これまでの受賞者
第85回発表
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入選
賞状・記念盾・賞金50万円・ペンタブレット(Wacom Intuos Pro Large)またはスキャナー・CLIP STUDIO PAINT PRO・受賞作収録本
少年部門
「ちょっととなりの異世界さん」中川喬文(25歳・神奈川県)特別育成金 100万円
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■あだち充先生
好きな世界を楽しそうに描いていますがグラビア写真やパンチラシーンが手抜きなのは、好きな世界ではないのでしょうか? …残念。
■高橋留美子先生
バカバカしく勢いがあって面白く読めましたが、オチはもうひとつ先が見たい。勇者があれで退場というのはもったいないような気がします。
■青山剛昌先生
すげーオモロかった! 女の子カワイイし、絵も上手くてわかりやすく、なにしろギャグのセンスがいい感じ!でもラスト、女の子のパンチラはしっかり描いて欲しかったなぁ…(笑)
■畑健二郎先生
可愛らしい絵柄と、終始明るくバカバカしい話は非常に好感度が高くてよかったと思います。話の構成も綺麗にまとまっており、手慣れた感じで面白かったです。ただ、さすがに見慣れた感は否めないかなと思います。
青年部門
「夢の中の鬼ごっこ」失敗戦記(20歳・中国)特別育成金 100万円
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■花沢健吾先生
絵はとても良いのだが、内容が平凡で残念。何か新しい価値観を提示してほしかった。たとえ、それが道徳に反していても。
■石塚真一先生
まず絵が上手い。勢いを感じる線、感情表現もできています。工夫を凝らしたアングルのコマも難なく読み進められました。今後も感情表現の面白さを追求していってほしいです。
■太田垣康男先生
人物の演技力、巧みな構図、緊張感のある絵柄、しかも若い!と褒める部分が非常に多い作家です。しかし、いじめを題材にした投稿作は毎回かなりの本数が応募されるので、審査員としてはちょっと食傷気味。もっと違う題材で描いた作品を見てみたいです。
■業田良家先生
夢の中の映画館で主人公の卑怯さを問い詰められるシーンは秀逸で迫力があった。読者である私も、自分の卑怯な行いを走馬燈のように思い出してしまった( 笑)。ただ最後、仮面が机の引き出しに入っていて、仮面の男は自分だったというオチは平凡すぎる。そこに新しいアイデアが出せれば何倍も良くなる。
■浅野いにお先生
作画のクオリティが高いです。人間の体が正確に描けています。構図やコマ割りに関しても全く問題がなく、漫画を描き慣れている印象でした。ただ圧倒的に物語が分かりづらく、主人公がどういう状況下にいるのかの説明が不足しています。設定やアイデアが先走らないように読者目線に立って、描き手の意図がちゃんと伝わるようになっているか確認してください。
「そうやって迎える日」モイタナナミ(22歳・東京都)
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■花沢健吾先生
独特の雰囲気があり引き込まれそうになるが、深さがなく、大人になることと顔が四角く沈み込むことに、もう少しアイデアが入ってくると良かった。
■石塚真一先生
作者独自の表現を軸に描ききった作品です。必要最小限の線で描かれた絵ですが、感情はしっかり伝わってきました。全身を描いたコマがたくさんあったのも好感が持てました。
■太田垣康男先生
とても恐ろしい作品。読み終わった後の絶望感と哀しみに胸が痛くなりました。相手を思いやる気持ちから嘘をつき、それが幼年期の終わりを告げるという視点が、成長の本質を突いていて切ない。それでも漫画が不快に感じないのは、作者の人間愛の深さからでしょう。将来が楽しみな作家です。
■業田良家先生
当たり障りのないことばかり言って本心を明かそうとしない大人、そして現代の日本人を見事に表している。顔がへこんで無くなっていくという比喩が素晴らしい。友だちと抱き合って泣くしかなかったエンディングも悲しさが伝わってくる。
■浅野いにお先生
非常に惜しい作品だと思います。思春期特有の感覚を物語で表現できてはいるのですが、「顔が凹んでいく」という表現が生かしきれていません。この設定を心象表現だけにとどめず、物語の中に組み込むこと(安易ですが、例えば顔が凸の人を登場させて主人公に絡ませるなど)をすれば、作品がもっとパッケージングされたものになっていたと思います。嫌味のない作風なので、センチメンタルに流されず、毒気を加えてもっと攻めてもいいのでは。
佳作
賞状・記念盾・賞金30万円・受賞作収録本
児童部門
「ディアボロ!」金洋(28歳・東京都)特別育成金 50万円
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■樫本学ヴ先生
ディアボロを、かっこよく描ける作画技術には感心しました。しかし、それを生かす話作りがまだという印象。主人公をいかに追い込むかが、競技系バトルの肝です。
■沢田ユキオ先生
ディアボロというホビーの面白さを、意欲的に表現しようとする姿勢には好感が持てます。絵は雑なところもありますが、センスのいい絵柄には「優しさ」がありますね。
■のむらしんぼ先生
絵はペンタッチも良く、線は繊細ながらも迫力あるシーンが、しっかりと力強く描かれています。セリフもうまく流れていて読みやすく、好印象かつ完成度の高い作品。
■むぎわらしんたろう先生
主人公のディアボロが好きな理由がわかるエピソードがあると、もっと応援できたり必殺技に感動が生まれると思います。絵は、キャラが生き生きと描かれていますね。
「キング魔界王伝記」タイセキ(34歳・福井県)特別育成金 50万円
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■樫本学ヴ先生
とてもよくまとまっていて、読後感も良く、大変面白く読めました。主人公はじめ、それぞれのキャラが立っていて魅力的です。ただ絵柄的には、少し古さを感じます。
■沢田ユキオ先生
素材に目新しさはありませんが、タイセキさん独自の「魔物たちの心優しい世界」ができあがっていて、とても楽しく読めました。総合的な完成度では一番だと思います。
■のむらしんぼ先生
セリフが簡潔で読みやすく、テンポも良し。世界観がまさにRPGで、そのロールプレイングな物語にどっぷり浸ることができる作品。絵はもっと表現に大胆さと工夫を。
■むぎわらしんたろう先生
絵は丁寧で、好感が持てます。話は、主人公のキングが人間から元の魔物の世界を取り戻す話…だと思うのですが、セリフや絵が整理されておらず、わかりづらいです。
少年部門
「恋渕先生と好きについての相談」尾崎(25歳・神奈川県)
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■あだち充先生
この絵の上手さはどんなジャンルにも挑戦できそうな気がします。座ったままの長い会話も構図を工夫して飽きさせない力も持ってます。ラストの手抜き感は残念!
