これまでの受賞者
第90回発表
- 賞の順
- 部門順
大賞
賞状、記念盾、賞金200万円、液晶タブレット(Cintiq 16)、CLIP STUDIO PAINT EX、受賞作収録本
青年部門
「君の笑顔にそう誓う。」畠本レモン(29歳・神奈川県)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
鬱屈した心、閉塞感、それでも前を見ようとする人の切実な美しさを感じました。テンポも良く構成も演出も考えられており、読み手を意識できている漫画でした。ただ、テーマがプライベートな域を出ておらず、まだエンタテイメントではないかなと思います。もう一歩自分のわかる範囲から出て、様々なものを描いてみてほしいです。キャラクターもちょっと弱い。絵にはもう少し力強さというか、描こうという執念がほしいなと思います。絵をしっかり描くと、二人の生きる世界にも、もう少し奥行きが出てきそうな気がします。
■太田垣康男先生
商業漫画は娯楽です。読者を楽しませるのが仕事であり、自分を慰める為の手段ではありません。誰かに励まされたいと望む読者の為に何ができるかを考えましょう。ヒロインの笑顔に目標達成を誓ったなら次のステップに踏み出してください。
■浅野いにお先生
派手な作風ではありませんが表現に華があります。モノローグに頼りすぎている感はありますが読みやすかったです。ただ、たまたま出会った人から影響を受けて主人公の心境が変化するという話の展開はご都合展開に読めてしまうので、出会うまでの過程にもっと伏線があると良かったと思います。偶然と必然のバランスに注意してください。ちなみに主人公の心境も実は変化に乏しく、成長とは程遠いです。主人公が「こう思った」だけで終わらせるのではなく、「こう思ったから」から「こうなった」と言う結果まで描けていれば作品としてのまとまりが出せたのではないでしょうか。
■石塚真一先生
キャラクター達の心情が素直に表現されていて、とても読みやすく好感が持てました。入口があって、出口がある、そんなまとまりの良い読み切り作品です。読む人を正面から前向きにできる力がある作者だと思います。
■業田良家先生
デッサン力もあり、描線も魅力的で構図の取り方も素晴らしい。松本大洋さんの影響を感じるが、それだけではない個性もある。青春時代の夢と挫折と希望。主人公の心情が的確に描けていて、しっかり伝わってくる。コマ運びもネームも巧い。しかし、このストーリーを独創的なものにするアイデアが入っていない。
入選
賞状、記念盾、賞金50万円、ペンタブレットまたはスキャナー、CLIP STUDIO PAINT PRO、受賞作収録本
児童部門
「もぐら(仮)」やましたれお(17歳・東京都)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■むぎわらしんたろう先生
「もぐら」のキャラが楽しい。ぬいぐるみとかあったら、買ってしまうかも。もぐらの特徴を生かしたギャグを期待したが、ただの異生物で終わってしまったのは残念。
■松本しげのぶ先生
絵は見やすくて、洗練されています。清潔感もあり非常によいです。絵で伝える力があります。ですが、ギャグは弱く感じました。読者の想像を超えてほしいですね。
■曽山一寿先生
お話がすんなり頭に入ってきます。伝えるべき情報が必要最低限なので、スゴくわかりやすい。これはプロの漫画家を目指すには、とても重要なことです! エライ!!
■村瀬範行先生
漫画ならではの読みやすさを持った作品。注目したのはセリフ量です。セリフを削る頭のよさと、テンポのよさに、いろんなところでご活躍できる力を感じました。
「硬派戦士ハード・ガイ」秋雄つばさ(29歳・埼玉県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■むぎわらしんたろう先生
ほのぼのした世界に、劇画タッチの主人公をうまく取り入れてあり、そのギャップが笑えます。絵もかなり描きなれています。画面も見やすく、ギャグもわかりやすい。
■松本しげのぶ先生
大きな笑いはありませんが、全体的なホンワカさは持ち味でいいと思います。描きなれた感じもよいです。テンポやタッチに変化があれば、もっとよくなると思います。
■曽山一寿先生
ギャグのレベルは、かなり高いです。ただバズーカの回数が多すぎです。同じギャグを繰り返すネタのピークは、1回目か2回目。3回目は急激にパワーがなくなります。
■村瀬範行先生
主人公が面白く魅力的。やりすぎな行動も計算しているのではなく、天然でそう思っているというのがまた面白い点です。絵は全身図が多く、漫画として大変上手です。
少年部門
「天使にジョブチェンジを」東野 トシ(25歳・愛知県)特別育成金 33万円
審査員評を見る
■あだち充先生
絵のセンス、言葉のセンス、話のテンポから後味までバランスがいい実力の持ち主だと思います。安心感で読めました。
■高橋留美子先生
絵も画面作りも話運びも巧みです。あえて言うなら主役の元死神、装備は凝っていて良いのですが、肝心の顔が意外と印象に残らない。もったいないなと思いました。ここ一番、読者の心をつかむいい顔を描いてください。
■青山剛昌先生
すげーオモロかった! 特に、「死んでも死なせてやらねえ」ってセリフががイイ感じです! 所々、フキダシの配置で読みづらい箇所はあったけど、それを差し引いても面白かった!!
■畑健二郎先生
読みやすく、キャラクターもハッキリしていて良かったです。バトルシーンも迫力があったと思います。話も絵もまだまだ荒削りではありますがセンスがあると思うのでこの方向で磨いていってください。この世界における天使や死神の立ち位置がよく分からない点は気になりました。その部分がハッキリしていると、もっと物語に入りやすかったかなと思います。頑張ってください。
「握るは刀開けば梅」優希(23歳・福岡県)特別育成金 33万円
審査員評を見る
■あだち充先生
まずは画力でしょうか。女子キャラの魅力も含め、お見事です。演出も構成もとにかく総合力が高い。タイトルもよろしいかと…
■高橋留美子先生
画力はありますし、この絵に合ったストーリーだとは思います。エンターテインメントとして考えた時、楽しい話ではないので、もうひとつ強烈なエピソードとか、場面が欲しいと思いました。
■青山剛昌先生
とにかく絵がべらぼうに上手い! 話も読みやすく面白かった。ただラストにもうひとひねり…何か救い的な何かかがあったら良かったかも… あと、なぜ道場の人達を殺さなきゃならなかったのか、オレにはわからなかった…
■畑健二郎先生
決めゴマの表情や構図が決まっているのは素晴らしいと思いました。ラストの展開も読切ならではで、意見は分かれるかと思いますが、僕個人としては良かったです。全編ほぼ回想シーンで、主人公の行動によって変わる未来がない点は気になりました。今後の課題としては、もっと作家性を伸ばせたらいいなと。挑戦的で、独自性の強い物語をこの調子でどんどん作っていってください。
「リベルタの墓守」箭坪 幹(22歳・神奈川県)特別育成金 33万円
審査員評を見る
■あだち充先生
設定の分かりやすさとていねいな話の展開。絵の軽さが気になる部分もありますが作者の素直な性格を感じます。
■高橋留美子先生
シンプルで読み易かったです。主人公の気持ちの流れも過不足なく描かれており、基本はできていると感じました。もう少し画面にメリハリが欲しいのと。60枚使ってる割りに話が素直過ぎるのでもうひとひねり、と思いました。
■青山剛昌先生
いやぁー、一転二転三転と先が読めない展開でとても面白かった。ただ、母親とか、今まで世話になっていたお付きの兵士とかも焼き殺されているだろうに、その悲しみが描かれていなかったのが残念。あと、扉絵は漫画の顔なのでもう少し考えて欲しい(笑)。
■畑健二郎先生
今回の中でダントツ。絵がとても上手く、即戦力と言っていいレベル。ページ数はかなり多かったですがシナリオがしっかり作られており、ドラマが成立している点も良かった。際立っているのはファンタジーの世界観をきちんと描写できていたところ。その世界にしかない独特の風習を物語の中に綺麗に落とし込み、独自の世界観を表現すると同時に、それに翻弄される人間の心理を丁寧に描けていました。
