これまでの受賞者
第92回発表
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大賞
賞状、記念盾、賞金200万円、液晶タブレットまたはスキャナーまたはミラーレス一眼デジタルカメラ、CLIP STUDIO PAINT EX、受賞作収録本
青年部門
「メダカの学校」福岡ゆい(21歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
短編におけるキャラクターの数としては明らかに多いのに、深津先生という傑出した象徴の周りに生きる まさにメダカのようなたくさんの生徒たちがどの子も本当に愛おしく、作者の人を見る眼差しの愛情深さに驚きました。やりたいことに対する演出も自覚的にベストを選んでいるように見えます。素晴らしい作品でした。
■太田垣康男先生
作者の理想か体験か、とにかく私もこんな先生と出会いたかったと思わせる儚くも美しい作品。学生時代という時間そのものを描く俯瞰した視点も独特。仙人の様な先生との一瞬の接点によって子供達の人生の流れが変わっていく様に感動する。
■浅野いにお先生
力作だと思います。老齢の教師を中心に複数の学生たちの悲喜交々が描かれており、学校という水槽から放流された生徒たちのその後にも軽く触れることで、明るい未来を感じさせる良い読後感の作品でした。絵に関して現状は線の強弱が少なく太さが均一で、大きい見せゴマほど絵が白くなる傾向があります。絵柄のクセが強いため読者を選ぶかもしれませんが、物語は万人に薦められる内容なので、絵のクセが「味」になっていけばより多くの読者を惹きつける作品が作れるようになるのではないでしょうか。
■石塚真一先生
この作品には深みと広がりを感じました。人の感情を繊細にとらえて描くことで「絵」ではなく「人」になっています。空気感、雰囲気も絵から漂っています。拍手です。
■業田良家先生
ずっと心に残りそうな素敵なお話でした。深津先生のキャラクター造形が素晴らしい。生徒たちを、そして人間を人生を愛している深津先生の内面が静かに伝わってきて感動した。複数の生徒や同僚の先生たち、それぞれに個性と役まわりがごく自然に織り込まれて、実在する人物たちのように感じた。作者の観察眼は鋭いし、視野が広いので、様々なキャラクターを自在に創り出せるのだろう。話の最後も深津先生が残した「深津文庫」で締めたのも良かった。この先も深津先生の存在は未来の生徒たちに影響を与え続ける。たとえ私たちがうたかたの存在であっても。
「煙が目に染みる。」安田翔哉(25歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
泣いてしまいました。起きている事象はどれも悲しかったり寂しかったりとされることなのに、物事の捉え方、切り取り方がドライでユーモラスでかつあたたかく、得難い作家性だと思います。この作家さんなら特別でない日常も面白く描いてくれそうです。毎回楽しみにすると思います。
■太田垣康男先生
記憶を無くした父親と母の死。大きな喪失感の中、それでも家族の記憶を大切に持って生きていこうとする主人公。柔らかな絵柄と作者の優しい人柄が滲み出る愛すべき秀作。
■浅野いにお先生
シリアスでシビアな話ではありますが、デフォルメの効いた可愛い絵柄との相乗効果で、より寂寥感漂う良い漫画でした。父親がどのタイミングで、どんなきっかけで手紙を書いたのか、そこのエクスキューズがあればもっと納得できる内容になったと思いますが、構成もわかりやすく、コマ割りもセリフも大きいので、総じて読みやすいです。僕の個人的な好みで言えば、もうちょっとだけ毒っ気を足してもいいかなと思いつつも、絵柄は完成されているので、今後は今回のような完成度の高い短編を継続的に描くことができれば、十分商業誌で活躍することができると思います。
■石塚真一先生
心優しい哀愁あふれる作品です。三頭身で描かれたキャラ達の内面はリアルです。愛情がある絵柄の持つ力なのでしょうか、グッとくるし泣けます。次の人間ドラマに期待しています。
■業田良家先生
認知症になったお父さんは、タバコ「チェリー」を吸う時だけ記憶がよみがえる。「チェリー」は10年以上前に製造が中止されていて、残りは手元にあと2箱しかない。このアイデアが素晴らしい。そしてお父さんは、お母さんへ感謝の手紙を書くために残りの「チェリー」を全部吸ってしまう。お父さんのこの心情に泣けてしまう。最後の締めくくりにもうひと工夫、もうひとひねりができていたら、完璧だった。それが残念。とはいえ、漫画でしか表現できない話であり、絵柄もシンプルでユーモラス。私は大好きな作品だ。
入選
賞状、記念盾、賞金50万円、液晶タブレットまたはスキャナーまたはミラーレス一眼デジタルカメラ、CLIP STUDIO PAINT PRO、受賞作収録本
児童部門
「天使のおちこぼれ」B(東京都)特別育成金 25万円
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■むぎわらしんたろう先生
天使と悪魔の交流を優しく描いています。かわいらしい絵柄でも、敵を前にした時の表情などは迫力がある。おちこぼれ具合は、もっと大げさに描くといいと思います。
■松本しげのぶ先生
絵がしっかりしている。さりげないエピソードで、キャラの感情が描かれている。読後に優しい気持ちになれる。児童漫画として大切な要素がつまっていると感じます。
■曽山一寿先生
すごくステキな世界観を描けています。漫画として完成度が高く、弱点が見当たりません。個人的にはアルマの見た目は、もっと悪魔っぽいほうがいいと思いました。
■村瀬範行先生
読みやすかったですが、いろいろ惜しいです。設定やできごとが、なんでこうなっているのかと疑問に思う部分が多いです。絵は少し寄りすぎですが、絵柄は好きです。
少年部門
「比翼の竜」空草たろ(23歳・北海道)特別育成金 100万円
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■あだち充先生
キャラもアクションも高い画力で安定感があります。コマ運び、盛り上がりも上手いのですが個人的にはラストのコマが少し残念…