■高橋留美子先生
絵はうまいです。ヒロインと先生のやりとりもスムーズで読み易い。ストーリーはちょっと食い足りないです。伝えたい事はわかるのですが、伝えたいだけで終わってしまってて惜しい。雑誌で埋もれない個性が欲しいです。
■青山剛昌先生
うーーん…絵はとても上手くてセリフも悪くないんだけど見せ方が上手くなくてのりにくい。26ページ目なんか、ポップなキャラをたくさん見せなきゃいけないのに全然目立ってないし。ラストのオチもオチてない気が…
■畑健二郎先生
十代のフワッとした気持ちや青春を描こうとする姿勢には好感。学校の空気感の出し方なども丁寧。ただ、物語としては小さかった印象。主人公のキャラの立て方も弱く行動原理を読者がつかむまで時間をかけすぎかと。
「MY HERO」ハンズツー(21歳・中国)
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■あだち充先生
まだまだ不安定ですが、上手くなる絵だと思います。話でも細かいところが色々引っかかる作品ではありますが、それも可能性と思えば今後の期待です。
■高橋留美子先生
心情の描写、演出ともにとてもうまいです。作者は若いのに介護の実感のようなものが伝わってくると同時に結構こわい設定を救いのあるラストに着地させたのは良かったです。キャラクターもチャーミングでした。
■青山剛昌先生
うーーん…絵も演出も上手いんだけど…状況を上手く伝えきれていない。おじいちゃんが昔ヒーローで活躍していた頃のカットをちゃんと入れないとキャラにも感情移入できない。オレ的にはあんまりのれませんでした。
■畑健二郎先生
将来性を感じました。線は粗いですが様々なキャラクターを描き分けられていて、キャラクターも魅力的でした。シナリオも地味でありながら、画面は派手に作られているところなど、少年誌らしく才能を感じます。
「砂漠の王」斉藤亮太(27歳・大分県)
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■あだち充先生
このまま連載として載っていてもおかしくないレベルです。だとしたら、そこで生き残るための自分だけの武器、売りを見つけ出す努力を…
■高橋留美子先生
似顔絵がうますぎて逆に物語に没入できなかったのは残念です。主人公が傍観者みたいになってしまっている。これをカッコ良く感じさせるキャラクターの魅力がもうひとつ欲しいです。
■青山剛昌先生
まぁまぁかなぁ… 絵は上手くてラストのオチもよかったけど、話がわかりづらいシーンが多々あった。例えば15~16ページ、奥さんが血を流して倒れているのはわかるけど何が起こったのかさっぱりわからない。
■畑健二郎先生
独特の力強い男性キャラの絵は魅力的で、表情も描けています。ただ、キャラクターの立て方が間違っていると感じました。「よくわからない主人公と、ただ悪いだけの敵の会話劇」だけを読まされても、面白くはないです。
「ポリューションアベック」大神田にくみ(21歳・東京都)
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■あだち充先生
素直な絵と素直過ぎる展開… 何かひとつ意外性や引っかかりを加えるだけで、もっと読者を引き込む事ができると思います。
■高橋留美子先生
淡々とした話でしたが読み易かったです。設定自体に新鮮味はありませんが、キャラクターのやり取りだけで読ませる力のある人ではないか、と可能性は感じます。
■青山剛昌先生
割と面白かった。女の子が幸せになると周りで不幸が起こる設定はすごく笑えた。絵も見やすくてセリフもわかりやすく読みやすかったけど、世界局地研究機関の絵はハッタリをきかせてリアルに描けばもっと笑えた。
■畑健二郎先生
キャラクターのアップは可愛らしく描けていて好感度が高いです。思春期の甘酸っぱい恋愛感情も悪くないと思いました。絵柄や表情の作り方が若干古いのは気になりましたが、優しい絵柄もいい感じだなと思いました。
「UNDEAD MUSIC」祭ノ群(22歳・神奈川県)
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■あだち充先生
絵柄に合った内容を安定した画力でしっかり読ませてくれます。ただ、絵柄が合っている分、ゾンビの気味悪さがあまり伝わってきませんでした。
■高橋留美子先生
設定を生かすための構成がちょっと荒っぽいというか、なめらかに読ませるには、もうひと頑張りです。とてもシンプルな事を言っているはずなのにヒロインに感情移入し辛いです。
■青山剛昌先生
まぁまぁかなぁ。ヒロインの曲でゾンビの心臓が動き出して爆発してしまう設定は非常によかった! ただ、演出がぬるくて、アクションシーンもわかりにくい所が結構あった。右ページの最初のコマは大切にしようね。
■畑健二郎先生
音楽でゾンビを倒すというアイディアは悪くなかったのですが、読者にその面白さが届いていないと感じました。原因としてこの作品の成立に必要な「女の子がとにかく魅力的」という部分が崩れており、問題なのかなと。
「アンプラウド デッドヒート」中野シドー(22歳・静岡県)
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■あだち充先生
クセのある絵とキャラで、淡々と流されて行く少女を勝手に盛り上がって追いかける男… ラストのコマはちゃんと大海原を描いてほしかったなァ…