青年部門
「指枷」國光恐竜(26歳・東京都)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
非常に面白かったです。絵は多少まだ拙い部分はありますが、キャラクターも良く、何より決めゴマの表情がどれもとても魅力的で良いです。二転三転していくストーリーもとても楽しく、読み手を意識した娯楽としての漫画作りの姿勢が既にできている点が素晴らしい。『なんたらかんたら小山葵 ―指枷―』みたいな感じでシリーズがやれそうですね。主人公の推理が卓上だけでなく危険を孕んだ行動も伴うと、もっと主人公らしさが出て読者も一緒に葵の「余計な詮索」を楽しめるのではないでしょうか? この先が楽しみです。
■太田垣康男先生
ミステリーへの挑戦は応援したい。ヒロインの清濁併せ呑む雰囲気は名探偵の素養が垣間見える。しかしながら、ミステリーには犯罪心理や犯行手口、トリックを暴く推理力や犯人を追い詰めるクライマックス等々クリアすべきハードルが多い。もう一段深い考察を経てミステリーを再構築してほしい。期待している。
■浅野いにお先生
習字教室の中での事件というのは目新しさがあり、展開や落とし所も習字に絡めたもので綺麗な終わり方でした。ただ、各登場人物のキャラが薄く内面を感じさせないので、それぞれの関係性が希薄でドラマに欠けます。それぞれ目力はあるのですが、不気味な先生はともかく特に主人公の心境が最後まで理解できませんでした。そのためストーリーが上滑りしている印象になっているので、もっとキャラに人間味を持たせる工夫をしたほうが良いかもしれません。
■石塚真一先生
静かな雰囲気の中にジワリと恐怖を感じるサスペンス作品です。展開の面白さやキャラクターの癖に加えて、キャラクター達の内面をもう少し見てみたい気がしました。
■業田良家先生
面白かった。ユーモラスに始まってから話が少しずつ怖くなっていく展開に引き込まれた。ページをめくるワクワク感があり、上手な筋の運び方だと感じた。ミステリー的な謎の解き方も巧い。ただ、主人公が唇のにきびをつぶしたのか、よくわからないが、血がにじんでいる演出の意味が理解できなかった。
「K7百」野利のり太(47歳・福井県)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
面白かったです! 審査ということを忘れて読み入ってしまいました。結末も全く予想できませんでした。青年誌らしいテーマと展開と結論で、現実の切り取り方に皮肉が効きながらも根底に流れる優しさがあり、ラストは胸に迫るものがありました。みんなが目を背けがちな問題にスポットをあて、その深刻さを保ったままエンタメに昇華した点も素晴らしいと思います。ひとつだけ、主人公がK7百の胸を触ろうとするシーンだけ、主人公の「人間らしさ」の表現のためなのであれば、少し意味深なコマ割りになり過ぎている気がしました。何かの伏線かと思ったらそこだけだったので、少し気になりました。もっとライトな表現にするか、もう少し踏み込んで主人公の正体を示唆する伏線を入れるかするといいのかな、と思いました。ただ、ここも個人の感覚のレベルなので、ほんのご参考までに。もっと他の作品を読んでみたいです。
■太田垣康男先生
プロット段階で思い付いた設定をそのまま説明するだけでは漫画になりません。主人公の主観から改めて物語を見つめる様にすれば構成も変わる筈。登場人物の人柄の良さには今後の可能性を感じる。
■浅野いにお先生
美少女介護ロボットという設定は読み始めこそやや安易に感じましたが、27ページ目からの展開によってしっかりと考えさせられる内容になっています。介護問題のシリアスさを直視した内容ではありませんが、介護する側の可能性に目を向けたことは良いアイデアだと思いました。ただ、人物の表情やセリフに抑揚がなく、全体的に淡白です。物語の流れは同じままでも、演出面を伸ばすことでまだまだ面白くなる余地があると思うので、魅力的な漫画表現を意識してほしいです。
■石塚真一先生
未来モノの短編小説を読んでいるような感覚になる作品です。読後感も悪くなく、なんだかほっこりするお話です。この作者は、世の中で起こっている現象や人間関係を客観的にとらえることができるのかもしれません。感情に深入りしないのが持ち味というか…次作に期待しています。
■業田良家先生
介護ロボットや新しい児童ポルノ禁止法など、近未来の設定が細部まで考えられていて、リアリティーがあり、物語の世界に入り込める。主人公の顔が地味すぎると感じたが、結末まで読むと、このストーリーにはぴったりの顔だと思った。おばあちゃんやリサイクルショップの店主にも個性が感じられてよい。最後の締めくくりに、もう一工夫ほしいが、全体的には佳い作品だ。
「解脱」磯部 薫(24歳・静岡県)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
風景に感情を込めることができるのは、ものすごい武器だと思います。構図も凝っているのに読みづらさはなく、基本に裏打ちされた演出力の高さを感じました。床板に父娘の影が落ちている見開きはそうそう思いつかないくらい特殊で印象的なのに、奇をてらったようなわざとらしさはなく、物語にキチンと意味を与えていてすごい! と思いました。マネしたい…! 手にも表情があり、こだわりを感じました。ここまでの力があるのだから、次はもう一歩外に目を向けて物語で「読者を楽しませる」フェーズに入ってほしいです。商業誌はあくまでも人を楽しませるために存在します。人を惹きつける題材を選び、追いかけたくなるキャラクターを立たせてください。
■太田垣康男先生
上手い!演出、構成、画力、感情表現、どれも卓越している。人の業と優しさまでも描き上げた見事な人間讃歌だ。クライマックスで主人公の口から出た言葉には胸を突かれた。非常に悲しく、しかし体験した者だけが持つ力強い優しさがあった。主人公が歩む未来に幸あれ、と切に願う。
■浅野いにお先生
鬼気迫る絵柄が物語の雰囲気作りに効果的に作用していて良い作品だと思いました。主人公を含めた女性三人の描き分けが甘いせいか、カットバックのシーンで誰が誰だかわからなくなり序盤混乱したので、見た目や役回りを明確に差別化してください。主人公が父親に向けた最後の言葉は意外性がなく、それが逆に漫画的ではないのが意外で面白かったのですが、ラストページに繋がっている感じが希薄だったので、重要なセリフはオチにつながる伏線と捉えて工夫すれば、より完成度の高い作品なったと思います。
■石塚真一先生
主人公の気持ちが親子関係だけじゃなく、周囲の人達の間も行ったり来たりするところに、主人公の迷いや悩みの深さが現れているように感じました。人間の奥底にある感情に焦点を当てた次回作に期待します。
■業田良家先生
隣人の赤ちゃんの誕生と主人公の父親の死を同時に描くことで、人生の生と死が凝縮されて、心に響いてくる。ただ、主人公の名前の一部を赤ちゃんに付けるくらい深い隣人との関係がほとんど描かれていない。ヒントだけでも描いてくれると、もっと深い物語になると思う。
佳作
賞状、記念盾、賞金30万円、受賞作収録本
児童部門
「ギンガの銀河」塩山むすび(24歳・神奈川県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■むぎわらしんたろう先生
2人の宇宙へのあこがれと夢を描いた力作。ただ全体的に似たような画面とコマ割り、そしてセリフ多めなので、もう少し変化がほしい。絵は細かく丁寧さを感じます。
■松本しげのぶ先生
銀河での探検をしたいだけでなく、バトル、ゲーム、兄ちゃんとの戦い、星を集めるなど目的が多すぎるので、しぼるべきです。絵は細部までしっかり描いています。
■曽山一寿先生
話をつめすぎなのと、展開が伝わりにくいところはありますが、すごく楽しそうに描いているのが伝わり、好感が持てます。ギンガ君の熱い想いもグッときますね!
