小学館新人コミック大賞

■こざき亜衣先生
絵が上手くてキャッチーなので最後までいい気分で読めました。
ですが、全体を通して画面が単調で無駄ゴマと思えるものも多くありました。淡々としているのが狙いなのでなければ、大ゴマ、寄り、引きのバランス調整やコマの統合の余地はあると思います。ラストも素敵ですが、上記の理由で感情の変化も読み取りづらいのが勿体無い気がします。愛嬌のあるキャラを作れる方だと思うので、もう一歩人物・ネーム共に作り込んでほしいです。

■太田垣康男先生
キャラクターの絵柄は親しみ易く、日常の細やかな芝居も巧い。
足りないのはキャラ絵の魅力を引き立てる物語とアクション。
状況説明とモノローグでコマを埋め尽くすのではなく、アクションシーンでコマを満たしてはどうだろう。
絵柄とマッチして映える気がする。

■浅野いにお先生
ストーリーに起伏がなくドラマも弱いので、物語としては面白みに欠けました。セリフに頼りすぎている印象もあります。ただそれでも最後まで読ませる画面作りの圧倒的なセンスを感じました。まず絵柄は整理されていて安定感があり、キャラデザインはとても現代的です。冗長なセリフもキャラの表情やリアクションで読ませる作風と考えれば納得できます。画面作りも総じて完璧なので何もいうことがありません。この実力に、大きな魅せゴマやもっと熱のこもったダイナミックなストーリーを掛け合わせれば、大きく化けるような気がします。

■石塚真一先生
キャラクターが抜群に良いですね。感情表現が大げさじゃなく、愛嬌に包まれています。絵も上手いですね。見てるだけで楽しい絵で、ペンタッチから愛情を感じます。テーマさえ決まればどんどん描ける作者だと思います。

■業田良家先生
題材からも、ネームの言い回し方からも作者の持っている知性と教養（古い言い方ですが）が伝わってきた。登場人物は３人ともキャラが立っていて楽しく読めるので、複雑な設定もスンナリと頭に入ってくる。しかし魅力的なキャラが３人もいるのにそれを上手く使えていない。ストーリー全体をまとめる大きなアイデアがないからか。惜しい。絵も大好きだ。

■むぎわらしんたろう先生
画力が高く、一枚の描き込みに目を奪われる。漫画というよりアートの世界!! 50ページを超える大作ですが、キャラや世界観はもう少し丁寧に読者に伝えましょう。

■松本しげのぶ先生
完成度が高い。彫り物の絵で対決とは異色。何よりよいと思ったのは、絵とストーリー、デザイン全てが一つの面白さを目指しているところ。意気込みと作品に惚れた。

■曽山一寿先生
素晴らしいセンスの持ち主です。正直驚きました。まず評価すべきは、その高い画力。独特の個性があふれていて、きっと読んだ人を魅了するでしょう。かっこいい!!

■村瀬範行先生
絵は上手く、ストーリーの運び方も、よくできていると思います。ただ、「刺青を子どもにさせたくない」という観点から、読んでいてあまり気分が乗らない作品でした。

■むぎわらしんたろう先生
今回の応募作品の中で、ひときわ完成度の高い作品です！絵が見やすくスッキリとした画面。作者は、かなり漫画を描きなれている感じです。次回作も楽しみです！

■松本しげのぶ先生
ウマイモン、ウ魔界、ダジャレだが、それと料理と結びつけファンタジーにするアイデアは楽しい。絵もセリフ運びも上手い。主人公も嫌味がないので好きになれる。

■曽山一寿先生
非常に丁寧に作られています。手を抜いているような箇所が見当たりません。それでいてスッキリとした見やすい絵です。完成度は非常に高いと思います。素晴らしい！

■村瀬範行先生
ページ数が少し多いなとは思いますが、最後まで楽しく読めました。会話のネームに大変センスを感じました。絵は上手いです。特にキャラのデザインは非常に上手い。

■あだち充先生
設定がわかりやすく話の展開、試合描写も読者に親切で見やすさと読みやすさと後味のよさとてもいい試合でした。

■高橋留美子先生
話はシンプルでわかり易いのですが、ほぼ主人公のモノローグで進んでいるせいか作品全体の空気感、世界の広がりが足りないように思います。ヒロインはがんばってもう少し可愛くデザインして欲しい。名前ももっと早めに呼んであげてください。