■高橋留美子先生
非常にバカバカしくて面白かったです。ヒロインの可愛くなさも気にさせない勢いがありました。絵はもう少し線の整理をして読み易くした方が得だと思います。
■青山剛昌先生
うぬぬぬぬ… 所々クスッと笑えるギャグはあるんだけど爆笑する程ではないので大ゴマがもったいない。男の子は優秀という設定だけど実際に難問をサラッと解くシーンを少し入れたらよかったかも。
■畑健二郎先生
メチャクチャなキャラはよかったと思います。ツッコミもキレがあり最後まで楽しく読めました。ただ、ギャグマンガとしては笑いの作り方がワンパターンで22ページも必要ないと感じました。
少女・女性部門
「自由の花嫁」岡本ありさ(20歳・広島県)特別育成金 25万円
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■尾崎衣良先生
ファンタジーながら、共感しやすいテーマでよく纏められています。主人公だけではなく、いろんな人の想いが組み込んであるのが物語の奥行きになっています。ただ、主人公の確固たる強さの表現がもう少しほしかったです。
■藤沢志月先生
古い伝統に抑圧される女性の生きづらさ、葛藤を描いた考えさせられる話で、しかも楽しく読めました。絵柄は凛として素敵ですが、背景の情報量が少ないと感じました。背景をしっかり描くと、世界観が伝わりやすいかと。
■まいた菜穂先生
目標があって、それでも悩む主人公に好感が持てます。終わりも綺麗で、これからの壮大な物語の予感にわくわくします。主人公が勉強をしたい理由がわからないので、そこを明確にすると、より応援したくなると思いました。
■水波風南先生
独特な風習のある社会と、その中で悩む女の子の心情がとてもリアルに描かれていて、続きが気になって一気に読んでしまいました。その分、ラストにもうひとつ何かエピソードがあると、さらによかったかもしれません。
「あやり」七星ひなの(20歳・神奈川県)特別育成金 25万円
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■尾崎衣良先生
可愛い絵柄からゾクッとさせるような描写まで、表現力の幅を感じます。現代に即した問題提起はおもしろく、恐怖もよく表現されているのですが、終盤にかけて何かもうひとつ、読者を驚かせるようなひねりがほしいです。
■藤沢志月先生
意外な展開ですごく引き込まれ、おもしろかったです。テーマがしっかりしていて、怖いけどいいお話だなと感じました。可愛らしくて繊細な絵柄なので、ペンタッチなどが綺麗になると、さらに魅力的になると思います。
■まいた菜穂先生
後半の見せ方や雰囲気がすごく怖くてよかったです。豚の描写も素晴らしいです。主人公が心変わりするのも納得でした。たまに絵や背景が雑になってしまうので、そこを気をつければ。さらにいい作品が描けると思います。
■水波風南先生
可愛いキャラクターの絵柄と恐怖シーンの動物の描写がリアルで、そのギャップが絶妙なため、読んでいてとてもドキドキしました。これから、また違う社会問題について焦点を当てた作品も読んでみたいと思いました。
「ネコ型ロボ ミケタマ」ウサト サヤ(37歳・東京都)特別育成金 25万円
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■尾崎衣良先生
ファンタジーの世界をしっかりと作り込み、とても細かく描き込まれた絵がいい味となっていて、見入りました。凝った構図ですが、パッと見ではわかりづらい箇所もあるので。描線や色味にメリハリをつけるといいと思います。
■藤沢志月先生
とにかく絵が上手。様々なアングルから巧みに描かれていて、小物などの描き込みも緻密で質感まで伝わってきます。ストーリーに関してはもう少しエピソードの整理などをすると、より読みやすくなっていいと思いました。
■まいた菜穂先生
描き込みの熱量、動きのある画力がすごいです。特に背景がすごい! 背景を見ているだけでも楽しいです。世界観も伝わります。全体的にセリフが多くコマも多いので少し読みづらいです。特に導入は絵で見せてほしいです。
■水波風南先生
とにかく完成度の高い画面に感心のため息が出てしまいます。隅々まで丁寧で情報量がものすごく、読みごたえがあります。ロボットのチビビちゃんが非常に可愛く描けていて、特に寄り添って眠るシーンにグッときました。
「にこちゃんはいつも」戸倉そう(21歳・京都府)特別育成金 25万円
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■尾崎衣良先生
絵柄は可愛らしく味があり、男の子の言葉で主人公のコンプレックスが軽くなるシーンや、その描写の仕方はとてもほほえましくてよかったです。男の子の立ち位置を明確にしたら、そのよさがもっと伝わったと思います。
■藤沢志月先生
テーマはすごく重たいのですが、コミカルな表現のためさっぱりとした読み心地でした。デフォルメで描かれていることで、逆にキャラクターの気持ちが大きく動くところはシリアスに響いてきて、とてもよかったです。
■まいた菜穂先生
テンポのよさと、見せ方がよかったです。思いきりのよいキャラの表情に、何度もドキっとしました。クラスメイトが変わった主人公を見てどう思ったのか、これを機に主人公がどんな考えを持ったのかが気になりました。
■水波風南先生