■村瀬範行先生
絵や漫画を描くのが、ものすごく好きな方なのだろうなと熱意を感じました。絵柄も児童誌と相性がよさそうです。楽しい絵柄で描ききったことを評価したい作品です。
「死計課捜査官 生永らえ太」朝海ハヤト(32歳・岡山県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■むぎわらしんたろう先生
秘密警察死計課という他人にはない発想を持っています。クライマックスの死神に変わる描き方はかっこいい!もっとコマを整理して、さらに迫力のある演出を。
■松本しげのぶ先生
死を回避する能力。面白い視点だなあと思いました。それだけで広がる話です。ただ設定が増えすぎなので、お話や設定を描くことよりも、読者に共感させる構成を。
■曽山一寿先生
秘密警察死計課の説明、人間の心の葛藤などを、うまく伝えることができていて素晴らしいです! アクションシーンなども、キチンと描けていて好感が持てます!
■村瀬範行先生
不幸が前倒しになって事件が先に起こるという能力を、考えついたことに脱帽です。主人公の行動は応援したくなることなので、そこだけでも素晴らしい設定ですね。
少年部門
「HOUND×DOG」稲上 燐(24歳・岐阜県)
審査員評を見る
■あだち充先生
絵の上手さのムダ使いが清々しいどうでもいい話(いい意味で…)。描いている本人が一番楽しそうに遊んでる気がします(いい意味で…)。
■高橋留美子先生
面白かったです。ネームのセンスやリズムがとても良いです。女の子もかわいいです。それに対し殺し屋の男性たちが、なんか描き慣れていないように見えてしまって損してます。しかしこれは描き続ければ解決すると思います。
■青山剛昌先生
殺し屋の組織なのにボスと手下の2人だけしかいないように見えてしまいショボく感じてしまう。あと、主人公がなんでこんなに強いのかって説明もないので感情移入しづらかった。
■畑健二郎先生
冒頭の掴みや、終始読者を飽きさせず、テンポ良く進む物語は好感度が高く僕は好きでした。絵はまだまだ修行が必要ですが、読みやすく、女の子も可愛く、その点も良かったです。ただジャンルとしてはギャグやコメディーだと思うのですが、オチがないのは気になりました。後半、ボスが出てきてから終始普通に戦うだけで、前半のような笑いの工夫がなく、最後の決着も、無難にまとめた印象。
「恋の翼」蚊っさん(22歳・宮崎県)
審査員評を見る
■あだち充先生
全ページ同じように人物も背景もていねいに描き込んであります。その姿勢はいいのですが話の展開に合わせてもう少し画面に変化があってもいいのではないでしょうか。
■高橋留美子先生
楽しい青春モノです。キャラクターも愛らしく、男の子のネタばらしの部分もいい意味で期待どおりでした。読後感も良かったです。
■青山剛昌先生
後半になって面白くなったけどキューピットじゃなくなってしまうって緊迫感がほとんどなくて残念(ルールを破って消えてしまう他のキューピットを描くとか…)。あと、突然の方言でちょっとビックリした(笑)。
■畑健二郎先生
お話はとても可愛いらしく、絵柄も好感度が高く、表情も描けていたと思います。正直、作品としてあまりマイナスな面がない印象なのですが全てが小さくまとまりすぎていて、無難な印象が強いです。今後の課題としては「漫画を描く」才能については「ある」と思うのでその才能を信じて、自分にしか描けない設定、シナリオ、そして感情、そういったものを常に意識し、頑張ってみてください。
「鉄屑のしらべ」夏嶋 柑(27歳・福島県)
審査員評を見る
■あだち充先生
嫌みのないスッキリした絵柄と読みやすさは大きな武器です。ストレートな話も合ってると思いました。
■高橋留美子先生
話がシンプルすぎるかなと。ヒロイン(?)の絵自体は魅力的なので、そのキャラクターを深めるなり、主人公とのエピソードをちゃんと描いてください。
■青山剛昌先生
とても面白かった。絵も上手いし見せ方も上手い! これで連載漫画家じゃないのが不思議です(笑)。もう少し、右ページの最初のコマを大切にして欲しいぐらいで、あとは非の打ち所がないです!
■畑健二郎先生
絵柄はとても可愛らしく丁寧で良かったと思います。画面の構成も見やすく、とても読みやすかったです。ただ物語は流石にわかりやすすぎるかなと。予想を超えた展開がなく、あっけなく終わってしまった印象。起承転結で言えば、ここまでで起承。キャラクターも自発的に動いていない印象で作者の都合が透けて見えている点もマイナス。シナリオとは何かを学び直す必要性を感じました。
「PRIMO PIZZA」狛江 裏々(23歳・東京都)
審査員評を見る
■あだち充先生
キャラもいい表情してるし、背景や小物をごまかさず描き込む姿勢にも好感が持てます。もちろんピッツァへのこだわりも…
■高橋留美子先生
絵は元気があって良いです。ただ背景の線が太すぎるのか、画面がごちゃついて見えてしまい、少し損しています。主人公が涙する場面、理屈ではわかるのですが、少し唐突に思いました。前段のエピソードが弱いのかも。クライマックスに至る積み重ねを考えてみてください。
■青山剛昌先生
「このピザ…マルゲリータじゃね?」と思ったらまさかの実話だったとは…(笑)面白かったけど、「いつものとは違うピザを作って欲しい」とロベルトに言うシーンも知るシーンもなくて、流れで知ってるモノとして話が進んでいて違和感があり少しモヤッとした(笑)。
■畑健二郎先生
一生懸命描いていたのは好感触でした。ただ、漫画としてはシナリオが荒っぽい。時代背景や場所の説明がないので、主人公が何者かもわからず話が進行するので物語に入っていくことが難しいです。なので主人公が最後、何に悔やんでいるのか読者には全く伝わっていない。師匠ロベルトが全然いい人に見えない点もマイナス。一番問題なのは料理漫画なのにピザを美味しそうに食べる描写がないこと。
「逆夢の獏」森本 淳士(23歳・神奈川県)
審査員評を見る
■あだち充先生
周りの友達をキチンと使って主人公の成長を描いているところがいい。獏は気持ち悪いし、夢の中の少女は可愛いし、よくまとまっています。
■高橋留美子先生
クラスメートの描き分けや夢の描写など面白い工夫はしていて良いと思います。ただ、主人公の内省のストーリーなので、物語が広がらない感じで、オチもあまり驚けませんでした。描ける人だと思うので、読者を楽しませる意識を持ってください。
■青山剛昌先生
うーむ…正直よくわからなかった。絵は上手いし、構図も格好いいのにどこで誰がどんな攻撃をしているのかわかりづらかった。特に45ページ。あと、「高校生にもなって絵を描いてる」ってセリフはピンとこなかった。美術の授業とかもあるだろうに…(笑)
■畑健二郎先生
しっかりと絵を描いている点は好評価でした。難しい構図や背景も、逃げずに描いている。お話も丁寧で、とても読みやすくレベルは高かった。ただ漫画としては無駄が多すぎると感じました。機能してない無駄ゴマ、無駄ページ、無駄描写が多い。例えば7P目、家に帰るシーンに1Pも必要ない。他にもほぼ機能していない友達や母親、仕草など、省くことを覚えたほうがいいかなと思います。
少女・女性部門
「会長はヒミツ主義」柏木 こねる(20歳・大阪府)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■岩本ナオ先生
二人の関係がいいので前半すっきりまとめ、主人公に興味を持つところは1/2ページは使うべきだと思いました。エンタメ感出そうとしているのは本当によかったです。時折何が起こってるかわからないので、直すよう意識を。
■宇佐美真紀先生
ネーム運びや構図など、絵的な課題はありますがキャラクターを楽しく描けているのが伝わってくる作品でした。
■水瀬藍先生
キャラクターをちゃんと作ろうとしていて、特に男の子のキャラがよかったです。ヒロインの感情の積み重ねが弱いのが残念。せっかくキャラができているので、二人のリアクションをもっと見たかったです。
■やぶうち優先生
キャラやセリフが生き生きとしていてテンポよく読めました。構図やトーンワークも見事で、見応えのある画面づくりができています。ただ、主人公が知られたくない秘密が多いので、一つに絞ってみてください。
「ディアマイファミリィ」桜庭 あも(28歳・神奈川県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■岩本ナオ先生
絵もかわいく、主人公の女の子に好感が持ててとてもいいお話でした。よくまとまっています。もう少しクセのあるキャラを作ることが課題でしょうか。希望する雑誌の読者がどんなまんがを読みたいか等も意識しましょう。
■宇佐美真紀先生