■青山剛昌先生
超絶オモロかった!! 女の子かわいいし男の子もカッケー！ クライマックスでピッチャー代わらずに外野に行ったシーンも鳥肌モノ！ 男の子の投手力も魅せられて一挙両得！ この人ももう少し絵がこなれてくるといいけど、ママでも味があっていいんだよねｗ

■畑健二郎先生
主人公が言動やビジュアル含め中学生に見えにくいという点に若干違和感ありました。とはいえキャラクター自体は嫌いではなくむしろ非常にキャラクター性がわかりやすく女の子キャラ造形も可愛らしくとても魅力的だったと思います。この物語にはある種センシティブなテーマや問題提起が内包されていると思いますがそこに過度に踏み込まない構成も絶妙なバランス感覚で好感触。作品全体としてまとまりも良く、構成・演出ともに安定感があり、絵も丁寧で良かったと思います。ただ個人的にはもっと強く印象に残る場面や感情を揺さぶられる展開があってもいいのかなと思いました。

■あだち充先生
竜が気持ちよく飛んでます。どちらかと言うと苦手な世界観なのですが見やすい絵と会話の上手さで拒否感なく読めました。

■高橋留美子先生
爺ちゃんの最後の言葉は教えて欲しかった。その言葉によって主人公の気持ちとか生まれるドラマが見たかった。読み口が良い分、消化不良な感じが残ったのは惜しいです。

■青山剛昌先生
淡々とした話だったけどオモロかった！ ただ扉に竜を描いてあったので「多分竜いるんだなぁ…」と思っちゃったのがもったいなかった。あと12ページで竜が登場するシーンは、主人公の目線で竜を大迫力で魅せて欲しかった！ 絵がすごく上手なのでもったいないｗ

■畑健二郎先生
キャラクターの絵がとにかく上手い。背景まで含めた丁寧な描き込みは大変魅力的で絵の完成度においては今回の中で群を抜いていたと思います。一方で、物語の展開には大きな起伏がなく、淡々としたトーンで進んでいく点は気になりました。個人的にはもう少しドラマや盛り上がりが欲しいと感じました。読者の予想を超える「おぉ～」という驚きのある納得のオチがあったら淡々とした物語でもかなり印象は変わったかと思います。今後はその圧倒的な絵のレベルの高さに見合うストーリーを構築し大きく飛躍して欲しいと思います。

■あだち充先生
人物にも背景にもそして話にも丁寧さが感じられ、とても好感が持てます。反面、まとまり過ぎてる印象もあるので今は恐れずどんどん殻を破って大きく成長して行ってほしい。

■高橋留美子先生
見せ方がうまいなと思います。キャラクター同士の会話もスムーズで不思議展開にも違和感を覚えずに読めました。女の子のデザインもかわいいです。ラストに向けてもあぁやっぱりこうなったという感じですが、ある意味期待どおりで良かったと思います。

■青山剛昌先生
オモロかった！ ヒューガちゃんも実は昔、デリート店に通ってたって設定がナイスです? 野球のシーンがもっとちゃんと描いてあったらより良かったかも…あと元カノをあともう少し可愛く（ホレるのも仕方ないなって感じ）に描いてくれたら大賞だったかもｗ

■畑健二郎先生
唐突に登場する博士と「記憶を消すマシーン」には思わず笑ってしまいました。とはいえ、ラブコメとしての勢いや、振り切り具合としてはむしろ好感触。ただ中盤以降の展開はやや予定調和かなと思います。読者が想像した通りの設定が明かされるのでその予想を良い意味で裏切るような仕掛けがもう一歩欲しかったです。また、遠藤と野球の結びつきが、想像は出来ますがあまり描写がなく不明瞭になっているので、その点も物語の没入感が下がる要因になっていると感じました。あとラブコメとして見た場合、遠藤がヒューガを好きになる過程も、能天気な作品とはいえ、能天気すぎる印象で、ちょっと共感しづらいと個人的には思いました。ただ作品全体としては軽快で、読後感も悪くないので終盤の盛り上がりや意外性が加われば、もっと印象的な一作になったかなと思います。