とても雰囲気のある個性的な作風で、絵柄、ストーリーともに非常に完成されていると感じました。これからもその作風を大事にして、思春期の日常にある、ふとした問題を丹念に描いていってほしいと思いました。
青年部門
「HOOP BROS」薗田亮介(28歳・神奈川県)
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■花沢健吾先生
絵はかなり完成しており、見開きもちゃんと読者に伝わる絵作りになっている。キャラも今どき感がある。しかし、ストーリーはよくある話で、新しさがほしい。
■石塚真一先生
絵から気合いを感じる作品でした。見開きの絵もドンとしていて気持ちが良かった。エピソードを足して、キャラクターの内面にもっとズームしてみてもいいのかもしれません。
■太田垣康男先生
好きな漫画家を3人以上完コピすれば、上手くミックスされて自分の絵柄が出来上がります。ステレオタイプの物語にも自己投影ができるようオリジナリティーの創出を目指してください。
■業田良家先生
バスケのシーンでは、迫力があって構図も良い絵があるが、ストーリーが平凡すぎる。アイデアをもっとよく練ってほしい。
■浅野いにお先生
とにかく描き手の力量が試されるスポーツ漫画ですが、迫力や躍動感を感じることができたので、今後経験を積めばもっと良いものが描けるようになる気がしました。ただ主人公の性格が生意気なので、僕は共感も同情もできませんでした。スポーツ漫画は、読者とキャラクターの心情を共鳴させることがキモだと思うので、主人公でそれが難しいなら、仲間やライバル(この作品でいうと兄)に個性をつけ、他のサブキャラを軸にしても読み進められるように構成するといいかもしれません。
「Fake Children」齊藤真聖(23歳・埼玉県)
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■花沢健吾先生
絵は上手い、見せる力はある。しかし内容が平凡でした。
■石塚真一先生
丁寧かつ力強い絵で描かれた作品です。手を抜かずにサブキャラクターたちも丁寧に描いています。細かいコマ割りのページがもっとあってもよかったかと思います。絵が上手いだけに、エピソードを足して、キャラクターの内面をもう少し見たかった。
■太田垣康男先生
非常に力強い絵柄を持っている上に、キャラクターの表情も感情豊かで作家としての将来性を感じます。しかしながら今回の投稿作は絵柄に対してネタが小さく、武器となる絵柄を生かしきれていません。次はぜひ自分の絵柄にマッチしたネタ選びを。
■業田良家先生
最後に後輩の財布を取り返していたのが分かる見せ方が上手い。駐車場で血まみれで泣いている主人公が、後になって光り輝いて見えた。
■浅野いにお先生
ページが短めでテンポが良かったので読みやすかったです。ただ、あまりに内容が薄すぎる。主人公が成長するという流れは読みきりの鉄板なので、それは間違っていないのですが、成長にいたる経緯、なぜ変わろうと思ったのかの「気づき」をもっと丁寧に描いてください。
「羽音色」よほん(20歳・東京都)
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■花沢健吾先生
絵柄は大胆でキャラに嫌味がない。描いている本人は楽しそうだが、果たして読者はどう思うか。プロになるには、バランスはともあれ読者の目線に立つことも必要になってくるだろう。
■石塚真一先生
かわいらしいキャラクターが力強い線で描かれています。このバランスが作者のスタイルなのでしょう。好感が持てました。表現も練って工夫した感がありました。主人公以外のキャラクターをもっと描くと、主人公がさらに際立つと思います。
■太田垣康男先生
音楽を表現するための独特の絵柄と画面構成は見応えがあり楽しめましたが、肝心の物語が薄く、ラストは拍子抜けな印象。理由は簡単、登場人物達の関係性が、物語を通して深くなっていないから。これでは独り合点の独りよがり。読者に漫画を届けたいなら、「共感」を描くべきです。
■業田良家先生
かなりクセが強くとっつきにくい絵だが、感情や状況を的確に伝える表現力はある。「うるせぇ蝉の聲」という表現も詩的で好きだ。
■浅野いにお先生
デザインチックで特徴的な絵柄に魅力は感じます。その絵柄に引っ張られて、キャラクターもいきいきとしていますが、ところどころ絵が雑に感じてしまうところがあるのが残念でした。さらに絵柄のインパクトに物語が負けてしまっているので、見せ場のシーン以外は絵の個性を抑えるなどをして、作品の中にコントラストを持たせてほしいと思いました。
奨励金
10万円
児童部門
「機壊隊ガンマ」ひなしょ(17歳・岡山県)
「ガラクタのピコ」あんどろめだ(20歳・愛知県)
少女・女性部門
「エクラタン☆メロディー」なかわかな(16歳・愛知県)
「はちみつレモン」ささまこ(32歳・埼玉県)
青年部門
「ロボ子を笑わせろ!」館石直進(36歳・福岡県)
「贖罪の実」西家康隆(38歳・東京都)
「眠りに就く時…」ハン角斉(63歳・北海道)
大賞※該当者なし
児童部門
佳作
「ディアボロ!」金洋(28歳・東京都)特別育成金 50万円
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■樫本学ヴ先生
ディアボロを、かっこよく描ける作画技術には感心しました。しかし、それを生かす話作りがまだという印象。主人公をいかに追い込むかが、競技系バトルの肝です。
■沢田ユキオ先生