絵柄もかわいらしく優しいお話でした。ちゃお向けだと思いますが、少しおとなしい印象なので、もう少し元気さや子供っぽさがあってもいいのかなと思いました。
■水瀬藍先生
かわいい絵柄でキャラの心理描写が丁寧なので、心温まる展開がとてもよかったです。
■やぶうち優先生
絵がかわいく、デッサンも崩れずに描けています。お話もいい話でした。序盤が長く、男の子が出てくるのが遅いのが残念。構成を見直せば、テーマをもう少し絞れます。画面はタチキリばかりで単調なので、メリハリを。
「神様への恋」月形 みさ(27歳・北海道)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■岩本ナオ先生
主人公がとてもいい子でストレスなく読めました。ただあと一つ何かほしい。キャラの違う表情を見せる等もうワンエピソードを。とても読みやすく高レベルですが、もう少しほかの人と違う武器があったらと思います。
■宇佐美真紀先生
神様との恋という特殊な設定ですがうまくまとめてあると思います。説明的でもなくテンポよく、すんなり読みやすい作品でした。
■水瀬藍先生
絵がキレイで表情もいいです。烏丸の笑顔にドキッとしました! セリフはセンスもよくて面白いのですが、少し量が多すぎるので伝わりにくくなっていて、もったいないです。
■やぶうち優先生
キャラがいい。絵柄もクセがなく好印象。よくある設定ながらオリジナリティや工夫もある。後半は雰囲気がよく、仕上げもキレイです。前半は文字が多い印象。設定の活かし方がもう一歩。ラストもカタルシスを意識して。
「アンダー・ザ・シー」万路 とら(23歳・神奈川県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■岩本ナオ先生
青春モノならセリフを絞り、彼女達の見えてる景色を入れたほうがいいかもしれません。男女のビジュアルと見せ場がとても印象的。ただ絵をもう少し頑張り、読みやすい画面づくりを心がけてください。
■宇佐美真紀先生
独特の雰囲気を持ってる方なので自由に育ってほしい。でも、読みやすさは必要なのでそのための表現など研究していくといいと思います。
■水瀬藍先生
独特の世界観、伝えたいテーマがあるのがとてもよいです。構図も凝っているので、コマ割りはそれを活かす読みやすさを重視したもののほうが、シーンが伝わってくると思います。
■やぶうち優先生
面白かったです! 深く、作品世界に引き込まれて読み応えがありました。冒頭、二人が出会うシーンのつかみがプロレベル。序盤、最低限のセリフと絵だけで設定を見せ切っているのも素晴らしいです。…感服!!
青年部門
「赤色の青春」田中中田(25歳・福井県)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
あまりにも恐ろしかった。そう思わされた時点でこの作品は「作品」として成立していると思います。熱量も確かにありました。ただ、この「戦争」というテーマは新人賞の審査作品としては難しい面があります。生き死にはドラマチックになりやすく、またこの国の多くの人が戦争を「知らない」ことに罪悪感を多少なりとも抱いており、大人しく聞かなければという気持ちになってしまうからです。それこそ作中の終戦記念日の戦争特番のように。個人的には、読まされました。でも同時に日常ドラマをこれくらいの熱量を持って描けるだろうか? とも思いました。しかし、戦争だけをひたすら何作も描き続けるのもまた作家性です。どんな作家さんなのか、この次を見てみたいと思いました。冒頭の「これで腹が軽くなった」はせっかくなので最後にも効果的に使ってほしいなぁと思います。
■太田垣康男先生
漫画で戦争を描くのは非常に難しい。戦争を讃美するプロパガンダも罪深いし、戦争犯罪を醜悪に描く逆プロパガンダも同類だ。戦争という人類の業を偏った一面から描くのは危険だ、と自戒を込めて言いたい。
■浅野いにお先生
露悪的で心の痛む描写が続きますが、読むことで何かを感じる読者は多いと思うので(現代の方の)主人公に多くを語らせないスタイルは作品として成功していると思います。惜しむらくは全体的に絵が荒いこと。内容に絵が追いついていないのは勿体無いです。それとこの作品にどの程度の取材がされているのかは不明ですが、近~現代史の歴史物に関してはまだその影響下にある人が存在するので、責任の所在を明確にするうえでも参考資料等の明記はあったほうが説得力があると思います。
■石塚真一先生
どこか愛らしい絵柄のキャラクター達で話が始まったと思いきや、途中からドキュメンタリーでも見ているかのような緊迫感に圧倒されました。シリアスな状況下での感情の動きが実にリアルだからなのでしょう、読んでいてドキドキしました。バトンを渡された若者の、次の一歩を見てみたいと思いました。
■業田良家先生
戦争で人を殺すときの恐怖と罪悪感が強烈な臨場感をともなって伝わってくる。シンプルな描線で迫力のある表現ができている。作者の思いが直感的に伝わってきた。
「綺麗だと伝えて」流川桐伍(20歳・京都府)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
「私、綺麗だし!」のコマに心をグッと掴まれました。こういう一瞬を切り取れるのは、描くべきものを持っている、見つけられる証拠だと思います。キャラクターの表情に艶があり、構図にも工夫があって引っ掛かりなく読めました。ただ、セリフを少なくし、絵で読ませようとする姿勢は大変素晴らしいのですが、そのせいでわかりづらくなっている部分もあるように見受けられました。情緒的な部分と状況説明は分けて考えるといいかもしれないです。前者は今のまま余白を持たせて読者に委ねる、後者は親切すぎるくらい自然と情報が読者に入ってくるように意識してみると、グッと読みやすくメリハリもつきそうです。ヒロインの動機の浅はかさはいまひとつ共感しづらかったのですが、それを含めて「若さ」なのかなとも思い、眩しい…と思いました。青年誌でやるならば、そこもカバーする大人の目線はほしい気がします。
■太田垣康男先生
主人公の撮った写真、ラストカットにもっと説得力のある絵が入れば物語の印象は大きく違っていたと思う。創作は時に人を傷付ける。誰かが美しいと感じ発表したものが誰かを不快にさせることは日常茶飯事だ。それでも創作はやめられない。その我儘と向き合う主人公が垣間見た美とは?綺麗だと読者に伝える画力を早く身に付けてほしい。
■浅野いにお先生
若干絵柄の不安定さを感じましたが、活き活きとしたキャラの表情が印象に残りました。物語に関しては押しが足りないというか、もう一歩踏み込んで言及しても良かったと思います。「自分の感じる綺麗なものを表現することで誰かを傷つけることにはなるが、それは表現者のエゴである」といったところまで主人公に自覚させ、そのうえでどう成長していくのかが見てみたかったです。
■石塚真一先生
読み切り作品らしい作品だと思いました。スタートからラストまで、作者なりの感情の動きや展開を経て一本にまとまっている。まとまった作品は浸透力があるように感じます。この、「一本にまとめられる力」がこの作者の強みだと思います。
■業田良家先生
過去のトラウマを「写真」を通して乗り越える。そんな難しいテーマを上手に読者も納得できる形で表現し、完結させている。普遍的なメッセージ性も感じた。ただ、登場人物の顔の造形が安定していないので、デッサンを見せられている気がして、感情移入がしづらい。その点だけ損をしている。
奨励金
10万円
児童部門
「おなら魔人」コバヤシ友星(13歳・神奈川県)
少女・女性部門
「マイ・リトル・ソフィー」明日森 みなみ(29歳・兵庫県)
青年部門
「恋銃」小畠みきやす(25歳・神奈川県)
「バオのチャーハン」中山 光(36歳・東京都)
「クライ・キャンディ」雨蛙ガメ(24歳・千葉県)
児童部門
入選
「もぐら(仮)」やましたれお(17歳・東京都)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■むぎわらしんたろう先生
「もぐら」のキャラが楽しい。ぬいぐるみとかあったら、買ってしまうかも。もぐらの特徴を生かしたギャグを期待したが、ただの異生物で終わってしまったのは残念。
■松本しげのぶ先生
絵は見やすくて、洗練されています。清潔感もあり非常によいです。絵で伝える力があります。ですが、ギャグは弱く感じました。読者の想像を超えてほしいですね。
■曽山一寿先生
お話がすんなり頭に入ってきます。伝えるべき情報が必要最低限なので、スゴくわかりやすい。これはプロの漫画家を目指すには、とても重要なことです! エライ!!
