすく先輩に色気があって魅力的。キャラもしっかり立って主人公の気遣い方がよかった。全体的に細々した印象なので先輩の照れ顔等をもっと大胆に大きく描いて魅せゴマを意識するとさらによくなりそう!

■みづほ梨乃先生
タッチが繊細でそれを生かして独特な男の子の雰囲気を出せています!手の描き方が好きです。お話は男の子が変わったというのがわかりづらい。髪型は一緒にして髪色を変えるくらいのほうが、わかりやすかったと思います。

この作品を読む

「ともだちって」渡辺のぎ(岐阜県)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
冒頭の視点が不安定でどの子が主人公なのか一瞬わからなかったのですが、あとはスムーズに読めました。とても面白かったです。作画は、線は丁寧なのですが細く全体的に淡白なので、トーンやベタでメリハリをつけてみてください。

■椎名チカ先生
読後の余韻がまるで短編映画を観たようでした。モヤモヤした気持ちの表現や言葉選びがとても秀逸で、苦しくも素敵なお話でした。時折背景とキャラのバランスが気になるので、直すとより話に入り込める作品になると思います。

■真村ミオ先生
ところどころ状況がわかりづらいシーンがあるのがもったいない。誰が喋って何が起きたのかもう少し丁寧に描写すると◎ 絵は可愛く魅力的。線が細いのでベタ髪を入れるなどメリハリつけるともっと見やすく魅力が増すと思います。

■みづほ梨乃先生
絵柄が可愛く、線も繊細でとてもよいです。見せ場は思い切り大きくするなど、もう少しメリハリがつくとよいです。お話はとてもよかったです。主人公の悩みが友達か家族か、最初にはっきりさせたほうがよりわかりやすいかもです。

この作品を読む

「高坂くん、校則違反です!」愛夏うらら(28歳・福岡県)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
絵は丁寧なのですが、1コマの中で何が起きているかの描写がちょっと足りませんでした。コマとコマの繋ぎ、場面の繋ぎがわかりづらい箇所が多かったです。あとは、表情にバリエーションが増えるといいと思いました。

■椎名チカ先生
絵柄と見せ場のコマ割りがいいです。でも高坂くんが桜子を好きになるのが早く「裏の顔や過去に何かある」と思ったら何もなく残念。桜子が彼に惹かれる描写は共感できたので同じ様に描写できればステップアップできると思います。

■真村ミオ先生
委員長が一貫していて真面目過ぎるけど嫌味になってないのが凄い。ただ彼が委員長を好きになるきっかけが弱く、より丁寧に心を開いてく様があれば応援したくなったかも。最後に委員長の笑顔があれば読後感も上がると思います。

■みづほ梨乃先生
キャラがとてもいいです。男の子に妙な艶があって独特の雰囲気を出せています。ラブシーンは、もっとしっとりと見せることができたらロマンチックになると思います。主人公が流されてるだけに見えてしまったので、そこが残念。

この作品を読む

「北山先輩はかくしたい」樹野恵実(大阪府)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
丁寧な絵で好感が持てます。ただ北山先輩が慌てている時と、会社での表情との差をつけて描いていただきたかったです。主人公が素直でいい子なので、先輩のキャラ性はアクが強いほうがメリハリがついたと思いました。

■椎名チカ先生
王道の話を、見せ方や絵の綺麗さで、とても素敵にまとめられていて楽しく読めました。絵は雑誌に載っていても不思議でないくらいですが、キャラの個性と話の展開が少し弱かったので、もっと個性的な話が見たかったです。

■真村ミオ先生
綺麗な絵で最後まで手を抜かず丁寧で読みやすい。キャラも素直で優しく好感度高いですが、その分先が読める展開になってしまっていたのが残念。もう少し意外性のあるエピソードが欲しかったです。

■みづほ梨乃先生
大人っぽい絵柄が素敵です。丁寧な画面作りで、かつ高い画力で描き慣れていて読みやすいです。男性がとてもかっこいいですが、可愛さも出るともっとよくなると思います。冷静すぎるので、もっとあざとくしてもいいくらいです。

この作品を読む

「キミのあおいろっ!」梅花まこ(26歳・茨城県)特別育成金 16万円

審査員評を見る

■円城寺マキ先生
主人公がヒーローを意識した理由がわからなくて、そこが気になりました。ベタなのでもいいので、どこが「魅力的」だったのかの描写がほしいです。そこで初めて無愛想な彼を笑顔にしたい強い希望が活きてきそうな気がします。