■高橋留美子先生
キャラデザが可愛く画面も見易く申し分ないのですが、一番の見せ絵がわかりにくかったのが惜しいです。かなりのびしろのある人だと思うのでたくさん描いて、キャラクターのドラマ性というか、個性を出す練習をして欲しいです。あと、ハロは女子? ハッキリ描いてないのでモヤっとします。
■青山剛昌先生
スッゲー面白かった! セリフのテンポもよくて構図も飽きさせず、とにかく絵が抜群に上手い! 背景と、アクションシーンがちとわかりづらい所もあるけど(笑)。どんどん描いて行けば上手くなると思う。
■畑健二郎先生
絵柄が非常に可愛らしく好感が持てます。ただお話がストレート過ぎて驚きが薄いのは、絵が良い分だけ勿体無いと感じました。ハロとレイの関係性が理解できるエピソードを充実させることができれば、より魅力的なストーリーになったと思います。今後に期待できる点が非常に多いので、次々描いていってもらえたらと思います。
青年部門
「坂道に建つ家」風上吹人(22歳・茨城県)
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■こざき亜衣先生
いい女つかまえたな……絵もとても上手いです。借り物でない言葉で語られる思いは多くの人の共感を呼び、また苦しみから救う力を持っていると感じました。あとはもう一歩、物語とキャラクターに力を持たせることができれば、人を惹きつける引力のある作品になると思います。子供のシルエットが“らしさ”にあふれて可愛らしく、観察眼に愛がある作家さんだと思いました。
■太田垣康男先生
地味な題材ながら作者の高い画力で情感が伝わり、坂道の町という心象風景と相まって主人公の揺れる気持ちに共感できた。ここまで自在にカメラワークを操り、人物に自然な演技をつけれる新人も珍しい。間違いなく大成する逸材だろう。今後に期待する。
■浅野いにお先生
詩的な内容で序盤引き込まれましたが、中盤以降も語りが多く、少しだれてしまった感がありました。途中挟まれる回想もリアリティーはありますが想像の範囲内なので、面白みという点では弱いという印象です。形は変われどそこに人の営みはある、というのは納得はできますが、あまりにただの事実なので新しい発見はありません。不安定なバランスで成り立っている「坂道に建つ家」というキーワードはとても良いと感じたので、もっと不安定さや逼迫したぎりぎりのバランスの人間関係というものを強調して、もう少し過激に盛った物語にしても良かったのではないでしょうか。
■石塚真一先生
普遍的なテーマを真っ直ぐに描いています。キャラクターの表情も豊かで読みやすい。ストーリーが枝分かれするポイントであらぬ方向に進んでみても良いかもしれません。
■業田良家先生
形のあるものは壊れ、形のないものは常に変わっていくけど、きっと再建できる。そんな希望あるメッセージが32ページの短編でしっかり描けている。主人公の彼女が賢くて、しっかりしてて、魅力的だ。絵柄もストーリーに合っているし、表情の微妙な変化もうまく描きわけられている。坂の多い町に建つ家々が家族関係の不安定さを表しているし、彼女が年上ということで話す言葉にも説得力がある。鉢植えの花などのディテールの選択も的確でよく考えられている。力量を感じた。
「スイッチスイッチ」牛抱未練(20歳・栃木県)
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■こざき亜衣先生
可愛らしい二人で、好感の持てる物語でした。ストーリーもネーム自体も他者に意識が向いているところが素晴らしいです。一方、読みやすくはあるものの、内容に対して55ページはちょっと長すぎるかなと思いました。テンポを意識しながら展開を整理すると、更に読みやすく魅力的な作品になると思います。
■太田垣康男先生
男女が入れ替わる話は、様々に起こるトラブルやギャップを乗り越えて相互理解に至る、というのが定番だが、この話は主人公の望みが叶うだけの都合の良い展開に終始してる。お定まりの展開を押しつける気はないが、定番を使う以上プラスαのアイデアが無いと。
■浅野いにお先生
男女入れ替わりモノですのでリアリティーは度外視して読みましたが、散々創作物で擦られた入れ替わり展開であるにも関わらず、丁寧にツボを押さえつつ何箇所かなるほどと思わせられた展開もあり、素直に面白かったです。絵柄に関してはあまり個性は感じられません。動きがあるシーンも苦手なようなので、特に二人がぶつかる瞬間などは重要なシーンなので、省略せずにしっかり絵で表現できれば、印象的な場面として読者に記憶されると思います。
■石塚真一先生
気持ちいい物語です。「読んでよかったなあ」。そう思える読後感は大切だと思いました。キャラクター達を読者の心に残せる作者だと思いました。
■業田良家先生
面白かった。美男も美女を描けるし、おじさんおばさんも上手に描きわけられている。ストーリーもわかりやすく、うまくまとまっている。しかし、こんなに良くできた商品であれば、会社で採用されるのではないだろうか。漫画の中では不採用だったのが、少し不自然だ。ストーリーをまとめるためには「不採用」にするしかなかったのかもしれないが、この商品「スイッチスイッチ」に何か大きな欠点があれば、話がもっと深くなったのかもしれない。主人公の二人が最後に少し成長した感じがする点も良い。
「Loveless Heartless」西馬宗志(21歳・愛知県)
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■こざき亜衣先生
この世界に対する絶望と、それでも希望や喜びを見出そうとする人の強さ。世界観をあえて曖昧にした分、そのテーマだけが浮き彫りになっており、短編として素晴らしい構成だと思いました。やや単調なので、ひとつだけでも象徴的な大ゴマが入るとより印象的な作品になると思いました。
■太田垣康男先生
世間や他人の不幸に対して傍観者で覗き趣味だが、都合の良い時だけ関わって偽善者ぶりたい。それは漫画家を含めた表現者の性とも言える。この正直な作者が「取り組むべき題材」を見つけた時が楽しみだ。それまで模索し続けてほしい。
■浅野いにお先生