■村瀬範行先生
漫画ならではの読みやすさを持った作品。注目したのはセリフ量です。セリフを削る頭のよさと、テンポのよさに、いろんなところでご活躍できる力を感じました。
「硬派戦士ハード・ガイ」秋雄つばさ(29歳・埼玉県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■むぎわらしんたろう先生
ほのぼのした世界に、劇画タッチの主人公をうまく取り入れてあり、そのギャップが笑えます。絵もかなり描きなれています。画面も見やすく、ギャグもわかりやすい。
■松本しげのぶ先生
大きな笑いはありませんが、全体的なホンワカさは持ち味でいいと思います。描きなれた感じもよいです。テンポやタッチに変化があれば、もっとよくなると思います。
■曽山一寿先生
ギャグのレベルは、かなり高いです。ただバズーカの回数が多すぎです。同じギャグを繰り返すネタのピークは、1回目か2回目。3回目は急激にパワーがなくなります。
■村瀬範行先生
主人公が面白く魅力的。やりすぎな行動も計算しているのではなく、天然でそう思っているというのがまた面白い点です。絵は全身図が多く、漫画として大変上手です。
佳作
「ギンガの銀河」塩山むすび(24歳・神奈川県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■むぎわらしんたろう先生
2人の宇宙へのあこがれと夢を描いた力作。ただ全体的に似たような画面とコマ割り、そしてセリフ多めなので、もう少し変化がほしい。絵は細かく丁寧さを感じます。
■松本しげのぶ先生
銀河での探検をしたいだけでなく、バトル、ゲーム、兄ちゃんとの戦い、星を集めるなど目的が多すぎるので、しぼるべきです。絵は細部までしっかり描いています。
■曽山一寿先生
話をつめすぎなのと、展開が伝わりにくいところはありますが、すごく楽しそうに描いているのが伝わり、好感が持てます。ギンガ君の熱い想いもグッときますね!
■村瀬範行先生
絵や漫画を描くのが、ものすごく好きな方なのだろうなと熱意を感じました。絵柄も児童誌と相性がよさそうです。楽しい絵柄で描ききったことを評価したい作品です。
「死計課捜査官 生永らえ太」朝海ハヤト(32歳・岡山県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■むぎわらしんたろう先生
秘密警察死計課という他人にはない発想を持っています。クライマックスの死神に変わる描き方はかっこいい!もっとコマを整理して、さらに迫力のある演出を。
■松本しげのぶ先生
死を回避する能力。面白い視点だなあと思いました。それだけで広がる話です。ただ設定が増えすぎなので、お話や設定を描くことよりも、読者に共感させる構成を。
■曽山一寿先生
秘密警察死計課の説明、人間の心の葛藤などを、うまく伝えることができていて素晴らしいです! アクションシーンなども、キチンと描けていて好感が持てます!
■村瀬範行先生
不幸が前倒しになって事件が先に起こるという能力を、考えついたことに脱帽です。主人公の行動は応援したくなることなので、そこだけでも素晴らしい設定ですね。
奨励金
「おなら魔人」コバヤシ友星(13歳・神奈川県)
少年部門
入選
「天使にジョブチェンジを」東野 トシ(25歳・愛知県)特別育成金 33万円
審査員評を見る
■あだち充先生
絵のセンス、言葉のセンス、話のテンポから後味までバランスがいい実力の持ち主だと思います。安心感で読めました。
■高橋留美子先生
絵も画面作りも話運びも巧みです。あえて言うなら主役の元死神、装備は凝っていて良いのですが、肝心の顔が意外と印象に残らない。もったいないなと思いました。ここ一番、読者の心をつかむいい顔を描いてください。
■青山剛昌先生
すげーオモロかった! 特に、「死んでも死なせてやらねえ」ってセリフががイイ感じです! 所々、フキダシの配置で読みづらい箇所はあったけど、それを差し引いても面白かった!!
■畑健二郎先生
読みやすく、キャラクターもハッキリしていて良かったです。バトルシーンも迫力があったと思います。話も絵もまだまだ荒削りではありますがセンスがあると思うのでこの方向で磨いていってください。この世界における天使や死神の立ち位置がよく分からない点は気になりました。その部分がハッキリしていると、もっと物語に入りやすかったかなと思います。頑張ってください。
「握るは刀開けば梅」優希(23歳・福岡県)特別育成金 33万円
審査員評を見る
■あだち充先生
まずは画力でしょうか。女子キャラの魅力も含め、お見事です。演出も構成もとにかく総合力が高い。タイトルもよろしいかと…
■高橋留美子先生
画力はありますし、この絵に合ったストーリーだとは思います。エンターテインメントとして考えた時、楽しい話ではないので、もうひとつ強烈なエピソードとか、場面が欲しいと思いました。
■青山剛昌先生
とにかく絵がべらぼうに上手い! 話も読みやすく面白かった。ただラストにもうひとひねり…何か救い的な何かかがあったら良かったかも… あと、なぜ道場の人達を殺さなきゃならなかったのか、オレにはわからなかった…
■畑健二郎先生
決めゴマの表情や構図が決まっているのは素晴らしいと思いました。ラストの展開も読切ならではで、意見は分かれるかと思いますが、僕個人としては良かったです。全編ほぼ回想シーンで、主人公の行動によって変わる未来がない点は気になりました。今後の課題としては、もっと作家性を伸ばせたらいいなと。挑戦的で、独自性の強い物語をこの調子でどんどん作っていってください。
「リベルタの墓守」箭坪 幹(22歳・神奈川県)特別育成金 33万円
審査員評を見る
■あだち充先生
設定の分かりやすさとていねいな話の展開。絵の軽さが気になる部分もありますが作者の素直な性格を感じます。
■高橋留美子先生
シンプルで読み易かったです。主人公の気持ちの流れも過不足なく描かれており、基本はできていると感じました。もう少し画面にメリハリが欲しいのと。60枚使ってる割りに話が素直過ぎるのでもうひとひねり、と思いました。
■青山剛昌先生
いやぁー、一転二転三転と先が読めない展開でとても面白かった。ただ、母親とか、今まで世話になっていたお付きの兵士とかも焼き殺されているだろうに、その悲しみが描かれていなかったのが残念。あと、扉絵は漫画の顔なのでもう少し考えて欲しい(笑)。
■畑健二郎先生
今回の中でダントツ。絵がとても上手く、即戦力と言っていいレベル。ページ数はかなり多かったですがシナリオがしっかり作られており、ドラマが成立している点も良かった。際立っているのはファンタジーの世界観をきちんと描写できていたところ。その世界にしかない独特の風習を物語の中に綺麗に落とし込み、独自の世界観を表現すると同時に、それに翻弄される人間の心理を丁寧に描けていました。
佳作
「HOUND×DOG」稲上 燐(24歳・岐阜県)
審査員評を見る
■あだち充先生
絵の上手さのムダ使いが清々しいどうでもいい話(いい意味で…)。描いている本人が一番楽しそうに遊んでる気がします(いい意味で…)。
■高橋留美子先生
面白かったです。ネームのセンスやリズムがとても良いです。女の子もかわいいです。それに対し殺し屋の男性たちが、なんか描き慣れていないように見えてしまって損してます。しかしこれは描き続ければ解決すると思います。
■青山剛昌先生
殺し屋の組織なのにボスと手下の2人だけしかいないように見えてしまいショボく感じてしまう。あと、主人公がなんでこんなに強いのかって説明もないので感情移入しづらかった。
■畑健二郎先生
冒頭の掴みや、終始読者を飽きさせず、テンポ良く進む物語は好感度が高く僕は好きでした。絵はまだまだ修行が必要ですが、読みやすく、女の子も可愛く、その点も良かったです。ただジャンルとしてはギャグやコメディーだと思うのですが、オチがないのは気になりました。後半、ボスが出てきてから終始普通に戦うだけで、前半のような笑いの工夫がなく、最後の決着も、無難にまとめた印象。
「恋の翼」蚊っさん(22歳・宮崎県)
審査員評を見る
■あだち充先生
全ページ同じように人物も背景もていねいに描き込んであります。その姿勢はいいのですが話の展開に合わせてもう少し画面に変化があってもいいのではないでしょうか。
■高橋留美子先生
楽しい青春モノです。キャラクターも愛らしく、男の子のネタばらしの部分もいい意味で期待どおりでした。読後感も良かったです。
■青山剛昌先生