ディアボロというホビーの面白さを、意欲的に表現しようとする姿勢には好感が持てます。絵は雑なところもありますが、センスのいい絵柄には「優しさ」がありますね。
■のむらしんぼ先生
絵はペンタッチも良く、線は繊細ながらも迫力あるシーンが、しっかりと力強く描かれています。セリフもうまく流れていて読みやすく、好印象かつ完成度の高い作品。
■むぎわらしんたろう先生
主人公のディアボロが好きな理由がわかるエピソードがあると、もっと応援できたり必殺技に感動が生まれると思います。絵は、キャラが生き生きと描かれていますね。
「キング魔界王伝記」タイセキ(34歳・福井県)特別育成金 50万円
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■樫本学ヴ先生
とてもよくまとまっていて、読後感も良く、大変面白く読めました。主人公はじめ、それぞれのキャラが立っていて魅力的です。ただ絵柄的には、少し古さを感じます。
■沢田ユキオ先生
素材に目新しさはありませんが、タイセキさん独自の「魔物たちの心優しい世界」ができあがっていて、とても楽しく読めました。総合的な完成度では一番だと思います。
■のむらしんぼ先生
セリフが簡潔で読みやすく、テンポも良し。世界観がまさにRPGで、そのロールプレイングな物語にどっぷり浸ることができる作品。絵はもっと表現に大胆さと工夫を。
■むぎわらしんたろう先生
絵は丁寧で、好感が持てます。話は、主人公のキングが人間から元の魔物の世界を取り戻す話…だと思うのですが、セリフや絵が整理されておらず、わかりづらいです。
少年部門
入選
「ちょっととなりの異世界さん」中川喬文(25歳・神奈川県)特別育成金 100万円
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■あだち充先生
好きな世界を楽しそうに描いていますがグラビア写真やパンチラシーンが手抜きなのは、好きな世界ではないのでしょうか? …残念。
■高橋留美子先生
バカバカしく勢いがあって面白く読めましたが、オチはもうひとつ先が見たい。勇者があれで退場というのはもったいないような気がします。
■青山剛昌先生
すげーオモロかった! 女の子カワイイし、絵も上手くてわかりやすく、なにしろギャグのセンスがいい感じ!でもラスト、女の子のパンチラはしっかり描いて欲しかったなぁ…(笑)
■畑健二郎先生
可愛らしい絵柄と、終始明るくバカバカしい話は非常に好感度が高くてよかったと思います。話の構成も綺麗にまとまっており、手慣れた感じで面白かったです。ただ、さすがに見慣れた感は否めないかなと思います。
佳作
「恋渕先生と好きについての相談」尾崎(25歳・神奈川県)
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■あだち充先生
この絵の上手さはどんなジャンルにも挑戦できそうな気がします。座ったままの長い会話も構図を工夫して飽きさせない力も持ってます。ラストの手抜き感は残念!
■高橋留美子先生
絵はうまいです。ヒロインと先生のやりとりもスムーズで読み易い。ストーリーはちょっと食い足りないです。伝えたい事はわかるのですが、伝えたいだけで終わってしまってて惜しい。雑誌で埋もれない個性が欲しいです。
■青山剛昌先生
うーーん…絵はとても上手くてセリフも悪くないんだけど見せ方が上手くなくてのりにくい。26ページ目なんか、ポップなキャラをたくさん見せなきゃいけないのに全然目立ってないし。ラストのオチもオチてない気が…
■畑健二郎先生
十代のフワッとした気持ちや青春を描こうとする姿勢には好感。学校の空気感の出し方なども丁寧。ただ、物語としては小さかった印象。主人公のキャラの立て方も弱く行動原理を読者がつかむまで時間をかけすぎかと。
「MY HERO」ハンズツー(21歳・中国)
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■あだち充先生
まだまだ不安定ですが、上手くなる絵だと思います。話でも細かいところが色々引っかかる作品ではありますが、それも可能性と思えば今後の期待です。
■高橋留美子先生
心情の描写、演出ともにとてもうまいです。作者は若いのに介護の実感のようなものが伝わってくると同時に結構こわい設定を救いのあるラストに着地させたのは良かったです。キャラクターもチャーミングでした。
■青山剛昌先生
うーーん…絵も演出も上手いんだけど…状況を上手く伝えきれていない。おじいちゃんが昔ヒーローで活躍していた頃のカットをちゃんと入れないとキャラにも感情移入できない。オレ的にはあんまりのれませんでした。
■畑健二郎先生
将来性を感じました。線は粗いですが様々なキャラクターを描き分けられていて、キャラクターも魅力的でした。シナリオも地味でありながら、画面は派手に作られているところなど、少年誌らしく才能を感じます。
「砂漠の王」斉藤亮太(27歳・大分県)
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■あだち充先生
このまま連載として載っていてもおかしくないレベルです。だとしたら、そこで生き残るための自分だけの武器、売りを見つけ出す努力を…
■高橋留美子先生
似顔絵がうますぎて逆に物語に没入できなかったのは残念です。主人公が傍観者みたいになってしまっている。これをカッコ良く感じさせるキャラクターの魅力がもうひとつ欲しいです。