メインキャラ二人のテンション低めな掛け合いが楽しく、絵柄も可愛いのでなんとなく最後まで読めてしまう作品でした。ただ全体を通して会話劇のみで構成されており、二人の距離感も最後まであまり変わらないので物語性が薄いです。空襲が起きた日本のとある町、という舞台設定で、キャラたちは極めて淡々としており、それがキャラの性格というよりは漫画的な都合のように読めてしまい、非日常という舞台設定に必然性が感じられません。特に金髪の女の子は元から世の中を恨んでいた節があるので、有事の際は逆にテンションが上がるのでは。それとキャラだけにフォーカスせず、社会状況の説明も丁寧に描くことができれば作品に奥行きが出せると思います。
■石塚真一先生
キャラクターが豊かに動いています。感情を持った人物が心からの言葉を言い合い、そして行動している。押しつけがましい感じが全くないのが、この作品の持ち味かと思います。作者の次なる人間ドラマ、楽しみです。
■業田良家先生
冒頭から爆撃された住宅街のシーンから始まり、話に引き込まれた。やはり短編はこうでなくっちゃ。自宅が焼け、母親も死んだかもしれないのに動揺ひとつ見せない主人公。現代の絶望感をよく表している。カラッと乾いた絶望を抱えながらも生きていく人間の強さと生きていくしかない悲しさを同時に感じた。22ページという短いページ数でそのあたりはよく表されている。
佳作
賞状、記念盾、賞金30万円、受賞作収録本
児童部門
「ニコニコねこ」木村大祐(25歳・奈良県)特別育成金 25万円
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■むぎわらしんたろう先生
個性的な世界観を持つ作者のギャグ漫画での挑戦。いろいろな世界に挑戦するのはいいと思います。ただ、バタバタの連続で「ニコニコ」の要素が消えちゃったのは残念。
■松本しげのぶ先生
笑いました。重ねる笑いも上手く、ツボをおさえているなあと感心しました。なにより絵だけで笑えました。描きたいものが明確にある。このノリで突っ走ってほしい。
■曽山一寿先生
シンプルに面白かったです! ニコニコねこのスケールの大きさに笑いました。わかりにくいところもないです。ただ、ギャグがどこかで見たことがある印象はあります。
■村瀬範行先生
ネタがニコニコねこである必要がないです。各ネタのフリ、オチの部分はよく勉強されていると思いますので、もっとキャラのオリジナリティを意識してみましょう。
「才能アプリ」竹映葉(25歳・東京都)特別育成金 25万円
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■むぎわらしんたろう先生
スマホのアプリという今風で楽しくなりそうな題材。ただ、サッカー、才能バトル、アプリの手に入れ方などの要素が多く、整理しきれていなかったのが惜しいですね。
■松本しげのぶ先生
アプリの説明は、ギャグをからめて楽しくうまくできている。バトルがあっさりしすぎなのが物足りなかった。構成、画面はよいので、読者をドキドキさせる展開を!
■曽山一寿先生
ステキなお話ですね。才能とはなんなのか考えさせられました。見せゴマもインパクトがあって好印象です。この作者は、セリフのチョイスが上手だなと思いました。
■村瀬範行先生
伝え方が気になるところはありますが、不思議と読んでしまう雰囲気はありました。やろうとしていること、思い描いていた展開などは工夫があり、よいと思います。
「メダチタイヨウは目立ちたい!」藤森裕糸(16歳・東京都)特別育成金 25万円
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■むぎわらしんたろう先生
隠密警察の設定やキャラの目的に疑問は残りましたが、作者は16歳。まだまだ進化すると思います。読者がストレスを感じず読んでもらえる漫画を目指しましょう。
■松本しげのぶ先生
キャラもギャグ描写も弱く、設定のわかりづらさも目立ちます。ですが漫画の形はできているので、意識すればぐんぐん伸びると思いますよ。貪欲に描いてください!
■曽山一寿先生
かわいい絵柄で好感が持てました。メダチタイヨウは、もっと目立たせないと暗との対比が表現しきれないので、めちゃくちゃ目立つ外見や行動を考えてみましょう。
■村瀬範行先生
思い描いたキャラクター性はよいですが、中途半端な見せ方や発言のため、ぼんやりとした性格に縮こまっておりもったいないです。セリフの意味も明確にしましょう。
少年部門
「5月の川にこいのぼり」光莉(22歳・福岡県)
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■あだち充先生
ストーリーの語り口、構成力の高さや絵も、作品の世界観に合ってます。いい意味でのあぶない作家になっていただけると将来が楽しみです。
■高橋留美子先生
興味を持たせ読ませる力はあると思います。説明の曖昧さも、さほど気にならなかったのですが、ラストはこれで良かったのでしょうか? このラストを選択するなら、もっと登くんのキャラを掘り下げて欲しかったですが。これが「自由」なのか、疑問。
■青山剛昌先生
うまく説明できないけど面白かった!! 突然友人が人魚になってしまう発想がすごいし、畳をくり抜いて水槽にしてそこに住んでるって設定もすごい!! オレならお風呂場にしちゃう(笑)。セリフが読みやすく心に響くし絵も構図も上手い! 次の作品が楽しみです。
■畑健二郎先生
全体的に読み応えのある話でした。絵も丁寧で水準以上のものはあると感じました。ただ、様々な説明が足りてない影響で、二人の心情は深みに欠け、感情移入しにくい印象でした。今後はもう少し読者の視点に立ち、読者が混乱しない作品作りを心がけるといいのではないかと思います。
「すずのね」ササトコウ(28歳・神奈川県)
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■あだち充先生
テーマも登場人物も少年漫画らしくはないのですが、ストーリー展開と会話のテンポはよろしいかと…
■高橋留美子先生
主人公のキャラクターデザインにもっと工夫が欲しいです。ミステリー仕立てで、長い枚数にしては、読み易かったのですが、この内容ならもっと短くまとめられたのでは?