■こざき亜衣先生
めちゃくちゃ面白くて爆笑しながら読みました。落語のような軽妙なテンポ、その上、絵も上手い。単行本が出たら買わせていただきますね！

■太田垣康男先生
ニヤリとする場面や台詞、脱力した雰囲気も相まってとても読み易かった。
自販機というお題ひとつで漫画を作れるセンスは週刊連載で武器になる。
キャラクターの芝居にもう少し個性が出れば即戦力！

■浅野いにお先生
シンプルすぎるが故に強烈に印象に残る作品でした。にも関わらず読んだ後に何も残らないというか、「何もない」が残る哲学性を孕んでおり、例えるならまさに水のような作品です。過度な面白さを追求するエンタメにおいて、この作品のような無味無臭はある意味必要不可欠なのかもしれませんが、継続して読者を惹きつけるには後ほんの少しのクセは必要かと。オフビートな間の取り方は最高に好みでした。

■石塚真一先生
面白い！ 良い！ これはこの作者の持つ天性ですね。テンポが良いし、キャラクター達の顔がとにかく良い。楽しい気持ちで描かれているのが伝わってきました。次の作品が読みたいなあ～。

■業田良家先生
ギャグのセンスはあると思う。しかしもっと短いページ数で描けるネタではある。それを16ページも使って描き込む無駄な（？）情熱は面白い。

■むぎわらしんたろう先生
“RPG”の敵側を、優しいタッチで描いた力作。発想は面白く、ラストのオチもいい。ただ詩的というか、つぶやきの表現が多く、内容がわかりづらかったのが惜しい。

■松本しげのぶ先生
読者の心情を理解し、キャラの心情を繊細に描き出している。主人公の心情に、終始切ない気持ちにかられた。オチも素晴らしく、二度読んでしまった。とてもよかった。

■曽山一寿先生
ラストの展開が、すごく印象的でした。漫画の新人賞で、こういう思いがけない（バッドエンド？）展開を描く方は、少ないと思うので、個人的には評価をしたいです。

■村瀬範行先生
状況説明が不親切なところがあるものの、最後まで興味を持って読めました。絵柄はきれいですが、絵で情報を伝える努力がほしいと、期待を込めて言わせてもらいます。

■むぎわらしんたろう先生
少年の心の迷いを、異世界に置きかえる発想は面白かったです！ 一つ目の主人公の“心を探してあげたい気持ち”を強く描くと、もっとお話に力が出てくると思います。

■松本しげのぶ先生
キャラの動き、心情を丁寧に描いている。内容は地味ではあるが感動が大きく、うまい。面白さも十分、読後感もよい。児童向けに整っている。今後楽しみな作家です。

■曽山一寿先生
面白かったです。作品全体の空気感が、個人的にはヒットです。話は、かなり練られているので、読んでいて心地よいです。完成度はかなりのもの。絵柄もかわいい。

■村瀬範行先生
おかれた状況の説明は最小限ですが、引き金とするエピソードが身近で共感でき、すっと理解することができます。大変上手です。絵も非常に上手いと思います。

■あだち充先生
まだまだ未熟な絵と構成力ですが、この話に関してはそれが逆におかしなエネルギーになっているような気がします。

■高橋留美子先生
人物が背景に埋もれている印象で目立たず損している感じです。キャラクターデザインは地味な女の子設定にしても、おとなし過ぎる。ストーリーももっと意外性が欲しい。ヒロインのストレスが良く伝わってくる分、ラストに向けてもうふたひねりくらいしないとカタルシスを感じられないです。がんばってください。

■青山剛昌先生
とても読みやすくてオモロかった！ ページをめくったら最初に目に入る右上のコマにシャウトするコマを持って来たらもっとノリノリで読めたと思う。（例えば９ページの「もう死ね!! 全ッッ員死ね!!」のコマとか…）あと、もう少し絵がこなれてくるともっと読みやすくなるかも…まぁ今のままでも味があって悪くないけどねｗ