■椎名チカ先生
とても可愛く華やかな絵柄で、葵ちゃんも剣くんもその絵柄どおりのキャラクターで楽しく読めました。ですが剣くんがなぜ口下手で笑わないのか。という理由は大事なところなのでもう少し考えたほうがよかったかもしれません。

■真村ミオ先生
可愛さ満点で多くの読者さんに好かれそう! 主人公が彼のどこに惹かれつき合うことになったのかがあれば、もっと応援したくなったかも。丁寧で見やすく、可愛い絵柄は武器なので強みを生かして頑張ってください。

■みづほ梨乃先生
デッサンが怪しいところはありますが、絵柄はとても可愛いです。もう少し新しい絵柄を研究してみてもいいかも。サービス精神が素晴らしいですが、ギャグが多すぎて幼い印象になってしまっているのがもったいないです。

青年部門

大賞

この作品を読む

「ランドリー」市井市蔵(27歳・長野県)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
雰囲気に既視感があるなと思ったら、『しえん』を描かれた方ですね。前作もそうでしたが、人の内面がパッと変わる瞬間が描けるのはこの作家さんの強みだと思います。画力も高いです。なので次はぜひ"エンタメ"としての漫画にその強みを落とし込んでみて欲しいです。自分の漫画を他人に読んでもらうためには、まず相手の興味を引かねばなりません。騙されたと思って一回手垢のついたような俗っぽいことをやってみてください。きっと楽しんで描けると思います。

■太田垣康男先生
とても惜しい作品。別れた彼氏との思い出を回想する場面で、彼の人間性に好感を持てる印象的な場面がひとつあれば、読後感は大きく変わっていたと思う。2年間も付き合っていれば何かある筈。彼を好きになって良かったと思う場面が。回想シーンの積み上げの先にその「1番の思い出」があれば!

■浅野いにお先生
モノローグを使った独白が多く説明過多のように思います。独り言も多い主人公なので、よりそれを強く感じました。ストーリーに関しては簡潔にまとまっていて、且つリアリティのあるものなので僕は好きです。ただ主人公の感情の流れは誰もが想像できる一般的な恋愛のもつれなので、いかにそれを詩的に個性を持たせて語れるかがポイントになってきます。それならば言葉のチョイスにもっとこだわって詩情のある作品にもっと振り切り、オリジナリティを出してほしかったです。

■石塚真一先生
良い作品だなあ…泣けました。面白いを越えて、読み手の背中を押してくれるような物語を描けるのはこの作者の強みです。一話読んだだけでほんの少し世界が違って見えるような作品。もっともっと読みたいなあ~…。

■業田良家先生
素晴らしい!短編の読み切り漫画として傑作だと思います。洗濯機が持つ具体的な機能と抽象的な意味合いを巧く比喩として使い、その上タイムマシンにまでしてしまう。見事としか言いようがない。切ない女心、人の愛情に胸が締め付けられました。最後、貸してた分のお金がポケットから返ってくるところも最高に巧い。

入選

この作品を読む

「夜一つ越えただけ」守ロリョウ(24歳・静岡県)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
読後感がとてもよかったです。ただ、始めと終わりで二人にほぼ変化が見られないのがちょっと残念でした。
せっかく一見共通点のない二人の友情を描くのだから、"違い"と"共通点"を明確にして、反目と共感の化学変化が見たかったです。最初から仲良くなくてもいいとも思うし。
見開きのところは、これが絶対やりたかったんだろうなぁというのが伝わってくる素敵なシーンでした。

■太田垣康男先生
生き辛い日々を耐えて夜を越えていく女性たち。夜の繁華街の片隅で膝を抱えて寄り添う2人のぎこちない姿が印象的。読者としてはこの友情が2人の人生を変えるキッカケであると信じたい。が、現状のエンディングではそれも儚い希望に感じる。それもまたリアルだとは思うが切ない。

■浅野いにお先生
こなれた絵柄と大胆でありながら適切なコマ運びで、スラスラと読める良い漫画だと思いました。見開き等に見られる間の取り方も良いリズムを生んでいました。そして現代的な価値観のキャラは生き生きとしていて納得感があります。強いて言えば、「底辺」からの脱却は物語の中で描かれないので根本的な問題は何も解決していないように感じるのが消化不良な点ですが、「底辺」を受け入れていること自体が現代そのものではあるので、それはそれで新しい感性で生まれる何か新しい次の一歩を作品の中で提示してもらえたら、より作品強度が上がったように思えます。

■石塚真一先生
市井の人々の感情をしっかり捉えた力作だと思いました。漫画のキャラにとどまらない「人間」を描ける作者だと思います。この作品に救われる読者の心が必ず存在すると思います。
次の作品を楽しみにしています。