■青山剛昌先生
うーん…途中からミステリーとして読んでたんだけど、その割には謎が少なすぎる。録音具が都合のいい所に置いてあるし、動機も割とありがち。ラストのオチも同じく。ファンタジーにする意味があったのかな? と思ってしまう…
■畑健二郎先生
最初に読んだ素直な感想としては、とても面白かったです。意外性のあるラストが印象的で、その演出は成功していたと思います。主人公のキャラクターも分かりやすく、魔道具などの説明も自然で丁寧でした。ただ絵に関しては、特に人物の描写はかなり苦手な印象で、今後の努力を期待したいと思います。
少女・女性部門
「鮫ノ野さんと鯱島くんはすれ違う」七篠ユリ(20歳・大阪府)特別育成金 33万円
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■円城寺マキ先生
描いている最中の楽しさが伝わってきますが、そのせいか全てのコマに力が入っていて全体のメリハリがつかず、もったいない。次回は重要な見せゴマとそうでないコマはサイズを変えるなどの意識をもって描いてみてください。
■椎名チカ先生
華やかで楽しく読めましたが、顔のアップが多く、誰がどこにいるのか少しわかりにくかったです。題名どおりすれ違っていて可愛かったですが、主人公と男の子の絡みが少なくもっと二人の会話が見たかったです。
■真村ミオ先生
絵が上手で表情もよく描けています。タイトルどおりすれ違いますが、主にヒロインの思い込みによるものなのでもう少し二人のやりとりが見たかった。鯱島くんに惹かれた理由ももう少し掘り下げてほしいところ。
■みづほ梨乃先生
とても絵がうまく大胆な見せ方もよかったです。ただ、絵柄は少々クセが強く、もう少し少女まんがらしい表現も研究してほしいです。二人のやりとりはとても可愛いですが、盛り上がりが作れてないのがもったいない。
「Contrast」中田れい(24歳・大阪府)特別育成金 33万円
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■円城寺マキ先生
恋を知ることで主人公が自身の非正直さに対峙せざるを得なくなる展開が面白く作画も大変丁寧です。難を言えば、主人公が葛藤をどう乗り越えたかのキモの部分がほぼなくデッサンが不安定。次回も頑張ってほしいです。
■椎名チカ先生
題名どおり「明暗の差」というテーマで人間の裏表を表現していて引き込まれました。最初と最後のページは同じ構図なのに全然違うものなのが、女の子だけではなく主人公の心の変化もわかってとてもよかったです。
■真村ミオ先生
読む人を選びそうな題材をポップなコマや表情を織り交ぜることで読みやすくしていてよかったです。二人が惹かれ合う過程も丁寧で表情も上手。主人公が普通だったので両面性を暴くことに執着してもよかったのでは。
■みづほ梨乃先生
度肝抜かれる導入でした。ただ、描きたい世界観とテーマにリンク性がないように思いました。掘り下げが甘く、表面的で止まっています。かっこいい絵はとてもいいので、次回作も頑張ってほしいです。
「あふれるこぼれる」Fumi(36歳・静岡県)特別育成金 33万円
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■円城寺マキ先生
画面がふわっとしていて少女まんがっぽい華やかさに溢れていますが「二人の」物語が始まった瞬間に終わってしまいました。描きたいものは伝わるのですが、イメージ先行で描き上げてしまったもったいなさがあります。
■椎名チカ先生
主人公が一生懸命で可愛いくお坊さんも爽やかでカッコよくて、彼に惹かれる気持ちがすごくわかります。画面にもう少し色があるとメリハリがでて読みやすいと思います。「続きが読みたい!」と思うほど素敵な二人でした。
■真村ミオ先生
主人公含め登場人物のキャラづけがよくできていて可愛らしかったです。主人公が猪突猛進過ぎるところがちゃんと長所になっていて読みやすい。ラブコメでありながらきちんとリアリティもある部分がよかったです。
■みづほ梨乃先生
繊細で透明感ある画面がよい。ラストの蝶々の描写はよかったのですが、情緒に少し余裕をもたすと入りやすいと思います。描きたいことがはっきりしているのでもったいない。絵はもう少し細かく丁寧に描きましょう。
青年部門
「詰襟の夢」山崎幸信(17歳・神奈川県)
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■こざき亜衣先生
年齢のことをいうのは野暮だと思いつつも、画力も描き切る胆力もこの年齢でこれは凄まじい…! 熱量に圧倒されました。ただ、まだ自分の中にある衝動をコントロールできていないようにも見受けました。商業誌で“人に読ませる”ことを目的とするならば、全体を見通す力と、物語やキャラクターへの客観視は必須です。広い世界でたくさんの経験を積み、たくさんの視点を持ってください。応援しています。
■太田垣康男先生
ヤバイ奴が現れた! まんま大友克洋の世界だが、あの天才の画風と狂気をここまで完璧に模写する猛者は土田世紀の登場以来だろう。息の詰まる様な日常を異常な描き込みと言葉の洪水で表現し、主人公の夢想も同時並行で描くことで混沌が加速する。何もできずに今日も終わることの絶望感は青春そのもの! 恐ろしい才能を持った17歳だ!