■青山剛昌先生
まぁまぁかなぁ… 絵は上手くてラストのオチもよかったけど、話がわかりづらいシーンが多々あった。例えば15~16ページ、奥さんが血を流して倒れているのはわかるけど何が起こったのかさっぱりわからない。
■畑健二郎先生
独特の力強い男性キャラの絵は魅力的で、表情も描けています。ただ、キャラクターの立て方が間違っていると感じました。「よくわからない主人公と、ただ悪いだけの敵の会話劇」だけを読まされても、面白くはないです。
「ポリューションアベック」大神田にくみ(21歳・東京都)
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■あだち充先生
素直な絵と素直過ぎる展開… 何かひとつ意外性や引っかかりを加えるだけで、もっと読者を引き込む事ができると思います。
■高橋留美子先生
淡々とした話でしたが読み易かったです。設定自体に新鮮味はありませんが、キャラクターのやり取りだけで読ませる力のある人ではないか、と可能性は感じます。
■青山剛昌先生
割と面白かった。女の子が幸せになると周りで不幸が起こる設定はすごく笑えた。絵も見やすくてセリフもわかりやすく読みやすかったけど、世界局地研究機関の絵はハッタリをきかせてリアルに描けばもっと笑えた。
■畑健二郎先生
キャラクターのアップは可愛らしく描けていて好感度が高いです。思春期の甘酸っぱい恋愛感情も悪くないと思いました。絵柄や表情の作り方が若干古いのは気になりましたが、優しい絵柄もいい感じだなと思いました。
「UNDEAD MUSIC」祭ノ群(22歳・神奈川県)
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■あだち充先生
絵柄に合った内容を安定した画力でしっかり読ませてくれます。ただ、絵柄が合っている分、ゾンビの気味悪さがあまり伝わってきませんでした。
■高橋留美子先生
設定を生かすための構成がちょっと荒っぽいというか、なめらかに読ませるには、もうひと頑張りです。とてもシンプルな事を言っているはずなのにヒロインに感情移入し辛いです。
■青山剛昌先生
まぁまぁかなぁ。ヒロインの曲でゾンビの心臓が動き出して爆発してしまう設定は非常によかった! ただ、演出がぬるくて、アクションシーンもわかりにくい所が結構あった。右ページの最初のコマは大切にしようね。
■畑健二郎先生
音楽でゾンビを倒すというアイディアは悪くなかったのですが、読者にその面白さが届いていないと感じました。原因としてこの作品の成立に必要な「女の子がとにかく魅力的」という部分が崩れており、問題なのかなと。
「アンプラウド デッドヒート」中野シドー(22歳・静岡県)
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■あだち充先生
クセのある絵とキャラで、淡々と流されて行く少女を勝手に盛り上がって追いかける男… ラストのコマはちゃんと大海原を描いてほしかったなァ…
■高橋留美子先生
非常にバカバカしくて面白かったです。ヒロインの可愛くなさも気にさせない勢いがありました。絵はもう少し線の整理をして読み易くした方が得だと思います。
■青山剛昌先生
うぬぬぬぬ… 所々クスッと笑えるギャグはあるんだけど爆笑する程ではないので大ゴマがもったいない。男の子は優秀という設定だけど実際に難問をサラッと解くシーンを少し入れたらよかったかも。
■畑健二郎先生
メチャクチャなキャラはよかったと思います。ツッコミもキレがあり最後まで楽しく読めました。ただ、ギャグマンガとしては笑いの作り方がワンパターンで22ページも必要ないと感じました。
少女・女性部門
佳作
「自由の花嫁」岡本ありさ(20歳・広島県)特別育成金 25万円
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■尾崎衣良先生
ファンタジーながら、共感しやすいテーマでよく纏められています。主人公だけではなく、いろんな人の想いが組み込んであるのが物語の奥行きになっています。ただ、主人公の確固たる強さの表現がもう少しほしかったです。
■藤沢志月先生
古い伝統に抑圧される女性の生きづらさ、葛藤を描いた考えさせられる話で、しかも楽しく読めました。絵柄は凛として素敵ですが、背景の情報量が少ないと感じました。背景をしっかり描くと、世界観が伝わりやすいかと。
■まいた菜穂先生
目標があって、それでも悩む主人公に好感が持てます。終わりも綺麗で、これからの壮大な物語の予感にわくわくします。主人公が勉強をしたい理由がわからないので、そこを明確にすると、より応援したくなると思いました。
■水波風南先生
独特な風習のある社会と、その中で悩む女の子の心情がとてもリアルに描かれていて、続きが気になって一気に読んでしまいました。その分、ラストにもうひとつ何かエピソードがあると、さらによかったかもしれません。
「あやり」七星ひなの(20歳・神奈川県)特別育成金 25万円
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■尾崎衣良先生
可愛い絵柄からゾクッとさせるような描写まで、表現力の幅を感じます。現代に即した問題提起はおもしろく、恐怖もよく表現されているのですが、終盤にかけて何かもうひとつ、読者を驚かせるようなひねりがほしいです。
■藤沢志月先生