■業田良家先生
セリフの言葉の選び方が的確でセンスの良さを感じる。タイトルも好きだ。
絶望感を見せるだけではなく、最後に少しだけ希望を感じさせる終わり方も良い。

この作品を読む

「ナインティーンナインティナイン」ユナン(24歳・東京都)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
画力が高く、1999年の不安感に絵がマッチして決めゴマの緊張感や迫力が圧倒的でした。
雰囲気と画面の説得力でグイグイ読ませてしまうのですが、よくよく読むと細部の作り込みの甘さや説明不足を感じます。三人(特にメガネ氏)はなぜこんな危ないことを…?冒頭はなぜ平成表記だったのでしょう?
何より難しいなと思ったのは、セリフのボリューム調節です。日本語で作品を発表する以上「日本語で読んだ時ちょうどいいセリフの分量」を肌感で身につける必要があります。現状、分けるか減らすかしないと読みづらい部分が散見されました。
ユナンさんの問題というより、母語以外で作品を発表する上で誰もが必ず突き当たる問題なのだと思います。

■太田垣康男先生
今回の応募作の中では一番の画力。人物の造形や表情にも説得力があり暗い情念と不安定な心がしっかりと伝わって来る。それ故にシナリオの未熟さと演出の分かり難さが勿体無い。具体的には「主人公が誰かが不明確」「オープニングカットの説明不足」「結束バンドを使った理由は?」。この作者が脚本の力を磨いたら…将来が楽しみだ。

■浅野いにお先生
閉塞的な世界観でキャラクターたちは諦念しつつも、どこか熱がこもった非常に生々しい描写に才能を感じました。物語の肝になる電車のシーンは、人物の表情には迫力があるものの、引きの構図があまりに単調だったのが残念に感じます。ほかにもコマ割りやセリフの位置関係で読みづらさを感じる箇所が多々あったので、視線誘導など基本的な漫画レイアウトの勉強はした方がいいと思います。とはいえラストの後日談的な数ページが情緒のある出色の出来で、特にモノローグが味わいのある素晴らしい締めになっていると思いました。

■石塚真一先生
絵、特に表情の迫力が凄い。若者達の心境の中に現い代まの世相や空気感がぎゅっと集約されています。
強いメッセージを作品に込められる作者だと思います。

■業田良家先生
描線が力強く美しい。動きも表現力もある。ストーリーにも緊迫感があり先が気になりながら読んだ。主人公の絶望感と狂気も伝わってきた。しかしなぜ「1999年」の設定にしたのかが分からなかった。
それを推察する楽しみもあるが、いかんせんヒントが少なすぎる。その辺の匙加減を再考してほしい。

佳作

この作品を読む

「クライクレイクレイジ一」依和尾 阿弥(26歳・埼玉県)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
創作に対して素直で真摯な姿勢がよいですね。負の感情もユーモラスに描いているのが印象的でした。テーマが明確でテンポもいいので読みやすいのですが、内容の割に長く、全体的にややメリハリに欠けるのが残念でした。
次は私事からもう一歩踏み出して、読者を楽しませる漫画を考えてみてほしいです。
「冷蔵庫にぶどうもあるよ」のコマの流れが、なんか好きでした。

■太田垣康男先生
暗いトンネルの中で足掻く青春には大いにシンパシーを感じる。希望を胸に主人公は更にトンネルの奥へと進む決意をするが、そのキッカケとなる出来事がライバルとの会話だけでは弱い。
感情の高ぶりに見合った行動こそ読者の共感を生む。
次回作では行動のアイデアを重視して欲しい。

■浅野いにお先生
太めの主線とベタを効果的に使った絵柄が印象的です。モブをシルエットにするなど意図的な記号化が徹底されているので、主人公二人に読者側の視線がしっかりフォーカスする読みやすい作品でした。物語は主人公達が悪意のない「いい人」なのも相まって、ストレートな引っ掛かりのないストーリーに感じます。読みやすさは担保された作風なので、予想を裏切るような大胆な展開やキャラクターを設定してもいいんじゃないでしょうか。特にキャラクターが感情を爆発させるシーンは絵の記号化は控えて、もう少し生々しい描写に切り替えるなどで表現にコントラストがあれば緩急のある読後感になると思います。

■石塚真一先生
テーマが作者の中でしっかりとしているので、とても読みやすかった。
キャラクター達の描き分けも上手で、表情と性格がピタっと一致しています。
人と人との関係性のドラマに期待大です。