■畑健二郎先生
若さが溢れていました。絵にも物語にも勢いとエネルギーが感じられ好印象。かなり粗削りではあるものの、それ自体が作品の持つ熱量に繋がっている気がして読んでいてとても楽しかったです。ただ全体を通してやや繰り返しの要素が多く、それが面白い点でもありますが、物語としてのテンポの悪さは気になりました。また、ページによっては、さすがに荒すぎて読みづらい箇所もちらほら。ネーム枠やキャラクターを無闇やたらとコマ枠の外に出さずきっちりコマの中に収めるように意識するだけでも見やすさは変わってくると思います。さらに割と頻繁に、コマを斜めに切ったり、省いたり、かなり自由奔放な原稿に仕上がっていましたがそれをやると勢いはつくが、読みやすさは犠牲になるということをしっかりと理解するといいかなと思います。確かな個性とポテンシャルが作品から滲んでおり、今後の成長が非常に楽しみです。

■あだち充先生
描き込んでも見やすさを失わない画力の高さ、キャラの演技力決め台詞のカッコよさラストの下ネタ落ちもよろしいかと…

■高橋留美子先生
各主要人物の出は印象的で良いと思います。ゴミ溜めの中の話ですが清潔感があるのも良いです。こういうバタ臭い話を描き続けたいのであれば、もっと個性を磨いてください。この路線で目立ち、読者を獲得するには努力が必要だと思います。

■青山剛昌先生
うーん。アクションシーンが迫力があって良かったけど話にイマイチのれなかった…ゴミで生計を立てるって言ってたけどそのシーンが描かれていないのでモヤっとしたまま読み終えてしまった（笑）この後、ヒロインがどうなるかも描いて欲しかったかも…でも絵は上手い！

■畑健二郎先生
キャラ絵の上手さが印象的でした。線は荒いですが表情など、とてもセンスを感じました。正直、背景など原稿の完成度に関しては疑問がありますが今後の伸び代を十分に感じられ、将来性を期待してしまいます。ただストーリー面では読者を引き込む力がやや弱く特に構成に課題があるように感じました。敵役・ディーンの登場に冒頭から多くのページが割かれている一方、主人公・デ=ルーカのやヒロインの描写がさらっとしていて、作者の描きたいことの中心が、意識的なのか無意識なのかディーンに重心が置かれている印象でした。また、物語の進行が、ほぼセリフのみに頼っている点も気になりました。今後の課題としては、キャラ絵の力はあるので構成と演出が磨かれればより高いレベルの漫画が描けると思います。特に『誰が物語の中心で、そいつはどう行動するのか』だけでも意識すると随分と違った漫画が描ける気がします。

■池山田剛先生
セリフなしで感情を伝える圧巻の表現力に驚きました。赤ちゃんたちの仕草や表情が愛らしく、温かい世界観に心がじんわり癒されました。繊細で情緒的な画面構成も美しく、まるで映画のよう。次はセリフ有り作品も見てみたいです。

■川上ちひろ先生
温かみある絵柄と巧みな画面処理で、短編映画のような感動がありました。ただセリフが少なく、家族構成などの情報が不足気味で、父親の背景にもう少し触れると深みが増したと思います。

■かわだ志乃先生
びっくりするような展開はないもののとても可愛くほっこりするお話で最後まで楽しく読めました。キャラの表情も豊かでセリフがなくてもしっかりお話を伝えられていてとてもいいと思いました。最初から最後までずっと可愛かったです。

■小玉ユキ先生
サイレント作品で、小さな子供たちのいざこざと仲直りのテーマがうまく表現されていますが、説明が足りず男性との関係や家族構成が不明確で気になりました。それゆえ物語に集中できなかったのが少し残念ですが、挑戦的な試みだったと思います。

■池山田剛先生
メアリちゃんが可愛く、緒さんのミステリアスなキャラも魅力的でした。人魚の弁護士という斬新なテーマで物語の展開が予測できず面白い。高い画力と魅力的な絵柄に、視点やカメラワーク、セリフのテンポがよく、実写ドラマのような臨場感で楽しめました。

■川上ちひろ先生
画力や構図が優れており、扉絵も魅力的。ただ、主人公の表情や仕草にもう少し女性らしさが欲しいです。情報量が多く本筋が見えづらいため、整理が必要。物語の当事者である黒髪の女性を主人公にするとより伝わりやすくなると思いました。