意外な展開ですごく引き込まれ、おもしろかったです。テーマがしっかりしていて、怖いけどいいお話だなと感じました。可愛らしくて繊細な絵柄なので、ペンタッチなどが綺麗になると、さらに魅力的になると思います。
■まいた菜穂先生
後半の見せ方や雰囲気がすごく怖くてよかったです。豚の描写も素晴らしいです。主人公が心変わりするのも納得でした。たまに絵や背景が雑になってしまうので、そこを気をつければ。さらにいい作品が描けると思います。
■水波風南先生
可愛いキャラクターの絵柄と恐怖シーンの動物の描写がリアルで、そのギャップが絶妙なため、読んでいてとてもドキドキしました。これから、また違う社会問題について焦点を当てた作品も読んでみたいと思いました。
「ネコ型ロボ ミケタマ」ウサト サヤ(37歳・東京都)特別育成金 25万円
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■尾崎衣良先生
ファンタジーの世界をしっかりと作り込み、とても細かく描き込まれた絵がいい味となっていて、見入りました。凝った構図ですが、パッと見ではわかりづらい箇所もあるので。描線や色味にメリハリをつけるといいと思います。
■藤沢志月先生
とにかく絵が上手。様々なアングルから巧みに描かれていて、小物などの描き込みも緻密で質感まで伝わってきます。ストーリーに関してはもう少しエピソードの整理などをすると、より読みやすくなっていいと思いました。
■まいた菜穂先生
描き込みの熱量、動きのある画力がすごいです。特に背景がすごい! 背景を見ているだけでも楽しいです。世界観も伝わります。全体的にセリフが多くコマも多いので少し読みづらいです。特に導入は絵で見せてほしいです。
■水波風南先生
とにかく完成度の高い画面に感心のため息が出てしまいます。隅々まで丁寧で情報量がものすごく、読みごたえがあります。ロボットのチビビちゃんが非常に可愛く描けていて、特に寄り添って眠るシーンにグッときました。
「にこちゃんはいつも」戸倉そう(21歳・京都府)特別育成金 25万円
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■尾崎衣良先生
絵柄は可愛らしく味があり、男の子の言葉で主人公のコンプレックスが軽くなるシーンや、その描写の仕方はとてもほほえましくてよかったです。男の子の立ち位置を明確にしたら、そのよさがもっと伝わったと思います。
■藤沢志月先生
テーマはすごく重たいのですが、コミカルな表現のためさっぱりとした読み心地でした。デフォルメで描かれていることで、逆にキャラクターの気持ちが大きく動くところはシリアスに響いてきて、とてもよかったです。
■まいた菜穂先生
テンポのよさと、見せ方がよかったです。思いきりのよいキャラの表情に、何度もドキっとしました。クラスメイトが変わった主人公を見てどう思ったのか、これを機に主人公がどんな考えを持ったのかが気になりました。
■水波風南先生
とても雰囲気のある個性的な作風で、絵柄、ストーリーともに非常に完成されていると感じました。これからもその作風を大事にして、思春期の日常にある、ふとした問題を丹念に描いていってほしいと思いました。
青年部門
入選
「夢の中の鬼ごっこ」失敗戦記(20歳・中国)特別育成金 100万円
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■花沢健吾先生
絵はとても良いのだが、内容が平凡で残念。何か新しい価値観を提示してほしかった。たとえ、それが道徳に反していても。
■石塚真一先生
まず絵が上手い。勢いを感じる線、感情表現もできています。工夫を凝らしたアングルのコマも難なく読み進められました。今後も感情表現の面白さを追求していってほしいです。
■太田垣康男先生
人物の演技力、巧みな構図、緊張感のある絵柄、しかも若い!と褒める部分が非常に多い作家です。しかし、いじめを題材にした投稿作は毎回かなりの本数が応募されるので、審査員としてはちょっと食傷気味。もっと違う題材で描いた作品を見てみたいです。
■業田良家先生
夢の中の映画館で主人公の卑怯さを問い詰められるシーンは秀逸で迫力があった。読者である私も、自分の卑怯な行いを走馬燈のように思い出してしまった( 笑)。ただ最後、仮面が机の引き出しに入っていて、仮面の男は自分だったというオチは平凡すぎる。そこに新しいアイデアが出せれば何倍も良くなる。
■浅野いにお先生
作画のクオリティが高いです。人間の体が正確に描けています。構図やコマ割りに関しても全く問題がなく、漫画を描き慣れている印象でした。ただ圧倒的に物語が分かりづらく、主人公がどういう状況下にいるのかの説明が不足しています。設定やアイデアが先走らないように読者目線に立って、描き手の意図がちゃんと伝わるようになっているか確認してください。
「そうやって迎える日」モイタナナミ(22歳・東京都)
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■花沢健吾先生
独特の雰囲気があり引き込まれそうになるが、深さがなく、大人になることと顔が四角く沈み込むことに、もう少しアイデアが入ってくると良かった。
■石塚真一先生
作者独自の表現を軸に描ききった作品です。必要最小限の線で描かれた絵ですが、感情はしっかり伝わってきました。全身を描いたコマがたくさんあったのも好感が持てました。
■太田垣康男先生