後半になって面白くなったけどキューピットじゃなくなってしまうって緊迫感がほとんどなくて残念(ルールを破って消えてしまう他のキューピットを描くとか…)。あと、突然の方言でちょっとビックリした(笑)。
■畑健二郎先生
お話はとても可愛いらしく、絵柄も好感度が高く、表情も描けていたと思います。正直、作品としてあまりマイナスな面がない印象なのですが全てが小さくまとまりすぎていて、無難な印象が強いです。今後の課題としては「漫画を描く」才能については「ある」と思うのでその才能を信じて、自分にしか描けない設定、シナリオ、そして感情、そういったものを常に意識し、頑張ってみてください。
「鉄屑のしらべ」夏嶋 柑(27歳・福島県)
審査員評を見る
■あだち充先生
嫌みのないスッキリした絵柄と読みやすさは大きな武器です。ストレートな話も合ってると思いました。
■高橋留美子先生
話がシンプルすぎるかなと。ヒロイン(?)の絵自体は魅力的なので、そのキャラクターを深めるなり、主人公とのエピソードをちゃんと描いてください。
■青山剛昌先生
とても面白かった。絵も上手いし見せ方も上手い! これで連載漫画家じゃないのが不思議です(笑)。もう少し、右ページの最初のコマを大切にして欲しいぐらいで、あとは非の打ち所がないです!
■畑健二郎先生
絵柄はとても可愛らしく丁寧で良かったと思います。画面の構成も見やすく、とても読みやすかったです。ただ物語は流石にわかりやすすぎるかなと。予想を超えた展開がなく、あっけなく終わってしまった印象。起承転結で言えば、ここまでで起承。キャラクターも自発的に動いていない印象で作者の都合が透けて見えている点もマイナス。シナリオとは何かを学び直す必要性を感じました。
「PRIMO PIZZA」狛江 裏々(23歳・東京都)
審査員評を見る
■あだち充先生
キャラもいい表情してるし、背景や小物をごまかさず描き込む姿勢にも好感が持てます。もちろんピッツァへのこだわりも…
■高橋留美子先生
絵は元気があって良いです。ただ背景の線が太すぎるのか、画面がごちゃついて見えてしまい、少し損しています。主人公が涙する場面、理屈ではわかるのですが、少し唐突に思いました。前段のエピソードが弱いのかも。クライマックスに至る積み重ねを考えてみてください。
■青山剛昌先生
「このピザ…マルゲリータじゃね?」と思ったらまさかの実話だったとは…(笑)面白かったけど、「いつものとは違うピザを作って欲しい」とロベルトに言うシーンも知るシーンもなくて、流れで知ってるモノとして話が進んでいて違和感があり少しモヤッとした(笑)。
■畑健二郎先生
一生懸命描いていたのは好感触でした。ただ、漫画としてはシナリオが荒っぽい。時代背景や場所の説明がないので、主人公が何者かもわからず話が進行するので物語に入っていくことが難しいです。なので主人公が最後、何に悔やんでいるのか読者には全く伝わっていない。師匠ロベルトが全然いい人に見えない点もマイナス。一番問題なのは料理漫画なのにピザを美味しそうに食べる描写がないこと。
「逆夢の獏」森本 淳士(23歳・神奈川県)
審査員評を見る
■あだち充先生
周りの友達をキチンと使って主人公の成長を描いているところがいい。獏は気持ち悪いし、夢の中の少女は可愛いし、よくまとまっています。
■高橋留美子先生
クラスメートの描き分けや夢の描写など面白い工夫はしていて良いと思います。ただ、主人公の内省のストーリーなので、物語が広がらない感じで、オチもあまり驚けませんでした。描ける人だと思うので、読者を楽しませる意識を持ってください。
■青山剛昌先生
うーむ…正直よくわからなかった。絵は上手いし、構図も格好いいのにどこで誰がどんな攻撃をしているのかわかりづらかった。特に45ページ。あと、「高校生にもなって絵を描いてる」ってセリフはピンとこなかった。美術の授業とかもあるだろうに…(笑)
■畑健二郎先生
しっかりと絵を描いている点は好評価でした。難しい構図や背景も、逃げずに描いている。お話も丁寧で、とても読みやすくレベルは高かった。ただ漫画としては無駄が多すぎると感じました。機能してない無駄ゴマ、無駄ページ、無駄描写が多い。例えば7P目、家に帰るシーンに1Pも必要ない。他にもほぼ機能していない友達や母親、仕草など、省くことを覚えたほうがいいかなと思います。
少女・女性部門
佳作
「会長はヒミツ主義」柏木 こねる(20歳・大阪府)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■岩本ナオ先生
二人の関係がいいので前半すっきりまとめ、主人公に興味を持つところは1/2ページは使うべきだと思いました。エンタメ感出そうとしているのは本当によかったです。時折何が起こってるかわからないので、直すよう意識を。
■宇佐美真紀先生
ネーム運びや構図など、絵的な課題はありますがキャラクターを楽しく描けているのが伝わってくる作品でした。
■水瀬藍先生
キャラクターをちゃんと作ろうとしていて、特に男の子のキャラがよかったです。ヒロインの感情の積み重ねが弱いのが残念。せっかくキャラができているので、二人のリアクションをもっと見たかったです。
■やぶうち優先生
キャラやセリフが生き生きとしていてテンポよく読めました。構図やトーンワークも見事で、見応えのある画面づくりができています。ただ、主人公が知られたくない秘密が多いので、一つに絞ってみてください。
「ディアマイファミリィ」桜庭 あも(28歳・神奈川県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■岩本ナオ先生
絵もかわいく、主人公の女の子に好感が持ててとてもいいお話でした。よくまとまっています。もう少しクセのあるキャラを作ることが課題でしょうか。希望する雑誌の読者がどんなまんがを読みたいか等も意識しましょう。
■宇佐美真紀先生
絵柄もかわいらしく優しいお話でした。ちゃお向けだと思いますが、少しおとなしい印象なので、もう少し元気さや子供っぽさがあってもいいのかなと思いました。
■水瀬藍先生
かわいい絵柄でキャラの心理描写が丁寧なので、心温まる展開がとてもよかったです。
■やぶうち優先生
絵がかわいく、デッサンも崩れずに描けています。お話もいい話でした。序盤が長く、男の子が出てくるのが遅いのが残念。構成を見直せば、テーマをもう少し絞れます。画面はタチキリばかりで単調なので、メリハリを。
「神様への恋」月形 みさ(27歳・北海道)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■岩本ナオ先生
主人公がとてもいい子でストレスなく読めました。ただあと一つ何かほしい。キャラの違う表情を見せる等もうワンエピソードを。とても読みやすく高レベルですが、もう少しほかの人と違う武器があったらと思います。
■宇佐美真紀先生
神様との恋という特殊な設定ですがうまくまとめてあると思います。説明的でもなくテンポよく、すんなり読みやすい作品でした。
■水瀬藍先生
絵がキレイで表情もいいです。烏丸の笑顔にドキッとしました! セリフはセンスもよくて面白いのですが、少し量が多すぎるので伝わりにくくなっていて、もったいないです。
■やぶうち優先生
キャラがいい。絵柄もクセがなく好印象。よくある設定ながらオリジナリティや工夫もある。後半は雰囲気がよく、仕上げもキレイです。前半は文字が多い印象。設定の活かし方がもう一歩。ラストもカタルシスを意識して。
「アンダー・ザ・シー」万路 とら(23歳・神奈川県)特別育成金 25万円
審査員評を見る
■岩本ナオ先生
青春モノならセリフを絞り、彼女達の見えてる景色を入れたほうがいいかもしれません。男女のビジュアルと見せ場がとても印象的。ただ絵をもう少し頑張り、読みやすい画面づくりを心がけてください。
■宇佐美真紀先生
独特の雰囲気を持ってる方なので自由に育ってほしい。でも、読みやすさは必要なのでそのための表現など研究していくといいと思います。
■水瀬藍先生
独特の世界観、伝えたいテーマがあるのがとてもよいです。構図も凝っているので、コマ割りはそれを活かす読みやすさを重視したもののほうが、シーンが伝わってくると思います。
■やぶうち優先生
面白かったです! 深く、作品世界に引き込まれて読み応えがありました。冒頭、二人が出会うシーンのつかみがプロレベル。序盤、最低限のセリフと絵だけで設定を見せ切っているのも素晴らしいです。…感服!!