■浅野いにお先生
熱量の高い作品で、グレーを使わず迫力のある絵を表現できるかなり画力の高い方だと思います。雰囲気も80年代ごろのニューウェーブ漫画のリバイバルといった感じで僕は好きです。ただコマ割りやセリフの配置が圧倒的に読み辛く、漫画を読む以前の問題で作品の評価ができません。どのような意図でこの画面レイアウトにしたのか疑問です。少なくとも今回の募集は漫画雑誌の新人賞で、基本的には紙媒体フォーマットなので、そこに最適化された画面構成で考えるべきだと思います。内容以前にまず一番に意識すべきは読みやすさです。非常に勿体無い作品だと思いました。僕が編集者だったら、内容も絵もそのままでいいから、ページを3倍にして描き直してと言います。
■石塚真一先生
自由自在なペンタッチ、ベタが効いてて、それだけでハードな雰囲気が出ています。人物も躍動感がある。顔にいろんな影をつけて表情が出ています。上手いなあ…。
■業田良家先生
激しい妄想と熱情を原稿用紙にぶつけて描き殴ったような作品だ。描き込み方が半端じゃなく、凄みを感じた。17歳でこれだけ様々な物や人間を描けるのだから才能はある。これを上手に読者に伝わるようにテーマを絞って描けば、凄い作品が創れるのじゃないかな。編集者とよく話し合って、自分に合ったテーマを見つけてください。多くの読者を意識して描いてください。持っている才能がきっと伸びますよ。
奨励金
10万円
児童部門
「悲劇上等!白雪番長」夢川一(18歳・北海道)
少女・女性部門
「ぴんきゅの魔法」瀬戸内彩(31歳・香川県)
「素直が一番」園もみ(21歳・東京都)
青年部門
「桐谷と夏野」江口一(17歳・埼玉県)
「愛憎」時永保名(21歳・大阪府)
「祝福の眼差し」降原(36歳・東京都)
児童部門
入選
「天使のおちこぼれ」B(東京都)特別育成金 25万円
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■むぎわらしんたろう先生
天使と悪魔の交流を優しく描いています。かわいらしい絵柄でも、敵を前にした時の表情などは迫力がある。おちこぼれ具合は、もっと大げさに描くといいと思います。
■松本しげのぶ先生
絵がしっかりしている。さりげないエピソードで、キャラの感情が描かれている。読後に優しい気持ちになれる。児童漫画として大切な要素がつまっていると感じます。
■曽山一寿先生
すごくステキな世界観を描けています。漫画として完成度が高く、弱点が見当たりません。個人的にはアルマの見た目は、もっと悪魔っぽいほうがいいと思いました。
■村瀬範行先生
読みやすかったですが、いろいろ惜しいです。設定やできごとが、なんでこうなっているのかと疑問に思う部分が多いです。絵は少し寄りすぎですが、絵柄は好きです。
佳作
「ニコニコねこ」木村大祐(25歳・奈良県)特別育成金 25万円
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■むぎわらしんたろう先生
個性的な世界観を持つ作者のギャグ漫画での挑戦。いろいろな世界に挑戦するのはいいと思います。ただ、バタバタの連続で「ニコニコ」の要素が消えちゃったのは残念。
■松本しげのぶ先生
笑いました。重ねる笑いも上手く、ツボをおさえているなあと感心しました。なにより絵だけで笑えました。描きたいものが明確にある。このノリで突っ走ってほしい。
■曽山一寿先生
シンプルに面白かったです! ニコニコねこのスケールの大きさに笑いました。わかりにくいところもないです。ただ、ギャグがどこかで見たことがある印象はあります。
■村瀬範行先生
ネタがニコニコねこである必要がないです。各ネタのフリ、オチの部分はよく勉強されていると思いますので、もっとキャラのオリジナリティを意識してみましょう。
「才能アプリ」竹映葉(25歳・東京都)特別育成金 25万円
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■むぎわらしんたろう先生
スマホのアプリという今風で楽しくなりそうな題材。ただ、サッカー、才能バトル、アプリの手に入れ方などの要素が多く、整理しきれていなかったのが惜しいですね。
■松本しげのぶ先生
アプリの説明は、ギャグをからめて楽しくうまくできている。バトルがあっさりしすぎなのが物足りなかった。構成、画面はよいので、読者をドキドキさせる展開を!
■曽山一寿先生
ステキなお話ですね。才能とはなんなのか考えさせられました。見せゴマもインパクトがあって好印象です。この作者は、セリフのチョイスが上手だなと思いました。
■村瀬範行先生
伝え方が気になるところはありますが、不思議と読んでしまう雰囲気はありました。やろうとしていること、思い描いていた展開などは工夫があり、よいと思います。
「メダチタイヨウは目立ちたい!」藤森裕糸(16歳・東京都)特別育成金 25万円
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■むぎわらしんたろう先生
隠密警察の設定やキャラの目的に疑問は残りましたが、作者は16歳。まだまだ進化すると思います。読者がストレスを感じず読んでもらえる漫画を目指しましょう。
■松本しげのぶ先生
キャラもギャグ描写も弱く、設定のわかりづらさも目立ちます。ですが漫画の形はできているので、意識すればぐんぐん伸びると思いますよ。貪欲に描いてください!
■曽山一寿先生
かわいい絵柄で好感が持てました。メダチタイヨウは、もっと目立たせないと暗との対比が表現しきれないので、めちゃくちゃ目立つ外見や行動を考えてみましょう。
■村瀬範行先生
思い描いたキャラクター性はよいですが、中途半端な見せ方や発言のため、ぼんやりとした性格に縮こまっておりもったいないです。セリフの意味も明確にしましょう。
奨励金
「悲劇上等!白雪番長」夢川一(18歳・北海道)
少年部門
入選
「比翼の竜」空草たろ(23歳・北海道)特別育成金 100万円
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■あだち充先生
キャラもアクションも高い画力で安定感があります。コマ運び、盛り上がりも上手いのですが個人的にはラストのコマが少し残念…
■高橋留美子先生
キャラデザが可愛く画面も見易く申し分ないのですが、一番の見せ絵がわかりにくかったのが惜しいです。かなりのびしろのある人だと思うのでたくさん描いて、キャラクターのドラマ性というか、個性を出す練習をして欲しいです。あと、ハロは女子? ハッキリ描いてないのでモヤっとします。
■青山剛昌先生
スッゲー面白かった! セリフのテンポもよくて構図も飽きさせず、とにかく絵が抜群に上手い! 背景と、アクションシーンがちとわかりづらい所もあるけど(笑)。どんどん描いて行けば上手くなると思う。
■畑健二郎先生
絵柄が非常に可愛らしく好感が持てます。ただお話がストレート過ぎて驚きが薄いのは、絵が良い分だけ勿体無いと感じました。ハロとレイの関係性が理解できるエピソードを充実させることができれば、より魅力的なストーリーになったと思います。今後に期待できる点が非常に多いので、次々描いていってもらえたらと思います。
佳作
「5月の川にこいのぼり」光莉(22歳・福岡県)
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■あだち充先生
ストーリーの語り口、構成力の高さや絵も、作品の世界観に合ってます。いい意味でのあぶない作家になっていただけると将来が楽しみです。
■高橋留美子先生
興味を持たせ読ませる力はあると思います。説明の曖昧さも、さほど気にならなかったのですが、ラストはこれで良かったのでしょうか? このラストを選択するなら、もっと登くんのキャラを掘り下げて欲しかったですが。これが「自由」なのか、疑問。
■青山剛昌先生
うまく説明できないけど面白かった!! 突然友人が人魚になってしまう発想がすごいし、畳をくり抜いて水槽にしてそこに住んでるって設定もすごい!! オレならお風呂場にしちゃう(笑)。セリフが読みやすく心に響くし絵も構図も上手い! 次の作品が楽しみです。
■畑健二郎先生
全体的に読み応えのある話でした。絵も丁寧で水準以上のものはあると感じました。ただ、様々な説明が足りてない影響で、二人の心情は深みに欠け、感情移入しにくい印象でした。今後はもう少し読者の視点に立ち、読者が混乱しない作品作りを心がけるといいのではないかと思います。
「すずのね」ササトコウ(28歳・神奈川県)
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■あだち充先生
テーマも登場人物も少年漫画らしくはないのですが、ストーリー展開と会話のテンポはよろしいかと…
■高橋留美子先生
主人公のキャラクターデザインにもっと工夫が欲しいです。ミステリー仕立てで、長い枚数にしては、読み易かったのですが、この内容ならもっと短くまとめられたのでは?