とても恐ろしい作品。読み終わった後の絶望感と哀しみに胸が痛くなりました。相手を思いやる気持ちから嘘をつき、それが幼年期の終わりを告げるという視点が、成長の本質を突いていて切ない。それでも漫画が不快に感じないのは、作者の人間愛の深さからでしょう。将来が楽しみな作家です。
■業田良家先生
当たり障りのないことばかり言って本心を明かそうとしない大人、そして現代の日本人を見事に表している。顔がへこんで無くなっていくという比喩が素晴らしい。友だちと抱き合って泣くしかなかったエンディングも悲しさが伝わってくる。
■浅野いにお先生
非常に惜しい作品だと思います。思春期特有の感覚を物語で表現できてはいるのですが、「顔が凹んでいく」という表現が生かしきれていません。この設定を心象表現だけにとどめず、物語の中に組み込むこと(安易ですが、例えば顔が凸の人を登場させて主人公に絡ませるなど)をすれば、作品がもっとパッケージングされたものになっていたと思います。嫌味のない作風なので、センチメンタルに流されず、毒気を加えてもっと攻めてもいいのでは。
佳作
「HOOP BROS」薗田亮介(28歳・神奈川県)
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■花沢健吾先生
絵はかなり完成しており、見開きもちゃんと読者に伝わる絵作りになっている。キャラも今どき感がある。しかし、ストーリーはよくある話で、新しさがほしい。
■石塚真一先生
絵から気合いを感じる作品でした。見開きの絵もドンとしていて気持ちが良かった。エピソードを足して、キャラクターの内面にもっとズームしてみてもいいのかもしれません。
■太田垣康男先生
好きな漫画家を3人以上完コピすれば、上手くミックスされて自分の絵柄が出来上がります。ステレオタイプの物語にも自己投影ができるようオリジナリティーの創出を目指してください。
■業田良家先生
バスケのシーンでは、迫力があって構図も良い絵があるが、ストーリーが平凡すぎる。アイデアをもっとよく練ってほしい。
■浅野いにお先生
とにかく描き手の力量が試されるスポーツ漫画ですが、迫力や躍動感を感じることができたので、今後経験を積めばもっと良いものが描けるようになる気がしました。ただ主人公の性格が生意気なので、僕は共感も同情もできませんでした。スポーツ漫画は、読者とキャラクターの心情を共鳴させることがキモだと思うので、主人公でそれが難しいなら、仲間やライバル(この作品でいうと兄)に個性をつけ、他のサブキャラを軸にしても読み進められるように構成するといいかもしれません。
「Fake Children」齊藤真聖(23歳・埼玉県)
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■花沢健吾先生
絵は上手い、見せる力はある。しかし内容が平凡でした。
■石塚真一先生
丁寧かつ力強い絵で描かれた作品です。手を抜かずにサブキャラクターたちも丁寧に描いています。細かいコマ割りのページがもっとあってもよかったかと思います。絵が上手いだけに、エピソードを足して、キャラクターの内面をもう少し見たかった。
■太田垣康男先生
非常に力強い絵柄を持っている上に、キャラクターの表情も感情豊かで作家としての将来性を感じます。しかしながら今回の投稿作は絵柄に対してネタが小さく、武器となる絵柄を生かしきれていません。次はぜひ自分の絵柄にマッチしたネタ選びを。
■業田良家先生
最後に後輩の財布を取り返していたのが分かる見せ方が上手い。駐車場で血まみれで泣いている主人公が、後になって光り輝いて見えた。
■浅野いにお先生
ページが短めでテンポが良かったので読みやすかったです。ただ、あまりに内容が薄すぎる。主人公が成長するという流れは読みきりの鉄板なので、それは間違っていないのですが、成長にいたる経緯、なぜ変わろうと思ったのかの「気づき」をもっと丁寧に描いてください。
「羽音色」よほん(20歳・東京都)
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■花沢健吾先生
絵柄は大胆でキャラに嫌味がない。描いている本人は楽しそうだが、果たして読者はどう思うか。プロになるには、バランスはともあれ読者の目線に立つことも必要になってくるだろう。
■石塚真一先生
かわいらしいキャラクターが力強い線で描かれています。このバランスが作者のスタイルなのでしょう。好感が持てました。表現も練って工夫した感がありました。主人公以外のキャラクターをもっと描くと、主人公がさらに際立つと思います。
■太田垣康男先生
音楽を表現するための独特の絵柄と画面構成は見応えがあり楽しめましたが、肝心の物語が薄く、ラストは拍子抜けな印象。理由は簡単、登場人物達の関係性が、物語を通して深くなっていないから。これでは独り合点の独りよがり。読者に漫画を届けたいなら、「共感」を描くべきです。
■業田良家先生
かなりクセが強くとっつきにくい絵だが、感情や状況を的確に伝える表現力はある。「うるせぇ蝉の聲」という表現も詩的で好きだ。
■浅野いにお先生
デザインチックで特徴的な絵柄に魅力は感じます。その絵柄に引っ張られて、キャラクターもいきいきとしていますが、ところどころ絵が雑に感じてしまうところがあるのが残念でした。さらに絵柄のインパクトに物語が負けてしまっているので、見せ場のシーン以外は絵の個性を抑えるなどをして、作品の中にコントラストを持たせてほしいと思いました。