奨励金
「マイ・リトル・ソフィー」明日森 みなみ(29歳・兵庫県)
青年部門
大賞
「君の笑顔にそう誓う。」畠本レモン(29歳・神奈川県)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
鬱屈した心、閉塞感、それでも前を見ようとする人の切実な美しさを感じました。テンポも良く構成も演出も考えられており、読み手を意識できている漫画でした。ただ、テーマがプライベートな域を出ておらず、まだエンタテイメントではないかなと思います。もう一歩自分のわかる範囲から出て、様々なものを描いてみてほしいです。キャラクターもちょっと弱い。絵にはもう少し力強さというか、描こうという執念がほしいなと思います。絵をしっかり描くと、二人の生きる世界にも、もう少し奥行きが出てきそうな気がします。
■太田垣康男先生
商業漫画は娯楽です。読者を楽しませるのが仕事であり、自分を慰める為の手段ではありません。誰かに励まされたいと望む読者の為に何ができるかを考えましょう。ヒロインの笑顔に目標達成を誓ったなら次のステップに踏み出してください。
■浅野いにお先生
派手な作風ではありませんが表現に華があります。モノローグに頼りすぎている感はありますが読みやすかったです。ただ、たまたま出会った人から影響を受けて主人公の心境が変化するという話の展開はご都合展開に読めてしまうので、出会うまでの過程にもっと伏線があると良かったと思います。偶然と必然のバランスに注意してください。ちなみに主人公の心境も実は変化に乏しく、成長とは程遠いです。主人公が「こう思った」だけで終わらせるのではなく、「こう思ったから」から「こうなった」と言う結果まで描けていれば作品としてのまとまりが出せたのではないでしょうか。
■石塚真一先生
キャラクター達の心情が素直に表現されていて、とても読みやすく好感が持てました。入口があって、出口がある、そんなまとまりの良い読み切り作品です。読む人を正面から前向きにできる力がある作者だと思います。
■業田良家先生
デッサン力もあり、描線も魅力的で構図の取り方も素晴らしい。松本大洋さんの影響を感じるが、それだけではない個性もある。青春時代の夢と挫折と希望。主人公の心情が的確に描けていて、しっかり伝わってくる。コマ運びもネームも巧い。しかし、このストーリーを独創的なものにするアイデアが入っていない。
入選
「指枷」國光恐竜(26歳・東京都)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
非常に面白かったです。絵は多少まだ拙い部分はありますが、キャラクターも良く、何より決めゴマの表情がどれもとても魅力的で良いです。二転三転していくストーリーもとても楽しく、読み手を意識した娯楽としての漫画作りの姿勢が既にできている点が素晴らしい。『なんたらかんたら小山葵 ―指枷―』みたいな感じでシリーズがやれそうですね。主人公の推理が卓上だけでなく危険を孕んだ行動も伴うと、もっと主人公らしさが出て読者も一緒に葵の「余計な詮索」を楽しめるのではないでしょうか? この先が楽しみです。
■太田垣康男先生
ミステリーへの挑戦は応援したい。ヒロインの清濁併せ呑む雰囲気は名探偵の素養が垣間見える。しかしながら、ミステリーには犯罪心理や犯行手口、トリックを暴く推理力や犯人を追い詰めるクライマックス等々クリアすべきハードルが多い。もう一段深い考察を経てミステリーを再構築してほしい。期待している。
■浅野いにお先生
習字教室の中での事件というのは目新しさがあり、展開や落とし所も習字に絡めたもので綺麗な終わり方でした。ただ、各登場人物のキャラが薄く内面を感じさせないので、それぞれの関係性が希薄でドラマに欠けます。それぞれ目力はあるのですが、不気味な先生はともかく特に主人公の心境が最後まで理解できませんでした。そのためストーリーが上滑りしている印象になっているので、もっとキャラに人間味を持たせる工夫をしたほうが良いかもしれません。
■石塚真一先生
静かな雰囲気の中にジワリと恐怖を感じるサスペンス作品です。展開の面白さやキャラクターの癖に加えて、キャラクター達の内面をもう少し見てみたい気がしました。
■業田良家先生
面白かった。ユーモラスに始まってから話が少しずつ怖くなっていく展開に引き込まれた。ページをめくるワクワク感があり、上手な筋の運び方だと感じた。ミステリー的な謎の解き方も巧い。ただ、主人公が唇のにきびをつぶしたのか、よくわからないが、血がにじんでいる演出の意味が理解できなかった。
「K7百」野利のり太(47歳・福井県)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
面白かったです! 審査ということを忘れて読み入ってしまいました。結末も全く予想できませんでした。青年誌らしいテーマと展開と結論で、現実の切り取り方に皮肉が効きながらも根底に流れる優しさがあり、ラストは胸に迫るものがありました。みんなが目を背けがちな問題にスポットをあて、その深刻さを保ったままエンタメに昇華した点も素晴らしいと思います。ひとつだけ、主人公がK7百の胸を触ろうとするシーンだけ、主人公の「人間らしさ」の表現のためなのであれば、少し意味深なコマ割りになり過ぎている気がしました。何かの伏線かと思ったらそこだけだったので、少し気になりました。もっとライトな表現にするか、もう少し踏み込んで主人公の正体を示唆する伏線を入れるかするといいのかな、と思いました。ただ、ここも個人の感覚のレベルなので、ほんのご参考までに。もっと他の作品を読んでみたいです。
■太田垣康男先生
プロット段階で思い付いた設定をそのまま説明するだけでは漫画になりません。主人公の主観から改めて物語を見つめる様にすれば構成も変わる筈。登場人物の人柄の良さには今後の可能性を感じる。
■浅野いにお先生
美少女介護ロボットという設定は読み始めこそやや安易に感じましたが、27ページ目からの展開によってしっかりと考えさせられる内容になっています。介護問題のシリアスさを直視した内容ではありませんが、介護する側の可能性に目を向けたことは良いアイデアだと思いました。ただ、人物の表情やセリフに抑揚がなく、全体的に淡白です。物語の流れは同じままでも、演出面を伸ばすことでまだまだ面白くなる余地があると思うので、魅力的な漫画表現を意識してほしいです。
■石塚真一先生
未来モノの短編小説を読んでいるような感覚になる作品です。読後感も悪くなく、なんだかほっこりするお話です。この作者は、世の中で起こっている現象や人間関係を客観的にとらえることができるのかもしれません。感情に深入りしないのが持ち味というか…次作に期待しています。
■業田良家先生
介護ロボットや新しい児童ポルノ禁止法など、近未来の設定が細部まで考えられていて、リアリティーがあり、物語の世界に入り込める。主人公の顔が地味すぎると感じたが、結末まで読むと、このストーリーにはぴったりの顔だと思った。おばあちゃんやリサイクルショップの店主にも個性が感じられてよい。最後の締めくくりに、もう一工夫ほしいが、全体的には佳い作品だ。