■青山剛昌先生
うーん…途中からミステリーとして読んでたんだけど、その割には謎が少なすぎる。録音具が都合のいい所に置いてあるし、動機も割とありがち。ラストのオチも同じく。ファンタジーにする意味があったのかな? と思ってしまう…
■畑健二郎先生
最初に読んだ素直な感想としては、とても面白かったです。意外性のあるラストが印象的で、その演出は成功していたと思います。主人公のキャラクターも分かりやすく、魔道具などの説明も自然で丁寧でした。ただ絵に関しては、特に人物の描写はかなり苦手な印象で、今後の努力を期待したいと思います。
少女・女性部門
佳作
「鮫ノ野さんと鯱島くんはすれ違う」七篠ユリ(20歳・大阪府)特別育成金 33万円
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■円城寺マキ先生
描いている最中の楽しさが伝わってきますが、そのせいか全てのコマに力が入っていて全体のメリハリがつかず、もったいない。次回は重要な見せゴマとそうでないコマはサイズを変えるなどの意識をもって描いてみてください。
■椎名チカ先生
華やかで楽しく読めましたが、顔のアップが多く、誰がどこにいるのか少しわかりにくかったです。題名どおりすれ違っていて可愛かったですが、主人公と男の子の絡みが少なくもっと二人の会話が見たかったです。
■真村ミオ先生
絵が上手で表情もよく描けています。タイトルどおりすれ違いますが、主にヒロインの思い込みによるものなのでもう少し二人のやりとりが見たかった。鯱島くんに惹かれた理由ももう少し掘り下げてほしいところ。
■みづほ梨乃先生
とても絵がうまく大胆な見せ方もよかったです。ただ、絵柄は少々クセが強く、もう少し少女まんがらしい表現も研究してほしいです。二人のやりとりはとても可愛いですが、盛り上がりが作れてないのがもったいない。
「Contrast」中田れい(24歳・大阪府)特別育成金 33万円
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■円城寺マキ先生
恋を知ることで主人公が自身の非正直さに対峙せざるを得なくなる展開が面白く作画も大変丁寧です。難を言えば、主人公が葛藤をどう乗り越えたかのキモの部分がほぼなくデッサンが不安定。次回も頑張ってほしいです。
■椎名チカ先生
題名どおり「明暗の差」というテーマで人間の裏表を表現していて引き込まれました。最初と最後のページは同じ構図なのに全然違うものなのが、女の子だけではなく主人公の心の変化もわかってとてもよかったです。
■真村ミオ先生
読む人を選びそうな題材をポップなコマや表情を織り交ぜることで読みやすくしていてよかったです。二人が惹かれ合う過程も丁寧で表情も上手。主人公が普通だったので両面性を暴くことに執着してもよかったのでは。
■みづほ梨乃先生
度肝抜かれる導入でした。ただ、描きたい世界観とテーマにリンク性がないように思いました。掘り下げが甘く、表面的で止まっています。かっこいい絵はとてもいいので、次回作も頑張ってほしいです。
「あふれるこぼれる」Fumi(36歳・静岡県)特別育成金 33万円
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■円城寺マキ先生
画面がふわっとしていて少女まんがっぽい華やかさに溢れていますが「二人の」物語が始まった瞬間に終わってしまいました。描きたいものは伝わるのですが、イメージ先行で描き上げてしまったもったいなさがあります。
■椎名チカ先生
主人公が一生懸命で可愛いくお坊さんも爽やかでカッコよくて、彼に惹かれる気持ちがすごくわかります。画面にもう少し色があるとメリハリがでて読みやすいと思います。「続きが読みたい!」と思うほど素敵な二人でした。
■真村ミオ先生
主人公含め登場人物のキャラづけがよくできていて可愛らしかったです。主人公が猪突猛進過ぎるところがちゃんと長所になっていて読みやすい。ラブコメでありながらきちんとリアリティもある部分がよかったです。
■みづほ梨乃先生
繊細で透明感ある画面がよい。ラストの蝶々の描写はよかったのですが、情緒に少し余裕をもたすと入りやすいと思います。描きたいことがはっきりしているのでもったいない。絵はもう少し細かく丁寧に描きましょう。
奨励金
「ぴんきゅの魔法」瀬戸内彩(31歳・香川県)
「素直が一番」園もみ(21歳・東京都)
青年部門
大賞
「メダカの学校」福岡ゆい(21歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
短編におけるキャラクターの数としては明らかに多いのに、深津先生という傑出した象徴の周りに生きる まさにメダカのようなたくさんの生徒たちがどの子も本当に愛おしく、作者の人を見る眼差しの愛情深さに驚きました。やりたいことに対する演出も自覚的にベストを選んでいるように見えます。素晴らしい作品でした。
■太田垣康男先生
作者の理想か体験か、とにかく私もこんな先生と出会いたかったと思わせる儚くも美しい作品。学生時代という時間そのものを描く俯瞰した視点も独特。仙人の様な先生との一瞬の接点によって子供達の人生の流れが変わっていく様に感動する。
■浅野いにお先生
力作だと思います。老齢の教師を中心に複数の学生たちの悲喜交々が描かれており、学校という水槽から放流された生徒たちのその後にも軽く触れることで、明るい未来を感じさせる良い読後感の作品でした。絵に関して現状は線の強弱が少なく太さが均一で、大きい見せゴマほど絵が白くなる傾向があります。絵柄のクセが強いため読者を選ぶかもしれませんが、物語は万人に薦められる内容なので、絵のクセが「味」になっていけばより多くの読者を惹きつける作品が作れるようになるのではないでしょうか。
■石塚真一先生
この作品には深みと広がりを感じました。人の感情を繊細にとらえて描くことで「絵」ではなく「人」になっています。空気感、雰囲気も絵から漂っています。拍手です。