■かわだ志乃先生
独自性のあるストーリーと安定した画面で読みやすく、人魚の設定や対比も魅力的でした。ただ、やや詰め込みすぎで場面転換も急に感じたため、取捨選択や間の工夫があるとさらによくなると思います。

■小玉ユキ先生
設定と展開が骨太で読み応えのある作品で、シリーズ連載が読みたいほど面白かったです。コマの使い方や見開きの演出も上手ですが、主人公の人となりや生活がもう少し描かれれば、さらに共感が深まったと思います。

■池山田剛先生
画力が高く、男女キャラともに華やかで可愛くて、サービス精神あふれるページ構成にワクワクしました。展開はやや駆け足に感じましたが、可愛さや初々しさ、幸せな描写が多く、多幸感と満足感に満ちた作品でした。

■川上ちひろ先生
二人のキャラや爽やかな読後感がよく、絵も可愛いですが、男の子にもう少し色気があるとより魅力的になるのでは。また、ラストがやや駆け足だったので、主人公の感情の流れを丁寧に追って描けるようになるとよりよいかと思います。

■かわだ志乃先生
可愛い絵柄でキャラ作りもしっかりされて、応援したくなる主人公。画面も華やかで最後まで楽しく読めました。内気な主人公と明るい男の子の恋という王道な設定なので後半の展開にもう少し独自性を出せるとより成長できると思います。

■小玉ユキ先生
絵が可愛く、キャラの表情もよいです。男の子の方向音痴設定が魅力的で、主人公の心の変化も良かったですが、ラストが唐突に感じたので、気持ちの動きをもう少し丁寧に描くといいのではと思いました。

■池山田剛先生
推し活から始まる恋が爽やかで魅力的。絵や構成も丁寧で読みやすく、好感の持てるキャラたちに引き込まれました。告白シーンに大胆な演出があると、さらに印象に残る作品になると思います。

■川上ちひろ先生
今っぽい題材で共感しやすく、同担の男の子と仲よくなる展開も新鮮で楽しかったです。ただ、主人公が恋愛感情を抱く過程にもう一押し説得力がほしく、気持ちが動く決定的な出来事があるとより印象深くなると思いました。

■かわだ志乃先生
とても丁寧に描かれていて画力も高く、最後まで読みやすかったです。同担から始まる恋というテーマも素敵だと思いましたが、話の展開が読めてしまい少しお話が単調だと感じました。読者を飽きさせない展開があるともっとよくなると思います。

■小玉ユキ先生
今を捉えた題材で、温かみのある絵柄とキャラの目力が魅力的です。ただ、話の展開に意外性がなく、もっとふたりのすれ違いを描き、「これは無理かも」と思わせてから思いを吐露するラストにすると、よりドラマチックな話になったかもしれません。

■こざき亜衣先生
まだ画風が確立されているわけではありませんが、一朝一夕で得られる雰囲気ではなく、作者の絵に対する真摯さを感じました。
表現せずにいられない“世界”と“自分”との関係。同じ苦痛を抱えて生きている人がたくさんいます。商業誌を目指すのであれば、このテーマで誌面の向こう側にいる人に語りかけ、手を伸ばすような気持ちで描いてほしいです。

■太田垣康男先生
次の瞬間には何か大切な物が崩壊する、そんな不安感でページをめくるのが怖くなる作品。
画面から溢れる負のオーラには圧倒される。
この作家性には間違いなく一定のニーズがあるので歩みを止めず前進を続けて欲しい。

■浅野いにお先生
漫画の基本的なルールに、「作中の嘘は一つまで」というものがあります。この作品では「能力」と「ディフォルメされた主人公」というふたつの比喩的な漫画表現がバッティングしているため、コンセプトが散漫になっています。本作に関してはどちらか一つで良かったと断言できます。独特な絵柄からくるムードや熱量は満点なので、次作に期待したいですが、奇抜な表現だけでは作品の評価にはなりませんので、作品全体で整合性が取れているように客観的な視点を持つように心がけてください。

■石塚真一先生
実にリアルな感情が伝わってくる作品です。一人の人間の内面を描くことで、いまの社会の現状が見えてくるような感覚を持ちました。この作品で救われる心が沢山ある気がします。