「解脱」磯部 薫(24歳・静岡県)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
風景に感情を込めることができるのは、ものすごい武器だと思います。構図も凝っているのに読みづらさはなく、基本に裏打ちされた演出力の高さを感じました。床板に父娘の影が落ちている見開きはそうそう思いつかないくらい特殊で印象的なのに、奇をてらったようなわざとらしさはなく、物語にキチンと意味を与えていてすごい! と思いました。マネしたい…! 手にも表情があり、こだわりを感じました。ここまでの力があるのだから、次はもう一歩外に目を向けて物語で「読者を楽しませる」フェーズに入ってほしいです。商業誌はあくまでも人を楽しませるために存在します。人を惹きつける題材を選び、追いかけたくなるキャラクターを立たせてください。
■太田垣康男先生
上手い!演出、構成、画力、感情表現、どれも卓越している。人の業と優しさまでも描き上げた見事な人間讃歌だ。クライマックスで主人公の口から出た言葉には胸を突かれた。非常に悲しく、しかし体験した者だけが持つ力強い優しさがあった。主人公が歩む未来に幸あれ、と切に願う。
■浅野いにお先生
鬼気迫る絵柄が物語の雰囲気作りに効果的に作用していて良い作品だと思いました。主人公を含めた女性三人の描き分けが甘いせいか、カットバックのシーンで誰が誰だかわからなくなり序盤混乱したので、見た目や役回りを明確に差別化してください。主人公が父親に向けた最後の言葉は意外性がなく、それが逆に漫画的ではないのが意外で面白かったのですが、ラストページに繋がっている感じが希薄だったので、重要なセリフはオチにつながる伏線と捉えて工夫すれば、より完成度の高い作品なったと思います。
■石塚真一先生
主人公の気持ちが親子関係だけじゃなく、周囲の人達の間も行ったり来たりするところに、主人公の迷いや悩みの深さが現れているように感じました。人間の奥底にある感情に焦点を当てた次回作に期待します。
■業田良家先生
隣人の赤ちゃんの誕生と主人公の父親の死を同時に描くことで、人生の生と死が凝縮されて、心に響いてくる。ただ、主人公の名前の一部を赤ちゃんに付けるくらい深い隣人との関係がほとんど描かれていない。ヒントだけでも描いてくれると、もっと深い物語になると思う。
佳作
「赤色の青春」田中中田(25歳・福井県)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
あまりにも恐ろしかった。そう思わされた時点でこの作品は「作品」として成立していると思います。熱量も確かにありました。ただ、この「戦争」というテーマは新人賞の審査作品としては難しい面があります。生き死にはドラマチックになりやすく、またこの国の多くの人が戦争を「知らない」ことに罪悪感を多少なりとも抱いており、大人しく聞かなければという気持ちになってしまうからです。それこそ作中の終戦記念日の戦争特番のように。個人的には、読まされました。でも同時に日常ドラマをこれくらいの熱量を持って描けるだろうか? とも思いました。しかし、戦争だけをひたすら何作も描き続けるのもまた作家性です。どんな作家さんなのか、この次を見てみたいと思いました。冒頭の「これで腹が軽くなった」はせっかくなので最後にも効果的に使ってほしいなぁと思います。
■太田垣康男先生
漫画で戦争を描くのは非常に難しい。戦争を讃美するプロパガンダも罪深いし、戦争犯罪を醜悪に描く逆プロパガンダも同類だ。戦争という人類の業を偏った一面から描くのは危険だ、と自戒を込めて言いたい。
■浅野いにお先生
露悪的で心の痛む描写が続きますが、読むことで何かを感じる読者は多いと思うので(現代の方の)主人公に多くを語らせないスタイルは作品として成功していると思います。惜しむらくは全体的に絵が荒いこと。内容に絵が追いついていないのは勿体無いです。それとこの作品にどの程度の取材がされているのかは不明ですが、近~現代史の歴史物に関してはまだその影響下にある人が存在するので、責任の所在を明確にするうえでも参考資料等の明記はあったほうが説得力があると思います。
■石塚真一先生
どこか愛らしい絵柄のキャラクター達で話が始まったと思いきや、途中からドキュメンタリーでも見ているかのような緊迫感に圧倒されました。シリアスな状況下での感情の動きが実にリアルだからなのでしょう、読んでいてドキドキしました。バトンを渡された若者の、次の一歩を見てみたいと思いました。
■業田良家先生
戦争で人を殺すときの恐怖と罪悪感が強烈な臨場感をともなって伝わってくる。シンプルな描線で迫力のある表現ができている。作者の思いが直感的に伝わってきた。
「綺麗だと伝えて」流川桐伍(20歳・京都府)
審査員評を見る
■こざき亜衣先生
「私、綺麗だし!」のコマに心をグッと掴まれました。こういう一瞬を切り取れるのは、描くべきものを持っている、見つけられる証拠だと思います。キャラクターの表情に艶があり、構図にも工夫があって引っ掛かりなく読めました。ただ、セリフを少なくし、絵で読ませようとする姿勢は大変素晴らしいのですが、そのせいでわかりづらくなっている部分もあるように見受けられました。情緒的な部分と状況説明は分けて考えるといいかもしれないです。前者は今のまま余白を持たせて読者に委ねる、後者は親切すぎるくらい自然と情報が読者に入ってくるように意識してみると、グッと読みやすくメリハリもつきそうです。ヒロインの動機の浅はかさはいまひとつ共感しづらかったのですが、それを含めて「若さ」なのかなとも思い、眩しい…と思いました。青年誌でやるならば、そこもカバーする大人の目線はほしい気がします。
■太田垣康男先生
主人公の撮った写真、ラストカットにもっと説得力のある絵が入れば物語の印象は大きく違っていたと思う。創作は時に人を傷付ける。誰かが美しいと感じ発表したものが誰かを不快にさせることは日常茶飯事だ。それでも創作はやめられない。その我儘と向き合う主人公が垣間見た美とは?綺麗だと読者に伝える画力を早く身に付けてほしい。
■浅野いにお先生
若干絵柄の不安定さを感じましたが、活き活きとしたキャラの表情が印象に残りました。物語に関しては押しが足りないというか、もう一歩踏み込んで言及しても良かったと思います。「自分の感じる綺麗なものを表現することで誰かを傷つけることにはなるが、それは表現者のエゴである」といったところまで主人公に自覚させ、そのうえでどう成長していくのかが見てみたかったです。
■石塚真一先生
読み切り作品らしい作品だと思いました。スタートからラストまで、作者なりの感情の動きや展開を経て一本にまとまっている。まとまった作品は浸透力があるように感じます。この、「一本にまとめられる力」がこの作者の強みだと思います。
■業田良家先生
過去のトラウマを「写真」を通して乗り越える。そんな難しいテーマを上手に読者も納得できる形で表現し、完結させている。普遍的なメッセージ性も感じた。ただ、登場人物の顔の造形が安定していないので、デッサンを見せられている気がして、感情移入がしづらい。その点だけ損をしている。