■業田良家先生
ずっと心に残りそうな素敵なお話でした。深津先生のキャラクター造形が素晴らしい。生徒たちを、そして人間を人生を愛している深津先生の内面が静かに伝わってきて感動した。複数の生徒や同僚の先生たち、それぞれに個性と役まわりがごく自然に織り込まれて、実在する人物たちのように感じた。作者の観察眼は鋭いし、視野が広いので、様々なキャラクターを自在に創り出せるのだろう。話の最後も深津先生が残した「深津文庫」で締めたのも良かった。この先も深津先生の存在は未来の生徒たちに影響を与え続ける。たとえ私たちがうたかたの存在であっても。
「煙が目に染みる。」安田翔哉(25歳・東京都)
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■こざき亜衣先生
泣いてしまいました。起きている事象はどれも悲しかったり寂しかったりとされることなのに、物事の捉え方、切り取り方がドライでユーモラスでかつあたたかく、得難い作家性だと思います。この作家さんなら特別でない日常も面白く描いてくれそうです。毎回楽しみにすると思います。
■太田垣康男先生
記憶を無くした父親と母の死。大きな喪失感の中、それでも家族の記憶を大切に持って生きていこうとする主人公。柔らかな絵柄と作者の優しい人柄が滲み出る愛すべき秀作。
■浅野いにお先生
シリアスでシビアな話ではありますが、デフォルメの効いた可愛い絵柄との相乗効果で、より寂寥感漂う良い漫画でした。父親がどのタイミングで、どんなきっかけで手紙を書いたのか、そこのエクスキューズがあればもっと納得できる内容になったと思いますが、構成もわかりやすく、コマ割りもセリフも大きいので、総じて読みやすいです。僕の個人的な好みで言えば、もうちょっとだけ毒っ気を足してもいいかなと思いつつも、絵柄は完成されているので、今後は今回のような完成度の高い短編を継続的に描くことができれば、十分商業誌で活躍することができると思います。
■石塚真一先生
心優しい哀愁あふれる作品です。三頭身で描かれたキャラ達の内面はリアルです。愛情がある絵柄の持つ力なのでしょうか、グッとくるし泣けます。次の人間ドラマに期待しています。
■業田良家先生
認知症になったお父さんは、タバコ「チェリー」を吸う時だけ記憶がよみがえる。「チェリー」は10年以上前に製造が中止されていて、残りは手元にあと2箱しかない。このアイデアが素晴らしい。そしてお父さんは、お母さんへ感謝の手紙を書くために残りの「チェリー」を全部吸ってしまう。お父さんのこの心情に泣けてしまう。最後の締めくくりにもうひと工夫、もうひとひねりができていたら、完璧だった。それが残念。とはいえ、漫画でしか表現できない話であり、絵柄もシンプルでユーモラス。私は大好きな作品だ。
入選
「坂道に建つ家」風上吹人(22歳・茨城県)
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■こざき亜衣先生
いい女つかまえたな……絵もとても上手いです。借り物でない言葉で語られる思いは多くの人の共感を呼び、また苦しみから救う力を持っていると感じました。あとはもう一歩、物語とキャラクターに力を持たせることができれば、人を惹きつける引力のある作品になると思います。子供のシルエットが“らしさ”にあふれて可愛らしく、観察眼に愛がある作家さんだと思いました。
■太田垣康男先生
地味な題材ながら作者の高い画力で情感が伝わり、坂道の町という心象風景と相まって主人公の揺れる気持ちに共感できた。ここまで自在にカメラワークを操り、人物に自然な演技をつけれる新人も珍しい。間違いなく大成する逸材だろう。今後に期待する。
■浅野いにお先生
詩的な内容で序盤引き込まれましたが、中盤以降も語りが多く、少しだれてしまった感がありました。途中挟まれる回想もリアリティーはありますが想像の範囲内なので、面白みという点では弱いという印象です。形は変われどそこに人の営みはある、というのは納得はできますが、あまりにただの事実なので新しい発見はありません。不安定なバランスで成り立っている「坂道に建つ家」というキーワードはとても良いと感じたので、もっと不安定さや逼迫したぎりぎりのバランスの人間関係というものを強調して、もう少し過激に盛った物語にしても良かったのではないでしょうか。
■石塚真一先生
普遍的なテーマを真っ直ぐに描いています。キャラクターの表情も豊かで読みやすい。ストーリーが枝分かれするポイントであらぬ方向に進んでみても良いかもしれません。
■業田良家先生
形のあるものは壊れ、形のないものは常に変わっていくけど、きっと再建できる。そんな希望あるメッセージが32ページの短編でしっかり描けている。主人公の彼女が賢くて、しっかりしてて、魅力的だ。絵柄もストーリーに合っているし、表情の微妙な変化もうまく描きわけられている。坂の多い町に建つ家々が家族関係の不安定さを表しているし、彼女が年上ということで話す言葉にも説得力がある。鉢植えの花などのディテールの選択も的確でよく考えられている。力量を感じた。
「スイッチスイッチ」牛抱未練(20歳・栃木県)
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■こざき亜衣先生
可愛らしい二人で、好感の持てる物語でした。ストーリーもネーム自体も他者に意識が向いているところが素晴らしいです。一方、読みやすくはあるものの、内容に対して55ページはちょっと長すぎるかなと思いました。テンポを意識しながら展開を整理すると、更に読みやすく魅力的な作品になると思います。
■太田垣康男先生
男女が入れ替わる話は、様々に起こるトラブルやギャップを乗り越えて相互理解に至る、というのが定番だが、この話は主人公の望みが叶うだけの都合の良い展開に終始してる。お定まりの展開を押しつける気はないが、定番を使う以上プラスαのアイデアが無いと。