■業田良家先生
学生時代に感じた進路に対する期待感や不安を思い出した。
他人の才能への嫉妬や自分の才能のなさへの怒りも思い出した。笑。
ユーモアもあってよかった。

この作品を読む

「キンモクセイ」子硯(29歳・東京都)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
聴覚、嗅覚など、視覚以外の感覚に訴えかけるものを漫画で扱うのはとても難しいのですが、恐らくほとんどの日本人がノスタルジーとセットで記憶に刻み込まれている金木犀の香りを持ってきたのはいいアイデアだなと思いました。キャラの表情に愛嬌があり、多彩でよかったです。
言葉はよく練られているとは思うのですが、会話やモノローグに頼りすぎに見えました。展開や絵で話を引っ張ってください。そのためにも、キャラにもう一歩踏み込んだ魅力が欲しいです。

■太田垣康男先生
叙情的な雰囲気とキャラクター造形でやりたい方向性は分かるが、人物の内面や抱えている問題、ストーリー展開等がステレオタイプでは単に味の薄い漫画でしかない。漫画から垣間見えるリアリティーをどこに入れるか、をもう少し熟考しよう。

■浅野いにお先生
作品のページの大半が女子二人の会話に終始しているので、物語の方向性が明確に示されないまま読み続けるのはかなり厳しいと感じました。会話の内容もふわふわとしたもので、好みの範疇かもしれませんが、キャラクターにはもう一癖二癖あってもいいと思いますし、会話劇で乗り切るならば会話の着地点は明示するべきだと思います。匂いによって過去を振り返る落とし所に関しては、絵から匂いはしませんので、漫画では伝わりにくいモチーフだったと思います。匂いの表現に工夫があれば作品に説得力が生まれたのでは。

■石塚真一先生
素晴らしい作品です。人の心や、人と人の関係性についてしっとり丁寧に描かれています。
絵もさわやかな線で描かれていて実にスムーズに読めます。さらりと読める中に気になる言葉をちりばめるのが作者の持ち味かと思います。

■業田良家先生
過ぎ去って二度と戻ってこない、かけがえのない瞬間を何かの匂いと共に思い出す。切なさが伝わってきました。
絵柄もかわいくて描線も美しい。
多くの人に愛される絵ですね。

この作品を読む

「片隅に生きる君へ」むつ さとし(28歳・東京都)

審査員評を見る

■こざき亜衣先生
最初とんでもない胸糞ミステリーが始まるのかとワクワクしましたが、とても優しい視点で描かれた綺麗な話だったので己を恥じました。
私の子ども時代にも「忘れ去られた人」がいたのかな、自分もそうなのかな、などと思いを馳せました。
せっかく"過去と現在の行き来"というドラマチックな舞台装置が使えるので、演出や構成を上手くやれば病気や死を使わずとももっと読ませる、泣かせる話にできそうです。
このテーマにおいて彼が死ぬ必要性はあったのかなぁと考えてしまいました。

■太田垣康男先生
優れたシナリオの秀作。台詞から伝わるキャラクターの人柄やリズム感、深みのある物語はとても良かった。惜しむらくは絵が単調で人物も表情が乏しい。漫画家も今は色々なスタイルがあるので、ネーム原作者になればきっと大化けすると思う。試してみてはどうか。

■浅野いにお先生
物語の運び方はとても明瞭で、軸もはっきりしています。ただ淡白すぎる絵柄とキャラの表情の弱さが相まって、感情を読み取ることが難しかったです。素直と言えば素直なのですが主人公側の三人組がデリカシーのない人物に見えてしまいました。キャラの顔の描き分けも幅が狭いので一瞬誰が誰なのか混乱します。作画を強化すれば、表情ひとつでキャラの心情や人間の複雑さを表現することができるはずなので、絵で物語るという漫画の特性を意識した作品作りをすればよりよい漫画になるのではないでしょうか。

■石塚真一先生
作者の人間愛を感じる作品です。
手の届く人間関係の大切さを教えてもらった気がします。絵は実にスッキリしていて、その分キャラの感情が浮き彫りになっています。次作を楽しみにしています。

■業田良家先生
ネットに投稿された小説の登場人物に自分と友達の名前が使われている。その謎を追って話が進むのでワクワクして面白かった。しかしその動機付けが1回のキャッチボールだけでは弱すぎる。もっと説得力のあるエピソードであれば感動作になったと思う。
最後に小説のタイトルが変わっているというアイデアは話の締め方として非常に良い。

奨励金

「少女Qにチョコレートを」古川潤(27歳・北海道)

「賜り物」中村太芽(22歳・熊本県)


ページ
トップ