■業田良家先生
能力主義で息が詰まりそうな現代、特に学校生活での辛さを上手に表現している。トーンを使わずに、デジタルならではの薄い描線で描き込まれた絵柄は個性があり魅力的だ。最後の締めくくり方が弱いのでそこが惜しい。この作者ならではの発想でエンディングを考えてほしかった。この作者は18歳か、すごいな。

■こざき亜衣先生
三波という人間が何を思い、何を選ぶのかがちゃんと気になって最後までページをめくらされました。キャラクターが立っている証拠だと思います。一方、この内容ならば片山、小山にも三波と同等の血肉が欲しいです。それが非常にもったいなかったです。見開きアップの表情がとても魅力的でした。

■太田垣康男先生
夢を諦めるか悩む若者、この題材は新人賞の応募作に毎回一本はある。
作者自身を投影し易い題材なので描きたくなる気持ちは分かるが、その分だけライバルも多く独自性を出すのが難しい。
将来性が重視される新人賞では評価しづらい題材。芸人の日常にもリアリティーが薄かった。

■浅野いにお先生
お笑いには疎い方なんですが、飲み会のシーンはボケることに取り憑かれた人間の業のようなものを感じました。人間描写が非常にナチュラルで嫌味がない反面、パンチが弱い気もします。とはいえ全体を通した牧歌的な雰囲気は良い作風だと感じました。最終的な落とし所もとても自然で彼女の仕草に安心感がありましたが、主人公が本音の後にひとボケしてくれたら、お笑い芸人としての矜持をもっと感じられたと思います。

■石塚真一先生
カッケー!!「人間バンザイ!!」と声に出したくなる作品で、実に気持ち良い。日常という舞台なのに、主人公が荒野を駆ける戦士のように見える。これは漫画の醍醐味だし、この作者の強みだと思います。この作者の人間愛から勇気をもらう読者は多いと思います。

■業田良家先生
お笑いの世界を漫画にするのには勇気がいる。架空の存在である登場人物に笑えるネタを喋らせないといけないからだ。でもそれを軽くクリアーして主人公のボケが読者の私を何度も笑わせてくれた。夢を諦めるべきか追い続けるべきか、人生に訪れる大きな悩みを見事に表現して読者に共感を与えてくれる。いい漫画だ。

■こざき亜衣先生
絵がかわいくて読みやすかったです。流れが頭の中にあって、感覚でコマ割りと構図決めをされているのかなと思いました。それは良いと思うのですが、ここどうしようかなーと迷う場面で的確な手が打てるように、論理的なアプローチの引き出しを持っておくといいんじゃないかなと思いました（的外れだったら申し訳ありません）。
『誰の／どんな視点から見た絵か』で、伝わるセリフのニュアンスもかなり変わってきます。
横字のモノローグはほとんどなくても大丈夫だと思います。

■太田垣康男先生
誘拐・監禁というエキセントリックなオープニングで期待値は上がったが、盛り上がりはそこまで。
互いの心情の吐露と傷を舐め合う様な和解には首を傾げる。
青臭い思春期に戻る事で居場所を得たと思ってる２人に果たして幸福な未来はあるのだろうか？

■浅野いにお先生
冒頭の監禁の流れは流石に無理があるように思いましたが、その後の展開は非常に自然な友情物語で読後感も良かったです。ただ、引きこもっていた友人を説得し再び打ち解けていく過程に説得力が感じられれず、フックとなる強めのセリフを一言大ゴマで言わせて心境の変化をもっと明確に表現して欲しかったです。セリフに頼らずとも十分にキャラの表情が良いので、セリフや細かいコマ割りを見直し、表情の強みを活かしたシンプルな見せ方でも読者は満足してくれると思います。

■石塚真一先生
リアルな感情が伝わってくる作品です。画面構成も良く、読みやすい。「想い」を絵に込めるのが上手い作者です。
葛藤から答えを探す方向に向かっていく姿に感動しました。

■業田良家先生
青春時代のまま、ずっと変わらない純粋な心と情熱を持っていたい。そんな感情を思い出しました。中学や高校の頃に好きになったもの、特に音楽は一生の宝物ですね。それを上手く表現している。