■浅野いにお先生
男女入れ替わりモノですのでリアリティーは度外視して読みましたが、散々創作物で擦られた入れ替わり展開であるにも関わらず、丁寧にツボを押さえつつ何箇所かなるほどと思わせられた展開もあり、素直に面白かったです。絵柄に関してはあまり個性は感じられません。動きがあるシーンも苦手なようなので、特に二人がぶつかる瞬間などは重要なシーンなので、省略せずにしっかり絵で表現できれば、印象的な場面として読者に記憶されると思います。
■石塚真一先生
気持ちいい物語です。「読んでよかったなあ」。そう思える読後感は大切だと思いました。キャラクター達を読者の心に残せる作者だと思いました。
■業田良家先生
面白かった。美男も美女を描けるし、おじさんおばさんも上手に描きわけられている。ストーリーもわかりやすく、うまくまとまっている。しかし、こんなに良くできた商品であれば、会社で採用されるのではないだろうか。漫画の中では不採用だったのが、少し不自然だ。ストーリーをまとめるためには「不採用」にするしかなかったのかもしれないが、この商品「スイッチスイッチ」に何か大きな欠点があれば、話がもっと深くなったのかもしれない。主人公の二人が最後に少し成長した感じがする点も良い。
「Loveless Heartless」西馬宗志(21歳・愛知県)
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■こざき亜衣先生
この世界に対する絶望と、それでも希望や喜びを見出そうとする人の強さ。世界観をあえて曖昧にした分、そのテーマだけが浮き彫りになっており、短編として素晴らしい構成だと思いました。やや単調なので、ひとつだけでも象徴的な大ゴマが入るとより印象的な作品になると思いました。
■太田垣康男先生
世間や他人の不幸に対して傍観者で覗き趣味だが、都合の良い時だけ関わって偽善者ぶりたい。それは漫画家を含めた表現者の性とも言える。この正直な作者が「取り組むべき題材」を見つけた時が楽しみだ。それまで模索し続けてほしい。
■浅野いにお先生
メインキャラ二人のテンション低めな掛け合いが楽しく、絵柄も可愛いのでなんとなく最後まで読めてしまう作品でした。ただ全体を通して会話劇のみで構成されており、二人の距離感も最後まであまり変わらないので物語性が薄いです。空襲が起きた日本のとある町、という舞台設定で、キャラたちは極めて淡々としており、それがキャラの性格というよりは漫画的な都合のように読めてしまい、非日常という舞台設定に必然性が感じられません。特に金髪の女の子は元から世の中を恨んでいた節があるので、有事の際は逆にテンションが上がるのでは。それとキャラだけにフォーカスせず、社会状況の説明も丁寧に描くことができれば作品に奥行きが出せると思います。
■石塚真一先生
キャラクターが豊かに動いています。感情を持った人物が心からの言葉を言い合い、そして行動している。押しつけがましい感じが全くないのが、この作品の持ち味かと思います。作者の次なる人間ドラマ、楽しみです。
■業田良家先生
冒頭から爆撃された住宅街のシーンから始まり、話に引き込まれた。やはり短編はこうでなくっちゃ。自宅が焼け、母親も死んだかもしれないのに動揺ひとつ見せない主人公。現代の絶望感をよく表している。カラッと乾いた絶望を抱えながらも生きていく人間の強さと生きていくしかない悲しさを同時に感じた。22ページという短いページ数でそのあたりはよく表されている。
佳作
「詰襟の夢」山崎幸信(17歳・神奈川県)
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■こざき亜衣先生
年齢のことをいうのは野暮だと思いつつも、画力も描き切る胆力もこの年齢でこれは凄まじい…! 熱量に圧倒されました。ただ、まだ自分の中にある衝動をコントロールできていないようにも見受けました。商業誌で“人に読ませる”ことを目的とするならば、全体を見通す力と、物語やキャラクターへの客観視は必須です。広い世界でたくさんの経験を積み、たくさんの視点を持ってください。応援しています。
■太田垣康男先生
ヤバイ奴が現れた! まんま大友克洋の世界だが、あの天才の画風と狂気をここまで完璧に模写する猛者は土田世紀の登場以来だろう。息の詰まる様な日常を異常な描き込みと言葉の洪水で表現し、主人公の夢想も同時並行で描くことで混沌が加速する。何もできずに今日も終わることの絶望感は青春そのもの! 恐ろしい才能を持った17歳だ!
■浅野いにお先生
熱量の高い作品で、グレーを使わず迫力のある絵を表現できるかなり画力の高い方だと思います。雰囲気も80年代ごろのニューウェーブ漫画のリバイバルといった感じで僕は好きです。ただコマ割りやセリフの配置が圧倒的に読み辛く、漫画を読む以前の問題で作品の評価ができません。どのような意図でこの画面レイアウトにしたのか疑問です。少なくとも今回の募集は漫画雑誌の新人賞で、基本的には紙媒体フォーマットなので、そこに最適化された画面構成で考えるべきだと思います。内容以前にまず一番に意識すべきは読みやすさです。非常に勿体無い作品だと思いました。僕が編集者だったら、内容も絵もそのままでいいから、ページを3倍にして描き直してと言います。
■石塚真一先生
自由自在なペンタッチ、ベタが効いてて、それだけでハードな雰囲気が出ています。人物も躍動感がある。顔にいろんな影をつけて表情が出ています。上手いなあ…。
■業田良家先生
激しい妄想と熱情を原稿用紙にぶつけて描き殴ったような作品だ。描き込み方が半端じゃなく、凄みを感じた。17歳でこれだけ様々な物や人間を描けるのだから才能はある。これを上手に読者に伝わるようにテーマを絞って描けば、凄い作品が創れるのじゃないかな。編集者とよく話し合って、自分に合ったテーマを見つけてください。多くの読者を意識して描いてください。持っている才能がきっと伸びますよ。